彼等が醜悪極まるが故に。
我等は彼等を信仰する。
彼等が狩人であるが故に。
故に我等は、彼等をこう呼んだ。
軍曹、と。
大晦日に酔った勢いでメイン小説仕上げようとしたらなんか出来てた。
残業カーニバルから解放されて年末に深酒したらそのう、ラリったとしか・・・。
ーー私は
ーー私は
ーー私は
ーー私は
奴等の首をへし折る、その
何時か、若い私は上官に聞いた。
「軍曹、何故我々は
すると上官は、若い私にこう言った。
「生きるためさ」 と。
けれど私は、もう一度訪ねた。
「しかし軍曹、何故
もっと大きな彼奴等を、その前に仕留めたではありませんか」
私の目の前には、上官が仕留めた
私や上官の糧とするには、たった一つで十分だったのに。
私が上官を見上げると、いつも無表情な上官は静かに笑った。
「其処に奴等が居るからさ。上等兵」
彼女の凄惨な笑みに感じた恐怖は、今でも覚えている。
忘れる事などない。
けれど、ソレが正しい事に気が付いたのは、たったの一週間後の事だった。
一つ昇進した私は、一体の ″奴等″ を見つけた。
私よりも体格のいい、がっしりとした奴だったのを覚えている。
まだヒヨッコだった私には、ギリギリ手に余る奴だった。
けれど上官は、物陰から様子を伺い、尻込みしている私へこう言った。
「何をしている?」と。
「奴は此方に気付いていない、そしてこの距離ならば逃げられようものかよ」
「けれど軍曹、手前には及びません」
腰が引けていた私は、怯えた顔をしながら上官へとそう言った。
「行け。仕留め方は教えた筈だ」
だが、上官は有無を許さなかった。
上官の命令は、絶対。
逆らえば、死罪は免れない。
木っ端な ″奴等″ ばかりを相手にしていた私が、自分よりも大柄な ″奴等″ を虐殺していた上官に敵う筈もない。
抵抗すら出来ずに殺されるよりはマシだと、自棄になった私は物陰から飛び出した。
そのまま、全力で駆けた私は、私に気付いていない奴の背へと我武者羅に飛び付いた。
突然の奇襲に、奴は悲鳴を上げて滅茶苦茶に暴れ始めた。
私は奴の背に何度も何度も己の牙を突き立てたが、固い装甲に覆われた ″奴″ には、到底歯が立たない。
そしてついに私は、奴に振りほどかれ、吹っ飛ばされてしまった。
私よりも大きな、がっしりとした奴だったのだ。
こうなる事は、最初から分かりきっていた。
私を振りほどいた後の奴は見かけによらず素早かった。
少し前の私の全力疾走に近い疾さで、奴は脱兎の如く逃げ出した。
私は迷わず追撃した。
逃せば、確実に上官に殺されるのだ。
兄弟姉妹の中でも格別に臆病だった私は、恐怖心から捨て身で奴に追い縋った。
「
私のために死ね! 死ね死ね死ねぇッッ!!!」
喚き散らしながらその背に食らい付き、吹き飛ばされて、また食らい付いて。
狂気に近い追撃戦の果てに、完全に奴を組伏せた頃、私はようやっと正気を取り戻した。
奴を見下ろすと、いつの間にもぎ取っていたのやら四肢が一本しか残っていない。
最早逃げる事もできない奴は、息も絶え絶えに命乞いをしていた。
愚かしい事だ。弱肉強食のこの世界において、たった一本の四肢で何ができる?
いずれ、何者かに殺されるだけだ。
私は奴の命乞いを無視し、その首へ食らい付いた。
奴の断末魔の呻き。匂い立つ体液のえずくような香り。
そして、手強かった獲物の息の根を止める達成感。
嗚呼、やった。
仕留めた、私がやったんだ。
こんなに大きな ″奴等″ を、自分一人で仕留めたんだ。
私はやったんだ!
命令を遂行し、逃れられぬ死から逃れてみせた安堵感よりも、私の脳内はやり遂げた高揚感に支配されていた。
私は、恍惚とした表情を浮かべながら、奴の首をへし折った。
すると、どうだろう。
へし折られた首から、堪らぬ匂いを放つ体液がより、ドロドロと流れ出す。
木っ端な ″奴等″ などとは比べ物にならぬ程に、甘く、甘く、甘く。
脳髄が蕩けて無くなってしまいそうな程に、甘い。
なんて、心地の良い甘さだ。
快感・・・いや、絶頂と言ってしまっても良い。
かつて、私の母が私を孕んだ時・・・私の父と性行に及んだ時とて、これほどの快感は味わわなかったろう。
雄も知らぬ小娘の私だったが、なんとなくそう思えてしまう。
其れほどの甘さに、私は身を震わせて悦んでいた。
そうやって夢中で体液を啜っていた私は、ふと前方から響いた悲痛な声に気付き、そちらに目を向ける。
すると、別の ″奴″ が絶望した顔をしながら此方を見ているではないか。
コイツほどではないが、奴も大きい。
奴は、悪態をついてから一目散に逃げ出した。
その背を見ていると、急激に骸から啜っていた体液の甘さが失せていった。
ただの食事だ。脳が蕩ける、至福の時ではない。
一度そう感じてしまうと、今食らっている苦労して仕留めた獲物に、何の興味も沸かなくなってしまう。
むしろ今の関心は、目の前の大きな ″奴″ の背中・・・というより、首へと向いていた。
コイツの血はもうダメだ。
だが、奴の血はどうだろう?
甘いのだろうか。
私は、血の滴ったままの口を醜く歪めた。
語るに及ばず。啜うてみれば、自ずと分かる。
「
最初の ″奴″ を仕留める時よりも遥かに強い殺気を込めてソイツは追い殺した。
奴の血も、堪らない程に甘かった。
今度は四肢ももがずに、綺麗な骸と化した獲物を啜っていると、上官が私の側へとやってきた。
「二度目は上手くやったな」
いつもの無表情で、上官は私へとそう言った。
「問おう。何故一匹目を放置して、ソイツを殺した?」
何時か私が訪ねたように、上官は私へと問うた。
心なしか、彼女の
私は、かつて私が訪ねてしまった事を恥じた。
一体全体私は、何を分かりきった事を訪ねたのだろう。
ただ上官に恐怖する事しか出来なかった私の、なんと幼かった事だろう。
私は、かつて上官がしたように、静かに笑った。
「其処に
私はしばらくして、上官の指揮下から離れた。
ゴキブリ共を狩り続け、昇進を重ねた私は、上官と同じ
上官は今、何をしておられるだろうか。
変わらず、より大きな獲物を求めてさ迷っておられるのだろうか。
例えば・・・あの黒い毛皮に覆われた
私もいずれ狩れるだろうか?
アレからはどんな甘い血が啜れるのだろうか?
・・・いや、今は止そう。
今は、目の前を走る獲物だけ見ていればいい。
久々の大物だ。あまりに暴れるものだから、初手で仕留め損ねてしまった。
逃げる奴の首から、あの甘い血が零れている。
「堪らぬ血で誘うものだ・・・」
甘ったるくて、えずいてしまいそうな香り。
「ハッ、ハハハッ」
嗚呼、早く、早く、味わいたい。
待ち遠しくて、狂ってしまいそうだ。
貴様をくびり殺す、その刻が。
「ハハハハハハッ・・・!」
私は