門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

9 / 20
六話 新たな任務

 街を歩く人が寒さのため肩を震わせ、風さえも空で凍りついてしまうような今日。

 現在、東京は冬を迎えている。

 

「特地は春みたいだったのにな」

 

 特地から地球に戻ったとき、門から外に出ると頭から氷水を被ったような冷たい風に吹かれて、おもわず風邪をひきそうになった。

 買い物袋を持ち白い息を吐きながら、信号を変わるのを待つ。

 背中の傷が寒さでジクジクと痛む。

 

「一応、病院行って治してもらったはずなんだけどな」

 

 信号が青になり、人混みに揉まれながら歩き出す。

 目的地のホテルに到着する。

 中に入ると、フロント前にはチェックインを待つ団体客たちがいて、賑やかだった。

 エレベーターで上まで昇り、部屋の前まで歩く。

 左手で持ったホテルのカードキーを、ドアノブの下にある隙間に挿入した。ピッと機械音がする。カードを引き抜くと、金具が外れる音がした。

 

「帰ったぞ、遠坂」

「お帰り、シロウ」

「寒い中、お疲れ様。士郎」

 

 遠坂が温かいコーヒーを渡す。

 

「ありがとう。助かるよ」

「士郎が行かなくても、私が行ったのに」

「遠坂じゃ、この買い物は無理だな」

 

 買い物袋からパソコンを取り出す。遠坂は電子機器関係は弱いので、自分で選ぶしかない。

 

「それくらいできるわよ」

「無理だと思うな~」

 

 フラットを遠坂がものすごい形相で睨む。うひゃと間の抜けた声をあげ、俺の背中に隠れる。

 頼むから、盾にしないでほしい。絶対守れないから。

 パソコンに電源をつけ、ネットに繋ぐ。

 

「よし、じゃあネット電話掛けるぞ」

「おねがい」

 

 しばらくのコール音がして、パソコンの画面にロードエルメロイⅡ世が写る。

 

「お久しぶりです。フラットの救出任務完了しました」

「そうか。ありがとう。君たちに任せて良かった」

 

 二世の顔が和らぐ。こんな表情するのは珍しい。よっぽど心配だったのだろう。

 

「特地でケガをしたと聞いた。大丈夫か?」

「いえ、問題ありません」

「治療費はこちらに請求してくれ。報酬とは別に用意する」

「そんな、重症ではないから大丈夫ですよ」

「いや、事前情報がまったくない危険な任務に生徒を向かわせてしまった。私の責任もある。気にするな」

 

 ほんの少ししか教示してもらっただけなのに、生徒として気にかける。このような一面があるからこそ生徒から信頼されるのだろう。

 

「ありがとうございます」

「フラットと変わってくれないか」

「分かりました」

 

 フラットに交代する。

 

「先生!お久しぶりです!」

「この、大馬鹿者が!」

 

 パソコンから大きな怒鳴り声がする。

 

「皆がどれだけ心配したか分かっているのか!」

「ごめんなさい」

 

 さすがのフラットも申し訳なく思ったのか、かなりヘコんでいる。数十分ほど説教が続くと。

 

「フラットは特地に関するレポートをすぐに提出すること。いいな」

「はい」

「帰ったら、宿題三倍提出だからな」

「……はい」

「遠坂に変われ」

 

 こってり絞られたフラットがふらふらとパソコンの前から去る。

 

「すまない。待たせてしまった」

「いえ、構いません」

「任務、ご苦労だった。報酬は口座に振り込んだ。確認してくれ」

「待ってください。確かにフラットの捜索は成功しましたが、特地の調査はまだです」

 

 イタリカまでの調査とフラットが調べた結果はあるが、十分とは言えない。

 

「他の派閥に横やりでも入れられましたか」

 

 時計塔は一枚岩ではない。派閥は大まかに三つで、貴族派・民主派・中立派に分かれる。さらに、手柄が欲しい。若手のロード・エルメロイⅡ世が気喰わないからなど、敵をあげるとキリがない。そんな連中が俺達を下ろそうとしているのかもしれない。

 

「違うんだ」

「どうゆうことです?」

「逆なんだ。門を封印すべきという声があがっている」

 

 これには驚く。

 少ししか調査してないが、特地は資源の宝庫だ。時計塔の連中がこれを見逃すはずがない。

 

「いったい、誰がそんなことを」

「聞いて驚くな。あの()()()だ」

 

 宝石翁。キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。

 他にも、魔道元帥・万華鏡(カレイドスコープ)などたくさんの名をもつ。現存する数少ない魔法使いだ。

 しかし、あまり時計塔の評価は高くない。どちらかと言えば、災害の部類に入る。

 理由として、彼に弟子入りできれば大成して名を残せるが、大半が破滅してしまうかのどちらか。貴重な優秀の人材を使い物にならなくしては大損害でしかない。

 本当に困った人だ。

 

「あの爺さん帰ってきたのね」

 

 遠坂が嫌そうな顔をする。

 

「そんな顔するな。一応、お前の師匠だろう」

「分かってますけどね。どうしようもないですよ。こればっかりは」

 

 遠坂は宝石翁に弟子入りしてる。周りはまだ廃人になってないと評価しているが、当の本人からは無茶苦茶でトラブルに巻き込まれ、疲れるので嫌だと言う。

 

「なぜ、封印なのですか?」

「報告にあった死徒のような化け物だが、その事を気になされている」

 

 死徒については、自分達も気になっていた。あまりにも我々の知る死徒の感覚に酷似している。

 

「宝石翁の予想通りだと、最悪な事態が起こるそうだ」

「最悪な事態とは?」

「そこまでは教えてもらえなかった」

 

 宝石翁の最悪は、世界規模の災害が起きると暗に告げている。

 

「今、時計塔は特地の会議でてんやわんやだ」

「まだ、決めかねていると」

「そこでだ」

 

ロードエルメロイ二世が区切る。

 

「遠坂に伝言だ」

「誰からです?」

「宝石翁から師匠として命令だそうだ」

「げっ」

 

 遠坂がいつもなら絶対言わなそうなうめき声をあげる。

 

「特地の調査の継続を命じるそうだ」

「拒否とか」

「翁相手に無理だろ。」

 

 そうですよねー。頭を抱える遠坂。

 

「君たちの祖国も関わってるだ。恩返しの意味も込めて頑張りたまえ。それに」

「それに?」

「宝石翁が言っていたぞ。『今のお前なら大丈夫だろう。あれの研究成果を見せてみせろ』だそうだ。良かったな、認めてもらって」

「あはは……。お見通しわけね」

 

 諦めた顔でため息を一つはき、すぐに切り替えて。

 

「分かりました。不肖の弟子、遠坂。師匠の任務、確かに承りました」

「よろしく頼む。もし何か必要な備品があれば言ってくれ。すぐに用意をさせる」

「ありがとうございます。でしたら」

 

 これから必要な品を頼む。すると、フラットが。

 

「あの先生。僕も任務に」

「馬鹿たれ。お前はすぐに帰ってこい!」

 

 叱られ、はい!と背筋を真っ直ぐ伸ばして返事をする。

 

「任務の詳細はまた後日に連絡する。任務の無事を願う」

 

 ネット電話が切れる。

 

「ゴメン。任務受けちゃった。士郎は別に」

「俺もいくよ。遠坂だけ危険な目にあわせられない」

 

 ありがとう。顔を少し赤らめながら遠坂から感謝を伝えられる。

 

「ラブラブなとこ申し訳ないけど、僕もいるからね」

「な、何よ。別にイチャついてないわよ」

 

 ハイハイと良いながら、フラットは荷物をまとめる。

 

「シロウ、リン、ありがとね。助けてくれて」

「元教室の馴染みだろ。助け合うのが当然だ」

「もう、行くの?」

「みんなに心配かけちゃったしね。早く帰って安心させないとね。あと、あの死徒みたいなのには気を付けてね。なんだか嫌な感じがしたから」

 

 フラットと握手をして、ホテルで別れた。

 隣に立つ遠坂を見る。

 どんな危険があっても大事な遠坂や、全ての人を絶対に守ると決意を固めるのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。