八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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男と男の勝負に女子供は引っ込んで……えっ?

テニスコートに立つ雪ノ下、それに対して三浦がまず牽制する。

 

「雪ノ下さんだっけ?悪いけどあーし、手加減とか出来ないから。お嬢様なんでしょ、ヤダこわーいとか言う前に怪我するからやめとけば?」

「随分と自信はあるようだけど手加減出来ないとか必死ね。安心して、私は手加減できる技量もあるし、安いプライドも粉々にしてあげるわ」

「あんさぁ、雪ノ下さん知ってるかしんないけど、あーしテニス超得意だから顔に傷とかできちゃったらごめんね」

「貴方こそ覚悟はできてるかしら、知ってるか知らないけど私ってばこう見えて結構根に持つタイプよ?」

 

予告危険球もさることながら、お互いの笑顔が怖かった。

誰だよ、笑顔連呼するプロデューサー。

お前の理論だと笑顔って可愛いんだろ、俺は怖さを覚えるぞ。

 

ヒュッと鋭い風切り音、ボールの軽快な音がした。

高速で飛来する球は、雪ノ下の左側、右利きの雪ノ下にバックを強いるというサーブだ。

利き手と反対、バックハンド、それは苦手とする選手は多い。

 

「甘い」

 

囁くような声の後、迎撃態勢に入る雪ノ下

左足を踏み込ませ、クルリと踊るように回転する。

ワルツだ、まるで踊りましょう私の奏でるワルツでとか言いそうだ。

そのままリーチの外にあった球は打ち返される。

居合抜きのような一閃、三浦の足元で弾けるように跳ねる。

 

「ひっ」

「あら、可愛く鳴くのね」

 

三浦の小さい悲鳴、目の覚めるような超高速のリターンエースが決まった瞬間だった。

 

「私、自慢じゃないけどテニスが得意なの」

 

自慢げに言う雪ノ下にでしょうねとみんな思ったことだろう。

その氷の女王のような冷たい視線は、流石の三浦をビビらせて一歩後退りさせる。

あの炎の女王と名高い、まぁ俺が勝手に言ってるのだがそんな奴を怯えさせるとは女王対決は雪ノ下の方に軍配が上がるようだ。

 

「お前、良く返せたな」

「だって彼女、私に嫌がらせする同級生と同じ顔していたわ。あの手の人間の考えくらいお見通しよ」

「そうか、何か悩みがあったら相談しろよ。お前溜め込むタイプだから、俺じゃ嫌かもだけど心配だわ」

「急にどうしたの気持ち悪い、別に貴方に心配されるほどの悩みとかあるわけないじゃない。それにもしあったとしても、由比ヶ浜さんに相談するわ。だって、ともだ……女子の部員ですもの」

「だから、照れ隠しで長文になるのやめとけって」

「う、うるさい」

 

とはいえ、得意なテニスが炸裂する。

なんなの、私の美技に酔いなって感じなの?

 

「比企谷君」

「うっす」

 

雪ノ下を避けるように撃たれた返球を、俺が走ってカバーする。

打たれるサーブは確実に相手のコートに沈め、戻ってくる球は押し返す。

 

「フハハハ、圧倒的じゃないか我が軍は!」

 

勝利の匂いを嗅ぎつけた材木座がうるさい。

まぁ、いるってことは逆転したってことだろうな。

空いた僅かな点差は、由比ヶ浜が与えた失点は、見る見る間に雪ノ下によって埋められた。

どころか、縦横無尽に動き回り踊るような足暴きに、点数は逆転している。

 

「あっ」

 

それは誰の声だったか。

雪ノ下の球が空高く投げられる。

ミスにしか見えない、明らかに上げ過ぎな球。

だが、違った。

スカートを翻しながら、雪ノ下が飛ぶ。

身体をしならせ、両足を揃え、ターンと高い音を奏でながらサーブを繰り出す。

 

「ジャ、ジャンピングサーブ!?」

 

材木座の解説が轟く、漫画を読んでいたと言うだけあって基本は知ってるようだ。

 

「すごい、スカートの中もスケスケだぜ」

「中二、ちょっと」

「えっ、あっ、すいません」

 

なお、アホなのは偶に傷であった。

 

「雪ノ下、行けるか」

「できればそうしたいけど、無理な相談ね」

「やはり、体力に限界が来たか」

 

今までのサーブで点を取らなくなった。

逆に言えば、ジャンプサーブでないとサービスエースを取れないということだ。

選手の様子を長年見てきた俺には、プレイから繊細さがなくなってくのが見えていた。

雪ノ下の体力は、もう限界だ。

 

「悔しいけど、そのとおりよ」

 

俺達のリードは、葉山のサーブで埋められた。

そして、同点になりデュースとなる。

デュースとは二点差が着くまで続く状態。

アドバンテージが一点差、そしてそこから更に点を取らないと再びデュースになる。

そういう行ったり来たりな点の状態だ。

 

「お互いよく頑張ったってことで、マジになんないでさ。楽しかったてことで引き分けにしようぜ」

「ちょ隼人何いってんの、ここでトドメを刺さなければ禍根が残るし!」

 

どうした三浦、お前だけ戦国時代に生きてるのか?

 

「少し、黙ってくれるかしら。この男が試合を決めるから大人しく敗北を認めなさい」

「はぁ?」

「私が勝てと言っている、なら勝つのは決定事項よ。私、虚言だけは吐いたこと無いから」

 

風が止んだコートでクリアにその声は響いた。

了解した、部長。地獄に落ちろ。

 

 

 

雪ノ下がああいった手前、俺はなりふりかまってられなかった。

俺は身体を捻り、ボールを持って腰を低くする。

 

「な、なんだあの構えは」

「あの構えはまさか、封印されし禁じ手」

 

材木座がなんか言ってるがスルーである。

禁じ手、そんな技をとか周りは受け入れんな。

ソイツ、調子乗るからな。

 

「葉山、お前小さい頃野球やった?」

「よくやったけどそれがどうした」

「俺はいつも一人でやってたぜ」

 

昔、アホみたいな勝ち方をしたのを覚えてる。

幼少期、アホみたいに一人で打ち上げを一人で捕るという経験から生み出されたサーブだ。

取ればアウト、ミスってワンバンならヒット、遠くにウチすぎればホームラン。

ワンサイドゲームとはまさにこのことだった。

お前はみんなといただろ、だがな俺はいつだって一人だったぜ。

 

「オラ!」

「馬鹿な」

 

俺は自分の頭上に打ち上げた。

その光景に、三浦も雪ノ下も、そして観客すら呆けていた。

だが一人だけ、俺の戦いを見てる奴がいた。

 

「メテオストライク、空駆けし破壊神、隕鉄滅殺!」

 

それは頭が可笑しい中二だった。

やめて、いたたたたメンタルに来るから。

 

「何がしたいし」

 

呆れられる程のロブは、そのままゆっくりと落ちていく。

明らかに場外、見なくても暴投だと分かっていた。

まったく、早く次の展開に移ろうと三浦は動くが俺はそんな様子に勝利を確信した。

 

「三浦、お前の敗因は慢心したことだ。テニプリ、知らんのか」

「羆落とし、そうか八幡!そういうことか!」

 

俺の球はそのまま落ち、ベースラインに当たって跳ねる。

ベースライン上のボールは得点、つまり点数が入った。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!?」

「はは、まさに魔球だな」

 

一回きりの技だが、たしかに決めてやった。

 

 

 

負けられない、戦いがそこにはあった。

俺はトントンと地面にボールを叩きつけてタイミングを計る。

これで終わり、後一点取ればいい。

 

「さぁ、体力は十分か葉山!」

「来るか、比企谷」

 

俺のサーブがコートに突き刺さる。

悪いが、意地があるんだよ男の子にはな!

 

「くっ、うおぉぉぉ」

 

葉山が俺のサーブに食らいつく、今までサービスエースだったのにだ。

その光景にギャラリーが驚く、食らいついてきやがったか。

 

「葉山ぁぁぁぁ!」

「信じていた、君が俺にまっすぐ撃ってくるってね」

 

返球、それに対し葉山は不敵な笑みを浮かべる。

アレは、あの構えは、ボレー!?しまった、奴はボレーを狙っていた。

俺の球はそのまま、葉山のラケットに打つかる。

だが、俺の球は弱くない!もっとだ、もっと行け!行けぇぇぇぇ!

 

「くっ、やはりキツイ!」

 

ボフッと上に跳ね上がる球、俺の球が押し勝った。

だが、まだ試合は続いている。

 

「オラァ!」

 

スマッシュが葉山に炸裂する。

しかし、それに食らいつき再びボレー、くそ俺のスマッシュが弾かれて頭上に行きやがった。

雪ノ下が返球、そこに三浦、俺が三浦なら俺に向けて打つ。

それが最善、体勢が整ってないからミスるもんな。

取れるか、急がないと、取らないと負ける。

このまま、俺達の戦いは終わらせない。

届け、俺の思い!

 

「えいっ!」

「あっ?」

「あっ?」

 

男の熱い勝負は、雪ノ下の可愛い声の下に撃たれたスマッシュで終わりを告げた。

えー、それマジ?

 

「むふー」

「やった、やったよゆきのん!」

 

なんだこれ?

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