ある日、一人の幼女が泣いていた。
幼女は一羽の黒い仔うさぎにまとわりつかれ顔や手を引っかかれたり噛み付かれていた。
「かわいそうに」
見かねた俺は幼女からむんずとそのうさぎを掴み取った。
金髪の幼女「えーん」
幼女は気づいてないのかうずくまって泣いたままだったが、これ以上関わるのは面倒なので俺はうさぎを片手にその場を後にした。
途中「あんこー!シャロちゃーん!どこー!?」と大声をあげながら何かを探す黒髪の幼女を見たが事案はごめんなので無視した。
「さて……どうしようか?」
俺は自宅の一室で仔うさぎを観察していた。
俺の掴まれてからは急に大人しくなった仔うさぎ。
王冠を被っている事から誰かのペットか元ペットなのは想像に難くない。
だが人間を襲う害獣は駆除せねばならない。
俺は躾のなってない動物は嫌いなのだ。
「ふむ……何か身元の分かる物はと……」
王冠以外は特に身に着けている物はない。
飼い主の住所でも書かれた首輪などでもついていれば良かったのだが。
「ん?」
そこで俺は王冠に名前が書かれてる事に気づいた。
「……あんこ?」
それがコイツの名前なのだろうか?
「うお!?」
王冠に触れた途端にあんこは急に暴れだし俺の手から逃げ出した。
「………」
――なんだこいつは?
ボクはシャロと遊んでたのに。
あんこは自分の置かれてる状況に困惑していた。
――そうか!!
きっとボクがあまりに可愛いから思わずお持ち帰りされてしまったんだ。
あんこは常々千夜もシャロも自分を褒め称えてるのを思い出した。
下劣な人間が欲望に負けるのも仕方がない。
本来ならこんなオスに付き合う義理はないが、あんこは自分は高貴なプリンスとしてつきあってやることにした。
「………」
このうさぎは机に飛び乗るや俺に対して頭が高いと言わんばかりの態度でこちらを見ている。
そして机に置いてあったお菓子やペットフードに気づくと、今度は俺の事など忘れたかのようにそれへと飛びつきむさぼり始めた。
「………よし」
俺は心を鬼にすることを決めた。
――!?
なんだ?
ボクはお食事中だぞ?
邪魔するな下郎。
男が突然ボクを乱暴に持ち上げた。
ボクは勇敢に必死に抵抗した。
そして男はそんなボクに屈し手を離した。
「躾が必要だな」
俺は横の灯油ストーブの上へあんこを持っていった。
こいつは聞き分けのない子を調教するために改造してある。
もっとも簡単な物だ。
通常ヤカンなんかを置く部分の周りに檻をつけた物である。
あんこくらい小型ならスッポリ収まるだろう。
「ここで少し頭を冷やせ」
俺は十分に熱せられたストーブの上にあんこをポトリと落とした。
あんこ「・・・」
あんこ「―――」
尻からストンと落下したあんこは最初なにが起こったのかわからない様だった。
しかしすぐに熱せられた金属が己の尻を焼く痛みに飛び跳ねた。
ゴン!!
天井部分はブ厚い金属板で蓋をされたのであんこは頭を強く打ち、そのままうつぶせ状態で落下した。
あんこ「!!!!!」
あんこの体が全体的に煙を上げながら焼けてゆく。
「ふん。やはり躾のなってないペットはゴミだな。まるで生ゴミを燃やしたような臭さだ」
あんこ「!!!!!」
暴れるあんこを見ながら男は死なれても困るとあんこを助け出し、用意していた氷水の中へと放り込んだ。
あんこ「・・・」
あんこは動かない。
どうやら気絶したようであった。
「………」
千夜「今日も一日ご苦労様あんこ」
千夜が優しくボクを撫でてくれる。
ボクは甘兎庵の看板うさぎとして千夜と一緒に毎日がんばっていた。
シャロ「千夜ーあんこーご飯できたわよー」
大好きなシャロがご飯を用意してくれたのでお店から千夜とお部屋移動する。
シャロ「今日も一日ご苦労さま。いっぱい食べてね」
ボクはシャロの膝の上でからご飯を食べさせもらう。
そんなボクの傍へ白く美しいうさぎが寄ってくる。
ボクのお嫁さんの―――だ
今度はその後ろからたくさんのボクと―――に似た可愛く凛々しい子うさぎたちがやってきた。
千夜「みんなもやっぱりパパのあんこと一緒がいいのね」
シャロ「ホントに仲のいい一家ね。焼けちゃうわ」
――ああ
なんて幸せなんだ・・・みんなのために明日も頑張らないと。
ボクは幸せを噛みしめながら段々と眠くなってきてしまい、そのままそのまどろみに身を任せるのであった。
「ほら。起きろ躾の時間だ」
そして
今日も長い一日が
はじまる。
―END―