貴女と海とヤマブキと輝きは   作:kwhr2069

2 / 3
後編です。

ちなみに、文量が前編の二倍くらいあります。
どうぞ、よろしくお願いします。


後編 〈記憶〉

後編

 

「はい、着いた~!ここだよ、ダイヤちゃん!」

「そうですか。・・あれ?ここは。。」

 

 

 夕焼けが始まったばかり、くらいの時間。

 きれいなオレンジ色が、海面に反射してキラキラ輝いている。

 

 二人は、黙って海を見つめる。

 

「実はね、」

 

 沈黙を破ったのは、花陽だった。

 

「今日行った場所、全部、μ'sの皆との思い出の場所、なんだ。」

 

 ダイヤは、黙って聞いている。

 

「動物園、美術館、浅草寺、遊園地、神田明神。

出来ればゲームセンターとかにも、行きたかったんだけどね。」

「・・音ノ木坂学院とUT-X高校にも、行ったでしょう?」

 

 黙ってうなずく、花陽。

 

「そして、この海。

 実はこの海ね、μ'sが解散を初めて宣言した場所、なんだ。」

「そうだったのですか。。」

 

「うん。正式に発表したのは、もっとずっと後だったんだけど、ね。」

「・・実は、この海、私たちAqoursも、来たことがあるんです。」

 

「ええっ!?本当!?」

「はい。すごい偶然でしょう?あれは確か、地区大会が迫ってきている頃でした――。」

 

 

 本当の輝きとは何か。

 Aqoursと、μ'sとの違いとは一体何なのか。

 

 自分たちに問うていた。

 

 だから、見つけに行った。その、答えを。

 

 

「・・それで、見つかったの?」

 

 花陽がダイヤに尋ねる。

 

「ええ。見つかりましたとも。・・自分たちは、μ'sではないんだ、と。」

 

「私たちは、浦の星女学院スクールアイドル、Aqours。

 μ'sを追いかけるなんて、無理だと気付いたんです。

 だから、自分たちは自分たちのやり方で、輝こう、と。」

「・・なるほどね。」

 

 

 そうして。

 また二人は、海を見つめる。

 

 その先に見えるものを探して。

 

 

「じゃあ、遅くなってもいけないし、そろそろ帰ろうか。」

「はい。そう致しましょう。」

 

 

 駅のホームに帰った二人は、電車を待つ。

 

 ベンチに座るダイヤに、おにぎりを二つ手渡す花陽。

 

「・・またですか。」

「"また"、とは人聞きの悪い!おにぎりって、すごく素晴らしい食べ物なんだよ?」

 

「はいはい。その話は先程も聞きましたから。」

「じゃあいいもん!そんなことを言うダイヤちゃんには、おにぎり分けてあげないから!」

 

 

 そう言いながら、風呂敷いっぱいに詰め込まれたおにぎりを見せる。

 もちろん、全て塩むすびであることは、皆もお分かりのことだろう。。

 

「これも、先程も言いましたが、本当に白米がお好きなんですね。」

「もっちろん!」

 

 嬉しそうに、ダイヤの持つおにぎりよりも幾分かサイズの大きいそれを頬張る。

 まるで、リスである。

 

 

 写真を撮りたい衝動に駆られたダイヤ。

 しかし、彼女は人にカメラを向けることに不慣れであった。

 

 その時、()()()()が目に入った。

 

 

「花陽さん!ちょっとこちらに来てください!」

「ひょっひょ、ひょほひふへへひふひ?(ちょっと、どこに連れていく気?)」

 

 彼女を引っ張っていった先は――。

 

 

 

「・・証明写真?」

「ええ。こうでもしなければ、花陽さんの姿が撮れませんので。

 って、もう飲み込んだんですの?くっ、撮り逃してしまいましたわ。。」

 

「・・いいよ、撮ろう。」

「はい?」

 

「ほら、早く入って!撮るんでしょ、写真!」

「ちょっと?どういうことですの?それと、私が撮りたいのはリス花陽さんなのd――」

 

 

 

「あ~、楽しかった!!」

「つ、疲れましたわ。。」

 

「それにしてもダイヤちゃん、本当に写真が苦手なんだね。。」

「仕方ないでしょう?

 私だって、自分が流行に逆らっている人間だということくらい、分かっていますわ。」

 

「別に、そういうつもりで言ったわけじゃ、ないんだけど。。」

 

 

 花陽の手には、背景の青いフレームに映る、仏頂面のダイヤと、その頭に人差し指を立て、

"鬼"を思わせるようにしながらカメラに満面の笑みを向ける、花陽の写真があった。

 

「それで、花陽さん?これで、今日の予定は終わりなのですか?」

 

 

 もう、すっかり暗くなっている。

 

「もう終わり、のつもりだったんだけどね。

 予想以上に、ダイヤちゃんが面白かったから、――。」

「ええっ!?私は別に、問題ありませんが。。いいんですの?」

 

「これでも、もう大学卒業してるんだよ?」

「あっ、そうでしたわね。つい。。」

 

「ダイヤちゃん、ヒドイよ~!」

「うふふっ。では、向かいましょうか。」

 

 

 

 

 

「ここですわ。あまりきれいではないですが、どうぞお上がりください。」

「おじゃましまーす。

 わあ!すっごくきれいだよ?自分からハードル下げたね、ダイヤちゃん?」

 

「べ、別に、そういうわけではありませんわよ!」

「おお~!本当にμ'sのグッズがある!

 絵里ちゃん、希ちゃん、海未ちゃん、私、絵里ちゃん、希ちゃん、絵里ちゃん、絵里ちゃん。。

 ダイヤちゃんって、絵里ty。」

 

「花陽さん!どうぞ!お茶になります!」

「あっ、ありがとう。って、顔、真っ赤だよ?」

 

 

 花陽の言うように、ダイヤの顔は真っ赤だった。

 

 まあ、真っ当なことだと思う。

 憧れのμ'sが目の前。それに慣れたと思ったら、今度は推しメンがばれそうになっているのだ。

 

「夜ご飯は、どうなさいますか?」

「えっ、そうだなぁ。。」

 

 

 慌てて話題をそらそうとしているのが、見え見えである。

 

 と、花陽の口角がにっと上がった。

 

「ダイヤちゃんは、料理得意なの?」

「ええ、まあ。。一人暮らしも長いですし、自信が無いと言えば、嘘になりますが。」

 

「そ・れ・な・ら、

 

 

 

 

 

 

 

 ボルシチとか、作れるのかなあ?」

 

「っっ!!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ダイヤの中で今までため込んでいた羞恥心が溢れ出し。

 何かがはじけ飛んでしまった。

 

 

 

 

 

 結局。

 ダイヤがショートしてしまったため、花陽が簡単に料理をした。

 

 元に戻ったのは、もう料理も完成しようかというタイミングだった。

 

 

 花陽が作ったのは、肉野菜炒めに、ポテトサラダ。

 ご飯はもちろん、昼から継続の塩むすび。

 

「ごめんごめん、ダイヤちゃん。まさか、あそこまでになるとは思ってなくて。。」

 

 

 料理をする花陽をにらみつけるダイヤ。

 それに、軽い調子で応える花陽。

 

 二人はまるで本当に、古くからの知り合いのようになっていた。

 

 

 

 その後、料理が完成し、食卓につく。

 

「「いただきます。」」

 

 そろえて口にし、晩御飯を食べ始める。

 

「あっ、おいしい。」

「そう?良かった、口に合って。」

 

 

 そこでふと、ダイヤは思い当たった。

 

 

「ちょっと、テレビをつけますわ。」

「はーい。」

 

 

 そして、つけたのは。

 

 

 昨日録画した、スクールアイドルの特集番組。

 

 

「これ。。」

「ええ。昨日あっていた、スクールアイドルの特集番組ですわ。一応、録画しておいたんです。

 ということで、折角ですから一緒に観ましょう。」

 

 

『スクールアイドル。それは、高校生によって結成されたアイドルユニットの総称である。

 その歴史は、約八年前に始まった。』

 

「何とも...紹介が、雑ですわ。。」

「まあ、仕方ないんじゃないかな。悲しいけど。。」

 

『"KERRIA"は、東京都八王子にある高校に通う、二人組のユニットである。』

 〈リーダーで作曲担当、山武 麗菜(やまたけ れいな)

 〈主に作詞担当の、有馬 伊吹(ありま いぶき)

 

『二人は、同級生、なんですよね。』

【はい。そうです。二人でやるのは大変なんですが、すごくやりがいがあって。】

 

『衣装も必要だと思うけど、それはどうしてるのかな?』

【もちろん、二人で協力して作っています!すごく、楽しいですよ!】

 

『憧れの先輩、とかはいるのかな?』

【たくさんの、伝統をつないできた先輩方の中で、私たちが最も尊敬しているグループを

 一つあげるのならば、それは、Aqoursの皆さんです。】

 

 

「ええっ!?」

 

 突然声を上げる、ダイヤ。

 

『その、理由は?』

【そもそも私たちは、東京の檜原村に住んでいたんです。でもその村には、高校がなくって。

 それで、どの高校に入ろうって考えていた時に、偶然Aqoursさんのライブを観たんです。】

 

 

 するとここで、インタビュー映像から切り替わり、Aqoursについての紹介が始まった。

 

【最初に観たのは、AKIBA DOOMで歌う皆さんの姿でした。

 そこから私たちは、スクールアイドルを知って、自分たちもやることに決めたんです。】

 

 そう、山武麗菜が語る中で流れ出したのは、WATER BLUE NEW WORLD。

 

 

「私たちの、歌。。」

 

 ぽつりとつぶやくダイヤ。

 

「まさか、このような形で取り上げられるとは。。」

 

 思ってもみなかった展開。全く予期していなかった。

 

 

 花陽は、黙りこくったまま、じっくりとテレビを観ている。

 

 

 そうこうしている内に、サビ前。

 

♪ずっとここにいたいと思ってるけど きっと旅ってくって分かってるんだよ

 だからこの時を楽しくしたい 最高のトキメキを胸に焼き付けたいから♪

 

「そうですわ。。こんな風に歌っていましたが、離れ離れに。。」

 

 悲しげに、そうつぶやいた。

 

 

♪My new world 新しい場所探す時が来たよ 次の輝きへと海を渡ろう

 夢が見たい想いはいつでも僕たちを つないでくれるから笑っていこう

 今を重ね そして 未来へ向かおう♪

 

「・・・。」

 

 

 

【Aqoursの皆さんは、廃校になりそうな学校を救うために立ち上がったんです。

 失礼かもしれませんが、田舎に住んでいるというところにも、私たちは惹かれたんです。

 "ああ、どんなところであっても、スクールアイドルは輝くことができるんだ"って。

 結局、廃校を防ぐことはできなかったそうですが、それでも、あの輝きは絶対に不滅です。】

 

 

 ここで、二人には聞き覚えのない音楽が流れ始める。

 

【この歌は、そういう想いをつづった曲で、私たちの始まりの歌です。

 では、聞いてください、"everlasting glitter"】

 

「"永遠に続く、輝き"。。」

 

 初めて、花陽が口を開いた。

 

 

 その瞬間。

 いきなり立ち上がったダイヤは、部屋から出ていった。

 

 

 

 その目に、涙を浮かべながら。

 

 

 

「・・やっぱり、録画してたね。良かったぁ。。」

 

 一人部屋に残った花陽は、そうつぶやいた。

 

 

 

 

 その後、その番組は、スクールアイドルの歴史を作ったA-RISE、そしてμ'sの紹介に続き。

 そのA-RISEが、スクールアイドル時代の思い出などを語った後に"Private Wars"を披露。

 

 さらに、A-RISEとKERRIAの軽い対談のようなものを挟んでから、KERRIAが新曲を披露。

 

 最後に、μ'sに話題が掘り下げられた。

 

 

 ダイヤは、ようやくこのタイミングで戻ってきた。

 

 目元は赤くはれていたが、涙はなかった。

 

 

「遅いよ~、ダイヤちゃん。戻す?」

「いえ。。遠慮しておきますわ。」

 

 

 そして、テレビの画面を観たダイヤは、目の前の花陽に問うた。

 

「μ'sは、解散する必要があったのでしょうか?」

 

 

 不躾な質問だとは分かっていた。

 しかし、聞かずにはいられなかった。

 

 ずっと気になっていたこと。

 

 μ'sは、どうしてあのような去り方をしたのか。

 もっと続けたいという気持ちは、本当になかったのか。

 

 

 あの解散が、どれだけ当時、自分にとってショックな出来事だったか。

 

 ダイヤは、ファンだったからこそ、聞けなかった。口にできなかった。

 そういう想いは、胸にしまっていなければならない、と思っていた。

 

 

 ただ、今なら。

 色んなことを共に経験した今日なら。

 自分のすぐ近くにいる伝説の人に。

 長くため込んでいたことを、聞ける気がした。

 

 

 いや、むしろ、聞かないといけない気がした。

 

 

 

「・・μ'sは、あの9人しか、考えられなかったんだ。。」

 

 

 そう花陽が切り出したのは、しばらくの静寂の後だった。

 

「私たちは、スクールアイドル。もちろん進級もあるし、卒業していっちゃうし、入学生も来る。

 そうなれば、普通は世代が変わるもの。それは、もちろん分かっていたの。でも――、」

「でも?」

 

 

「でも、私たちは違ったの。μ'sは、私たちにとって、あのメンバーでしか考えられなかった。

 あの9人だったからこそ、あそこまで行けた。あんな風に頑張れたの。」

「・・・。」

 

「だから、μ'sは解散したの。

 海でも言ったけど、本当はラブライブの本戦決勝の前にはもう、決まってたことなんだ。

 でも、決勝で優勝して、話題になって。アメリカに行って。有名に、なった。」

「それは。。」

 

「実際、すごく嬉しかったよ。

 大好きなμ'sのメンバーと、一緒にまた過ごすことができた。

 それに、音ノ木坂学院の名前は広がって、今は有名な音楽学校になったんだし、ね。

 だけど同時に、ものすごく辛かった。」

「・・・。」

 

「きっぱり辞めようって決めたのに、まさかあそこまで反響があるなんて予想してなかったから。

 また未練がでてきてしまうのが...怖かった。

 μ'sを応援してくれてた人たちには、すごく申し訳ないな、って思ったけど、でも。

 ちゃんと辞めないといけない、って思ったから。」

 

 

 ダイヤは、真剣に聞いていた。

 

 グループの解散。

 それはAqoursでも、もちろん問題になったことだった。

 

 でも、不思議なことに。

 私たちはどういうわけか、その話題には触れなかった。

 

 といっても、皆考えていることは同じだったと思うが。

 

 

 

「・・どう?納得できたかな、ダイヤちゃん?」

「ええ、もちろんです。

 私は、μ'sを応援しておりました。μ'sが大好きでしたわ。

 でもそれは、まさに花陽さんの仰るように、あの9人のμ'sのことですわ。

 確かに、μ'sの解散は、ショックでしたし悲しかった。

 ですが、決して、誰かが入って誰かが抜けて、というものではありませんから。」

 

「・・うん、ありがとう。」

「答えにくい質問、大変失礼しましたわ。」

 

「・・それなら、代わりに一つ、私から質問。いい?」

「ええ、まあ、答えられるものであれば。。」

 

 

 

「絵里ちゃん推しなの?」

「・・はい、そうですわ。って、もう分かっていたでしょう!?

 わざわざ聞かなくてもいいではありませんか!」

 

「あはは。そっかー、絵里ちゃんか~。まあ、人気だもんね~。」

「そう言えば、気になっていたのですが。。年上、だと思いますがなぜ"ちゃん"と?」

 

「あれ?言ってなかった?実は、かくかくしかじかで――。」

「なるほど、"先輩禁止"ですか。。勉強になりますわ。」

 

「その頃からの流れで、今でもそう呼んでるんだ。

 ところで、ダイヤちゃんはなんて呼ばれてたの?」

「ええっ!?」

 

「やっぱり、生徒会長でもあったし、"さん"付け?」

「・・ええ、まあ、そのようなところですわ。

 (よもや、"ちゃん"付けをお願いした、などとは口が裂けても言えませんわ。。)」

 

 

「とっ、ところで、私の妹、ルビィはご存知でしょうか?」

 

 

 またも弱みを握られるような気がしたダイヤ。話題をすり替えた。

 

「えっ?まあもちろん、知ってるけど。。それがどうしたの?」

「じっ、実は!花陽さん推しですの!」

 

「ほ、本当に!?」

「ええ。いつも、花陽さんの可愛さを語っていましたわ。。」

 

「そっか~、嬉しいなあ~。実は、私を推してたって言ってくれる人、あまりいなかったんだ。」

 

 

 嬉しさを見せる花陽に、ダイヤは安堵していた。

 

 

 しかし、花陽は気付いてしまった。

 

 

 

「ということは、ダイヤちゃんは妹の推しメンを見かけたのに、

 その時に気が付かなかった、ってことになるね?」

 

 

 一気に顔が青ざめるダイヤ。

 

「たっ、大変申し訳ございませんでしたわ!その節は、本当に...!」

「ははは。そんなに改まらなくても。」

 

「(私、なんだかずっと花陽さんに遊ばれている気がしますわ。。)」

 

 

「ダイヤちゃん。」

「はい、なんでしょうか。」

 

 突然改まって名前を呼ばれ、背中がのびる。

 

「ありがとう。」

「えっ?いや、それは、こちらこそ、といいますか。。」

 

「違うの。全部、私がしたいことをやっただけなの。」

「花陽さん。。」

 

「大学に行って、好きなお米のことを学んで、一生懸命研究してきた。

 でも、どうしても、μ'sの皆のことが、頭から離れなかったの。

 もう、私、頭の中は皆のことばっかり。。」

「・・・。」

 

「だから、ダイヤちゃんに会った時、今日のこの計画を思いついたの。折角の機会だと思って。

 ダイヤちゃんなら、私たちのこと分かってくれる、って。付いてきてくれる、って思ったの。

 私は、皆のことを思い出したかった。確かな記憶を、感じたかったの。

 ダイヤちゃんの都合なんて、もはや考えてなかった。私自身のことしか。。」

 

 花陽は、今日の一連の行動の心情を吐露した。

 それをダイヤは、落ち着いた表情で聴いていた。

 

「ごめんね、ダイヤちゃん。勝手に連れまわしたりして。ごめんね。。」

 

 

 花陽の頬を、一筋の涙が伝った。

 

「どうして、謝るんですの?」

「・・えっ?」

 

「私は、嬉しかったんですのよ?

 私の一番の憧れ、そして伝説をつくったμ'sの、小泉花陽さんと今日を共に過ごせて。

 私の都合を無視していた?――とんでもありませんわ!

 私にとって、μ'sの方とお会いできて、お話ができて。これ以上に幸せなこと、ありません!

 ですから――」

 

 

 そして、ダイヤは、下を向いている花陽の顔を上げさせ。

 

 

 

 

 

 抱きついた。

 

「本当にありがとうございました!花陽さん!」

 

 

 誠心誠意、感謝の言葉を述べたダイヤの頬にも、涙が伝った。

 

 

「・・ありがとう!ダイヤちゃん、ありがとう!」

「こちらこそ、花陽さん。――大好きですわ!」

 

 

 

 そうして二人は、抱き合いながら、泣いた。

 

 

 

 

 

 翌朝。

 目が覚めたダイヤは、洗面所の鏡に、ペンで一つのサインが書かれてあるのを見つけた。

 

 慌ててリビングルームに行ったが、そこには探している人の姿はなく。

 代わりに、机の上に一枚の手紙が置いてあるのを見かけた。

 

 

『ダイヤちゃんへ

 

  昨日は本当にありがとう!すごく、楽しかったよ!

  μ'sのことを応援してくれてありがとう。好きでいてくれてありがとう。

 

  昨日一緒に観たテレビ、実は私は、一昨日に一人で観てたんだ。

  それで、絶対にダイヤちゃんにも観てほしい、と思っていました。

 

  あの子たちのように、未だにAqoursのことを思い続けている人は沢山います。

  そのことを忘れないでね!そして私も、その中の一人です!

 

  大変なこともこれから色々あると思うけど、私はずっと応援してるからね!

  真面目で頑張り屋なダイヤちゃんを!!

 

 

  そして私は、一つ嘘をついていました。

  「自分のことしか考えてなかった。」

  昨日私は、こう言いましたね。でも、気付きました。

 

  私、ダイヤちゃんと一緒に色んな所に行って、色々お話しして。

  ダイヤちゃんと過ごせる時間を、心から楽しんでいたんだと思います。

  最初は確かに自分のことしか考えてなかったけど。

  最終的にはダイヤちゃんと一緒でよかったって、強く思いました!

 

  きっとまた会えることを信じています。大好きだよ!ダイヤちゃん!

 

 

  μ'sic forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 小泉花陽より』

 

 

「花陽、さん。。」

 

 また、その近くには、二つのぬいぐるみが置いてあった。

 

 昨日行ったスクールアイドルショップにあったものと同じ、小泉花陽のぬいぐるみだった。

 ただ、一点を除いて、だが。

 

「サイン、入り。。」

 

 

 そう。二つのぬいぐるみは、花陽のサイン入りだった。

 言わずもがな、直筆である。

 

『一つは、ルビィちゃんへのプレゼントです!』

『ダイヤちゃん、私も推してくれると嬉しいな!そして、()()()()()()()()()()!』

 

 近くの紙片に、そう記してあった。

 

「もちろんですわ。。当たり前、でしょう?」

 

 

 土産は、それだけではなかった。

 

「これは、お米、ですわよね?」

 

 

 新潟県産の超有名なお米、5kgであった。

 おそらく、花陽の大量の荷物の中にあったのだろう。

 

『お米を食べて、健康的な生活を!

 ――もっと成長するためにも、ね!笑』

『あと、私はこれから、新種のお米の研究をすることに決めました!

 いつか、ダイヤちゃんの元にも届けられるように、"頑張ルビィ"するね!待っててね!』

 

 

「成長?よ、余計なお世話ですわ!まったく、花陽さんは。。

 "頑張ルビィ"、ですか。久しぶりに、聞きましたわ。。

 やはり、ご存知、なのですね。流石、ですわ。。」

 

 

 これがダイヤが最後にはっきりと口にできた言葉であった。

 

 

 

「ううっ、は、はなよ、ざん。。なにもいわずに、でていぐなんで。。

 まったく、、れいしらずな、おがたですわ。。」

 

 

 そして、彼女は泣いた。枯れるほどに、泣いた。

 

 自分の想いが、きっと花陽に届くと信じて。

 




まずは、読了、ありがとうございました。

上手く描けていたでしょうか?
読者さん方の満足のいく出来になっていれば、幸いです。

大人になった二人を描く上で、一番悩んだのが二人の口調でした。
結果的に、このような形になりました。

また、花陽をけっこう明るい系のキャラにしましたが。
こうしないと、物語があまり進む気がしなかったもので。。
気にくわなかった方には、申し訳ない限りです。


と、いうことで。
今回この短編を読んでくださり、誠に、誠に、ありがとうございました!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。