東方付喪録   作:もち羊

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破壊の姫君

 誰か助けて下さい! なんでもしますから!

 

 窓も一切ない紅い館で一人ごちる。私が溺れた騒動から少し時を進め、門の中にとうとう侵入した時は気絶するほど驚いた。なんと明らか強そうな妖怪がぞろぞろと大人しく門から出ていったのだ。すわっ! これはヤバイ。なにかあるぞ! と思って中の様子を大ちゃんと伺うと、案の定やばかった。

 

 なにがヤバかったってそりゃああれですよ。私を助けてくれた格好いい女性が、沢山の妖怪をちぎっては投げ、掴んでは殴るを繰り返していたんですよ。ええ、そりゃあもう目を疑いましたね。私、別世界に来ちゃったかな……って。

 

 まぁそれが真実だ、トゥルーだ、と現実逃避をして赤髪の妖怪さんと合流。館の中に入った訳ですよ。そりゃあね、私こういうときは好奇心旺盛でね? ついつい誘われちゃったわけですよ。あ、なんか凄く厳重な扉があるーってね。

 私自身こういうときは楽観的になりまして。どうせあの真面目な大ちゃんや赤髪のお姉さんがいるんだし、あの二人は私がいないことにとっくのとうに気づいているだろうと。

 現実は全然気づいていなかったんですけどね! 

 

 更に先へ進んで暗い暗い地下への階段へと差し掛かった時、我に還りましたわ。あれ、私迷子じゃんってね。

 迷子の名誉奪還秘技の一つである『元来た道を遡って、親を捜す』って行為。実行したけどどこにもいませんでしたね。泣きそうになったよ。

 

 それで今は迷子の名誉奪還秘技のもう一つの技、『同じ場所に留まる』を行っているわけですが、一向に大ちゃん達捜しにこないね。もう私のこと忘れちゃった? 友情ってそんなに薄いものだった? そしてとうとう痺れを切らし、最終奥義である『取り敢えず先に進むか』を選択しているわけ。

 

 一応可視と不可視の条件を付けた結界を張っているわけだけども、この地下への階段めちゃくちゃ怖い。なにが怖いって、一段一段踏み締めるごとにカツーンて響くの。明るくて大勢でいるときはそんなこと気にならないけど、一人の時はめちゃくちゃ怖い。もうこれダメだ。足がすくんじゃう。お家帰りたい。

 

 あーあーあーあーあー! 一人でモノローグっぽいことやってても超怖いー! もうあれだ。自分の目に結界張るか? いやでも失敗したら怖いな。私は基本チキンである。怖すぎて自分の性格が崩壊してる気がするけど、気ーにーしーなーいー。

 そうだ、歌でも歌おう。多少怖さは揺らぐはずだ。

 

 あるー日ー、森の中ー、アルプス一万尺ー、歩こぉー!

 

 いや自分でも音痴って分かるわこれ。しかも歌詞が意味不明だし。

 

 うへぇ、とうとう階段降りきっちゃったよ。この先灯りないよ。直進ルートだよ。絶対なにか出るよ。なんだかダッシュするべきだと使命感が湧いてきちゃったよ。

スーパー蓮華ラン、開始だね!

 

「うぺあああああああああ!!!」

 

 奇声を上げながら長い長い通路を駆け抜ける。暗いし怖いし私のテンションもおかしいし。というか息切れ激しいし。私こんなに体力無かったっけ。ヤバイ、運動しなきゃ。

 

 恐怖から視線を下にして歩いていると、壁にぶつかる。どこかのことわざで、猫も歩けば棒に当たるって言うし。あれ? 猫だったかな? まぁ良いや、さてさて特になにも無かったことだし、帰りま「誰?」ぎぃやあああああああああああああいやああああああああああああお助けえええええええ「きゃっ、ちょっと、いきなり大声を───」えええええ! 食べないでえええええええうべべべべべべべべガク。

 

 悲しきかな。意識がブラックアウトしていく。床に向かって倒れていく中、私は気づいた。

 

 壁かと思ってたら、あれ大きな扉やん……。

 

 辞世の句がそんな悲しい一言にならないように、と祈るばかりである。

 

 

───────────

 

──────

 

 

 ハッ、シュワット! 目を醒ますと、周りは人形、人形、人形しかない事に気づく。どうやら私は怖さのあまり気絶して夢を見ているようである。

 その証拠に、ほら。大きな天蓋付きベッドの上で、煌めくような黄色の髪をショートにした女の子が今なお可愛い熊さんのお人形を引きちぎって遊んでいる。……っておいおい、私の見る夢結構物騒だね。ここのところストレスが溜まっていたのかもしれない。

 

 いや待てよ。ここは夢の中ということは何してもOKじゃないか? うんそうだ、きっとそうに違いない。ということで私も混ぜて~。

 

「あら? あなたもお人形遊びするの?」

 

「うん!」

 

 女の子がやるかどうか聞いてきたけど、すかさず『はい』。有無を言わさない『はい』。女の子は嬉しそうに近くの人形を渡してくる。よし、これをギッタンギッタンに……あれ? よく見ると繋ぎ目がある。

 

「そのお人形、一回私が壊しちゃったの」

 

「あ、だから繋ぎ目が……」

 

「お名前を教えてくれる?」

 

「私の名前? えーっと、蓮華だよ」

 

「じゃあ蓮ちゃんね」

 

 わーい蓮ちゃんブームだー。ぶっちゃけ蓮ちゃんってあだ名を気に入っている私がいる。ハッ、これって……恋? 

 

「じゃあ、あなたのお名前は?」

 

「私の名前はフラン。フランドール・スカーレットよ」

 

「じゃあフランちゃんね! よろしくー!」

 

 友達三人目、ゲットだぜ! このままいって、私はフレンドマスターを目指してやる……。

 そんな事はさておき、フランちゃんは次々とお人形を引きちぎっていく。はらわたの代わりである綿が、無惨にもベッドの上へ散乱していった。

 

「ねぇねぇ蓮ちゃん」

 

「なーにー?」

 

「なんで人間って人形じゃないのかな?」

 

 おっ哲学か? まさかこんなに幼い子が哲学を営むとは。いやちょっと待て。ここは私の夢。いわば私の精神世界。ということはフランちゃんは幻であり、私が創った存在でもあるのだ。無から有は作り出すことは出来ない。ということは、彼女の存在は私の妄想と経験、性格から生み出されている事になる。彼女が哲学を営むのは、私の妄想世界という性質上当然なのかもしれない。

 

 結論、私って頭良い!

 

「うんうん、なんで人間が人形じゃないのか……。それはね、人間が心を────」

 

「だって人間はすぐ壊れるもの。人形だったら良かったのに。人形だったらすぐ直せるしね」

 

「──────へ?」

 

 まてまてまて、ウェイト。ちょっと論点というか話の軸ずれてない? あれ? 意外と私って話通じない子だったっけ。

 

「壊しても壊しても壊しても壊しても壊しても壊しても収まんないの。つまらないの。楽しくないの。この人形も………………とってもつまんないッッッ!!」

 

 彼女が強く人形を握る。すると耳が痛くなるような破裂音が部屋一杯に響いて……。フランちゃんが握った手を開くと、そこには木端微塵となった人形の成れの果てがあった。

 

「あれ、ちょ、えぇ……?」

 

「ねぇねぇ蓮ちゃん……」

 

 あ、これヤバイ。なんかヤバイ。というか今思った。これ絶対夢じゃない。夢だったらこんなに冷や汗かかないもん。

 

「蓮ちゃんは人間? それともお人形?」

 

「妖怪です。…………多分」

 

「じゃあ殴るね!」

 

「なんで!?」

 

「だって妖怪って強いんでしょ?」

 

「そりゃあ強い妖怪はいると思うけど……弱い妖怪もいるわけ。当然殴られて無事じゃない妖怪も「えいっ」あべし! ……ってちゃんと話聞いてよ!」

 

 地味に痛い。なにこの子。俗に言う反抗期ってやつ? やだ怖い奥さん。無闇に暴力振るうのはいけないことだって親から習わなかったの!? まぁフランちゃんの親の顔見たことないけど。

 

「あれ? 目ごと潰したハズなんだけどなぁ……。蓮ちゃんって目、ある?」

 

「失礼な! ちゃんと二つ、顔に付いてるから! ホレホレ~ホレホレ~」

 

「ずびし」

 

 フランちゃんの目潰し。蓮ちゃんに効果はばつぐんだ。

 

「目が、目がぁ~。ちょ、ほんとに痛い! これ絶対充血したって、いやほんとだよ?」

 

「なんで壊れないの? 蓮ちゃん不思議~♪ キャハハハハ」

 

 いや笑いすぎだろ。こちとら目がめちゃくちゃ痛いんだぞ? 乙女の顔が台無しなんだぞ? 

 むかしむかし~誰かが言った。左の頬をぶたれたらアッパー。目潰しされたらやり返しなさいって。

 ということで怒りの目潰しくらえええええ!!!

 

「おりゃあ!」

 

 ひとさし指と中指をフランちゃんの目に突き刺そうとすると、目に刺さる前に掴まれた。あらやだこの子、動体視力スゴーい。

 

「そうだ! 目が無かったら本気で殴れば良いんだ! よし、どーん」

 

「ちょ」

 

 身に残る防衛本能が発動でもしたのか、使いたくなかった結界を使用する。それも最近使えるようになった生と死の結界を。

 マズイ! このままだとフランちゃんが死んじゃう。

 発動する結界を止めようとしたけど、これまでの運動不足が祟ったのか全く間に合わなかった。

 

 外は死。内は生。そう指定した結界はいつものように展開し、必ず生の状況下にいれる私にはフランちゃんの拳は届かないはず……だった。

 

「これ邪魔!」

 

 パリンと音がして結界が破られる。あれ? ───と拍子抜けする暇もなく、私の顔面にフランちゃんの拳がめり込んだ。

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