四限のチャイムが終わった。
今こそ、社会人になってからじゃ分からないありがたみを噛みしめる時。
いやぁ、仕事の合間にゲームやるような申し訳ないようなこの感じが寧ろ特別感があっていいわ。
別にやってしまっても怒られないんだもんなぁ、学生最高だわ。
なお、社会人が昼休みにゲームばっかりしてるとうわぁって視線を送られる。
「あぁ、懐かしいわ」
これ、別の会社のハードになって戻ってきたと思ったら今度はオンラインとかスゲェ高い新ハードじゃないとプレイ出来ないとか色々あったけ。
それにしても、流石昔のゲームはエグいぜ。
無印の方がエグかったけど、今も十分エグいぜ。
「ちょおま、ハンマーとか!」
「ガンランスでジェノサイド余裕でした」
「お前らあぶねぇぞ、ほい」
「おい、自爆……ダメージ食らってない!?」
知らなかったのか、片手剣使いは極めるとボマーになれるんだぜ。
ハンターハンターみたいに、この方法については解説しないけどな。
俺はボマーだが、そこまで親切じゃない。
「流石だぜ、ぼっちなだけあって極まってる」
「友達の協力が出来ない分、一人で戦えるレベルだ」
「回りを巻き込む立ち回り、一人でやってるだけあるぜ」
「お前ら、遠回しに傷付けてないか?剥ぎ取り邪魔するよ、邪魔するよ?」
思えば、いーれーてーの一言が言えない子供だった俺が社会の荒波に揉まれて丸くなったものだぜ。
コミュニケーション、学生となら取れるんだからな!
なお、教師とか普通に無理です。
年下とならコミュニケーション取れる、つまり年下の奴らしか居ない学生時代はバラ色と見た、フハハハ。
そう、スクールカーストの低そうなゲーマー達となら仲良く出来るぜ。
まぁ、そういう生徒間の序列とか正直学生のうちだから楽しんどけと言いたいけどな、俺からしたらみんな同じだからな、序列とかテストの点数以外でないからな。
「いやー、今日は無理だわ。部活あるし!」
「一日くらい良くない?今日ね、サーティワンでダブル安いんだって、あーしチョコとショコラが食べたい」
はいうるさい、葉山お前のところの奴らだよ。
なんなの、キラキラしてて教室我が物顔ムーブとか、イケメンだからって許されると思うなよ。
「葉山くんいいわー、目の保養だわー」
「ねー、カッコイイよねー」
なん……だと……許されるだと!?
嘘だろ、どういうことなんだよ現実って奴は!
「あっ、ハチ、ハチなんとか君やられてんじゃん」
「あと二回までだぞ、ヒキなんとかくん」
「お前らうろ覚えだな、ハチマンってキャラ名書いてあるぞ、これ本名じゃね?」
おーい、お前ら。
友達だと思ってたのは俺だけだった、っていう事実も突きつけないでくれませんかね。
なんで名前覚えてないのよ、俺も覚えてないから人のこと言えなかったわ、スマン。
「悪いけど、今日はパスな」
「俺ら、今年はマジで国立狙ってから」
葉山の声が聞こえた。
見なくても、アレだろ額に指当てて許せ三浦って言ってんだろ。
イタチみたいなこと言ってんだろ、知ってた。
あと、スポーツばかりじゃなくて勉強もしなさい。
国立は勉強で目指しなさい。
「それにさー、ゆみこ。あんまり食いすぎると後悔するぞ」
「あーし、食べても太らないし。あー、やっぱ今日も食べるしか無いか―。ね、ユイ」
三浦、お前は代謝が落ちたら後悔するぞ。
三十過ぎるとな、節々は痛いし太りやすくなるし、痩せにくいしで大変なんだぞ。
若いうちから、食べるのが癖になると後悔するぞ。
その先は、後悔しかないぞ。食べたいと思った気持ちは間違いじゃないとか言ってる場合じゃないぞ。
「あーあるある、優美子スタイルいいよねー。でさ、あたし今日は予定があるから」
「もう今日は食いまくるしか無いでしょ」
何が面白いのか周囲から笑い声が聞こえる。
怖い怖い、雰囲気で笑ってるでしょ、今の面白いか?
まるでバラエティの笑い声みたいだ。
「だーからー、いくら食べても平気なんだって。太んないし。ね、ユイ」
「やーほんと、優美子神スタイルだよねー足とかキレー、で、あたしちょっと」
「えーそうかなー。でも雪ノ下さんとかいう子の方がやばくない?」
「あ、確かに。ゆきのんはやば――」
鋭い視線が由比ヶ浜に刺さる。
怖い、あと怖い。
女子って探り入れるの自然にやってるじゃん、でもって確信すると好戦的じゃん。
なんなの、戦闘民族なの?視線で、殺せそうだな。真の女子は視線で殺すのか。
「あ、や、でも優美子のほうが華やかというかー」
あー、そういえば雪ノ下と飯食ってたな。
最初にアイツが教室来たんだっけ、忘れてたわ。
案の定、約束してるのか由比ヶ浜が困った顔を浮かべる。
「あのさ……あたしお昼にちょっと行くとこあるからさ……」
「あ、そーなん?じゃさ、帰りにあれ買ってきてよ。レモンティー。あーし今日飲み物忘れちゃってさ。パンだし、お茶ないときついじゃん」
「えっ、え、けど、あたし戻ってくるの五限になるっていうか、お昼まるまるだから、それはちょっと無理ゲーみたいな」
俺が偶に言うからって今、無理ゲーって言わなかったか?
そんなことを思ってると三浦の足が不機嫌そうに揺れ始めた。
見え、見え……おいおい、お前らも死んでるじゃんかクエスト失敗すんなよ。
「あー、死んだわ……なぁ」
「やべぇわ……モンスターの、揺れがな」
「本当、あともうちょいだよな!もうちょい!」
横を見たら、ゲームしてた奴らも三浦を見ていた。
お前ら、俺と一緒かよ。
悲しいけど、これ男子学生だから仕方ないよね。
「はぁ?ちょ、なになに?なんかさー、放課後こないだもばっくれなかった?ちょっと、最近付き合い悪くない?」
「やー、それは何ていうかやむにやまれぬというか、私事で恐縮ですが一身上の都合により、私用がありまして離席させていただき、またの機会にご利用を……」
なんか無理して単語を捻り出そうとしてるのだけは分かった。
頑張ったな、そこだけは評価してやる。
でも、今度は文法も気を付けような。類語とか多いし、最後は意味がわからないぞ。
「ごめん」
「だーからー、ごめんじゃなくて。言いたいこと良いなよ」
「……ごめん」
「またそれ?あんさー、ユイの為に言うけどさ、そういうはっきりしない態度って結構イラッとくんだよね」
さて問題です、貴方の前でイジメが発生しています。
答え①ぼっちの八幡は突如反撃のアイデアがひらめく。
答え②仲間がきて助けてくれる。なお、その仲間は雪ノ下以外にいない。
答え③見ないふりをする。現実は非情である。
さぁ、どれでしょうか。
昔の俺ならどうしただろうか、まぁ流石に助けてやるべきだろう。
なんか、クッキーとか貰ったし、一宿一飯の恩義ってあるじゃん。
「おい、その辺で――」
「るっさい」
「うるせぇのはテメェだろ三浦、周りに聞こえるような大声で、謝ってる人間に対して怒鳴り散らして熟年離婚したての教頭みたいだぞお前」
「はぁ、いきなり出てきて何、意味分かんないこと言ってんの?アンタ、何?ユイの彼氏気取り?もしかして、好きなの?」
イラッ、この女……俺だって釣り合うとは思ってないがそれとこれは関係ないだろ。
バンバン机叩きやがって、学校の備品を何だと思ってるんだ。
落書きとが掘ったりとかお前みたいなタイプがするんだよな。
あぁ、イライラするぜ。
「すぐ恋愛に結びつけるお前のような女をネット界隈でなんて呼ぶか教えてやるよ、スイーツ脳って言うんだ。スゲェな、糖分取りまくりなお前にぴったりだな」
「お生憎様、アンタじゃ釣り合わないから。ユイのこと諦めたら?」
「釣り合わないとか、葉山の事が好きなお前に言われたく……スマン」
「なっ、えっ、あっ!?」
「いや、悪い。なんか、ごめん……口が滑った」
「ち、ちが、隼人!違う……くないけど、じゃなくて……ふぇ!?」
おいおい、何だよこの空気。
クラスの居心地の悪さは尋常ではなかった。
由比ヶ浜の責める視線も、言い過ぎたと思う要因だった。
「由比ヶ浜さん、自分から誘っておきながら待ち合わせ場所に来ないのは……なに?」
「ご、ごめんね。でも、ゆきのんの携帯知らないし……」
「そう、そうだったかしら。なら、仕方ないわね、所でこの空気は何?」
「ゆきのん、そういう空気読まないとこよくないと思うよ」
「ご、ごめんなさい。今、空気読めてなかったのね、何だか違和感を感じたのだけど口にしないほうが良かったのね」
そんな中、やってきた雪ノ下の無遠慮な発言が羞恥心を煽る。
こ、殺せー!いっそ殺せぇ!
三浦が顔を真赤にして睨んでくる視線とか、女子の冷たい視線とか、男子のニヤニヤした顔とか、もう忘れたいわ。
すまない、三浦……悪気はなかったんだ、今のは俺が悪かった。