山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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終わりは意外とあっけないもので

 

 「今、戻ったぞ」

 

 岩隠れの部隊を壊滅させた俺は、里へ戻り国境の防衛線を張り直す様に指示を出す。無傷で帰って来た俺に、部下達は驚いていたが一段と俺に対する信頼を深めてくれた様だ。

 

 角都さんと共に執務室に戻ると、モミジ達がこちらへ駆け寄って来る。

 

 「半蔵サマ、無事やったんか!!心配してたんやで!!」

 「若!!よくぞご無事で!!」

 「心配を掛けたな、とりあえず岩隠れの先遣隊は全滅させて来たぞ」

 

 涙目の二人をよそに、壁にもたれ掛かる親父は、何の心配もしていなかったかの様に笑みを浮かべている。何だかんだ言って、俺に期待してくれているんだな……。

 

 「本当に大変だったぞ、一人で突っ込みやがって…。まあ、オレも大技に巻き込まれたから解毒薬が無ければ、心臓を二つか三つ潰されていた所だったがな。毒で汚れた土壌を洗浄する金も馬鹿にならん……」

 

 角都さんにも迷惑を掛けた様だ。あんな術を実際に使ったのは初めてだから、力加減が分からん……。

 

 

 

 話が終わり少ししたら、親父が木の葉の額当てをした男を連れて来た。

 

 「半蔵、お前が居ない間に来た火の国からの使者だ。火影殿より伝言があるらしい」

 「火影様より半蔵様へ伝言を預かっております」

 

 「やっとか、木の葉から雨へ増援が無いのは、それなりの理由があるんだろうな?」

 

 俺が少しの怒気を含めて尋ねると、使者は顔を真っ青にしながら口を開く。

 

 「はい…、火の国の大名様が、自分を守る戦力を減らしてまで他国を救援する事を渋られまして……、火の国はあくまで大名様の元にできた国なのです。火影様も扉間様も怒っておられますが、軍事力が政権に逆らうなど火影様は望んでおられません。雨の国を見捨てる様な形になってしまい、本当に申し訳ありませんでした」

 

 なるほど、雨の国は大名制では無いから、そんな理由を思い付きもしなかった。しかし俺個人としてはともかく、雨の国の民達はもう取り返しがつかない程、怒っている。同盟もここまでだろうな……。

 

 理由が何であれ、結果としては小国が大国に見捨てられたというだけなのだ……。まさか、一度も共に戦う事が叶わないとは……。

 

 「分かった、もう帰っていい。魚雨 半蔵個人としては納得できると伝えて置いてくれ…」

 「それは、雨の国としては駄目だと?同盟は終わりですか?」

 「わざわざ言わすな、扉間なら分かってくれるだろう」

 

 また新たな同盟相手を探さ無くてはな……。

 

 

 

 第一次忍界大戦は各戦線で膠着状態に陥っていた。雨、風、土は三すくみとなり、決定的な攻勢に出る事が出来ず、火・滝同盟(同盟と言っても別々に同じ敵と戦っているだけだが)と雷の戦う戦線では、雷の国の奮戦により、柱間殿の圧倒的な力を以てしてもなかなか突破出来ずにいる。火の国が水との戦いに戦力を分散させられているのも原因となっていた。

 

 各国でひたすら疲れと不満だけが溜まっていき、内戦の危険性も出てきた頃事件は起こる。姿を消していたマダラ殿が、九尾の狐と共に木の葉隠れの里を襲撃したのだ。柱間殿との激闘の結果、勝者は柱間殿だった。

 

 火の国の内乱を絶好の機会と捉えた雷の国と水の国は、大攻勢を仕掛けようとするが、ここまで疲弊し切ってなお、戦火を広げようとする指導部に反対して、こちらでも内乱が勃発。

 

 三カ国の惨状を見た雨、風、土は明日は我が身と言うように、あっと言う間に停戦に合意した。忍界初の大戦争は多くの火種を残したまま、自然に収束して行く事となった。

 

 

 

 「木材も鋼材も増産だ!!戦後の復興需要に乗るぞ!!」

 

 指導者の仕事は当然、戦争が終われば何も無くなる訳では無い。雨の国は本国をほとんど脅かされていないため、戦後に他国へ売れる物が大量にある。稼げる時に稼いで置かなくてはな。何だか思考回路が角都さんに似てきてしまったな……。

 

 雷の国と水の国の内乱にも、勝ちそうな方の勢力に支援して恩を売って置く事にする。いずれ各国が集まり、戦後の話し合いが行われるだろう。その時に、火の国に代わる新たな同盟相手として、その二大国が同盟を結んでくれたら幸いだ。事実、内乱が思った以上に早く終結しそうなので、感謝の手紙が送られて来ている。

 

 次の大戦では火の国と事を構える状況になるかも知れない。まったく、せっかく木の葉まで行ったというのに、結果的に無駄足になるとはな……。

 

 今回の戦争の戦利品と言えば、雨の国に手を出せば大国であろうとも、無傷では済まないというのを各国に示せた事だ。確かな力を持つ国として、今後の各国との交渉でもあまり舐められる事が無くなって行けば良いと思う。

 

 もう既に成果が出ていて、西の隣国である匠の国が庇護を求めて併合を申し出て来た。もちろん快く引き受ける。匠の国としては風や土に完全な属国扱いをされるより、同じ小国である雨の国に併合を頼んだ方がマシだと言う事なのだろう。これも弱小国の悲しみか……。

 

 更に直接的な戦果として、風の国との戦争で、敵の新兵器である傀儡をいくつか鹵獲する事が出来た。今、部下達に命じて研究させている。というか、個人的に格好いいと思うのだ。俺はヌメヌメな生き物とメカが好きな様だ。休日にはイブセと遊ぶ他に、傀儡をいじるという趣味が出来た。金の掛かる趣味だが、里のトップなだけあって俺は金持ってんだぞ、ホント。

 

 いずれ我が国でも、傀儡が広まって行ったら良いな。そうしたら、俺の趣味に文句を言う奴も居なくなるだろう……。

 

 

 

 

 

 

 ――おまけ 傀儡作り日和――

 

 

 ふっふっふ、ついに第一号が完成したぜ。

 

 俺は壁に架けられたそれを見て、大きな達成感を感じていた。思えばここまで長かった、何せ完全な素人だった上に、雨隠れに傀儡のノウハウを持っている者なんて居ないからな…。戦争の戦利品である砂隠れの傀儡を、見よう見真似で作って行くしか無かったのだ。

 

 だが好きこそ物の上手なれ、傀儡いじりが楽しく、何度も挑戦しては失敗している内に、苦労の甲斐あって、自分なりのオリジナリティを加えた傀儡を作れるまでになったのだ。里長を引退しても傀儡職人として食って行けるかも知れない。ていうか引退したい、忙し過ぎる。

 

 第一号はその名も[太鼓腹]という傀儡だ。俺の作る傀儡の傾向としては、人間に近づけるのを目的とせず、より機械機械とした武骨な傀儡を好んでいる。

 

 太鼓腹はその名の通り大きな腹を持っており、その腹の中に様々な武装を搭載した戦闘用傀儡だ。くないや千本を飛ばす機構を作るのには苦労した。六本の腕からそれぞれ腹の中に収納した武装をばらばらに出し、人間では有り得ない戦い方をする事が出来る。

 

 体重を支えるため、足も四本という重量級傀儡になった。

 

 デザインも動物などをモチーフとせず、角張っていて、まさに機械といった外見だ。俺に取っては格好いいと感じるが、常人に取っては戦場でこれが近づいて来たらかなりの恐怖だろう。

 

 見れば見る程良いな……、よし、玄関に飾っておこう。

 

 

 

 第二号、降臨!!

 

 その名も[雨蜘蛛]。

 

 太鼓腹の動きが遅すぎた為、雨蜘蛛は機動力を重視している。今回のモチーフは勿論、蜘蛛だが、顔を人間風にして不気味なデザインにしてある。八本の強靭な足回りで、凄まじい速度で大地を駆ける事が出来る。

 

 極細のワイヤーを使った仕込み武器が特徴で、更に背中に乗って移動するのにも使える。お買い物にも便利である。

 

 試しに夜中、里の中を駆け回らせていたら誰かに目撃されていた様で、その余りに不気味な姿から、翌朝には里中の噂になってしまった。都市伝説、蜘蛛男の誕生である。

 

 格好いいな……、よし、玄関にry

 

 里長の居城が傀儡倉庫と揶揄される様になるのは、随分と先の話。しかし確かにその一歩を踏み出す今日この頃であった。

 

 

 

 

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