幻想郷は予想以上に騒がしい日々をおくっていた。
夏の訪れを感じたのか、人妖共々どこか心が浮かれているようだった。
そんな全てが普通な夏。
辺境は紅色の幻想に包まれた。
博麗の巫女と呼ばれる少女は、自らの勘を便りに異変解決に動く。
魔法を探求する普通の少女は、自ら異変へと飛び込んで行った。
湖は、一面妖霧に包まれていた。
普段ならば霧で包まれているハズの湖も今宵はどこかがおかしく、どこか違和感を感じた。それもそうだ。湖の中心に、場違いな建物が鎮座していたのだから。
妖霧の中心地は、夜の月明かりも相まってかぼんやりとその姿を見せていた。
空を治める月でさえ、妖霧のお蔭で紅く肥大しているように見える。
もしこの異変の仕業が自然災害ならば、どれだけ助かったのだろう。自然災害ならば、そこに知恵が介入することは無いであろうから。
飛んで火に入る夏の虫。
誘われる虫のように、霧の中を進んでいく少女達。
そして見つけたのだ。
霧の正体を。
異変を起こした犯人を。
昼も夜も無い館に、「彼女」はいた。
~紅霧異変概要~ 人里の記録より
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最近、幻想郷に紅い濃霧が発生した。それは一ヶ月も経たない内にみるみる幻想郷を侵食していき、その勢いは博麗大結界から外の世界へ漏れ出てしまいそうなほどだ。
その霧を吸引または長時間身体を晒し続けた人里の人間達は、総じて体調を崩し家から出られない状況が続いていた。
日光も遮られた人々はこの異変を危惧し、博麗神社に住む異変解決を生業とした博麗の巫女に、この異変の解決を一任することにした。
そして場所も変わり魔法の森。霧雨魔法店……と店に立て掛けてある看板に書かれた、こじんまりとした小屋。そこに一人の少女が、此度の異変を察知していた。
「……ったく、この妖霧のせいで良い素材が手に入らないぜ。これは魔理沙様の出番か?」
霧のせいで視界も悪く、魔道具作成の為の素材が集まりにくい事を憂いた魔理沙は、独自に異変解決へと赴いていく。
「八卦炉よーっし。箒よーっし。さて、素材集めがてらにいっちょ異変解決でもしてきますか!」
帽子の中に八卦炉を入れて、魔法の森から一人の魔法使いが飛び立った。
そして───異変の中心地である紅魔館。
「レミリアお嬢様、博麗の巫女が動き出しましたよ!」
「ぶはっ! ……えっもう!? うっそ、早くない?」
美鈴の唐突な報告に、優雅なティータイムを過ごしていたレミリアは紅茶を噴き出してしまう。
「ちょっと、お姉様汚い!!」
「お嬢様、紅茶が垂れております。どうぞ拭き物を」
咲夜が主人であるレミリアに、タオルを渡す。レミリアは口から溢れた紅茶を綺麗に拭き取ると、フランと一緒だったことを思い出したのか、顔を先ほどまでの慌てふためいたものから威厳のある顔つきに戻す。しかしフランから向けられる視線は、先ほどの視線と未だ変わらぬままだ。
「じゃあ皆、配置について。台本は覚えたわよね? ぶっつけ本番、リハーサル無し。カンペなんて用意されないから、心して掛かりなさい!」
レミリアの号令により、美鈴、フランは予め決めておいた場所へ戻っていく。咲夜はティータイムに使った食器を、時止めで対応していた。
レミリアは王の椅子を優しく撫でる。その椅子には一年前のようなシミや汚れは一切なく、新品同様のような有り様だった。つくづく自分の従者は有能だと思う。
「さて、始めましょう。紅い霧が幻想郷を全て覆うまで、博麗の巫女は私を止められるのかしら。ふふ、血沸き肉踊るような弾幕“ごっこ”にしたいわね」
咲夜はまさに悪魔のような笑みを見せる我が主を、じぃっと見つめていた。見つめられている事に気づいたレミリアは、咲夜が私自身に見惚れているのだろうと勝手な解釈を心の中でしているが、実際は全く違った。
(お嬢様のお召し物……紅茶のせいで変色しちゃった。後で洗わなきゃ……)
この咲夜、主の服が変色していることについて、後でその汚れをどうやって落とそうか……くらいにしか考えていないのである。
汚れにも気づかず、一人浮かれているなんとも間抜けな自分の主を見つめながら、咲夜は指定された待機場所に向かっていった。
異変であっても、危機が訪れても。
幻想郷はどこもかしこも日々騒がしいのである。
~紅霧異変概要~ 人里の記録より
から上は、pixiv百科事典の紅霧異変から参考にした……というより少しだけ改編しただけのものです。