山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 状況説明の方が筆が進みますね。


これ詰んだ?否、まだだ!!

 戦いが、終わった。

 

 事の発端は大陸東部、忍の中でも最大の勢力であった千手一族とうちは一族が突然和解、同盟を結んだ。そして、東を拠点とする猿飛一族や奈良一族、秋道一族、山中一族など有力な一族が次々と同盟に参加、大陸東部に突如巨大な勢力が現れたのだ。

 

 これを見た各地の忍達はこの勢力に対抗するため、千手とうちはの様に有力な一族達が同盟を結び、各地に巨大勢力が誕生、巨大勢力は有名無実と化していた大名達を神輿として各地に国が誕生、様々な危険性を孕みながらもここに一応の平和が生まれることとなった。

 

 さて、そこで問題です。大陸中央に魚雨一族、七草一族の土地、二カ国分の土地を持つ我が一族はどの勢力に入ったでしょうか!!

 

 正解は……

 

 

 

 

 どこにも入れてもらえませんでした!!

 

 いや、これには訳があるのだ。サボってて時代に乗り遅れた訳じゃないよ?

 

 七草一族との戦いの後、大戦の終結に先駆けて一早く戦争が終わった魚雨一族は、さっそく戦後の復興に乗り出した。引退した父をこき使いながら、復興はかなりの速度で進んだ。戦争の無い地ということで、他国から難民が流入して人口が増え、持て余し気味だった肥沃な大地の開墾も進み、返って戦前より豊かになっているくらいであった。

 

 俺が当主になってから幸運が続き、神に愛されているのだー!!と浮かれていた所で大戦が終結、勢力図の変化を高見の見物と決め込んでいたところ、徐々に不穏な空気が流れ始める。東に火の国、南西に風の国、北西に土の国と見事に我が国を取り囲む様に大国が誕生。大事な時にいらないミラクルを発揮してしまったのだ。

 

 (ちなみに建国ブームに乗って我らが土地も、雨の国の雨隠れの里と名乗る事にした)

 

 三つの大国はお互いの全面戦争を避けるため、我が国を緩衝地帯として放置するという暗黙の了解が広まっていた。とは言え今の平和はあまりにも危ういバランスの上で成り立っている。いずれそれは崩れ去り、我が土地は三大国が雌雄を決する地獄の戦場と化すだろう。

 これにより俺は大国に組み入れて貰うため各国に必死の交渉を行うことになり、手紙を送りまくるも色よい返事は貰えなかった。

 

 どの国も出来たばかりで、内部の問題に注力したいのだろう。わざわざ他の大国と国境線を接し余計な問題を抱え込みたく無いのだ。

 

 こうなれば恥も外聞も捨て手紙では無く、直接乗り込むしかない。そして、組み入れて貰えずとも、せめて同盟は結んで貰う。これならば一応緩衝国として機能するため、受け入れられない事も無いだろう、何より直接訴えかけるというのは予想以上に効果を発揮するものだ。

 

 そして俺が直接出向く国は当然、最大の国力を誇る火の国。

 

 中でも忍の里には最近、特別に名前が付いたんだったな。何だったか…。

 

 

 

 

 そうだ[木の葉隠れの里]だったかな。

 

 

 

 

 

――おまけ――

 

 俺は火の国へ出向くに当たって支度をしていた。特に舐められ無い様にファッションにはこだわった。特にお気に入りは山椒魚の図柄が大きく背中に入った羽織だ。モデルは当然、俺の相棒イブセである。

 

 鏡の前でニヤニヤしていたその時、背後から声がした。

 

 「何やそのカッコ、だっさいなー」

 

 振り向くと、そこには真っ赤な髪を後ろで一纏めにした、やけに露出の多い忍装束を着た快活そうな女が立っていた。

 

 「半蔵サマ、そんなんで火の国行く気なん?かなわんわー隣歩きと無いわー」

 

 仮にも自分の国の長に向かって、失礼な事をぶちまけるこの女は[秋風 モミジ]という。

 

 他の国に先駆け平和になった我が国には、難民だけで無く、いくつかの忍一族も居場所を求めて魚雨一族に臣従しに来ていた。秋風一族もその一つで、彼女は秋風一族と魚雨一族の関係の証として、俺の側近として働いてもらっているのだ。

 

 なかなかに美人ではあるものの見ての通り竹を割った様な性格で、あまり女として見る事が出来ず、今では気の置けない友人といった感じになっている。

 

 「オレはこれが気に入っている。お前こそ随分と寒そうな格好をしているな?」

 「あぁっ!半蔵サマどこ見てんねん!この悪趣味マスク!!」

 「このガスマスクは格好いいし山椒魚は可愛いだろう。お前こそ趣味が悪いのでは無いか?」

 「何やと!?ウチ程趣味が良い女は国中探してもおらへんやろ!!」

 「あぁそうだ。火の国に行く件だが付き添いはお前になったぞ」

 「無視か!!」

 

 などといつもの様に口喧嘩をしながら、何だかんだで仲が良い俺達なのであった。

 

 

 

 

 モミジと一旦別れた後、火の国への付き添いにモミジ以外にもう一人付いてきて貰おうと(忍はやっぱりスリーマンセルでしょ)何人かに頼んでみると、魚雨一族分家で歴戦の[魚雨 伊蔵]殿が必要とあらば付き添うと了承してくれた。  

 

 「若!!ご立派になられましたな!!」

 「いや、つい二日前にも会っただろ」

 「おおっ!若が言葉を!!」

 「ねえ、もしかして馬鹿にしてる?」

 

 と会う度に俺の何かに感動している癖の強い御仁だが、実力は折り紙付きでその上、経験豊富なこのおっさんが居てくれるだけで何かと心強い。

 

 「まあ、とりあえずよろしく頼む」

 「おおっ、若!!ご立派になられて!!」

 「いや、数秒前にも言ってたよね?」

 

 心強い、のか?

 

 

 こうして一癖も二癖もある仲間達と、俺は火の国へ行く準備を進めていくのであった。

 

 


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