八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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俺は戸塚が猫系でも一向に構わない。むしろ猫耳とか最の高だと思うんだが、いや待てよウサギも捨てがたい。それはそれでセンシティブだが、普段から妙に色気があるからな

会場にはそこそこの人がいた。それなりに盛況でペット連れもいる。

どちらからともなく手を握る、昔から子供二人で出かけていた名残だ。

小町は俺の手をブンブン振り回し、脱臼しそう、脱臼した。

肩、ないなった。

 

「どしたのお兄ちゃん」

「俺の肩はボロボロだぁ!」

「う、うん。そうなんだ」

「と思ったけど気の所為だった、でも痛い」

 

さて、この東京ワンニャンショーだが、要するにペットの展示即売会だ。

ちょっとした珍しい動物もいるのだが、入場無料で来れるのだ。

恐るべきイベント、やっぱり千葉は最高だぜ!

 

「ペンギンだ!ペンギンだよ、これ!ペンギンいるよ!」

「ペンギンってラテン語で肥満って意味らしいぞ、そう考えると肥満のサラリーマンが営業で外回りしてるみたいだよな」

「うわぁ、急に可愛くない。それだと課長とか同期、ライオンとかトカゲだよ」

「ハムスター、包丁持ってそうだな」

 

これは恋なのか、それとも食欲なのか、それは違うアニメか。

シロクマくん程度のほのぼの系で良いです。

鳥コーナーでは極彩色の世界が広がっていた。

黄色に赤に緑に、原色がこれでもかと塗りつけたような出で立ち、うーん何なのお前ら一瞬一秒が美しいの?永遠とか欲しくないとか言っちゃう系なの。

 

そんな色彩の豊かな世界に艶やかな黒髪が揺れる。

片手にパンフレットを持った彼女がキョロキョロすると、二つに分けて結わえた髪が揺れる。

何だお前、双頭の蛇かな?捕まったら電流とか流れる感じか?ブンブン振り回しすぎでしょ。

 

「おい、雪ノ――」

「ッ!?」

「――あ、痛ッー!?」

「あ、あら?珍しい動物がいたわね、どうして普通のホモサピエンスがここに」

「おいやめろ、俺は聖剣なんぞ抜かんぞ」

 

意外、それは髪の毛!ツインテは危険だわ、ポニテ派に転向するしかない。

というか聖剣抜くとかその先は地獄だぞ!

俺が雪ノ下と話していると、ひょいと俺の背中から小町が顔だけ出した。

どしたの、人見知りなの?あっ、でっかい猫が見える!ねこはいます。

 

「やー、はじめまして比企谷小町です。兄がいつもお世話になっております」

「挨拶出来てえらい」

「初めまして。雪ノ下雪乃です。比企谷君の……比企谷君の何かしら?クラスメイト?友達?微粒子レベルで知り合いかしら?」

「微レ存なのかよ」

「遺憾の意である」

「訂正するニダ。嘘だドンドコドーン」

「訂正するわ。誠に遺憾ながら上司の雪ノ下です」

「あぁ、いえ、いまので大体分かったんで大丈夫です」

 

この人が部活の人?そうかも。

この時間、わずか二秒、アイコンタクトにより通じた。

 

「猫か、猫なんだろ、猫しか勝たん」

「何を言ってるのかまるで意味が分からないわ。それで比企谷くんはどうしてここへ」

「毎年来てるんだよ、妹と」

「うちの猫と会ったのもここなんですよー」

 

うちのお猫様は生意気にも血統書付きである。

小町の飼いたいに即決だった。

支払いの為だけに呼ばれて、支払い終わったらそのまま帰された親父を哀れに思ったものである。

キャバ嬢に貢ぐおじたんかなぁ。

 

「仲がいいのね。じゃぁ」

「おう、じゃぁな」

「ちょちょちょ、ちょと待てーい!せっかく会ったんだし、一緒に回りましょ!ねっ!ねっ!」

 

小町が距離を詰めるように一歩、二歩と近づく。

雪ノ下が距離を離すように一歩、二歩と離れる。

やめろ、そいつに光属性は効く、やはり闇の者だったか。

 

「いや、邪魔じゃないかしら……比企谷くんが」

「俺かよ」

「大丈夫です。兄は集団行動だとミスディレクション使えるから!邪魔じゃないです!」

「そのボッチ、消えるよ……」

「違う意味で場に溶け込めるのね、才能の無駄遣いだわ。バスケしなさいよ」

「バスケが、バスケがしたくないです!」

 

平塚先生にでも言えと、奉仕部じゃなくてバスケ部がいいって。

いやだよ、バスケって不良がやってそうじゃん。

俺はスラダンとアヒルの空で詳しいんだ、スポーツ系はだいたい不良が混じってるって分かんだね。

 

何故か三人で見ることになり、珍しい鳥コーナーから回ることになった。

ド派手な南国系から今度は金属の手すりで区切られたスペース。

仰々しいくちばし、研ぎ澄まされた爪、頑強な羽という雄姿がそこにある。

 

「鷲!鷹!隼!」

「お兄ちゃん、変身しそうな勢いで叫ばなくても、可愛くない」

「えーほんとにござるかぁ?」

「うざっ!」

「貴方には分からんでしょうねぇ、可愛いと可愛いと思うて……」

「美しいと思うけど、どこかの謝罪会見みたいね、みたいじゃないかしら?」

 

所詮、おなごには分からぬ……。

次は小動物ゾーンに入る。

ハムスターだのウサギだのフェレットだのとペットをあつめた、所謂おさわりコーナーだ。

おさわりって聞くとなんかセンシティブだわ。

 

「小町、次行こうぜ」

「てしてし、お兄ちゃん先行ってもいいのだ」

「おい、口調、おい」

「とっとこ行けお兄ちゃん。ヒャッハー踏みそうで可愛い」

「そうか……」

 

お兄ちゃんは、悲しそうに去るぜ!

この比企谷八幡、ハム太郎に勝てはせん!

この日、ハム達は思い出すのだろう。人類に飼育される自分達の現実を。

駆逐されるなよ、妹よ。

 

「じゃあ次の次が猫ゾーンだ」

「そ、そう。ではせっかくだし、でも別に興味があるとかじゃないわ」

「分かってる分かってる」

「むぅ……本当に分かってるのかしら、この男」

 

雪ノ下は不満そうにしながら、すでに立ち上がりパンフレットを見ながら歩きだしていた。

行動と言動が一致してないんですが、分かってるのかしら、この女。

が、犬ゾーンが見えた瞬間ピボットターンさながらの動きで俺の背後に回り込む。

馬鹿な、この俺が、背後を取られた!やられる!これから瞬きで返事をするように指示される命がけの尋問が始まるかもしれない。

と思ったが、そんなことはなかった。

癖になってんだよね、犬見ると隠れるの。

 

「どうかしたか」

「いえ」

「知ってるか雪ノ下、ここは子犬ばかりだぞ」

「むしろ子犬のほうが、ムムッ、ムムム……別に苦手じゃないわよ。得意じゃないだけ」

「世間じゃそれを苦手って言うんだぜ、雪ノ下よ」

「苦手……取り消しなさい、今の言葉、私は苦手じゃないわ」

「所詮、雪ノ下は敗北者じゃけぇ……」

 

いや、俺もその犬だったら怖くて逃げるよ。

だって、炎の上位互換らしいからね、死ねる。

 

「比企谷くんは犬派?猫派?」

「派閥争いを外から見る派、お前は?」

「質問をしてるのは此方よ。二度はないわ」

 

怖いよ、背後取りながらその発言はマフィアだよ。

でも猫派ですよね、八幡知ってるんだわ。

 

「てっきり、貴方は犬派だと思っていたわ。必死だったから」

「あー、戸塚とのテニスか。確かに戸塚は子犬系だが、しかし俺は戸塚が猫系でも一向に構わない。むしろ猫耳とか最の高だと思うんだが、いや待てよウサギも捨てがたい。それはそれでセンシティブだが、普段から妙に色気があるからな。しかし、戸塚と一口に言ってもどの動物と合うかマリアージュするかは試してみなければ分からない、いっそ原点に戻って今の戸塚の方が最高なのでは?無印の方が続編より良いというのは諸説あるからな」

「……そう。こんなときどうしたらいいか分からないわ」

「進めばいいと思うよ」

 

背中をチョンチョン押されてわんわんゾーンと書かれたチープなゲートを潜り抜ける。

おい、いつまで背後取ってるんだ。銃でも突きつけてんの?

雪ノ下は沈黙を保っていた、答えは沈黙、それがこの場の唯一の答えと言わんばかりだ。

 

「キャーキャー!こっち向いて、可愛い!可愛い、写真撮りますよー!目線くださ―い!」

 

周囲が盛況なだけに余計に気になる。

っていうか平塚先生だな、あれ。

何してんだよ先生!なんだよ、意外と楽しんでるじゃねぇか。その先に結婚があるからよ、婚活止まるんじゃねぇぞ……。

 

「ねぇ、あれ」

「猫はこの先だ」

「えっ、でもあれ」

「立ち止まる暇はない、いいな」

「だって、あそこの」

「俺達は何も見ていない、いいね」

「あっ、はい」

 

後生だから、可愛そうでしょ!プライベートで知り合いに会うのって!

そんな俺達の前に、ダックスフンドが走ってくる。

野生のダックスフンドが現れた。

 

「ひ、比企谷くん、い、ぬが……」

 

俺の後ろで反復横跳びするかのように、おろおろして視線を彷徨わせる雪ノ下がいた。

そして、何を思ったのか意を決して俺の背中を押した。

いや、背中を押してほしいタイミングは今じゃない。

 

「行きなさい比企谷くん」

「どうせ後でどうして行ったか責めるんだろ」

 

大人は理不尽だって思ったね。

モードビーストになった犬を取り押さえる。

フハハハ、うちの猫を無理矢理捕まえてる俺に勝てるわけ無いだろうが。

犬は悲しげな瞳でクゥンと泣いてから、ハッとした。

まるで思い出したとでも言いたげだ、そしてクンカクンカしてからペロペロしてきた。

やめろ、俺はルイズじゃない。

びっくりして俺は犬を手放す。

 

「どうして離した!言え!」

 

落ち着け、キャラ崩壊してるぞ。

犬は逃げ出さず俺のまわりをグルグル走り回ったら、ごろーんと転がって腹を出す。

しばらくハッハッハッとしたら、また起き上がって再び掛けてごろーん。

走る、ごろーん、走る、ごろーん。

なんだこれ、撫でろという圧を感じる。

 

「あっ」

「あっ」

「あっ」

 

犬の飼い主らしき人が走ってきて、俺と雪ノ下は固まった。

飼い主らしき人も立ち止まり、此方を指差していた。

そこにいたのは、由比ヶ浜だった。

 

「ど、どうしてヒッキーと一緒なの?」

「……べ、別に理由なんてないわ」

「おいやめろ、誤解を生むからその反応はやめろ」

「あー、うん、そっかー、やー、そういうことかー」

「おいやめろ、その反応は誤解しているやめろ」

「ご、誤解しないで。たまたま、そうたまたま一緒にいただけだから」

「ねぇ、やめろって言ったじゃん。やめろよぉ!」

「あはは、分かってるから。大丈夫、だよ?うん、安心して」

「だからやめろって言ってんだろぉ!安心できんわ!」

 

この後、誤解した由比ヶ浜に理解させるのに多大なる時間を弄した。

理解力ゼロかよ、この野郎。

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