八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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俺、やっぱお前のこと嫌いだわ

死ぬ程筋トレさせられる昼休み、ふっ普段から鍛えている俺に死角はなかった。

 

「んっ……くっ、ふぅ、はぁ」

 

戸塚が苦悶の表情を浮かべながら、薄く汗を掻く。

コチラに視線を向ければ、大丈夫だよと明らかな嘘を吐いて頬を上気させていた。

戸塚の細い体ではキツイのだろう。

俺と違って、体力ないから仕方ない。

 

「八幡、僕の事はいいから続けて」

「お、おう」

 

アレ、俺筋トレしてるんだよね?

クソ、去れマーラよ!我が信仰を妨げるのではない!

 

「うぅ、くっ……んあっ、はぁはぁ、んんっ!」

 

戸塚から視線を逸らせば、向かいには何故か由比ヶ浜がいた。

由比ヶ浜が腕を曲げると、体操服の襟元から肌色がちらっと覗く。

何でその位置にいんだよぉぉぉぉ!マーラ、お前がマーラだったのか!

あっ、ピンク色。

 

「ガフッ!」

「比企谷くん、続けなさい」

「あ、足を退けてくれないか雪ノ下」

 

スカートスカート、見えちゃう見えちゃう。

なお、見たら死ぬと思うので顔は上げなかった。

 

 

 

暫くそんな日常を過ごして、第二ステージ。

ボールとラケットを使っての練習、人類は遂に道具を手に入れた。

鬼教官雪ノ下の指導を受けながら壁打ちである。

その後、雪ノ下の指示に従う由比ヶ浜が籠からボールを投げて打つ練習だ。

 

「もっとあの辺とかその辺の厳しいコースに投げなさい」

「うわぁ」

 

雪ノ下、ライン側とかネット際とか諦めて走るのやめる場所ばかり狙って性格悪いな。

じゃなくて本気で鍛えていた。

だから、こっちみんなよ。なに、俺の心悟られてるの?

戸塚は食らいつくが二十球目に差し掛かりそのあたりで転倒した。

痛い痛い、見てられない。

 

「うわ、さいちゃんだいじょーぶ!?」

「だ、大丈夫」

「まだやるつもりかしら?」

「うん、もう少し頑張ってみたい」

「……後は頼むわね、由比ヶ浜さん」

 

そう言って、雪ノ下は髪をファサっと翻しながら踵を返す。

その髪を触る動作いるの?いや、様になってるけどさ。

そんな様子を戸塚は不安そうに眺めていた。

 

「だ、大丈夫かな?何か、怒らせること言ったかな」

「いや、救急箱でも持ってくるつもりだろう。あの子は誤解されがちだが、心根の優しいしっかりした子だ」

「なんかヒッキー平塚せんせーみたい」

 

由比ヶ浜が舌足らずな餓鬼みたいな喋り方でそんなこと言ってきやがった。

おいおい、俺は学生だぞ……いや、先生だったか。

 

「でも、もしかしたらいつまでも上手くならないし呆れられちゃったかな」

「それはないよ、ゆきのん頼ってくる人を見捨てたりしないもん」

「そうだ、由比ヶ浜の料理に付き合うくらいだぞ」

「どういう意味だッ!」

 

由比ヶ浜が弄んでいたテニスボールを俺目掛けて放り投げた。

避け……無理、死……痛い。

ゴレイヌさんみたいに材木座とチェンジできれば良かったのにな。

つうか、コントロール良すぎだろ。

 

「みっともなくても良い、努力は実るまでに時間が掛かるかもしれないけど無駄じゃない。だから、戸塚は少しずつ頑張れば良いんだ、少なくとも俺はお前が諦めるまで付き合ってやるさ」

「うんっ!」

 

戸塚は元気よく応えて練習に戻る、弱音も吐かずよく頑張った。

泣き言だって口にしなかった。

 

「おりゃぁぁぁ」

「えいっ」

「よ、よいしょ~」

「やぁっ!」

「えーい」

「たぁ!」

「…………」

「あれ?」

 

しかし、先に由比ヶ浜の方が根を上げた。

戸塚よりは動いてないのに、疲れていた。

 

「もう疲れた~ヒッキー交代してよ」

「まぁ、ボール拾い大変だよな」

 

さて、ラリーでもするか。

厳しいコースに様子を見ながらボールを送れば実戦に近い練習になるだろう。

とか、思ってる頃がありました。

忘れてた、そうだよこんな事もあったな。

 

「あ、テニスしてんじゃんテニス!」

 

きゃぴきゃぴした声、振り返ると葉山のグループがコチラに向かってくる。

材木座の横を通り過ぎた辺で、向こうも俺達の存在に気付いたらしい。

 

「あ……ユイたちだったんだ……」

 

空気の読める事に定評がある海老名がそんな事を漏らす。

まぁ、読めるのは腐臭だったりもするんだけどな。

三浦はこないだのこともあってか、俺達を無視して戸塚に話し掛ける。

 

「ね、戸塚。あーしらもここで遊んでていい?」

「三浦さん、ぼくは別に遊んでる訳じゃ……なくて、練習」

「え?何?聞こえないんだけど」

 

戸塚の返事は小さすぎるためか、聞き届けられない。

三浦の言葉に、戸塚は自分のズボンを握りしめ俯いてしまう。

やめたげてよ、虐められてる女子みたいな反応してんじゃん。

 

「練習……だから……」

「はぁ?」

 

だが、そのまま黙ると思っていた戸塚が強い意志を瞳に滾らせながら前を向いた。

その光景に、俺と材木座が中腰に立ち上がって外国人四コマみたいな反応をする。

やった、これで勝つる。

 

「ふーん、でもさぁ、部外者いるじゃん。ってことは別に男テニだけって訳じゃないでしょ?」

「それは……」 

「じゃあ、別にあたしら使ってもよくない?ねぇ、どうなの?聞いてるんだけど」

「……だけど」

 

そこまで言って戸塚が俺を見る。

おぉ、戸塚よ、大天使戸塚エルよ、我が信仰を試されるのですね。

まぁ、材木座は戦力に数えられてないし、由比ヶ浜はどっちかっていうとあっち側、明らかに敵対の雪ノ下はいないから、残ったら俺だよね。

 

「悪いが、ここは戸塚が許可を貰ってるから他の人は無理だ」

「は?だから?アンタ達は使ってんじゃん」

「戸塚の許可が出ないんだから、お呼びじゃないんだよ三浦」

「そーだぞ!三浦ァ!」

「あぁ!?」

「……って八幡が言ってました、すいません」

 

材木座ァ!何しに出てきやがった!外野は引っ込んでろ。

三浦にビビるなら最初から鳴くんじゃねぇよ。

鳴かなければ撃たれることもないって言うだろ。

 

「まぁまぁ、喧嘩腰になんなってみんなでやった方が楽しいしさ。そういうことで良いんじゃないの?」

「みんなってのは誰だよ葉山。それを決めるのはお前だろ、楽しいって決めるのもお前だろ」

「何が言いたい?」

「みんなの意見は正しい、みんなの意見に従わないのは問題になるから我慢させる。そして表面上は仲良しで、問題が起きたならみんなが悪かったって言うんだろ。だから一人ひとりが悪くて、個人的に誰がどうのじゃない。責任を分散させ、なぁなぁで問題を解決する。誰も恨まれない、誰も恨めない方法を取る、お前はそういう奴だよな」

 

大多数の幸福のために少数の犠牲を容認する。

何だお前、ブリテンの王様かよ。

 

「何だらだらしてんの、あーしテニスしたいんですけど」

「お前、少し黙れ」

「はぁ?」

「おいおい、やめろって!じゃあこうしよう、部外者同士で勝負して勝ったほうが戸塚の練習に付き合う、強い奴と練習したほうが戸塚のためになるだろ」

 

あぁ、そうだった。

お前はそんなことを言ってたな。

それで表面上は解決だろうよ、で仲良くもない三浦とやって戸塚は練習に身が入るのか。

三浦が飽きずにずっと付き合ってくれるのか、約束だからって言われて不満を覚えないとも言うのか。

それは一時的な解決であって、問題の先送りだ。

自分達の都合はいいだろう、少しだけでもテニスコートが使えたら満足だろうな。

でも、そこに戸塚の都合はないのだろう表面上は仲良しでも戸塚が迷惑に思うとは微塵も思ってないのだろう。

 

「俺、お前のこと嫌いだわ」

「えっ?」

「我もー!イケメン反対!死すべーし!」

 

俺の言葉は、材木座によって冗談めかして聞こえた。

 

 

 

どこで聞きつけたのか、一年生から三年生まで観客が集まっていた。

なんなの、お前ら暇なの?馬鹿なの?

その人集りに戸塚はプルプル震えて庇護欲を誘う、あっ可愛い。

そんな様子に戸塚ファンからさいちゃーんという声援が送られ、さらにプルプルする。

きゃぁぁぁ、そしてプルプル震える戸塚。

まさに可愛いのループが出来ていた。

部外者同士の勝負、つまり戸塚は出られなかった。

 

「あれ、優美子やんの?」

「たり前だし!あーしやりたいって言ったんだけど」

「いやー、不利でしょ、ヒキタニ君だっけ、不利じゃねー」

「俺の名前は比企谷だ。人の名前を間違えるとか殺すぞ」

「あー、ごめん」

 

戸部、次はないと俺は睨みつける。

材木座と由比ヶ浜がフルフルしてたが、今は機嫌が悪いのだ。

こんな子供っぽい感情が俺にもあったのか、いやもしかしたら身体に影響を受けてるのかもな。

 

「じゃあ、男女混合ダブルスにすればいいじゃん!でも、ヒキタニ君と組んでくれる子いんの?マジウケる」

「ひ、卑怯だぞ!だ、大丈夫か八幡」

 

ギャラリーもドッと笑いが巻き起こる。

うるせぇよ、そのとおりだから言い返せないじゃないか。

 

「ごめん、八幡」

「気にすんな、あと由比ヶ浜お前もな」

 

この程度、一人で充分だ。

 

「それに、別に一人で倒してしまっても構わんのだろう?」

 

最高にドヤ顔で俺は言ってやった。

 

「ハーチー、それは死亡フラグ!」

「うるせー材木座」

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