山椒魚、右往左往の雨隠れ生存記   作:流浪 猿人

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 かなり原作より昔の話なので、原作キャラが登場しにくいですね。


断ってくれても構わんぞ?(震え声)

 視点――千手 扉間――

 

 戦い以外で、初めて命の危機を感じていた。

 

 

 忙しいのである。千手一族は昨年、うちは一族と和解し、周辺の一族もそれに賛同、ここに忍界初の大国たる火の国・木の葉隠れの里が誕生した。長きに渡る戦乱が終わり、平和な時代が訪れた。

 

 しかし、それは史書に華々しく書かれるであろう言葉でしかない。当事者であるオレは実の兄である千手 柱間とその友(オレは絶対に信用しないが)うちは マダラの理想を一方的に押し付けられ、実務能力が皆無に近い二人に代わり、仕事に忙殺される日々を送っていた。

 

 忙殺の殺という字は、決して比喩では無いのだと知った。

 

 「扉間!!マダラと遊びに行って来るから後は頼んだぞ!!」

 「兄者…、あんたという人は……」

 

 兄者は今日も元気良く出掛けていった。

 

 木の葉隠れに賛同した一族の中には、まだ殺し合いを続けていた一族もいた。その一族が揃って入って来るなどカオスな状況が頻繁にあり、その度にオレが折衝役として仲を取り持たなければならなかった。

 

 せめて白黒つけてから来て欲しい。敵対する一族を一人残らず葬り去った、隣国の魚雨一族を少しでも見習って欲しいものである。我々に先んじて国を纏め始めた雨の国のやり方は、国を運営するにあたっても非常に参考になっている。自国の人間より他国の人間の方が役に立つとは、世も末だ…。

 

 

 

「扉間様!!」

 

 オレが自分の置かれた状況を嘆いていると伝令が戸を開け、跪いた。

 

 「今度はどうしたー?どこのどいつが殺し合いを始めたー?はっはっは扉間様に任せろー、いっぱい仕事してやろー」

 

 あまりの心労により、キャラが崩壊し始めている上司に同情しつつ、伝令の忍は要件を伝える。

 

 「雨の国より使者が参られました!!三人組でその中の一人は魚雨 半蔵と名乗り、責任者との交渉を希望しておられます!!」

 「何だと!?」

 

 このタイミングで突然…。手紙では雨の国は大名を持たぬため、木の葉へ帰属したいと書かれていたが、オレは他の大国との緩衝地帯とするためそれを断っていた。となると何を要求してくるか…。

 

 「話し合いの席を整えろ!!」―――

 

 

 

 交渉の席に座り待っていると、部屋に一人の男が護衛と思わしき二人を伴って入った来た。男は席に着くと口を開く。

 

 「魚雨一族当主の魚雨 半蔵だ。火影殿にはこの様な場を設けてくださり、有難く思う」

 

 若い…!!猿飛一族のヒルゼンより少し上だろうか。しかし油断してはならぬ、相手は大陸中央の七草一族を皆殺しにし、我々に先んじて国を作り上げた傑物だ。

 

 「オレは火影では無い、だが同等の権限は与えられているので気にせず話してくれ。本日は遠路遥々よく来てくださった」

 「前置きはいい、率直に言う。我が国と同盟を結んで頂きたい」

 

 余計な作法は無しで、実の部分を重視するか。オレとしては好ましい性格をしている様だ。だがしかし、同盟については話が別だ。火の国の一部とするよりは、他国との関係もましだろうがそれでも岩と風にとっては面白く無いだろう。ここはやんわりと断る方向に持って行くべきだな。

 

 「ああ、それと」

 

 そこで半蔵が一言付け加える。

 

 「断られたら雷の国と水の国に同盟を打診するつもりだから、別に断ってくれても構わんぞ?」

 「!?」

 

 何だと!!盲点だった!!雨の国との位置関係から土と風にばかり目が行っていた。雨、雷、水が同盟を結べば逆に火が包囲されてしまう。土と風にとっても最大の国力を誇る火の国が包囲されるのは願っても無い状況、雨の後背を突く様な事はしないだろう。

 

 火の国が最強の力を持つからこその、弱み。そこを突かれた!!国同士の外交的駆け引きについてはオレもまだまだだったということか…。

 

 「ああ、あともう一つ」 

 「まだあるのか…」

 「火影代理殿は非常にお疲れの様だ。各地で仕入れた精の付く生薬などがあるため譲ろう、何なら国へ帰るまでの間、仕事も少し手伝おうか?」

 「!?」

 

 この最後の一言で元々同盟締結に傾いていた扉間の意思は、完全に固まった。むしろ最後の一言が大きかった様な気もしないでも無い。

 

 

 

 視点 ――魚雨 半蔵――

 

 木の葉隠れの里についた俺達は、見事、同盟を結ぶ事に成功した。ここに来るまでにめっちゃ考えたもんね。これが外交じゃ!!

 

 そして、出迎えてくれた火影代理殿(千手 扉間という名前で火影殿の弟らしい)の目の下のクマが半端なかったため。心配になり、色々と気を付かってあげたら。何故かめちゃくちゃ信頼してくれるようになった。

 

 そして現在、モミジと伊蔵には先に宿に帰ってもらい、扉間殿の私室で様々な相談に乗っている。

 

 「半蔵殿はその歳でどの様に、政務をあれ程まで完璧に行っておられるのだ?」

 「扉間殿はなまじ優秀なせいで、自分が全てやろうとしてしてしまうのだろう。ある程度は人に任せるのも大事かと思う」

 「なる程……」

 

 

 

 「いずれ、忍を養成するための機関を設立しようと思うのだが、それについて半蔵はどう思う」

 「当然、必要だろう。火の国の様に巨大な国ならばいつの時代も強く無くてはならない、優秀な忍を安定して輩出する。これが力であり、力を持つ事こそが大国の責任だ」

 「教育方針については?」

 「木の葉隠れは忍になる人間が多いので、ある程度緩くしていかなければ全員に十分な教育が行えないだろう。その中で玉と言える者を集中して育てる。これでは優秀な忍が少なくなってしまう様に思えるが、そこはさすがの木の葉、忍になろうとする母数が多いため優秀な忍も十分に数を揃えられよう」

 「木の葉隠れの場合はそうか…雨隠れはどうするつもりなのだ?」

 「我が国の場合は忍になろうとする人間が少ないため、玉を探すのではなく、全員をしっかり育てるつもりだ。忍刀やスタンダードな忍術などこれといった対策が無い能力を全員が持てる様にする。そちらの国の千手 柱間様やうちは マダラ様といった英雄たる忍はいなくとも全員が束になれば英雄を殺せる集団を作り上げようと思っている」

 「半蔵は刀では無く鎖鎌を使っているようだが?」

 「俺は良いんだよ、長だから」

 「何かお前、クーデターで死にそうだな」

 「失敬な」

 

 「半蔵、良い酒があるんだ、一緒に飲んでもう少し話そう」

 「良いな、頂こう」―――

 

 

 

 「だからぁ!!俺の親父は勝手過ぎるんだよ!!自分はさっさと引退して俺に国なんてもん任せやがって!!」

 「分かるぞ半蔵!!兄者も面倒くさい物は全部オレ任せだ!!」

 「「人任せはんたーい!!」」

 

 こうして、友好を深める管理職二人なのであった。

 

 

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