八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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争いは同じレベルじゃないと起きない

猫、ウチで飼ってるペット。

携帯などにより容易く動画を取れることや、それを公開する場が出来たことで猫ブームが起きるくらいに将来人気になる動物。

そんな動物達を収めた、ちょっと未来に生きてるわ的な写真集。

俺は猫の写真集を見ていた。

 

フフフ、相手の好きなものをリサーチし、さり気なく共通の話題として会話のネタにする。

これが社会人として俺が学んだ空気の読み方である。

 

「…………」

「…………」

 

視線を感じた。

よく、女子は胸元を見ている男子のチラチラとする視線に気づくと言うが、それの比じゃなかった。

一切、視線がブレず穴が空くくらい見られていたからだ。

チラチラ、ではなく、ジーってレベルだ。

怖い、あと怖い、何なのお前そんなにネコ好きなの、好きだったな知ってたよ。

一回、一緒に猫カフェ行ったっけな。延長しすぎてキャバクラかよって思ったわ。

なおキャバ嬢より気まぐれなお猫様であったけどな。

 

「なぁ」

「何かしら?」

「雪ノ下、やっぱり猫とか好きなのか?」

「何を言ってるのかしらねこの男は、何を根拠にやっぱりとか言ってるのか理解に苦しむ発言だわ。いつ私が写真集を凝視していたというのかしら、証拠もないのに断定するなんて失礼よ」

「いや恥ずかしがらずに、言ってみ。そしたら、これ見してやるから」

「私が見たがっているなんて妄想はやめて貰えるかしら。そうして、あわよくば私と仲良く出来るなんてところまで想像しているかもしれないけど、その可能性が無いことくらい気付くべきだわ。罰として、そんな妄想の原因である写真集は没収するわ」

「お前、昔から照れてる時は早口で視線が鋭くなるって言われないか?ほら、やるよそれ」

 

雪ノ下の視線は、それ以上言えば殺すぞ貴様という感じだった。

まぁ、そんなんだったから写真集を投げて渡してやれば、すごい勢いでキャッチして、ハッとして俺の方を見る。

ほら見ろ、と言わんばかりに笑ってやれば、恥ずかしかったのか写真集で顔を隠しやがった。

きっと写真集の後ろでは耳まで真っ赤にしていることだろう、あざといなお前、いろはす仕込みなの?

 

「持つ者が持たざる者に施しを与える、奉仕部らしいだろ?ついでに、入部届も渡しとく」

「良いでしょう、奉仕部への入部を認めます。所で、奉仕部って教えたかしら?」

「あぁ、いや、アレだよ。先生から聞いてたんだよ」

「明らかな嘘ね、奉仕活動という先生の発言から予想したというところね」

 

一人、納得できる理由を考えて会話を終える雪ノ下。

その視線の先には写真集があった。

キラキラした目で見やがって、そんなに喜んでもらえるとおじさんとしても、買った甲斐があったと思うよマジでな。

 

「じゃあ、帰って良いか?特に、時間を潰せる物とか持ってきてないし」

「いきなり人と関わるのは貴方にとっては酷な事かもしれないけど、逃げてるだけでは現状は変わらないわ」

「逃げるは恥だが役に立つって言うだろ、逃げちゃダメなのはパイロットになった中学生だけなんだよ」

「何それ、そんな造語作らないでくれるかしら?あと、どうしてパイロット?」

「ハンガリーの諺なんだが、それとエヴァくらい見とけよ必修科目だぞ」

 

主にコミュ障の成長を見るアニメとして、コミュ障の奴らは見るべき。

そして、オタクになるのだ。ようこそオタクの世界に、これぞ人類オタク計画。

 

「マニアックな分野の知識を披露している所申し訳ないのだけれど、会話をする上では共通の話題が良いって知ってたかしら?貴方、だからぼっちなのよ」

「良いんだよ、人間強度が下がるから」

「言いたいことは分かるけど、理解しにくい言葉だわ。精神的に向上心の無いやつは馬鹿って言うでしょ?」

「夏目漱石のこころかよ、よだかの星じゃないのか」

「……意外だわ、流石国語の成績だけは一位なだけあるわね。」

「あれ、俺の成績なんて言ってないよな」

「……別に、成績が張り出されるから覚えていただけだわ」

 

プイッと首を捻って、顔を逸らす雪ノ下。

その気まずそうな姿に、今のは失言だったと遅れながら気付く。

まぁ、先に失言したのは雪ノ下の方なのだが、何はともあれこんな会話を懐かしいと俺は思った。

お互いに小休止、というか会話のネタが尽きてしまったというのもある。

雪ノ下は羞恥から、俺は単に切っ掛けが無くなったから会話する事ができなくなっていた。

そんな現状を打破するが如く、ドアが開かれる。

平塚先生だ、来た、平塚先生来た、やったこれで勝つる。

 

「邪魔するぞ」

「邪魔するなら帰って」

「あいよ~ってちょっと待て待て待てぇーい」

 

撃てば響くとはこの事か、平塚先生はネタを拾ってくれるので弄っていて楽しい。

流石先生、雪ノ下には出来ないことを平然とやって退ける!そこに痺れる、憧れるぅ!

なお、そういう女子力とは掛け離れた所が婚期が遅れる原因だろう。

 

「ノックを」

「悪い悪い、様子を見に寄っただけなのでな。許して欲しい」

 

平塚先生は鷹揚に微笑みを掛けて、そのまま教室の壁に凭れ掛かる。

 

「仲は良さそうだな」

「悪くはないですが良くもない、つまり普通です。普通の関係を築けたという訳です。更生する必要ないでしょ?」

「雪ノ下、どうやら比企谷の更生は梃子摺ってるようだな」

「本人が問題点を自覚していないせいです」

 

懐かしいやり取りに、思わず笑ってしまうと何がおかしいとばかりに詰問するような視線が向けられる。

そんな雪ノ下に、恐怖を覚えない。

今の俺からしたら威嚇行動する小動物に思えるくらいだ。

 

「雪ノ下、世の中には色々な価値観がある。そこに折り合いを付けることも、まぁ大事なんだわ」

「どうして、世の中の道理を説かれなくてはいけないのかしら。貴方のやり方じゃ悩みは解決しないし、救われないわ」

「正論だな、だが正しくない。正論はいつだって人を傷付ける。逃げる事を肯定してやらなければ、逃げるしか出来ない奴を、出来なかった奴を切り捨てるのと一緒だ。一人くらい、そんな奴の味方がいたって良いだろ?」

 

変わることは素晴らしいか、過去の俺は現状からの逃げだと反論したっけな。

今の自分や過去の自分を肯定しろって言ったな。

それは、今の現状から変わりたい雪ノ下に対して琴線に触れる一言だと知らなかったから言えたことだ。

「人は一人で勝手に助かるんだよ、西尾維新を知らないのか」

「誰かしら?誤魔化すような事を言わないで欲しいのだけど」

「お前って負けず嫌いだよな」

「なっ……今の話と私のことについて因果関係はないはずよ」

 

むすっと擬音がつきそうな雪ノ下は、図星を突かれた人のそれであった。

ムキになるというのが、まだ彼女が子供であるという証明のようで可愛らしい。

子供雪ノ下である、鬼の雪ノ下部長ではこうはいかない。

 

「君達、一旦落ち着け。よしこうしよう、古来よりある伝統的な」

「勝負しようとか、そういうのはジャンプだけで良いので。というか先生、他にやり方という物があるでしょう。生徒同士を焚き付けるようなことはどうかと思いますよ」

「えっ……」

「勝負、というのは?」

「あ、あぁ!奉仕活動にどちらが従事出来るかと言うものだ。判定は私が決める」

 

雪ノ下は当然のように食い付き、思惑通りに進んだことに平塚先生は喜びを露にする。

でも、前提条件が間違っている。

 

「雪ノ下、多分俺はお前ほど奉仕活動に取り組めるとは思えない」

「それは敗北宣言かしら?」

「そうだよ、先生には悪いがそういうのにムキになるほど子供じゃないんだ」

「それは、私が子供ってことかしら?私、貴方の事が嫌いだわ」

「そうか、それは残念だ。俺はお前の事、それほど嫌いじゃないけどな」

 

どうしよう、この空気と俺達の顔を交互に見る先生が居たたまれない。

雪ノ下もなんか、変に動揺してるしおじさんうっかりしてたわ。

ある程度関係が出来てる雪ノ下ならまだしも、初対面の雪ノ下だと軽口が軽口となり得てない事に失念していたわ。

はぁ、失敗したと頭を掻く。

 

「じゃあな、また明日。平塚先生、お先に失礼します」

「あっ……」

「……何だよ」

「……いえ、何でもないわ」

「そうかい、じゃあな」

「えぇ……呼びとめてしまってごめんなさいね」

 

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