山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 BORUTOも結構面白いですね。


山椒魚は可愛い

 「それじゃ行って来る」

 「ああ、気を付けてな」

 

 火の国への旅の準備を終えた俺は、里の門の前で父の見送りを受けていた。

 

 「親父こそ俺が留守中の国を頼んだぞ」

 「ガッハッハ!!言うようになったのう!!」

 

 まだ隠居して無いんだからちょっとは働け。マジで。

 

 「先代サマ、半蔵サマはウチらが守るから安心しいや」

 「当然!!儂らに任せて大船に乗った気で居てくだされ。所で若!!ご立派にry」

 

 モミジが自分の胸をポンと叩いて心強い事を言ってくれる。伊蔵のいつものは適当に聞き流しておく。

 

 それじゃ行こうか。

 

 「それでは出発!!」

 「「応!!」」

 

 と応え、モミジと伊蔵が走り出した。俺は歩き出した。

 

 するとモミジと伊蔵は盛大にずっこける。

 

 「何で歩いてるんや!!忍やったらここは走るとこやろ!!」

 「若!!忍とは常に拙速を尊ぶものです、立派になられなられてご立派に!!」

 

 伊蔵落ち着け、バグって新言語生み出してるぞ。

 

 「せっかく平和なのだから、ゆっくり歩いて行けば良いだろう」

 

 と賑やかな一行は、まだ見ぬ火の国に向かって出発した。…歩きで。

 

 

 

 里を出た俺達は、復興が進み豊かになり始めた雨の国のあちこちで歓待を受けた。雨の国の復興具合は書類上でしか知らなかったため、実際に目にし、人々から感謝の言葉を受けると、心に来る物がある。やってて良かった国の長!!OSA!!OSA!!OSA!!

 

 そうして暖かい気持ちになりながら、東へ東へと進んでいくのだった。

 

 

 

 俺達一行は特に問題も無く、とうとう火の国の領土へと入っていった。火の国の自然はどちらかと言うと湿っぽい我が国とはまた、違った顔を見せてくれた。これでも風の国や水の国よりは、似たような所もあるのだが生粋の雨もん(大陸中央に暮らす人々の通称、滋賀作みたいな感じで田舎もん的意味合いも含まれている。何でや!!滋賀県関係無いやろ!!)にとってはカルチャーショックで、見たことも無い様な色の花や森林の間からこちらの様子を窺う鹿などに、俺と伊蔵は一喜一憂していた。尚、雨の国でも栽培出来そうで、金になりそうな産物はしっかり仕入れていたりする。大人になるって…悲しい事なの……。

 

 尚、モミジは雨の国に行きつくまで諸国を放浪していたため、割と冷静だった。冷めた女だ、ヤダー。

 

 口には出していない筈だが顔には出ていた様で、俺と伊蔵は尻を蹴られた。

 

 

 

 小腹が空いたので街道沿いの茶屋に入り、火の国のうまい茶や菓子に舌鼓を打っていると(ちなみに俺のマスクはつけたままでも飯が食える様になっている)、俺の隣に行商人風の男が座って来た。

 

 「よう、隣借りるぜ」

 「何だ貴様は!!敵の刺客か!!はっ!まさか既に若の茶と菓子に毒を!!そんな…儂は若がいなくなれば何に縋って生きて行けば良いのだ…」

 

 伊蔵落ち着け、縋ってとか俺は神か、そもそも俺毒効かねーし、そもそも敵って何だよ。

 

 「わー!!ごめんなさい!!このおっさんアホなんや、気にせんでええから!!」

 「お、おう。何か苦労してるみたいだな…」

 

 モミジナイスフォロー、まさか常識人枠だったとは。

 

 「それで、何か用か?」

 

 気を取り直して俺が聞くと。

 

 「ああ、あんたら見た所、西から来たみたいだからな。俺はこれから西の雨の国に拠点を置いて商売をするつもりでな。向こうの様子を聞かせてくれねぇか?」

 「それはまた何であんな小さな国で?」

 

 男はためらう様なそぶりを見せたが、小さな声で

 

 「ここだけの話、俺はあそこがこれから重要な場所になると踏んでる。平和な時代になった事で人と物の動きが活発になり、火、風、土の三大国に囲まれたあそこは交通の要所となり、大きく発展していくだろう。俺は一足先にあそこに拠点を構えて、商売敵達に差をつけるつもりだ」

 

 なる程、農業に適した土地なので商業の可能性に気付いていなかった。三大国に囲まれた地は軍事的には悪夢だが、商業にとっては無限の可能性があるのか。

 

 国へ帰ったら、街道の整備をしよう。増え過ぎた傾向にある難民達の食い扶持のためにも公共事業は理想的だろう。かつて、侍の時代では街道を整備するのは敵に攻め込まれ易くなるため愚策とされていたが、戦争の主役が忍となってからは、戦場がより広範囲で立体的となり街道の重要性も薄れている。軍事的には大して問題は無いが、商業にとっては強い後押しとなるだろう―――

 

 

 「ブツブツブツブツ」

 「おい、考え事は終わったか?俺は自分の事話したんだから、雨の国について教えてくれよ」

 「はっ!そうだったなモミジ、伊蔵、教えてやれ」

 

 せっかくなので二人が雨の国についてどう思っているのか、試してみることにした。

 

 「はあ!?ウチらかい!?まあええけど、えっとなー飯うまくてー、ダサいマスクつけた変人がいてー、ジメジメしててー、でもええとこやで!!後、山椒魚っていうキモい固有種がおるなー、でもええとこやで!!」

 「け、結局良いのか?悪いのか?」

 「ぼちぼちでんなぁ」

 

 聞き捨てならない俺とイブセへの誹謗中傷が聞こえた気がしたが、気のせいだろうか。続いて伊蔵

 

 「神話の舞台の如く美しい豊穣の大地!!忍界最強の魚雨一族!!そしてそれらを束ねるはやはり忍界最強の男である魚雨 半蔵様だ!!」

 

 こちらは盛りすぎである。今のところド田舎で、忍界良くて中堅の魚雨一族、ある人曰くダサいマスクつけた変人の俺だぞ。

 

 「そ、そうか色々言いたい事はあるが悪い所じゃ無さそうだな。マスクのあんちゃんはどう思ってんだ?」 

 

 俺か、そうだな自分の国の事褒めちぎるのも何か嫌だしな

 

 

 

 「山椒魚は可愛い」

 「へ!?」

 

 こうして三人仲良く残念な人認定を受ける一行なのであった。

 

 

 


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