山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 ちょっと先まで書き溜めてあるのですが、展開が無理矢理になって来ています。あまり期待せずお待ち下さい。


金は天下の回りもの、部下も天下の回り物

 視点 ――魚雨 半蔵――

 

 ラーメンの旨さにも驚いたが、何よりあの男が千手 柱間殿だったとは…。うちは マダラ殿にも意図せず会えたし、木の葉滞在は割と運が良かった様だ。

 

 帰り際に門の前まで扉間と柱間殿が見送りに来てくれた。同盟国の長である俺に気を遣う様子も見せず、一人の友人として扱ってくれるのは、正直嬉しかった。国同士の関係と言えども、最終的には私情が、個人的な人間関係が重要なものだ。

 

 俺はお互いの国の更なる発展を願いつつ、木の葉隠れの里を発った。

 

 

 

 視点 ――秋風 モミジ――

 

 木の葉かぁ、ええとこやったなぁ。こんだけでかい国の忍里なんや、これから益々ええとこになっていくやろな。ウチらの雨の国と雨隠れの里も負けてられんな!!

 

 ヒルゼンとダンゾウも喧嘩してばっかやけど、賑やかでええ奴らや。これから木の葉を背負う者として、二人揃ってまさに光に当たる木の葉みたいな存在になっていってくれたらええなぁ。

 

 んじゃ、帰ろか。

 

 

 

 視点 ――魚雨 伊蔵――

 

 巨大な火の国の、強力な忍里。ここと同盟を結べたのはまさに福音じゃ。柱間殿も噂に違わぬお人であった。

 

 そして、何より旨いラーメンに出会えたしな!!また会おう、木の葉!!

 出発じゃ!!

 

 

 ――しばらくして――

 

 俺達が国へ帰った後はとにかく忙しくなった。いくら木の葉との同盟があっても、雨の国自身が強いに越した事は無い。勝てなくとも、手を出したら無傷では済まないと言うのが大事なのだ。

 

 俺は親父と協力して忍者アカデミーを創設する事にした。木の葉で扉間に語った様に、忍び刀の扱いを覚えるのを全員の義務とし、更に別の武器を実戦に使うのには、十分な実力を身に付けた事を示す段位が必要な様にした。(半蔵の影響で鎖鎌も人気が上がって来ている)

 

 忍術については分身に変化など基本的な物はもちろん、人それぞれの性質に合わせて、各性質変化の中でこれといった対策の無い扱い易い術をリストにまとめて、最低限それらの習得を推奨した。(リストの中には半蔵が使えない術もあったので、こっそり練習したのはヒミツだ!!)

 

 これにより、雨隠れは大国からしても侮れ無い戦力を持つ様になり、更にその戦力を安定して持てるシステムが完成した。忍里への依頼も増えて来ている。

 

 がらり、と執務室の戸が開く音がして一人の男が入って来た。 

 

 「おい半蔵、商人が増えて税収も順調に上がっているぞ。インフラ整備の効果が出て来たな」

 「おお、それは良かった。角都さんが色々手を尽くしてくれたおかげだな」

 

 半蔵に負けず劣らず怪しいこの男は角都と言い、金にうるさいので様々な里で疎まれ、たらい回しにされていた所をスカウトした。雨の国には経済に明るい人間が少ないため、本当に頼りになる。(あまりに頼りになるのでさん付けしなくてはならない暗黙の了解がある)

 

 文官畑の人間かと思いきや、めちゃくちゃ武闘派で他人の心臓を奪うその秘伝忍術は賛否両論だが、別に敵や死刑囚から奪うのだったら俺としては別に何とも思っていない。そもそも相手の体をグズグズにする俺の死遁の方がまずい気がする。

 

 「角都さん、忙しいだろうけど頑張ってな」

 「よせ、気持ち悪い。お前こそ忙しいだろう」

 「いやいや角都さんこそ」

 「お前こそ」

 

 悪人面仲間であり、悪人技仲間でもあるので結構気が合う二人なのであった。

 

 

 

 火の国への道中で仕入れた産物は、雨の国でも順調に収穫する事ができる様になって来た。最近ではこういった物を手に入れる為に土や風や滝、果ては雷まで様々な国の商人が雨の国を訪れていた。特に風の国は砂漠ばかりなので多くの取引をしており、できるだけ良い関係を保つため、安く作物や薬草を売っている。滝とは元々小国同士なので仲が良かったが、風の国とは割と良い関係を築けるかも知れない。木の葉とは同盟関係なので、ここに来て仮想敵国は土と雷と水の国という状態になって来た。

 

 当然、風の国がまだ豊かな地を諦め切れず、我が国に攻め込んで来る可能性も無くは無いがな。

 

 何だかんだでどこの国も、今のところ平和を求めている様だ。まあ、数十年も戦乱が続いたんだ、当然と言えば当然か。

 

 と思っていたらさっそく、大荒れの予感を感じる一報が届いた。千手 柱間殿とうちは マダラ殿が仲違いし、マダラ殿が里を抜けてしまったらしい。柱間殿とマダラ殿、二人の最強の忍によって忍界は今の安定があったのだ。何か起きるな……、どこが最初だろうか。

 

 

 

 おまけ ――角都の憂鬱――

 

 雨の国の雨隠れの里、それがオレの今の居場所だ。ここに辿り着くまで、金の重要性が分かっていない馬鹿共に散々、邪険にされて来た。忍里など、稼げなくてはひたすら国にとっての金食い虫になるしか無いと言うのに。

 

 オレはかつて諸国を旅していた。これから力の時代が終わり、金の時代が訪れるとオレは確信していた。しかし、今まで戦いしかして来なかった人々にとって、そんな事は思いもしなかった様だ。

 

 誰にも理解されぬ旅の途中で、ある事に気付いた。大陸中の金の流れが一点に向かっていると言う事だ。商人達が言う所によると、皆揃って雨の国に向かっているらしい。これは面白い、雨の国など今まで注目して来なかったが…。

 

 雨の国に向かってみると道が完全に整備されており、忍で無くとも容易く通行できる様になっていた。雨の長である魚雨 半蔵の指示で積極的に商業を推奨しているらしい。事実、大量の荷物を持った様々な国の人間が雨の国を目指している様だった。

 

 魚雨 半蔵、噂に聞いた事がある。大陸中央の敵対する一族を滅ぼし、雨の国を作り上げた新進気鋭の忍、彼ならばオレの事も…。  

 

 

 

 大当たりであった。彼は国を運営するに当たって、まさにオレの様な人材を必要としていた様だ。オレはスカウトを受けてから、あっという間に経済部門の責任者を任せられ、素性も知れないオレに信頼を置いてくれている。また、オレの異端な秘伝忍術についても理解を示してくれる。彼自身、異端と言える死遁なる忍術を使うので大して気にしていない様だ。

 

 半蔵は三つの大国に挟まれた雨の国を豊かな国にしたいと言っていた。オレはできるだけ力になってやろうと思っている。誰よりオレの考えを分かってくれた唯一の友と言える存在だからな。

 

 さん付けは正直やめてもらいたいが…。あいつが言うせいで里中で言われる様になって来ちまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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