山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 書き溜め分に追い付きつつある……!!
 何とかこのままのペースで頑張りたいです。


五影会談!!(七人)

 

 どうしてこうなった。

 

 五影会談、いや、正式には滝の長と俺が加わって七人居るのだが、やはり巨大な力を持つのは火、風、土、雷、水の五大国である事から便宜上、五影会談という名称になっていた。

 

 この度、忍界の安定を目指して初の五影会談が開かれる事となった。これにていよいよ真の平和が訪れる、と誰もがお祝いムードになっている中、俺はと言うと気が気でなかった。

 

 何と、柱間殿が会談の場所に雨の国、雨隠れの里を指定して来たのだ。手紙が届いた時、俺はびっくらこいてすぐに断りの返事を入れようと思った。そんな重大なイベントが我が里で起こるとなったら、何かと大変な事になるに決まっている。何たって、今回は八匹の尾獣を配分するための場でもあるのだ。

 

 柱間殿は先日のマダラ殿との戦いで、古来より天災と呼ばれて来た九尾の狐を捕獲したのをきっかけに、砂隠れの保有する一尾以外の尾獣も、その木遁の力で全て手元に置く事に成功した様だ。しかし柱間殿は尾獣を木の葉で独占するのを良しとせず、有力な各国に配分する様だ。(扉間は反対したんだろうな…)

 

 五大国は当然として、滝の国と我が国にも、尾獣を与える事を検討してくれているらしい。

 

 しばらくして、扉間殿の手紙が少し遅れる様にして届いた。

 

 「拝啓 木の葉にも美しい色がつき始めたこの頃、半蔵殿はいかがお過ごしでしょうか。

 半蔵、久しぶりだな。先の大戦では本当に済まなかった。雨の国を五影会談の会場としたいといった旨の手紙、お前の事だ、断りの返事をしようと思っている事だろう。しかし、落ち着いて考えてくれ五大国のどこかで開催するとなったら当然、敵の懐に潜り込んで行く事なので各国が了承しない。となると残りは滝と雨になる訳だが、兄者が雨の国に行きたいと言って聞かないのだ。半蔵が火の国まで来たのだから、今度は自分が半蔵の国へ行きたいと言っている。雨の国を見てみたいのはオレも同じだし、尾獣の護送は木の葉が責任を持って行うので、大変だとは思うがどうか受けて欲しい。

  追伸 最近、穢土転生って術を作った。こんなに素晴らしい術は無いぞ、自爆用の起爆札も絶賛開発中だ。里の忍達はドン引きしているが何故だろうか?敬具」

 

 旅行気分で来るとか無茶苦茶だが、我が国を見てみたいと言ってくれるのは嬉しい事だ。良し、この際盛大に我が国を他国へ見せ付けてやろう。五影会談in雨隠れ、開催だ!!

 

 

 

 俺は五影会談を祭りの様に宣伝して、里中を歓迎モードに変えていった。そしてあわよくば祭りによる特需景気を狙う(これは角都さんの言葉の受け売りだが)。

 

 「モミジ、伊蔵、お前達はアカデミーの仕事は全部、親父に任せて警備体制を整えてくれ」

 「了解!!けど先代サマ大丈夫なん?」

 「本当に全部任せますぞ?」

 

 「構わん、やれ」

 「鬼や、鬼がおる」

 

 「若!!ご立派になられましたな!!」

 「「時間差!?」」

 

 

 

 「角都さん、祭りの準備は進んでいるか?」

 「余裕だ、後は里の住民達次第だな」

 「さすがだな」

 

 「所で半蔵、他国の忍達が来ると思うがめぼしい心臓を獲って来ていいか?」

 「止めてくれ角都、それは里の信用に効く、止めてくれ」

 「ならせめて、他国の忍からボッタクろう」

 「やめろめろめろ角都めろ!!」

 

 

 

 モミジ達に仕事を任せて、オレは各国とのやり取りを繰り返していた。自国で開催したいと言って渋る者達も多い中、火影殿の希望だ、と言って無理矢理黙らせる。火の国とやり合う事など誰も望んでいないのだ。各国は快く?納得してくれた。会談はやはり、柱間殿の匙加減次第でどうとでもなりそうだ。滝と我が国にも尾獣を一匹づつ買わせてくれるみたいだし、会談とは名ばかりだな。

 

 そんなこんなで会談の準備は着々と進んで行った。五影達と滝の長も準備万端といった所だろう。しかし、尾獣を護送しなくてはならないため、他国に先んじて木の葉の一行が我が国に来る事になった。交渉の内容について直接顔を合わせて相談できるため、俺としても願ったり叶ったりだ。

 

 そして、雨の国の国民達が火の国に怒っているので、同盟を続けるのが難しい事もしっかり伝えなくてはな……。

 

 

 

 視点 ――千手 扉間――

 

 火の国は雨の国に負けず劣らず、大忙しであった。

 

 何たって前代未聞の[天災]の護送。兄者の木遁があるとは言え危険なのは間違いない。まさか、旅行するためだけにこんな事になるとは。万が一何かあってはならないため、雨の国への護衛には里の半数にも上る忍が随伴する事となった。

 

 「ガッハッハ!!賑やかで良いな!!」

 「賑やかどころでは無いぞ、兄者。この一行だけで国すら落とせるだろう」

 

 「まあ、大所帯にはなったが、より多くの忍達が他国に行く経験ができるのだ!!良しとしようでは無いか!!」

 「まあ、雨の国に行くのはオレも賛成したしな」

 

 凄まじい戦力の一行の中央には、尾獣達を封印した忍具が保管されている。壺や茶釜など一見、何の変哲も無い物だが非常に希少な物ばかりで全てが国宝級である。中の尾獣付きでこれを巡って交渉するのだ。

 

 「それにしても、尾獣は火の国だけで独占する事も出来たと言うのにな……」

 「扉間、まだ納得しておらんかったのか。オレはタダでやろうと思っていたのに、少しはお前に譲歩したでは無いか」

 「本当に少しだけがな、あんな端金で尾獣を譲る事になるとは」

 

 まったく、兄者は甘い。滝と雨にも一匹ずつ渡せるだけましか、それにコントロールするのは生半可では無いため、実は大して抑止力とは言えないのでは無いかと思っている。

 

 半蔵なら何とかするだろうと思っているが…、我が里ですら御し切れるか分からん代物だ。いつかマダラの様に圧倒的な力で尾獣を屈服させる人柱力が現れるのだろうか、いや、それ以外に尾獣をコントロールする方法など無いのだ。現れてくれねば困る…。

 

 扉間は今後の事に一抹の不安を覚えながら、雨の国へ入っていった。

 

 

 

 雨の国の国境を越えてから、一行は衝撃を受けた。

 

 それまで片田舎の小国だと思っていたが、完全に舗装された街道は行き交う人々で賑わっている。当然、情報としては知っていたがここまでとは思っていなかった。

 

 途中、寄った宿場町で宿屋の主人や商人達に話を聞くと皆、半蔵の事を口々に褒め称える。曰く、街道の整備や関所の廃止など全て半蔵の元で行われた物で、特に最近は次々と大胆な政策を打ち出し(これは角都さんによる物だが一般人は得てしてトップの顔しか覚えていない物である)、雨の国各地が空前の大発展を遂げているらしい。

 

 最近では木の葉と同じく忍者アカデミーが作られ、忍の一族では無い者も一旗挙げようと入学して行く事が多いそうだ。

 

 更に、先の大戦で国土に殆ど手を出させなかった事で、半蔵に対する信頼は完全に極まっている。

 

 

 

 道を順調に進んで行くと、多くの商人達が同じ場所へと向かっているのが分かる。そしてそれは、背の高い建物が乱立しており遠目からでも良く見えた。

 

 雨の国の中心、雨隠れの里である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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