八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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誰だよ、攘夷戦争ってなんだよ、参加してねぇよ。いや、確かに目は腐ってるかも知れないけどね、そこしか共通点無いよね

材木座は暫く黙っていた。

自分の行動に反省したのかも知れない。

 

「八幡はさぁ……」

 

思いつめたような、そんな声が俺を呼ぶ。

おい、ちょっとナイーブなヒロイン面するなよ。

お前、いつから負けヒロインになったんだよ。

 

「昔の、あの頃の貴様はもっと滾っていた。その強靭さと単身奇襲を仕掛ける勇猛さ、かつて敵味方からその夜叉の如き姿を恐れられていた。あの頃の、刀一本で攘夷戦争に参加していたお前はどこに行ったんだ!」

「誰だよ、攘夷戦争ってなんだよ、参加してねぇよ。いや、確かに目は腐ってるかも知れないけどね、そこしか共通点無いよね」

「フッ、そうやってお主は女子供ときゃっきゃうふふしてればよい。所詮貴様もまやかしの日常で微睡む戦うことを忘れた戦士。俺がこの後どうするかだって?俺は、ただ壊すだけだ……この腐った世界を」

「急に何いってんの、ねぇ、何いってんの?きゃっきゃうふふ出来るようなハーレムは現実にはないんだよ、ジャンプの世界だけなんだよ。というか彼女とかいないししてねぇぞ」

「……彼女?えっ、あ、あれー?」

 

誰もきゃっきゃうふふしてないわ。

いや、たしかに傍から見たら男女比は偏ってるけど、それ吹奏楽部の男子に言えんの?

響いちゃってユーフォニアしてるアイツらに言えんの?肩身狭そうだけど。

 

「はむん、奉仕部など片腹痛いわ!目の前の人間一人救えず何が奉仕か!」

「あっ……」

「誰も救えぬのだろう。綺麗事を並べるだけで、行動で我に示してみろ!」

「おいおい、死んだわコイツ」

 

もうすぐ夏も本番なのに、アイスピックで地球をカチ割ったらちょうどキレイに割れるんじゃないかってくらい冷え切った部室だった。

寒いね、惑星規模かよ、凍てつく波動かな。

 

「…………そう、では証明してあげましょう」

 

雪ノ下の凍てついた視線が材木座を射抜いた。

ひぃという悲鳴、ほら見ろどこがきゃっきゃうふふだ、結構リアルに怖いからな。

 

 

 

遊戯部の部室は奉仕部の部室と同じく特別棟にあった。

色々な学校はあれど、今考えるとおかしな部活が多いよなこの学校。

オカルト研究部とかSOS団とか古典部があっても、俺は驚かないよ。

材木座を先頭に、古典RPGよろしく、流れで俺達は一列についてきていた。

 

「じゃあ、行くか……」

 

なんだかんだでここまで来ていた。

うむ、と偉そうにふんぞり返る材木座、無表情の雪ノ下、居心地悪そうな由比ヶ浜。

一番後方の俺はまるで引率の先生のようだ、わぁ材木座くん楽しそう、みたいなね。

そんなパーティーの三番目、由比ヶ浜が不意に振り返る。

首だけを後ろに傾げて、斜に構えて、なにそれシャフ度なのとツッコミたい状態だ。

 

「ねぇ、ヒッキー彼女いないの?」

 

発言までも斜に構えた、英語で言うならシニカル、すごい皮肉な質問だった。

逆に、いるように見えますか?

 

「いないけど」

「けど?作ろうと思ったら作れるってこと?」

 

追撃も皮肉たっぷりに聞こえる、そんなつもりじゃないよな由比ヶ浜。

悪意のない言葉ほど人を傷付けるんだぞぉ。

 

「愚問よ、由比ヶ浜さん。この男にまともな男女交際なんて不可能だわ」

「ハッ!ライン越えだぞお前。いいか俺は人間として自立してる、自立してるということは完璧な存在、つまり究極生命体だから彼女とかいらないで自己完結してるわけだ。別に出来ないんじゃない、作らないんだ」

「比企谷くん、悪魔の証明って知ってるかしら?ググるといいわよ、ID真っ赤になる前に」

「してない」

 

お前、どこでそんなサブカルネタ仕込んだ。

あれか、妙にタイムマシンについて質問した時期があったが、もしかしてゲームやったのか?

 

「でもさ、ゆきのんと出かけてたじゃん?あれは?」

「由比ヶ浜さん、世の中には言って悪いことと言うべきでないことがあるのよ」

「どうでもいいけど、もういいか?材木座がチラチラ見てんだけど、後ろ何回も振り返って着いてきてるか気にしてるんだけど」

「そっかー、うん、そっか……あ、ごめんごめん、じゃあ行こうか」

 

焦ったように由比ヶ浜は扉に駆け寄り、上機嫌な様子でトントンと扉を叩いた。

さて、俺は鈍感系主人公、つまりはラノベの主人公ではないので男女の機敏に敏いのである。

つまり、これはあれだ、部活内にカップルがいると気不味いなと、そういうアレだ、八幡は詳しいんだ。

 

「私は来た! 私は見た! ならば次は勝つだけのこと」

「おい、どこの動けるデブだよ」

 

戸を開けばそこには積まれた箱の山、本、パッケージ。

まるでそれはビブリオマニアの書斎や古い街のおもちゃ屋さんのよう。

あっ、TRPGの背景で見たとでも感想が漏れそうなそんな有様だ。

 

「ここ、ユーギ部じゃないの?なんかゲームっぽくない」

「そうかしら、私は此方のほうがしっくりくるけど、由比ヶ浜さんがイメージしてるのはピコピコの方よね?」

「ピコピコって、おばあちゃんかよお前」

「だ、だって、ピコピコ言うじゃない」

 

私、不満ですと顔に朱色を差して雪ノ下が俺を睨みつける。

悪いが事実だ、恥ずかしいだろうが甘んじて受け入れろ。

 

「まぁ、ゆきのんゲームやんなさそうだよねぇ」

「由比ヶ浜さんはやるのかしら?」

「やるよ、スマブラでしょ、マリカでしょ、マリパとどう森、ポケモンとか」

「す、すごい」

 

雪ノ下が慄いていた。

戦慄しているところ悪いが、全部同じメーカーで、みんなでワイワイやるゲームだ。

たぶん、コミュニケーションツールとしてやってるんだろうな。まぁ、俺はいつも一人でやってたけどね。

 

「あとFFとか。画面綺麗だし、超カッコいいよ!映画みたいで泣けるし、チョコボ可愛い」

「ぺっ」

「えっ、なに、怖……」

 

材木座が唾を吐く仕草を見せる。

見せるだけだよな、仕草だけだよね?

全然喋らない不審者がキレだしたので由比ヶ浜がビビっていた。

まぁ、不審者だし仕方ない。

怯えた由比ヶ浜が俺の背中に隠れて、それに対して材木座が余計に苛ついて追い打ちを掛ける。

 

「にわかめ!」

「は、はあ!?意味分かんないんだけど!超ムカつくんですけど」

「やめとけ材木座、俺も昔は同じだったが今はライトユーザーにも優しくなった。そう、寛大になるのだ。まぁ、新人女ライターに書かせるのはやっぱつれぇわ……」

「お前は何を言ってるんだ?」

 

そのうち分かるさ、いまどのくらいまでシリーズ出てるんだろう。

まぁ、どのシリーズも良いものだ。

ザナルカンドは見ただけで泣ける、生まれ変わっても魂に刻まれてるんだろうな、あの感動は……。

 

「どうした八幡、お前消えるのか?」

「すごく遠い目をしている」

「そんなことより部員はどこにいるのかしら」

 

一向に進まない材木座はリーダーの座を降ろされ、ガンガン行こうぜな雪ノ下が前に出る。

少し進むと声がする。

積み上げられた本や箱を回り込めば、男子が二人いた。

あー、たしか相模の弟と俺が色々と手伝わした奴、あと材木座となんだかんだ仲良くなった奴らだ。

そうかそうか、遊戯部ってコイツらいたのか、思い出したわ。

となると、この後の展開は脱衣大富豪だったなと流れるように記憶が蘇った。

 

「その黄色い上履き、貴様らラーイエローか」

「いや、一年生ですけど」

「そこはマジレスするんじゃない!空気を読まんか!」

 

年下と分かったからか、強気に材木座が吠える。

お前、自分より弱そうな相手には態度大きくなるよな。

 

「何を遊んでいるの?」

「お、おいアレって」

「あぁ、二年の雪ノ下先輩だ」

「な、なんだって……」

 

ガタッと片方が立ち上がり、片方がメガネをクイッとしながら驚いている。

マジかこいつ、結構有名人だったんだな。学年を越えて知られるとはまぁ、可愛い先輩の名前とか俺も知ってたな、めぐり先輩とかめぐり先輩とかめぐり先輩とか、めぐり先輩しか知らねぇじゃねぇか!

 

「フハハハ!久しいな、昨日は随分と大口をネットで叩いていたが今更後悔しても遅いぞ。泣いて無様に謝ろうとも慈悲はない。我が人生の先輩として灸を据えてやろう!じゃあ、先生方よろしくお願いします」

「すごい丸投げを見た」

「この男、自分の発言が恥ずかしくないのかしら?」

「ねぇ、共感性羞恥って言葉知ってる?」

「う、うぬぅ……」

 

俺達の言葉の刃に、材木座はラオウのような呻き声を上げて崩れ落ちた。

メンタル弱っ!

 

 

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