第四次の穢土転組の掛け合いなどを期待していた方は、すみませんでした。
その辺りが作者の技量の限界です。
雨隠れの里は、遥か彼方からでもはっきりと目視できた。なぜなら里の中央に当たる部分に、背の高い建物が、まるで森の木の様に乱立しているのだ。その上、昨夜より天気が悪くなり空が曇っているせいで、それらは得体の知れない雰囲気を放っている。
「ありゃあ、鬼の住処か何かかよ…」
誰かが呟いた。他の者も低い灰色の雲に食らい付くかの様なその建物群に圧倒されていた。扉間までもが同様に驚愕している様だ。唯一、柱間だけが目を輝かせて感嘆の声を挙げた。
「おお!あれが半蔵の里か!!まっこと凄まじい物よのう!!」
そう言って自然、歩くスピードが上がっていく。一行も火影だけを先に行かせる訳にもいかないので、少し早足で巨大なそれらに向かって進んで行った。
道なりに進んで行くと段々と道幅が大きくなって来た、多くの街道が一点に集中しているのだ。様々な道から合流して来る商人達で道はごった返しており、更にその商人達に物を売ろうとする現地の人々で恐ろしいまでの喧騒となっていた。
無論、良い身なりをした木の葉の忍達も例外では無く物を売ろうと人々が集まって来る。
「お客さん忍だろ、なら赤星草買わねーか?良い薬ができるぜ!!」
「雨隠れ特製クナイはどうだ?今なら安くしとくよ」
「長旅の後に甘い物はいかが?」
「お、おう。今は護衛任務中だから後にしてくれ」
何とか断る者もいたにはいたが、人々のあまりの熱気に何人かはつい物を買ってしまった様だ。
一行は人混みに揉まれながら、何とか雨隠れの里の正門に辿り着いた。これからの忍界を左右する五影会談、彼らは覚悟を新たにし巨大な門を抜けていった。
里へ入ると、門の外より賑やかさが一層上で、道の両脇には所々に何かのパイプが張り巡らされた、木の葉とは意匠の違った建物が建ち並んでいる。建物の背もそれほど高く無く、小さな店や住宅などはこの辺りになる。
里の中心に向かう程、門の外から見えた大きな建物が増えていき、それを使っているのは一部の大商人や行政機関などである。
木の葉の一行はここから尾獣護送と半蔵への挨拶に行く者や、あらかじめ指定された宿に向かう者などに分かれた。後者はほぼ自由時間の様な物で、様々な経験をして貰いたい里の若手が多い、彼らは張り切ってそれぞれの行きたい場所へ散らばって行った。
そして、尾獣を護送する者達は柱間と扉間に連れられ、半蔵の待つ里の中心にある五影会談の会場へ向かって行った。
視点 ――魚雨 半蔵――
木の葉の忍達が我が里に到着した様だ。
早速、俺は会談場の建物の前に出て、腕を組み堂々として大物感を出しながら待つ事にした
(親しき仲にも舐められてはいかん)。やがて、尾獣が封印されていると思われる道具を運びながら、こちらに向かって来る一行が見えた。先頭は柱間殿と扉間だな。彼らも俺の姿を認識した様なので声をかける。
「雨隠れにようこそ、里長の魚雨 半蔵だ」
先頭の二人は当然知った仲だが、その後ろの忍達はいきなりの大物(俺だけど)の登場に驚いている。
「知っとるわ、久しぶりだな半蔵」
柱間が答え、扉間以外の忍達に解散の合図をする。
「当然ここからは極秘の話だ、三人だけで話そう、案内してくれ」
「ああ、こっちだ」
オレは二人を中に案内し、そして改めて軽い挨拶を交わすと、本題に入った。
「まず同盟の事なんだが、俺はともかく、里の忍達や国民達の火の国に対する不満が、想像以上に大きい。同盟を破棄しなければ我が国でも内乱が起こってしまうかも知れん……、本当に残念だが、俺は国を預かる者として同盟を破棄させて頂く」
「そうか……、今回ばかりはこちらの落ち度だ。すまなかった……」
「次会う時は敵かも知れないんだ。謝っちゃいかんよ、柱間殿。それで、尾獣をウチにも一匹くれるそうだが各国でどういう配分にしようと考えているんだ?」
「まあ落ち着け半蔵、まずは尾獣について詳しく説明しよう」
扉間は、早く話を進めようとする俺にそう言って、冊子を渡す。中には尾獣がイラスト付きで説明されていた。
「尾獣は一尾から九尾まで居て、それぞれが凄まじい力を持ったチャクラの化け物だ。九尾は他より少し強いが、それ以外の尾獣はほとんど同等の力を持っている」
なるほど、尻尾の数で強さが違う訳では無いのか、これなら思っていたより配分もスムーズに進みそうだな。
「方法は後々話すが、ここだけの話コントロールするのは非常に難しいため、多く尾獣を持っていれば良いという訳では無いと思っている」
「ほう?」
「よって尾獣の配分だが、木の葉は九尾一匹を貰う」
「いくらコントロールが難しいと言っても、木の葉なら二匹が妥当では無いか?」
「半蔵もそう思うか…しかし兄者がな……」
扉間が柱間殿の方に目配せする。細かい説明を扉間に任せていた柱間殿が口を開いた。
「それではいかん、火の国はただでさえ広大で豊かな領土を持っているのだ。その上に尾獣まで複数保有すれば、平和が力でねじ伏せる偽りの平和となってしまう。オレはそんな事を望んで尾獣を集めたのでは無い」
「あんた本当に良い人だな」
俺は柱間殿の良い人具合に感動しながらも、最強の九尾を持つという部分は扉間に譲歩した結果なのだろうなと感じていた。扉間が続きを話す。
「二匹の尾獣を与える国は土と雷にしようと思っている。風と水はこう言っては何だが、少し他の五大国と比べれば国力が劣るからな。一匹で納得して貰うしか無い」
「ウチと滝も一匹貰って良いのか?」
「ああ、雨も滝も先の大戦で大国相手に十分に力を示した。表立って反対出来ないだろう」
話が纏まった所で、俺はそれぞれの尾獣達のイラストに目を移す。
……、六尾が欲しい。何だこの俺のツボに来る感じは、その、何だ…可愛い……。イブセと同じエッセンスを感じる、ヌメヌメしてるし…。六尾欲しい…六尾欲しい……。
俺がスイーツな思考をしていると、扉間が声をかけた。
「半蔵、何か希望はあるか?」
「六尾が欲しい」
俺は反射的に答えた。扉間と柱間殿が訝しげな表情で俺を見る。
「六尾?それはまた何故だ?」
どうしよう…、見た目が可愛いからとか恥ずかしくて言えない……。
「ウチの地域に伝わっている、伝承の守り神と姿が似ているから、何と無くな」
「なる程、それならば尾獣もひどい扱いを受ける事も無いだろう!!尾獣の事をそこまで考えてくれるとは、集めた甲斐があったな!!」
苦しい言い分だったが、柱間殿が良い感じに締めてくれた。ともかく、俺は希望通りの尾獣を手に入れる事に成功した。可愛いけど凶暴だったら嫌だな……。一応、冊子には気さくな性格と書かれていたので信じよう。
この極秘の話し合いからしばらくして、各里の長達が雨隠れに集結し、ついに第一回五影会談が開催された。
話し合いはまず五大国だけで行われ、途中、風の国より出された他国への過分な要求
により、会談は少し荒れた様だが、あくまで平和を目指す柱間殿が大幅に譲歩し、最終的には
柱間殿の出した協定に同意するために次の様に話が纏まった。
火の国・木の葉隠れの里 保有する尾獣は九尾、他の尾獣は金で買ってもらう。ただし既に尾獣を保有する風の国には、尾獣に加え火の国の領土を一部割譲する。
風の国・砂隠れの里 保有する尾獣は元々持っていた一尾、火の国の領土を一部割譲してもらう。更に他の四大国から尾獣を購入した額の三割を支払ってもらう。
土の国・岩隠れの里 保有する尾獣は四尾と五尾、火の国から買い取る。
雷の国・雲隠れの里 保有する尾獣は二尾と八尾、火の国から買い取る。
水の国・霧隠れの里 保有する尾獣は三尾、火の国から買い取る。
更にその後行われた滝、雨、火の話し合いによって、
滝の国・滝隠れの里 保有する尾獣は七尾、火の国から買い取る。
雨の国・雨隠れの里 保有する尾獣は六尾、火の国から買い取る。
という事になった。その後、柱間殿より各里に向けて尾獣をコントロールする有力な方法である、[人柱力]について説明があった。凶暴な性格の尾獣の場合、この方法によって抑え付けなければならないそうだ。
五影会談は今後の忍界にとって、非常に重要な場となった。多くの危険性を孕みながらも、五影が一堂に会したという事実は間違い無く、後世へと残るだろう。
――新たな同盟のための密会――
俺を含めて三人の男が、暗い部屋に集まっていた。
一人は俺こと雨の国のトップ、半蔵。もう二人はそれぞれ、雷影のエー殿(代々、雷影が受け継いで行く名らしい)と水影の白蓮殿だ(護衛のチョビ髭の人の方が話し易そうだったから、あの人が良かったな)。
「本日は急な呼び出しながら、集まって下さり感謝する」
雷影殿が俺の方を見て、口を開く。
「あんたが死雨の半蔵か。噂は聞いてるぜ」
「噂?」
俺が聞くと、水影殿も話に加わって来る。
「今では忍界にその名を知らん者の方が少ないじゃろう。岩隠れの大部隊をたった一人で壊滅させた雨隠れの鬼、付いた名が[死雨]の半蔵」
そんなに有名になってたのか…、恥ずいな。さっさと話を切り替えよう。
「呼んだ理由は大体分かってくれてるだろう、木の葉包囲網についてだ」
雨の国としては、大国との繋がりが欲しいだけなのだが、雷と水に取ってはこの言い方の方が気に入るだろう。実際、木の葉包囲網という言葉を聞いた瞬間、二人がピクリと反応するのが分かった。
「火の国か……。ウチと水で挟み撃ちにしたってのに、ちっとも堪えてやしねえ……」
「結局、国力の疲弊した我らが内乱にまで発展してしまった始末……、半蔵殿の支援のおかげで早くに終わらせる事が出来たがのう……」
「そこまでの国力を誇って置きながら、同盟国であった雨の国には何の助けも寄越さない。あまりに横暴だ」
良い感じの空気になって来たので、俺も燃料を投下して置く。
「そうか、雨の国も裏切られたんだったな」
「ああ、そもそも一人で大部隊と戦うハメになったのも、そのせいだしな」
「そもそも忍界が現在の形になったのは火の国が発端じゃ、思えば始めから彼奴等が絶対の主導権を持つ様に仕組まれておったのかも知れんな」
「火の国一強体制を崩す、その為の同盟という訳だな雨影殿」
「その通り、この同盟は誰か一人欠けても火の国に対抗するのは難しい為、裏切りの心配も少ない」
「同盟か…、それしか無さそうだな」
「ワシもそれで構わんぞ」
ここに雨、雷、水の三国同盟、俗に言う木の葉包囲網が完成した。俺も火の国と戦う事を覚悟しなくてはならないだろう。それが俺の、国を預かる者としての仕事だ。
火の国との、木の葉との決別、悲しくない訳ではない。しかし俺はもう魚雨 半蔵では無く、雨の国の長、死雨の半蔵なのだ。
忍の長に、なってしまったのだ。