八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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リーマンショックって、サラリーマンがショックって意味じゃないのよ

前回までの八幡ライブ、突如廃部の危機に陥った奉仕部。

八幡は起死回生の策として、アイドルグループを作ることに……なったりはしていない。

本当は東中の変人と名高い、雪ノ下雪乃と一緒に奉仕部というのを作り、宇宙人とか未来人とか超能力者とかと奉仕活動を……という訳もなかった。

 

本当は遊戯部とかいう部活で助けを求めるのび太くん(材木座)を助けたのだった。

倒し方は簡単デュエルしたんだ、遊戯部らしいな。

 

「私のターン、私はフィールド魔法を発動。更にエクストラデッキから除外することでモンスターを特殊召喚。フィールド魔法の能力でライフを払ってリリース無しで通常召喚。召喚が成功したので能力ですべてのモンスターを破壊し、一番攻撃力の高いモンスター分のダメージを与えるわ」

「うわぁ、ひとりでソリティアやってるよ」

「材木座が一撃か、エゲツねぇな」

 

なお、現在は我が部室の魔王に得意分野で挑み調子に乗っていた材木座が僅か一週間で逆転されていた。

誰だよ、この女に遊戯王なんて教えたの。半端な気持ちで入ってくるなよ、デュエルの世界によ。

 

「雪ノ下、そろそろだぞ」

「そう、フッ……無様ね」

「ぬぅぅぅぅ、おのれ、おのれぇ……」

 

一週間前、初心者相手にワハハハと高笑いしていた材木座が懐かしい。

俺はチラッと時計を見て、復讐というにはオーバーキル気味の雪ノ下に声をかける。

今日は、由比ヶ浜の誕生日会を部室でやるのだ。

本当は学校に色々と持ってくるのは問題があるのだが、そこは俺がせっせと貯めたラーメン屋の一杯ただスタンプ券で先生に承諾させた。

まぁ、ケーキくらい良いだろうとか祝ってもらえる年齢かとか闇深いことを言っていたが気にしないでおく、こわっ……とづまりしとこ。

 

「やっはろー、あれどうしたの?」

「少し早いけど、あんまり遅いと下校時刻になるってひ、ひ、引き気味くんが」

「おい、俺の名前で遊ぶんじゃない」

「そうね、引かれ気味くんだったわね」

「悪化してるじゃないか」

 

俺達のやり取りに、ムハ、ムハハハと笑い声を上げる材木座。

おい、お前が笑うのかよ、しかも作り笑いじゃないか。

 

「今日は、ケーキ焼いてきたのよ」

「華麗にスルーしたな」

「今日は、ケーキ焼いてきたのよ」

「ドラクエかな。同じこと言ってらぁ」

 

そう言って、雪ノ下がお店で買ったんじゃないかとでも思えるようなちゃんとした紙の箱を取り出して開ける。

開けると、そこには立派なショートケーキがホールである。

本当に買ってないの?クオリティーやばくね?

 

「へ?ケーキ、なんでケーキ?」

「お前、誕生日じゃん」

「私、誕生日じゃん!」

「そうだよ」

 

今気付いたと言わんばかりに驚く由比ヶ浜、そこからは切り替えも早くテンションが上がっているのかキャッキャウフウフ、女子二人で盛り上がっている。

おい、助けを求めるように俺を見るんじゃない。

百合の間に挟まると怖いんだよ、後方で見ている材木座おじたんが煩そうだし。

 

「ゆきのん、ありがとう!誕生日覚えてたんだー」

「む、むぎゅ……近いわ由比ヶ浜さん、あとデカイ、暑苦しい」

 

何がとは言わない方が良いんだろうな。

羨ましい体勢だが、ふと思う。

そう言えば前回は何か気不味くなって部活に来なくなり気味だった。

まぁ、俺と雪ノ下が付き合ってるという勘違いをしていたからなんだが、それで部活がダメになるとか俺ってばサークルクラッシャーかよ。

後、俺が余計なことを言って拗れてしまったこともあったな。

あれはあれで笑い話にはなったが、あの頃はガチで悩んだ物だ。

 

「これ、プレゼント」

「ま、まさかプレゼントも!」

「ほら、俺からもやるよ」

「えっ、聞いてないんだが。我、何もないんだが」

 

元からお前を誘ってないからな、気にするな俺もお前を気にしないことにするからな。

材木座が所在なさげにソワソワして、机の遊戯王カードをチラチラ見てる。

たぶん、貰っても喜ばないからやめとけ。

 

 

 

なんやかんやあって夏休み。

由比ヶ浜が事故のことを負い目に感じているのを和解、とかそういうのは穿り返さなかったのでなかった。

そういうのは時間が解決してくれるとか、なぁなぁで済ませるのもありだなと俺は社会人になって学んだ。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん、何してるの」

「株」

「株は18歳からだから出来ないでしょ」

「未成年でも親の同意があれば0歳から証券口座作れるんだぞ。これからはサブスクの時代が来るし、有名所は絶対上がるんだって。なんなら、今のリーマンショックが最安値すらあるから」

「あぁ、不景気だもんねー。うんうん、サラリーマンも大変だよねー」

 

リーマンショックって、サラリーマンがショックって意味じゃないのよ、小町ちゃん。

絶対分かってないだろう妹の面倒を見ながら、夏休みを過ごしていた。

読書感想文なんて言うもんだから、ちょっと見てやろうと思ったのだが熱が入りすぎてしまって中々の完成度になってきた。

まぁ、でも、先生がコンクールとか出したら表彰されるんじゃねと思えるような出来には出来てはいる。

ただ、こういうのってクオリティーが高すぎると身内の犯行を疑われるので要点だけ教えて本人によるオリジナリティを出させるというのも絶妙に必要だったりする。

 

「何か買ってくるわ」

「マジ、じゃあ小町ハーゲン、ハゲ―ン食べたい!」

「ここぞとばかり高い物を要求してくるなぁ」

「お金じゃないでしょ、気持ちが大事なんだよお兄ちゃん!」

「いや、値段じゃなくてカロリーの話」

「……ほら、外は暑いし実質ゼロカロリー?」

「ゼロカロリーかぁー、未来に生きてるなぁー」

 

それ流行るの大分先だけどね。

既に七月も終わり、アブラゼミが大合唱。

俺はこういうのがタイプです結婚して、いいでしょうと彼らは大合唱で婚活中である。

うるせぇ、誰だよ風物詩とか言ったやつ。

ただの公害だぞ。

小町の負担を軽くするため暫くは俺が家事、ついでに自由研究の手伝いも兼ねて本を買いに行く。

別に通販でもいいんだが時間あるし、海浜幕張界隈で大きめの書店を見るのも手だろう。

ふらふらっと歩いていると緑色のジャージが目に入った。

ウチのジャージ、なるほど部活帰りの学生かな。

 

「と、とつ!?」

 

サラサラと流れる綺麗な髪、部活動をしているのに眩しい白さの手足、美少女にしか見えない線の細い体型。

戸塚だ、部活帰りの戸塚がおる!

しかし、その戸塚は足早に手を振りながら誰かに近寄っていった。

誰よその男!同じ部活仲間だろうなぁ。

そっか、戸塚は部活か。部活には友達いるよな。夏休みだし、友達相手に笑顔を向けるくらい当たり前だよな。

俺だけが仲良しなんていつからそう思ってたんだろ。

俺の一番が、ソイツにとっての一番じゃないなんて、なんで忘れていたんだろうか。

ほんと、私ってバカ。などとメンタルが鬱になってるが切り替えよう。

 

「八話」

「見た」

「堕ちたな」

「あぁ」

「アオいいよね」

「いい」

 

切り替えようとした矢先にゲーセンにでも行こうとしているのか材木座がいた。

友達らしき奴らと話している、単語だけの会話をしている材木座だ。

何だお前ら、ゲンドウと冬月なのか。

あんなに楽しそうにまどマギの話をしているところを邪魔しちゃ悪いし、世間体も悪いと思うので気付かないふりしよう。

まったく、専門用語だけで話しちゃうオタクくんさぁ、そういうのが通じるのって重度のオタクだけだからなぁ。

自分より下に見える人間を見ると少しだけメンタルが回復したな。

 

「理系コーナーは……」

 

本屋に来て、店内で理科系の本を探していると、ふと視線を感じる。

いる、何かがいる、俺の背後にいる!いや、夏だからって急にホラーになる訳ではないけど。

でも、この見られてるって感覚はなんだろうな、首の後ろになんかモヤッと、これが殺気って奴なんだろうか。おいおい、誰かに俺、殺意を抱かれてるって訳?

でも明らかに呼吸する音とか物音がするんだよなぁ。

意を決して振り向くとそこには見覚えのある人物がいた。

 

「…………」

「…………」

 

肩にカーディガンを羽織り、スカートを履いている清楚な出で立ちの女。

女は、そっと本棚に物音をたてないように持っていた本を戻していた。

そんな体勢で、俺とガッツリ目があっている。

うん、雪ノ下雪乃だね、彼女がいた。

先に動いたら死ぬ、みたいな感じで見つめ合う俺達。

やめろ、目と目が合う瞬間好きだと……違うな、見つめ合うと素直にお喋りできないほうだなこれは。

 

「グラビア」

「猫」

「くっ」

「ふっ」

 

何かを悟ったのか、それとも不利と見たか雪ノ下は逃げるように書店を後にする。

不毛だ、またひとつ不毛な戦いが行われてしまった。

ところで雪ノ下雪乃が持っていた本は、猫の写真集であった。

もういっそ飼えよ。

書店から本を見繕って出ていこうとすると、呼び止める声があった。

 

「あっ、ヒッキー」

 

ふと、立ち止まったが俺の名前は花の高校生比企谷八幡、ひょんなことから高校生になってしまったが断じて引きこもり、通称ヒッキーではないので反応したら負けだった。

 

「ちょ、無視するなし」

「……おう」

「間!なに、今の、間ぁ!」

 

思う所があったのでと、案の定由比ヶ浜がいた。

声で分かっていたが、由比ヶ浜だった。

黒いキャミソールに透かし編みのカーディガン、サンダルと夏仕様。

なんだろ、カーディガン流行ってんのかな。

 

「ヒキオじゃん」

 

ふと、そんなことを思ってると渋谷の街とか六本木にいそうな、背中の防御力なさげなミニスカワンピを纏った三浦がいた。

こうして見ると、マジでキャバ嬢に見えるから不思議。

高校生に見えないな、マスカラとかアイラインとかアイシャドウとか色々やってるからかもしれない。

目元のメイク種類多いな、流行ってんのかな。

 

「ユイ、あーし、海老名と電話」

「り」

 

短いやり取りだが、何か成立したのかカツカツとヒールの音を発しながら離れていく三浦。

り、って何、材木座より短縮言語で会話してない?

 

「今日はその、優美子たちと遊ぼうと思って……まさか、見られるなんて」

「おい、浮気の現場を目撃した旦那への言い訳みたいに言うな。あと、優美子って誰だ」

「だ、旦那!?て、てか優美子は優美子だし、さっき喋ったでしょ!」

 

なんだ、あーしさんのことか。

あと、ヒキオじゃんは喋ったことになるのか、ならんだろがい。

 

「ヒッキーは?」

「買い物」

「へー、誰かと遊んだりしないの?」

「しないな」

「夏休みなのに?」

「夏休みだから遊ばないんだろ」

「えっ?」

「えっ?」

 

夏休みは休みのためにあるわけで、遊ぶためになあるわけじゃないんだが。

これが思想の違いって奴なんだろうか。

 

「夏生まれなのに夏苦手なんだね」

「……なぜ私が夏生まれだと知ってるのかしら、貴方ってもしかしてストーカー?」

「なにそれ!ゆきのんの真似!?ちょっと似てるし!」

 

さっき雪ノ下がいたからな、なおここに本人がいたら俺達は死んでる。

 

「次はヒッキーの誕生日だし、誕生日パーティしようよ!」

「いい。いらん。やめろ」

「拒否られた、拒否られ三段活用!?」

「いや、パリピじゃないし俺。あと、小学生じゃないのにお誕生日会って恥ずかしくね?どんな顔したら良いか分からんし」

「笑えばいいと思うよ」

 

お前はシンジくんか、じゃあ俺は綾波。

私の代わりはいるもの、だって私は社会の歯車、うわそんな綾波嫌だ!

 

「じゃあみんなで遊びに行くのは?」

「みんなって?」

「友達?」

「友達って?」

「……い、嫌なら二人で、とか?」

「戸塚と二人か、いいな」

「さいちゃん!?何で、今の流れでさいちゃん!?」

 

お前、だって友達と言えば戸塚だけしかいないだろ。

お前らはアレだ、クラスメイトとか部活動の仲間だし。

 

「まぁ、お前と行くのもいいけど。恥ずかしくないか」

「恥ずかしくないけど?」

「いや、だって、実質デートじゃん」

「……恥ずかしく……ないけど」

「間!なに、今の、間ぁ!」

「いや、だってヒッキーが急にそういう事言うから」

 

先に言ったのはお前なんだが。

 

「別に、遊びに行くかどうか話す必要ないだろ」

「えっ……あ、うん」

「俺達、たまたま会っただけだし」

「えっ、早く帰りたいの?私のこと嫌いな感じ?」

「いや、連絡先知ってるんだから夜にでもメールしろよ」

「えっ……あ、うん。そっか、そだね!また連絡する!」

「はいはい、またあとでな」

 

そう告げると由比ヶ浜はくるりと踵を返して三浦の元へと駆け寄る。

俺はそれを見届けてから家路へとつく。

はぁ、顔が熱いな。瞬間移動で家に帰れたら楽なのにな。

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