学生時代、友達と仲良くすることは良いことだろう。
それは掛け替えの無い思い出となって将来、糧となることだろう。
勘違いしないで欲しいのだが、ボッチの経験は将来の糧にならない訳ではない。
それはそれで、いい経験となるのだ。
悪いかどうかなんて、後世の自分が判断すればいい。
嫌な思い出も、自分がいい思い出として処理すれば問題ない。
「さて、そんな訳で世間とか教師とか一般論とか、そういう基準で仲良くすることを推奨するのは時代遅れの考えでFA。時代遅れの考え、時代錯誤の思想、グローバルな時代は自由を重んじるべき、そうすべき。別に一人でも良いじゃない、友達がいるとか人間強度が下がる。一匹狼という言葉を知らんのかよ、お前らは馬鹿すぎる。
ボッチが強いのは当然に決まっている、そのメンタルは鋼鉄のガラスハートの塊で出来ている。ボッチがリア充の幸福度に後れをとるはずは無い。確実にボッチは社会で孤独な仕事をさせたら高確率で一番最強になる。俺がどうやってボッチだって証拠だよ」
「ハーチー、なんなの?ボッチというかナイトなの?」
「煩いぞ材木座、俺の怒りが有頂天でお前をバラバラに引き裂くぞ」
「ひえっ」
最近、別のクラスなのに俺の元に来るようになった材木座を撒きながら静かになれる場所を俺は探していた。
えぇい、こんな所にいられるか一人で食事をさせてもらう。
まず最初に死にそうな奴が言うセリフですね、現在進行系で社会的に死にそうです。
なんなの、三浦達と敵対すると死ぬのかよ。もうマヂ無理、クラスの空気キツすぎ。
本当、私って馬鹿。思わずソウルジェムが濁るレベルの絶望だわ。
「そう言えば、屋上って閉鎖されるんだっけか」
学生の危険がどうのこうの、抗議によって屋上への立ち入りは禁止される未来がある。
というか、よく考えたら現在も立ち入り出来ないはずだわ。
もっとも、未来の屋上のようにガチガチのロックが掛かってたとは思わんがな。
屋上に向かうと、案の定ロックは南京錠程度のチャチな物だった。
ご丁寧にぶち壊されたそれは若気の至りによる器物破損、若者の行動力は時に驚くべきものがある。
「おぉ、町並みが全然違うな。ちょっと、ノスタルジックだわ。奥華子のガーネット流れそう」
屋上から見た景色は、走馬灯のように俺に過去を幻視させる。
そう言えば、あの時は職場見学の紙を風に飛ばして黒いレース見たんだっけ。
「黒いレースか、誰のだったか」
「……馬鹿じゃないの?」
「誰だ、貴様見ているな!」
思わず聞こえた声に振り向くと、風が俺の前を通り過ぎた。
まるでアニメの第一話のように、何だったらメガネの委員長のスカートが翻った時のように時間が遅くなる。
時よ止まれ、そしたらもっと女子のパンティが見えるから。
眼の前で漫画並みのトラブルが起きていた、ひらひら舞うスカート、黒いレースがバッチリ見えていた。
「見てるのはアンタでしょ……アンタ、比企谷八幡だね」
「そういう君は、川崎沙希」
「私の事、知ってんだ」
「あっ……あぁ、ウチの妹がお前のとこの弟と仲が良いから、その流れで」
思わず答えてしまったが、そう言えば初対面だと言うことを思い出した俺は取り繕う。
っぶねーわ、べーわ、マジヒッキー迂闊っしょ!
おっと、思わず戸部になってしまった。
これは戸部るという造語を作ってしまっても良いかもしれない。
「ふーん、あっそ」
「所で、何で俺の事を……って早くね、ナチュラルにスルーしていなくなりやがった」
帰り際見えた耳が赤かったのはパンツを見てしまったせいだろうか、ありがとうございます!
『古人曰く、人という字は人と人が支え合っている。
人とはお互いを助け合い、助けられる存在である。
しかし、現実には搾取する側と搾取される側が存在する歪な社会が形成されている。
社会の縮図である学校ですら、その影響からは逃れられない。
個人の影響が複数の人間に対して、良し悪しに関係なく作用するのだ。
人という字は威張る人間とそれを支える人間という字である。
だが、人は無知ゆえにそれが当然だと考える。
ならば、無知を啓発し導く行為こそが尊いと言える。
従って、人を導く尊い仕事として私は教師の職場である学校を希望する。
そして、俺がリア充共を駆逐する』
職員室の一角、革張りの黒いソファーがパーテーションに区切られていた。
開け放たれた窓からは風が入ってきて、目の前の彼女の髪を揺らす。
顔は憤怒に満ちており、幽鬼のような姿、金剛力士像のモデルだと言われても納得する自信がある。
「比企谷、私が何を言いたいか分かるか?」
「ありがとうございます」
「違わい!どうして、途中まで良い感じなのに最後が駆逐するなんだ!なんだ、リア充に親でも食われたのか!」
「食われてないですけど、でもあの腐ったミカン共が」
「おいおいおい、仮にも教師を目指してるなら言っちゃいかんでしょうが、このバカちんがぁ~」
「あっ、似てます。でも、どっちかって言うと先生はヤンク――」
ミ、と続く前に顔に拳が飛んできた。
ふっ、残念だったな右手の拳が来ることを読んでいた俺は簡単に掴めるぜ。
しかし、ごすっと地味な音がボディーから聞こえる。
馬鹿な、右手は確かに封じたはず一体何が……なんだと。
「ひ、左手!?」
「ああん?」
「すいまえん、GTOでしたね。ひでぶ!?」
追撃のボディブローがやってきた。
どうして誰も助けてくれないんだ、区切られてて見えないからだ。
見えない所でするのは痛いことではなくエロいことが良かったです。
その後、メチャクチャ先生の仕事を手伝う羽目になった。
高校生では職場見学なる物がある。
教師が各種問い合わせや調整を行い、それから問題になった際に困らないように予め考えられる要因を洗い出し、生徒にウザいと思われながらも注意喚起する。
おっと、最後に関しては俺だけで可愛い新米教師には男子学生はにっこりだったね、なお女子はお察し。
しかし、中間試験の雑事と重なるのは如何なものか。
教師時代は、このカリキュラム組んだの誰だよ試験やりながら仕事するとかマジブラックとか言ってた。
そう考えると、試験勉強するだけで後は職場見学に行ける事の楽さよ、先生ありがとうございます。
「意味、あるんすかね」
「こんな時期だからこそだろ、HRで言っただろコース選択の話」
「あぁ、言われた覚えはないですけど知ってますよ。基本アウェーなんで全然聞いてないんですよ」
「ごめんなさい、こんなときどうすればいいか。笑えば良いのかね?」
「俺が忍者だったら慰めるためにラーメン奢りますかね。激辛ラーメンとか」
「あぁ、最近コンビニで見たけどあれって美味いのかな」
「これからどんどん増えていきますよ。食べてないなんて、勿体無い」
「近場だと何処だろ」
「亀戸とかですかね」
二人で黙々と携帯で検索する姿がそこにはあった。
ラーメンしか、もはや興味がない。
そんな俺を呼ぶ声がする、そんなことよりラーメンだ。
俺はラーメンスレイヤー、ラーメンは一品残らず食べ尽くす。
「あー、こんな所にいた」
「ラーメンか?」
「や、違うから。てか、何の話?んんー?」
「ラーメンではないのか」
どうやら、由比ヶ浜は俺を呼びに来たらしい。
悪いな、拘束されているんだ。
俺はここで改造されて社畜になるんだ、ゆくゆくは社畜教師として働かされるのだ。
「なんか用か?」
「貴方が来ないから探しに来たのよ、由比ヶ浜さんが」
「倒置法いらなくね、知ってたけどさ」
「わざわざ聞いて歩いたんだから、みんな比企谷って何?人名?とか聞いてたけど」
「だからいらなくね、追加情報いらなくね?」
誰にも知られないとか、俺ってばバスケの才能があったわ。