山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 少しだけ原作のイベントに絡めておきます。


生きねば

 ――視点 弥彦――

 

 

 くそっ、さすが火の国だ!!やりやがるな!!

 

 水、雨の連合軍は火の国の全力の攻勢の前に、一旦の撤退を余儀なくされた。かく言うオレも雨隠れの部隊の一員として、指示された防衛線まで全力で撤退している所だ。

 

 遠くに走る顔見知り達の姿が見えた。走りながら声を掛ける。

 

 「長門、小南!!無事だったか!!」

 「弥彦!!小南とは合流出来たんだけど、弥彦も無事だったんだね!!」

 

 オレとは別の部隊に配置されていた長門と小南だ。二人共、特に長門は最前線に近かったから心配していたが、無事だった様だ。

 

 「長門、お前あんな前線から、よく逃げられたな!!」

 「……、伊蔵様達が殿を引き受けてくれたんだ……」

 

 「何だと!?殿って事は……!!」

 「うん、死ぬ気だろうね……」

 「お前見捨てて逃げて来たのかよ!!」

 

 オレが詰め寄ると、今まで黙っていた小南が叫んだ。

 

 「弥彦!!この馬鹿!!」

 「小南!?」

 

 「私達若い忍を逃がすために、伊蔵様は殿を引き受けてくれたのよ!!あんたはその意志が、覚悟が分からないの!?」

 

 「っ……!!そうだよな…すまねえ長門……」

 「別に怒ってないよ、そういうのが弥彦の良い所だし」

 

 そうか伊蔵様が…この戦争、益々勝たなくちゃならねえ!!

 

 話しながらしばらく逃げていると、どこかから悲鳴が上がった。

 

 やはりあちらは大軍、殿の数十人だけでは食い止め切れず、漏らしてしまった敵が迫って来ている様だ。それに今の悲鳴はそう遠く無かった!!という事はオレ達の近くにも!!

 

 その時、森の陰から強力な火遁がオレ達を襲った―――

 

 

 

 

 

 ―――くっ、目の前が暗いし、体も重てえ……!!

 

 一体どうなった!?次第に視界が明るくなって行く。どうやら炎は回避出来たが、その時に木の幹に体を打ちつけてしまった様だ。

 

 いや、そんな事はどうでも良い。今オレはその木の幹にもたれ掛かり、木の葉の忍から刀の切っ先を向けられている所だった。

 

 「まだ子供ですよ!?本当に殺すんですか!?」

 「ダン、お前は黙っておけ、今はオレが部隊長だ。」

 

 数人の木の葉の忍が話し込んでいる。しかし部隊長と自分で言った男は、オレを生かす気は無いという事はその目を見れば分かった。

 

 「んっ?目が覚めたか。悪いなボウズこれは戦争だ。子供だからと言って、忍として戦場へ出て来た者を生かしておく訳にはいかない」

 

 オレは…死ぬのか?まだ何も成し遂げられていないのに……。誰か…、誰か助――

 

 

 

 

 「弥彦おおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 聞き慣れた声がした瞬間、オレに刀を突き付けていた男の体が吹き飛んだ。

 

 あれは……長門!?生きてたのか!!くそっ、また意識が遠のいて行く……!!オレが最後に見たのは、今まで見た事も無い様な術で、木の葉の忍達を蹴散らす親友の姿だった。

 

 

 

 

 ――視点 角都。じゃなかった角都さん――

 

 

 前線に辿り着いたオレは、敵に支援放火を浴びせながら撤退を完了させ、防衛線を下げる事に成功した。

 

 これで他二つの戦線が攻勢を強めるまで、何とか持ち堪える事が出来るだろう。やっと一息つけると言った所だろうか。

 

 しかしその時、感知部隊から報告があった。

 

 森の奥に逃げ遅れた忍がいる……、しかも膨大なチャクラを出しながら戦闘をしている様だ。

 

 前までのオレなら見捨てる所だが……ハア、そうだよな。半蔵はオレに殿のオッサン達以外を、全員生きて逃がす事を任せたのだ。死なせる訳にはいかない。

 

 よし、行くか。

 

 

 

  

 それは異常な光景だった。オレが現場で見た物は、雨隠れの額当てを付けた赤髪のガキが、見た事も無い術で木の葉の忍達を蹴散らす姿だった。それにあのガキの目…、あれは……!!

 

 「輪廻眼……!!」

 

 胡散臭え作り話だと思ってたぜ。ウチの国は一匹と二人も化け物を飼っていたのか……。

 

 ますます死なす訳には行かねえな。今は優勢だが、あの目を使うのは初めてなのだろう、赤髪のガキはもう限界に近い。

 

 木の葉の長髪の男は、それなりに良い勝負をしているし、地面に横たわるもう二人のガキ共も心配だ。

 

 案の定、ガキはまだ数人の敵を残したまま力を使い果たし、地面に倒れ臥した。

 

 「くそっ、こんなガキ一人に何人殺られた?ダン!!またこんなガキを生かすなんて言うんじゃねえだろうな!?」 

 「くっ、それでもだな…」

 「オレは分かってんだぞ、お前はこのガキと縄樹を重ねてんだろ?こいつは敵国のガキで、しかも仲間を殺した!!縄樹とは違う!!」

 

 

 

 「お取り込み中済まないな…、そいつらはウチの里のガキなんだ。手を出したら殺すぞ……?」

 「!?」

 

 

 

 運命を分けたのは微かな迷い。子供を殺す事をためらい、悩んだ事でその男の接近に気付かなかった。

 

 「お前は…、顔写真を見た事がある。まさか角都!?雨の国の事実上NO2!!」

 「そんな事はどうでも良い、そのオレの上に一人だけいる男に頼まれたんでな……。命令は二つ、殿以外を絶対に無事に撤退させる事、そしてもう一つは……」

 

 角都の体から黒い糸と五つの仮面が飛び出す。

 

 「それの邪魔をする者を…、一人残らず殺す事だ……!!」

 

 本気の戦いなど、いつ以来だろうか。一言で言えば、

 

 相手が、悪かったな。

 

 

 

 「水遁 刻苦」

 

 それは一生の間、その性質を磨き抜いてやっと出せる威力。凄まじい威力の水遁が木の葉の忍達を飲み込んだ――― 

 

 

 

 木の葉の忍び達を壊滅させたオレは、気を失う三人のガキを抱えて帰途に就く。

 

 軽いな……、雨隠れの次代を担う者達か……。中でも輪廻眼を持つ赤髪のガキ、こいつは遂に見つけたかも知れんな……。

 

 圧倒的な強さで

 

 大国相手に決して引かず、媚びず、屈さず

 

 雨の国を守り抜く

 

 

 

 

 

 半蔵の、後を継ぐ者……!!

 

 

 

 

 

 

 ――ある木の葉の忍――

 

 「おい…、嘘だろダン……!!少し離れた隙に何があったって言うんだ!!絶対に死なせないからな!!私が、絶対に……」

 

 

 

 

 

 

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