山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 長らくお待たせしたのに、温かい反応ありがとうございます。


仕事はちゃんとしよう!!

 

 

 伊蔵が、逝ったか。

 

 この戦争が最後の仕事、終わればゆっくりと余生を楽しんで欲しいと思っていたのだが……。部下を、親しい間柄の人間ですら、生きるか死ぬかの戦場に送る。改めて嫌な仕事だな。

 

 しかも今回はどんな事情があったとは言え、客観的に見ればただの侵略戦争。

 

 罪深い人間だ…、俺は……。俺は国のために鬼になると覚悟した筈なのに、今更、こんな風に後悔しているのが更に救えない。

 

 ふふっ、死雨の半蔵か……、やはり俺にぴったりの異名だ。

 

 

 

 「半蔵、大丈夫か?」

 「ああ、すまないな角都さん。それで、何か言いたい事があったんだったか?」

 

 「ああ、オレが連れて帰って来た赤髪のガキ。ついに見つかったかも知れんぞ」

 「?」

 

 

 

 

 「雨の国を預かる者、お前の後継者だ、半蔵」

 

 失った物は大きい、しかし運には見放されていなかった様だ。俺は角都さんの話に耳を傾け、今後の雨の国の展望に思いを馳せる―――

 

 

 

 第二次忍界大戦は終盤に差し掛かっていた。南海岸方面に大攻勢を仕掛けていた火の国は、奪われていた領土を三分の一程取り返す事に成功したが、ここに来て連合軍に一旦戦線を離脱していた砂隠れの忍達が復帰。火の国の侵攻はそこまでとなった。

 

 神無毘橋方面は、大損害から回復した土の国が勢いを取り戻し、再び互角の戦闘となっている。

 

 雷の国方面は、火の国寄りの国境付近の領土を取り合い、相変わらず一進一退の攻防が繰り返されていた。大きな動きが無い分注目されにくいが、何気にこの戦線が一番の激戦だったりする。

 

 各国に疲れが見え始めた頃、ついに最後の戦線が出現した。

 

 それは南海岸と神無毘橋の間、雨の国本国だ。火の国が雨の国に直接攻め込んで来たのだ。三つの戦線で戦い続けて来た火の国には、さすがにもうそれ程余裕が無い。

 

 小さな国土に反して、大量の物質を戦線に送り続ける雨の国に、イチかバチか残った力を振り絞った、火の国の正真正銘最後の攻勢。

 

 この戦線は連合軍の大国にも余力が無いため、雨の国独力で当たる事となる。だが半蔵は焦ってはいなかった。奥の手を使えば防衛はそう難しく無いし、長い目で戦後の体制を見据えてみれば、これは絶好のデモンストレーションとなる。

 

 

 

 第二次忍界大戦、最後の戦い。雨火戦争の火蓋が切られた。

 

 

 

 

 ――視点 雨の国侵攻部隊 ある忍――

 

 

 ついに火影様より最終作戦が通達された。目標は、戦争当初より各戦線に大量の物資を送り続け、小国でありながら今回の戦争に大きく貢献している雨の国だ。攻略の容易さと重要性を兼ね備えた国はここしか無い。

 

 今までは三つの戦線に対抗するだけで、さすがの火の国でも手一杯だったが、神無毘橋方面の大勝により、一時的に戦力に余裕が出来たのだ。

 

 これが成功に終わっても、失敗に終わったとしても、火影様は各国から以前より勧告されている停戦条約を了承するつもりの様だ。

 

 成功すれば、今占領されている領土を一部取り返せる。失敗すれば、盗られた領土は全部敵側の物、こんな感じか…。どっちにしろ完敗とまでは行かないものの、火の国にとっては悪い結果になる。

 

 しかし、大多数の火の国の民や火影様は一刻も早く戦争を終わらせたがっている、一部の過激派や大名は反対するだろうがな……。

 

 この戦線に参加する忍の中で有名なのは、味方側で言うと、今回の戦争で一気に名を上げた火影様の弟子、自来也、綱手、大蛇丸の三人だろう。

 

 万年中忍のオレにとっては彼らですら雲の上の存在だ。だが、しかし、上には上がいる。それも敵側に……。

 

 

 

 雨の国を目指し進軍を続けるオレ達は雨の国の領土手前の平原に差し掛かる。戦争の舞台となる場所、背中に雨隠れの軍勢を従え、そいつは現れた。

 

 白い髪は獅子の如く、異様なマスクで顔を覆い、手にした得物は鎖鎌、その男が現れた瞬間、味方側に動揺が走った。間違い無い。

 

 

 

 あれが、死雨の半蔵。

 

 

 

 伝説の忍であると同時に、雨の国の独裁者。今回の戦争を引き起こした主要な人間の一人だ。なる程…、悪そうなツラしてやがる……。

 

 戦力は…、少しこちらが上と言った所か。ウチの国は他三つの戦線と同時に、良くこれだけ揃えた物だ……。

 

 じわじわと両軍の距離が縮まる。平原での戦闘、隠れる場所は無い。真っ向から殴り合いか…、激しい雨の中、その時間は何故かに静かに思える。

 

 その時、敵軍の先頭を歩いていた半蔵に動きがあった。

 

 あれは……、口寄せ!?一体何を!!

 

 戦場に声が響き渡る。

 

 「口寄せの術!!」

 

 

 

 ――視点 魚雨 半蔵――

 

 

 「口寄せの術!!」

 

 この戦いは戦後を見据えて、雨の国の力を世界に見せ付けておく必要がある。要するに一度くらいはコイツをお披露目しなければな……。

 

 

 

 

 

 

 頼むぞ、犀犬……!!

 

 

 

 両軍の接触間近、平原に突然巨大な生物が出現する。

 

 「やっと役に立てるけん!!もうタダ飯喰らいとは言わせんよ!!」

 「うきゅ~!!」

 「犀犬…気にしてたのか……。イブセも一緒に戦うのは久しぶりだな」

 

 犀犬、その上にイブセ、ぬめぬめタワーの一番上に俺。呆然とする敵軍に向けてまず一発。犀犬の口元に漆黒の玉が形成される。

 

 「尾獣玉!!」

 

 漆黒の玉が敵軍に向かって疾駆し、大爆発を起こした。

 

 大きな被害を与えたものの、土遁で壁を作り何とか防ぎ切れた者もいる様だ。やはり簡単には全滅とはいかんな……。

 

 まあ、全滅するまで撃ち込むだけなのだが。という訳で更にもう一発!!

 

 「犀犬、もう一発頼む」

 「確かに頼まれたよ!!やったるね~!!」

 

 犀犬が再び尾獣玉を形成しようとしたその時、敵軍の中から三人の忍が歩み出て、俺と同様に口寄せの術を繰り出す。

 

 例によって独特の音と煙と共に、犀犬に勝るとも劣らない巨体が戦場に現れた。

 

 

 

 「ブン太!!突然呼び出してスマねえな!!あの尾獣の相手を頼む!!」

 「なんじゃ!?あの力ツユみてえな奴か!?」

 

 「力ツユ、話は分かったな?」

 「蛞蝓対決ですか…!!負けられませんね」

 

 「マンダ、頼んだわよ」

 「オレに指図すんじゃねえ!!だが相手は大分調子こいてるみてえだな」

 

 

 

 現れたのは蛙、蛞蝓、蛇の三匹。

 

 遠距離で一方的に終わらせるつもりだったが、そうは行かなそうだな。

 

 「犀犬、お前はあの三匹の相手をしてくれ。出来るだけ敵軍を巻き込んで戦えよ?」

 「やっぱり悪い大人や……。半蔵はどうするね?」

 

 「俺はイブセと一緒にあの三匹を呼び出したあいつらとやる。野放しにしておいても、こちらの被害が増えるだけだ」

 

 俺は手を頭上に挙げて、合図をする。

 

 

 

 

 「雨の国本国防衛作戦、開始!!」

 

 

 

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