八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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震えるぜ膝、燃え尽きるぞ情熱、刻むぜ精神的ダメージ!

材木座の書いたジャンルは学園バトル物だった。

俺の前世の記憶では、アイツはいつのまにか小説投稿サイトに書いてたりしてたけどな。

その頃は、今と違ってアニメ化する作品が多くて今みたいにビビったことは言ってなかった。

とはいえ、そこで奴が書いていたのは異世界転生物だったのだが今と対して変わりはない。

 

まぁ、変わらない作風と言えば聞こえが良いと思うんじゃないか。

成長しないのと停滞はイコールではない訳だから、何故か昼間ではなく夜限定で戦いが始まることもツッコんではいけない。

秘密組織があって、運良くそこと出会って、でもって自分みたいな能力者が実は知らないだけでたくさんあったのもツッコんではいけない。

普通の少年だったくせに、ずっと戦ってきてた奴らを何も訓練してないのに無双ゲーばりに倒していても主人公だから仕方ない。

でも、一言で表すならちょっと疲れた。

 

 

 

六限を終えて部活の時間、背中から元気のいい声がかかった。

振り返れば、振り返らずとも分かっていたが、俺に話し掛けるやつは一人しか居なかった。

由比ヶ浜が、お前カバンに何にも入ってないじゃんとツッコまれそうな薄いカバンを肩に引っ掛けながらあらわれた。

 

「ヒッキー、元気なくない?どしたー」

 

肩を叩いた後に、俺の前に回り込む。

下から首を傾げながら、後ろ向きで歩きながら覗き込む。

その際揺れる胸は蠱惑的で、端的に言ってやめて八幡を翻弄しないで!である。

 

「反応からして、お前は読んでないようだな。あんなの読んで元気な理由が知りたいわ」

「え?」

 

なんのこと、何いってんの、そんな感じでぱちぱちっ目を瞬かせる由比ヶ浜。

そこから思い出したのか、あーとかえーとかいいながら同意の言葉を吐く。

 

「あー、だよねー!や、あたしもマジ眠いから」

「はいはい、眠い眠い」

「むー」

 

不満そうに、そんなことを口走る由比ヶ浜。

はいはい、あざといあざとい。

 

 

 

俺が教室をそっと開けると、案の定雪ノ下が眠っていた。

カーテンが棚引く教室の窓際で、髪を揺らしながら穏やかな寝顔のまま、すうすうと寝息を立てていた。

その微笑むような、柔らかな寝顔はいつまでも見ていたい気分になる。

サラリと揺れる黒髪も、白く透き通る肌も、形の良い桜色の唇も、黙っていれば綺麗だということがよく分かる。

そんな唇が、いきなり動き出し、視線を上げれば射抜くような瞳が俺を見た。

 

「驚いた、あなたの顔を見ると一発で目が覚めたわ」

「その意味を聞くと精神衛生上良くなさそうだな」

「賢明な判断ね」

 

賢明な判断になるとか、やっぱり聞かないでおこう。

それにしても、やはり苦戦したらしい。

 

「私、この手のものは全然読んだこと無いし。……あまり、好きになれそうにないわ」

「あー、あたしも無理無理」

 

お前は読んでないでしょと俺が視線で投げかければ、ジト目に耐えられなかったのか由比ヶ浜はさっと目を逸らす。

まぁ、品評会が始まるまでに軽くなら読めるだろうけどここは後の経験の為に放置しておこう。

いつか、つまらない書類を読んでこないといけない仕事を大人は一度くらい経験するのだから、はやいうちに失敗した方がいい。

 

「頼もう」

「挨拶」

「……し、失礼する」

「そうか、失礼するなら帰ってくれ」

「なんなの、二人して拙者をイジメて楽しいか!」

「おいおい、イジメなんて我が崇高なる学び舎にあるわけ無いだろ、殺すぞ」

「今!なう!イジメより怖いわ!」

 

意気揚々と入ってきた材木座を、雪ノ下が窘めるように言葉を呟く。

単語だけで意思を示す、その有様はまさに女王だった。

この部室のヒエラルキーが一瞬で理解できたな。

その後のやりとりは、俺との軽快な会話だ。

八幡は裏表のない良い人、いいね?

 

「さて、では感想を聞かせてもらおうか!」

「それでは、これより材木座氏の作品に関する品評会を始めます」

「お、おう」

 

こういうのは雰囲気が必要だろうと、俺は机を移動させてさながら面接会場のような物を作ってやる。

決して、人が疲れてるのに自信満々で腕組みしてムカ……イラ……腹が……まぁ、不満があった訳じゃないよ。

原稿をちょうど持っていた由比ヶ浜にタイトルをまず読んでもらうことにする。

 

「双剣は交錯し反転世界は流転する、できた」

「おー、すごいぞ読めるんだな」

「えへへへ……って、当たり前じゃん!学力一緒だかんねー!」

 

言い方は馬鹿っぽかったが、たしかにこの学校に入れる程度の学力があったか。

なお、材木座はタイトルを音読されて耳を真っ赤にしていた。

フハハ、恥ずかしいだろう知ってた。

 

「ごめんなさい、私にはこういうのよくわからないのだけど、つまらなかったし読むのが苦痛ですらあったわ」

「ぐふぅ……参考までにどの辺がつまらなかったのかご教授願えるかな」

「なぜ倒置法ばかりなの?てにをはの使い方知ってる?小学校で習わなかった?」

「ぬぐぅ……それは読者に――」

「それはまともな日本語を書けるようになってから考えることではないの?それとこのルビだけど誤用が多すぎるわ、能力にちからって馬鹿なの?だいたい、幻紅刃閃と書いてなんでブラッディナイトメアスラッシャーになるの?ナイトメアはどこから来たの」

 

それは、まるで言葉責めであった。

ところどころ変な声を出すから、余計に変な感じだった。

いいよそういう効果音、由比ヶ浜のむーなら可愛いけどお前のぶひぃは豚にしか聞こえないわ。

 

「というか話の先が読めすぎて一向に面白くなる気配がないわね。突然ヒロインが服を脱いだのはなぜ?地の文が長いし、似たような説明が続きすぎて展開が進まないのが嫌だわ」

「ぴゃぁ!?」

 

材木座がビクンビクンしだした、虚しい光景だ。

男がやっても需要がない、戸塚なら可だがな。

 

「そのへんでやめてやれ、一度に言っても処理できないだろう」

「まぁいいわ、じゃあ次は由比ヶ浜さん」

「え、えーと、あれあそこが良かったよねー」

「ふぉぉぉぉ!どこが、どこが良かったぁぁぁぁ!」

 

俺の助け舟で由比ヶ浜とバトンタッチする雪ノ下、今までのダメージのせいで急に優しくされた材木座は興奮していた。

正直、俺でも引く。なお、由比ヶ浜はドン引きだ。

だが、悲しいことに由比ヶ浜の言葉は口から出まかせだった。

 

「こう戦うところとか、ヒロイン助けるとことか、初登場とかいいよね」

「そうだろうそうだろう」

「ねぇ、それってこういう作品全般に言える当たり障りのないことなんじゃ」

「テレビで具体的な内容に触れないで本を褒めるアイドルがいるだろ、アレと一緒だからそっとしてやれ」

 

材木座には聞こえていなかったが、由比ヶ浜には聞こえていたらしくプルプル震えていた。

頑張れ由比ヶ浜、これも経験だぞ。

 

「さて俺の番だがタイトルが双剣なのに、なんで主人公の武器日本刀なの?あと反転世界って何、いつ出て来るの?灼眼のシャナの封絶でも意識してるの、パクリやめろよ。あと祖父から剣を習ったらしいけど祖父って幼いときに敵の襲撃で死んだらしいじゃん、いつ習った」

「ぐあぁぁぁぁ!」

「あと、相手の能力を無効化する主人公って二番煎じだろ。お前ら中二ってキャンセル能力好きすぎ。ライバルがコピーする能力って、お前らコピーする能力好きすぎ。あと学園バトル物なのに日常描写が登校だけって意味分からん、設定の理由は?組織の人間、学生いないじゃん」

「うあぁぁぁぁぁ!」

「特に理由もなく敵を殺せるのも可笑しいだろ、なんで自分に能力があったことに戸惑ってるのに初めて人を殺すのには戸惑わないんだよ。敵なら仕方ないですぐ殺して、その後死体に目もくれずにヒロインに話し掛けるなよ。ヒロインも素敵とか言ってる前に、目の前で起きた凶行に動揺しろよ、あとなんで脱ぐ」

「ぶひぃぃぃぃ!」

 

取り敢えず、第一章のダメな所はこれくらいでいいか。

材木座にしては起承転結を気にしたらしいし、あと三章残ってるからな。

 

「それじゃあ、次は第二章の話にはいるが」

「ヒッキー、もうやめて!ちゅーにのライフはもうゼロよ!」

「HA☆NA☆SE!なぜ、お前がそのネタを知っている」

「急にどうしたの、まるで意味が分からないわ」

 

やめろ、俺は徹夜したんだ。

この徹夜テンションで、指導せずにいられるか!

 

「材木座、お前に足りないのは作り込みだ。設定一つを適当にするな、描写は拙くても良いから分かりやすくしろ、話の流れは繋がりを意識しろ、で一番言いたいのは」

「一番言いたいのは……?」

「これ、なんのパクリ?」

「ぐはぁ!?」

 

KO、そんな声が聞こえそうなくらい材木座はダメージを受けた。

どうやら、俺の言葉がトドメを刺したらしい。

やっちまったぜ。

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