東方付喪録   作:もち羊

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スカーレット・デビル

 レミリアは驚いていた。

 まさかのまさか、この人間二人はフランのいる地下室を無視して、こちらに来たのか……と。

 

 フランは不満を隠さずにレミリアへ詰め寄った。

 

「お姉様、人間がこっちに来るはずだーって言ってたのに、ちっとも来ないじゃない!! しかもお姉様の所には二人も来てるし……」

 

「あ、あのねフラン、お姉ちゃんもそういうつもりじゃあ……」

 

「誰も来ないのつまんないつまんない、つまんないぃっ!」

 

 フランが拳を握る。その掌には、目があった。誰の目か────そんな思考に至る前に、レミリアがフランの腕を押さえた。

 

 が、予想以上にフランの力が強い。

 

「ちょ、フラン、やめな─────」

 

「きゅっとして、ドカーン!」

 

 突如、紅魔館王座の天井が崩れ去った。大小入り雑じった瓦礫が紅き月を隠す。

 霊夢と魔理沙はそれを早めに察知し退避、レミリアは持ち前の素早いスピードで瓦礫をすり抜け、紅き月が綺麗に映る霧の湖に場を移した。

 

 脇にはフランが抱えられており、あの一秒にも満たない時間で回収したのだ。

 

「仕切り直し……ね。レミリア。妹が居るところ悪いけど、叩き潰すから」

 

「お姉様、私もやるー♪」

 

 レミリアはフランを見た。

 どこまでも澄んだ瞳。使用人に、気が狂っている……なんて言われていた妹とは思えないくらい純粋な瞳だ。

 今回の異変、最も積極的に参加しようとしていたのはフランだ。レミリアはフランに負い目があるが、フランもなにかレミリアに思うところがあるのかもしれない。

 

 フランもなにかしようとしていた事には違いない。

 レミリアは猛省した。彼女の意思を、想いを尊重しなかった自分はなんて愚かだろうか。

 

 確かに、行動が読めないフランと共闘すれば、レミリアが台本を奪える可能性はほぼ無くなるだろう。けれど妹の意思を筵にするというのならば、どれだけ情がある台本だとしても、どうでも良いんだ。だって彼女こそが、レミリアの最後の家族だから。

 

「ええ、フラン、共に戦いましょ」

 

「へっ、これで2対2。丁度フェアってわけだ。吸血鬼狩り、一体だけじゃ少ないと思ってたぜ」

 

「ハッ、その減らず口、すぐに消し炭にしてやろう」

 

「おうおう、吸血鬼で妹想いなお姉ちゃんは怖いなぁ」

 

「……スペルカードはそれぞれ三枚。残機はそれぞれ二よ。文句はあるまい?」

 

「ないわ」

 

「ないぜ」

 

「ないよー」

 

 レミリアはフランを離し、目を瞑った。

 幻想郷という新天地。そこは地獄では非ず極楽であった。不安、焦燥、絶望、苦痛、諦め。それらは何度心に抱いただろう。……今まで食べたパンの枚数くらいかもしれない。

 

 今は妹であるフランは解放され、友は救われ、門番と友になり、従者だけれど、新たな娘のような存在が出来た。

 走馬燈……とは違ったなにか。それは今までの地獄と比較して浮かび上がった極楽。

 この異変で全てを終わらそう。過去の禍根も、全て。ああ、ぶつけてやるさ、幻想郷を管理する賢者のお気に入りに。魅せてやるさ、魔法使いのような少女に、吸血鬼の恐怖を。

 そして取り返してやる、黒歴史。

 

 レミリアは目を開け、言葉を紡ぐ。

 

「先程の発言、訂正しよう。夜は成る物ではない、馳せる物だ。良い夜は共有できない。各々が見る夜は違うのだから。自分が綺麗だと思えば、その夜は綺麗になる。夜とはエゴよ。自分だけの物。誰の物でも無さそうで、誰の物にでも出来る。ねぇフラン、あなたはどんな夜が見える?」

 

「私には……綺麗な星が見えるよ。すっごく綺麗な星が二つ!!」

 

「あら、妹が貴女達人間に見とれてるわ。妬いちゃう。……それに、星は見る場所によって二律背反よね。如法暗夜では輝き、暗き宇宙では醜き。まるで人間よ」

 

「なんだ、痛いポエムか?」

 

「魔理沙、来るわよ」

 

 霊夢が魔理沙に注意を促す。レミリアとフランの目は、爛々と紅く輝いていた。

 

「……さて、終わらせましょ。貴女達との運命」

 

「あんたとの運命なんて、こっちから願い下げよ!」

 

 瞬間、四人がそれぞれ飛び立った。お互いが好き勝手に湖の上で弾幕を張り巡らせていく。

 

「冥符『紅色の冥界』」

 

 最初に仕掛けたのはレミリアであった。細長いひし形状の小さい弾がレミリアの周りに配置されていき、丸い虫籠のような形を作り出す。

 籠の全長は数十mにも及び、そこから溢れ出た弾が直線上に飛ぶ。そして幾つかその弾が射出されたかと思うと、一気に籠が解き放たれ、交差するような軌道で全ての弾が飛んでいく。

 

「結構密度が薄いんじゃないか?」

 

 水を切りながら軽々と避けていく魔理沙。しかし侮ってはいけない。レミリアの弾幕は放たれた後にすぐさま虫籠を形成、再度同じ手を仕掛けてくる。その姿は、紅い龍がレミリアの周りを旋回し、守護しようとしているかのような。

 

 そして危険なのはレミリアだけじゃない。

 

「キャハハハハハ! 禁忌『フォーオブアカインド』」

 

 フランが四つに分身した。それは残像や幻影なんかで片付けられるほど、紛い物じゃない。まるで本物だ。本物が四人現れたのだ。

 

「おいおいおいおい!!! うっそだろ!?」

 

 交差する弾幕。直線的な弾幕。霊夢、魔理沙狙いの弾幕。逃げ場埋めの弾幕。速度の速い弾幕。無差別な弾幕。

 一生に経験するかどうかの様々な弾幕が、暴れ、うねり、襲いかかる。

 

「くぅあっ!!」

 

「霊夢!」

 

 まるで雪崩や津波を思わせる圧倒的質量と数の暴力に、霊夢が飲まれた。

 その様子を見ていたレミリアが鼻を鳴らす。こうなることは分かっていた……と、予定調和を見ているかのような視線を向けるレミリアは、明らかに霊夢と魔理沙を見下していた。

 

「……人間、残機が二で助かったわね」

 

「ハッ、霊夢はまだまだこれからだぜ?」

 

「いつまで続くのかしらね、そのやせ我慢は」

 

 見抜かれている───。

 事実、魔理沙は打開策なんて思いついてもいなかった。ただの感情論や根性論で物を言っていたのだ。

 

(しっかし相当キツイな……)

 

 フランの四人分の弾幕に加え、レミリアの確実に逃げ場を無くす弾幕。安置が出来たと思ったら、次の瞬間にはそこは危険地帯となってしまう。

 彼女達は誘導しているのだ。自分達を。掌の上で踊る猿を見るかのように。

 

「霊夢、大丈夫か?」

 

 肩で息をする霊夢に声を掛ける。霊夢の負担は大きい。なんせ、さっきの雪崩のような弾幕を一人で引き寄せているからだ。

 自分のいる場所が何故密度が薄いのか……その理由は、意外と簡単だった。“親友が身体を張っていてくれた”からだ。

 

「……ありがとう、魔理沙。もう大丈夫よ。さて、今度はあいつらに一泡吹かせましょっ!」

 

 やせ我慢だ。そう思った。

 霊夢はそんなに檄を飛ばすような奴じゃないからだ。いつも自分勝手で厳しくて、裏ではそうじゃなくて、霊夢は年相応の優しい子だけど、自分を律し続けている真面目な奴だって事も知ってる。

 

「霊夢……ちょっと休んでくれ。今の身体じゃあ無理はいけないぜ」

 

「はぁ? なんであんたに指図されなきゃいけないの?」

 

 霊夢が怒った。これも珍しい。

 

「霊夢……頼むから……私の顔を立てさせてくれ」

 

「だったら…………やられないでよ」

 

 霊夢が私を心配した。これもまた珍しい。

 

「へへ、霊夢、私が隙を作ってくるから、霊夢はその隙に乗じて一発頼むぜ」

 

 もう霊夢の表情なんて見ずに、私は飛び立った。ああ、こっぱずかしい。全く霊夢のやろう、初めての被弾で弱気にでもなってるのかね。

 ……チッ、霊夢にはそんな顔は似合わねえっつーの。

 

「オラオラ吸血鬼どもぉ! 博麗の巫女に代わって、私が相手だぁ!」

 

 フランとレミリアが獰猛に笑った。レミリアの方は、内心で狂喜乱舞にまで達している。

 

「人間さん一人じゃあ」

 

「私達に」

 

「勝てないよ」

 

「出直してきな!」

 

「……妹さんよ、一人ずつ頼むぜ」

 

「そんなことより人間、貴様一人が私とフランに敵うとでも思っているのかしら? もしそうなら、貴女の頭の中身はさぞ楽しそうね」

 

 レミリアとて、台本の事は吹っ切れているが取り返せるならば取り返したい。フランが参加した時、手から離れたチャンス。それが今、自ら目の前に来たのだ。狂喜乱舞する他あるまい。

 

「お花畑ってのは否定しないが、よく見てみるとベラドンナの花が咲いてるかもしれないな」

 

「君子危うきに近寄らず。でも貴女は危うくなさそうね」

 

「君子? どこに居るんだ?」

 

「紅符『スカーレットマイスタ』」

 

 近距離。魔理沙はスペルカード宣言を予期していたが───何故か一向に弾幕がこない。弾幕がちらりとでも見えたら、手の内に握り込んでいた八卦炉でマスタースパークをぶちかます気でいた。

 

(弾幕……撃たないのか?)

 

「憐れね。決意の表れか……戦意の昂りか……。視界が狭まっているわよ」

 

 レミリアが横を指した。冷や汗が額から頬へ伝う。恐る恐るレミリアの指し示す方へ顔を向けると、まさか……という思いが現実となった。

 

 いつの間にそこにあったのか、迫るのは大小の紅い弾。魔理沙は衝撃に身構えた。

 人の力など、妖怪にとっては取るに足らず。魔理沙は些細な防御を敢行するが、避けなければ意味もない。

 

 当たる───。当たる───。当たる───。痛い。

 

 箒に跨がっている為に、その衝撃を緩和する物は何もない。強いて言えば、逆に支えが無いことで、途中から衝撃を受け流せた事だろうか。

 もし全ての弾が当たっていれば、身体の前に心が折れていた事だろう。

 

 落ちていく。まっ逆さまに湖へと。

 咄嗟に霊夢を見た。アイツはいなかった。

 

 ───ハハッ、霊夢の奴、分かってるじゃないか。

 

「ぐぅぅぅ、箒、来い!」

 

 痛みを堪えて魔法の箒を呼ぶ。魔法の箒は離れた主の声を聞き取ったのか、すぐさま急旋回、魔理沙の臀部の下に現れる。

 

「ヘっ。始まったぜ、逆転劇」

 

 笑いが止まらない。上手くいった。そう、私はどうせ当て馬。囮にさえなりゃしない。けれど……本命の存在を一時的に忘れさせる事は出来る。

 

「禁忌『レーヴァテイン』」

 

 四人のフランが弾を一直線に列べ、巨大な紅き剣を形どる。私はその中の二人くらいは巻き込めれば上出来だな……と思いながら、スペルカードを宣言した。

 

「喰らいやがれ、恋符『マスタースパーク』」

 

 食らいつけ、一矢報いろ、この吸血鬼の鼻を明かしてやれ!

 八卦炉から放たれたマスタースパークは、レミリアの鼻先を掠め、フランの分身三体を飲み込んだ。レミリアの目が見開かれる。相当驚いたようだ。

 

「人間舐めんなよ蝙蝠が」

 

「吸血鬼と蝙蝠を並べるんじゃない」

 

「あーあ、三人のフランいなくなっちゃった。……まぁいっか! フランは一人で十分だもん!」

 

 まだだ……まだ足りない。

 奴等にまだ一矢報いてねえ。

 

 汗が吹き出る。

 熱い。熱い。闘志が身体の中を駆け巡る。沸騰した血液が肌を焼く。眈々とした瞳で吸血鬼姉妹を見据える。あいつら、まだ余裕の表情をしてやがるんだ。…そりゃそうだろうな。二人とも、まだ二枚目のスペルカードの途中。だがたったそれだけで、私達の残機を半分減らせたんだから。

 

 私達にもう後はない。スペルカードは残り二枚で、霊夢は三枚。一見有利そうに見えるが、反撃もありなのがこの幻想郷のスペルカードルール。あいつら姉妹がどれだけの速度を出せるかは知らないが、一つだけ分かる。

 妹を脇に抱えて脱出したときのレミリアのスピード。その速さは霊夢や私の目では追いつけない程だった……と。

 

 ああ、やっぱりこうするしか方法はないんだ。結局無傷で勝てる……なんて甘っちょろい考えや成功例なんて存在しないもんさ。

 

「…………ま、手品くらいでも火力はあるだろう。魔砲『ファイナルスパーク』」

 

 八卦炉を後ろに設置し、そのスペルカードを宣言した。途端、火力の推進力を受け、箒が加速を始める。

 

「突っ込んでくるの? ……どうなっても知らないわよ」

 

 レミリアが宣言したスカーレットマイスタ。それは、レミリアを中心にして時計回りに回転する弾幕。端から見ると紅い竜巻のように見れるそれは、弾幕の密度がかなり高く、生半可なテクニックでは中央にいるレミリアの元へ辿り着けそうにもない。

 ……だがそんな事なんてどうでも良い。不安なんて列べ始めたら、切りがないからだ。進むには、前を見ろ。進むための道を見ろ。

 

 道はある。これは脱出不可能の弾幕ではない。レミリアが考え、レミリアが実践している弾幕なのだ。レミリアはコンピューターじゃない。どこかに彼女の盲点……隙が隠れているハズだ。

 

 近づけ。加速している私にブレーキはない。

 止まるな。止まってはいけない。目を見開いて、考え続けろ……!!

 

「……なに?」

 

 レミリアは驚嘆した。台本を持っている帳本人である彼女を焚き付けて、残機を一つ減らせたのは良かった。だが、その後だ。自分の反射速度を脅かすほどの反射神経。着実に、着実にスカーレットマイスタを攻略していっている。

 

 彼女は退かず、進む道を選んだのだろう。その目で一心に弾幕と向き合うと決めたのだろう。だからこそ、彼女にチャンスが訪れた。

 

 スカーレットマイスタ三層目を超えた辺りだろうか。奇跡か、神からのご褒美か、レミリアまで一直線の道のりが一瞬だけ出来る。

 これは、ズレだ。スカーレットマイスタも自動ではない。レミリアが考え、レミリアが操作している。そこに僅かなズレが生じ、今の隙を生み出したのだ。

 

 数秒もない。だが魔理沙にとってその数秒とは、降って湧いた天の恵みの如く。

 突っ込んだ。無理矢理。服の裾が弾幕に掠り、弾ける。弾に当たった帽子のつばが燃える。

 沸騰するようだ。だが身体は熱を求めている。熱くなればなるほどに集中力は増し、視界は狭まるが明確な目標は見つけやすくなる。

 

 レミリアだ。この渦巻く紅い竜巻の中で、ふんぞり返っているアイツだ。アイツに一発叩き込みたいんだ。

 

 そして、スカーレットマイスタの十層目を抜け、残りはレミリアの周りを回る一層だけ。

 

「人間さん、フランを忘れてないかな?」

 

 割り込むように、フランが現れた。手には弾幕を固めた剣のような物を持ち、幼子が絶対に見せないような残虐な笑顔を見せていた。

 

「妹さんには興味は無いぜ?」

 

「人間さん、破壊される前なのに元気ね」

 

「元気じゃないとやってられないさ、魑魅魍魎が跋扈するこの幻想郷じゃあな」

 

「ふふ……人間さんはコンティニュー出来ないのに大変だね」

 

「ハッハッハ、だが挑み直したり試行錯誤するのは、人間さんのお得意分野だぜ?」

 

「……? 違うよ。あなたが、コンティニュー出来ないのさ!」

 

 フランが思いきり剣を振った。それは剣だが、剣に非ず。振った場合の切れ味なんて然程無いが、剣のあらゆる場所から全てを洗い流すような弾幕が放たれる。

 魔理沙は頬を吊り上げた。計算通りだったからだ。

 

「誘導ってのは恐ろしいよなぁ。魔符『スターダストレヴァリエ』」

 

 星形の弾幕が魔理沙の周りに展開される。レミリアのスカーレットマイスタも、フランの剣が放った弾幕も、みな全て一掃していく。一掃……というよりは、相殺か。

 

 だが、それで良いんだ。私は全てのスペルカードを使ってしまったが、スペルカードブレイクまで約一分ある。

 その一分さえあれば、守るものも無いレミリア達に近接することは可能だ。

 

 私は更に加速を始めた。あの紅霧の王に目にもの見せてやる……との決意を持って。

 

「……向かってくるか、人間」

 

「ああ、向かってやるさ。私はせっかちなんでね」

 

 距離はもう数mもない。時間が止まったように、遅く感じられた。脳が活性化でもしているのかもしれない。

 

 掴め、チャンスを。掴め、奴を。掴め、勝利を!

 

「吸血鬼、見やがれ! 人間の力って奴をな!」

 

 一mを切った。こちらが一度攻撃を与えれば、奴等は被弾扱いになる。全部の力を、身体の底から各部に至るまで全て搾り取れ!!

 

 

 ──────だが。

 

「茶番は終わりだ、────魔理沙。……台本は返して貰うぞ」

 

 魔理沙の奮闘虚しく、レミリアの素早い爪撃により被弾。脇腹辺りの服を裂かれ、そこに入れておいた台本はレミリアの手に渡った。

 

「良い戦いだったぞ、だが健闘は虚しく────なに?」

 

 その時に魔理沙の口角が上がったのを、レミリアは見逃さなかった。

 なにかがある。だがそれはなんだ? なにを仕掛けてくるんだ?

 

 魔理沙は無惨にも墜落していった。今のは杞憂だったのか、否か。だが魔理沙を脱落させたのは大きい。後は博麗の巫女だけ──────待て。

 待て待て待て。博麗の巫女……?

 

 レミリアの背に冷たい汗が伝った。彼女は気づいたのだ。“博麗の巫女をいつから見失っていた?”……と。

 

 突然身体に悪寒が駆け巡った。

 おかしい、おかしいのだ。魔理沙はこれまでの行動を見ても、奴はここぞというときに犬死にするような奴ではない。逆に知を働かせ奇策妙計を行うタイプだ。

 では何故奴は突っ込んで来たんだ? ……そこに意味があるからだろう。

 ではその意味とは…?

 

 答えは、背後から聞こえるスペルカード宣言で分かった。恐れた疑惑が真になったのだ。

 

 フランもそれに気づいたのか、咄嗟に背後を振り向く。だがもう間に合わない。

 

「霊符『夢想妙珠』」

 

 見失ったハズの霊夢が、そこにいた。

 

 気配など微塵も感じさせず、霊夢は死神のように私達の残機を奪っていったのだ。

 


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