山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 原作は終わってしまいましたが、NARUTOの二次創作を盛り上げて行きたくて、書いてみました!!
 


そいつの名は半蔵

 

吾輩は半蔵である。名前も半蔵である。

代々、大陸中央の雨に恵まれた肥沃な地に根差す魚雨《うおさめ》一族の跡取り(予定)であり、里の長としてふさわしい忍となるため絶賛修行中である。

 

 本来、忍を束ねる者は忍術、体術、武器の扱いに至るまで正当派な流派を修め、皆の手本となるものだが、生来、言われるがまま生きるのを嫌悪する俺はあえて外道の流派を進んで学んでいる。好きな武器を選べと言われれば、刀やクナイなどのイケメン武器(私は個人的にこう呼ぶ)には目もくれず即行で鎖鎌を選んだ。これには父も困惑の色を隠せずイケメン武器を勧めてきたが、私は一言

 

「忍として皆の上に立つのに必要なのは流儀や血筋などでは無く強さだ、使う武器や忍術にふさわしいなどは無く、強くあるということが重要なのだ」

 

と言った。完全に決まった!と思った。

 案の定、父はいたく感激した様子で鎖鎌の扱いを教授してくれた。

 

 またある日は、代々一族が受ける儀式として里の外れにある猛毒の山椒魚達の住む湿地帯へ行き、毒袋を体内に移植するという洗礼も喜んで受けた。というのもこの儀式は、毒袋を移植することによってあらゆる毒に対する免疫を得るためのものなのだが、先々代の当主になるはずだった男がこの儀式によって中毒となって死亡しており、その存続が疑問視されているのだ。しかし、セオリーにあえて反していくのが我が忍道(忍道って言いたかっただけ)

 

 儀式は俺の天の邪鬼に見事に応え、毒の効かぬ体を手に入れた。その上うまく体に適合した、否、し過ぎたせいで吐く息すべてに毒素が混じるようになってしまった。このままでは日常生活を送ることもままならないため、ガスマスクのような物を常に装着することとなった。

でも結構キャラが立って来たので実は満足していたりする。

 

 後、帰り道で小さな山椒魚の子供を見つけた。まさかとは思うが儀式のために私達が腹を裂いた山椒魚の子供だろうか。父は無視して里へ帰ろうとしたが、俺は放っておけず責任を持って育てることにした。というかめっちゃ可愛くて育てたかった。

 

 名前はどうしよう……俺が好きな作家忍者の作品に山椒魚の話があったな、それでは名前を頂戴して[イブセ]にしよう、そうしよう。私はイブセを肩に乗せ(可愛い)すっかり暗くなった湿地帯を抜けていった。途中、雨が降ってきて水を浴びたイブセは嬉しそうにしていた(可愛い)。

 

 世は戦乱の真っ只中でありながら俺は、本来ならあり得ぬ程大切に育てられている。やはり、禄に実力も身に付いていないまま戦場に出して次期当主に死なれてはたまらないという事なのだろう。俺はその期待に応えるべく、性質変化の修行を開始した。

 

 まずは、最近開発されたチャクラ感応紙を使い、自らの性質を調べてみると何と紙がドス黒い色となって溶けた。父が困った顔をして、溶けて地面に垂れた液体を突っつくと、触れた瞬間痙攣してぶっ倒れた。

 戦時中に経験豊富な当主を死なせてはならぬと里が総力を挙げて治療に当たり、なんとか一命を取り留めた。何となく、というか間違い無くこれは毒の性質変化だろう。

 父によると、元々俺が持っていた性質変化に体内の毒袋が影響を与え、毒の性質変化となったのだ。とのことで私は毒と非常に馴染む体だったので、偶然生まれた性質なのだろう。

俺はこれを[死遁]と名付け、使いこなすべく修行をするのであった。

 

 尚、最近でかくなってきたイブセは床の猛毒をおいしそうに舐めていたので、一生の相棒に巡り会えたと改めて感じる今日この頃である。(父にはあの後めっちゃ謝った。ホントにめっちゃ謝った)

 

 

  ―――1年後―――

 

 鎖鎌も死遁もかなり使いこなす事ができるようになった私はついに父から一人前と認められ、戦場へ出陣する事となった。

 場所は長年の宿敵同士でもある一族、七草一族との主戦場である。俺は半年前、口寄せ契約を結んだくそでかい(でもやっぱ可愛い)イブセに乗って戦場へ向かった。

 

 

 

 

 視点――魚雨一族三代目当主 魚雨 十蔵――

 

 我が子は奇妙な男であった。

 

 

[魚雨一族]侍の時代より続く名門。

 

 千手やうちはにはとうてい及ばないものの、近隣ではそれなりに知られる名前である。

 儂は魚雨一族の三代目当主として、長年の宿敵、七草一族と血で血を洗う戦いを続けて来た。何時死んでもおかしくは無い戦いの連続、しかし、儂はそれでも幸せであった。

 

 先祖代々受け継いで来た美しい大地、守るべき一族とこの地の農民達、毎年実る多くの作物の旨さは大陸中を探しても二つと無いだろう。

 (千手やうちはの地も非常に質の良い作物が穫れるが、生まれ育った場所は良く感じてしまうものである)

 

 更に極め付きは今年の春生まれて来た息子だ。このまますくすくと元気に過ごし、一族の名に恥じぬ男となって欲しい。

 

 

 半月が、やけに明るい、夜に生まれた

 

  [半蔵]

 

 

 元気に育って欲しいと言っていたが、息子は非常に物静かな少年であった。かといって体が弱い訳では無く、忍の才能も親の贔屓目を抜きにしても儂を遥かに超えている。

 

 しかし、選んだ武器は鎖鎌などという邪道、ここは一つ当主として叱ってやろうとしたが……。 

 

 ふふっ、当主としての心構えなど教えるまでも無いようだ。なんと儂には過ぎた子よ。

 

 

 そんな儂でも、一族の儀式を受けることには反対した。長年続いて来たとは言え、既に前時代的な悪習の類、儂は自分の代で終わらせようとさえ思っていた。

 

 しかし、息子の希望は強く、渋々ながら儀式を行うこととした。息子は「きゃらを立たせる」とか良く分からない事を言っていたが、ともかく意思は固い様なので儀式を慎重に終わらせた。

 

 それが原因で、まさか儂があんな目に遭うとは……。

 

 迂闊だった。息子に現れた新たな血継限界に好奇心を抑え切れず、黒い液体に触れてしまった。 

 いや、恐らく毒であろうとは予想してはいたが、肌にかすかにつくだけで昏倒する程の毒など、生まれてこの方五十年聞いた事が無い。目の前が暗くなって行くと共に「人間五十年」何処かで聞いた言葉が聞こえた様な気がした――

 

 

 

 生きてた。一族や土地に暮らす者達の尽力により、どうにか生き永らえたらしい。この後、息子が寝床に来た。

 

 「本当にすんませんっした!!」

 「いや、もう良いって」

 「本っ当にすんませんっした!!!」

 

 無口な息子の見たことも無い姿であった。

 

 それから時は過ぎて―――

 

 息子は一人前と呼べる腕になった。認めたくは無いが、既に実力は儂を超えているだろう。何より恐ろしいのは、忍の歴史上右に出る者はない程の殺傷力を誇る息子独自の忍術、[死遁]。

 

 初陣が終われば、家督を譲ろうと考えている。息子ならば七草一族とこれからも互角に戦って行けるだろう。いや、あるいはその程度で収まる器では無いかもしれん、何にせよ楽しみだ。

 

 

 


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