何故そう思ったのか分からない。
けれど、確かに幽々子の事を友達って思ったんだ。
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「あらあら、これで終わりかしら?」
「クッ……!」
私は地べたに転がっていた。というよりも、そうさせたのは咲夜さんだ。
少し前、私はこの西行寺幽々子と相対した。そして流れるように弾幕ごっこへと移ったのだが、その時に気付いた。私、飛べないやん……と。
四苦八苦おろおろしていると、有能メイドである咲夜が駆けつけ、私の代わりに勝負を挑んだのだ。
勝負は拮抗し、あと少しで咲夜さんが勝者となる……筈だった。
────目を疑った。
咲夜さんの武器である銀のナイフ。その全てが、錆びきってしまい、仕舞いには朽ちてしまったのだ。
そう、それはまるで、ナイフに“死”が与えられたかのように。
「貴女……能力を」
「メイドさんは勘が良いわねぇ。冥土の土産に答えてあげるわ。ふふ、洒落が聞いてるでしょ?」
「つまらないわね、戯れ言よ」
「洒落も楽しめないなんて、嗜みさえも持っていないのかしら。好奇心が無ければどんな生物でも死んじゃうのよ? ほら、良く言うじゃない。メイドの嗜みって」
咲夜は歯軋りをする。心底悔しいという顔だ。
「その顔、番犬みたいで可愛いわぁ♪」
咲夜は言い返す事が出来ない。何故なら彼女は敗者だからだ。
ナイフが朽ちた時、最悪咲夜にも死を与える事が出来たのかもしれない。死人に口無しとは上手く言ったものか。
手加減をされていたのだ。能力さえ使わず、自らが持つ霊力だけで幽々子は戦っていたのだ。時を操る能力を全面的に使っていた咲夜さんからすると、それは酷くプライドを傷つける行為であった。
「ふんふふ~ん、さぁて、銀の番犬さんが持っている春も頂きましょうか。ほら、もう少しで西行妖が咲くわ! これで九分咲き。妖夢が持ってくるであろう春で、満開ね」
博麗の巫女もいない。紫もいない。頼みの綱は、一つもない。
私は何故だろうか、咲夜さんに駆け寄った。何か嫌な予感がしたのだ。そう、最悪の予感が。
「さ、咲夜さん……大丈夫?」
「………………下がってて」
「──────え?」
耳元で声がしたように聞こえた。その瞬間、咲夜さんの姿が消えたのだ。これは時止め。咲夜さんが能力を使ったのだ。
私が唖然としていると、横に何かが叩きつけられた。何か……という不明な存在に使う単語は、今だけ間違っている。“何か”がが何かなんて、決まっている。
「う……嘘……だよね?」
その事実を口に出したくなかった。出せば私は必ずその現実に向き合わねばならなくなるから。
私は彼女の能力を知らない。幽々子がどんな能力を使うかなんて、聞いたこともない。でも、分かった。それは彼女と友達であったと、なんとなく理解できた時みたいな。ほぼ勘に近いなにか。
「飼い犬に手を噛まれる。噛まれる心配が有るのならば、牙を取ってしまいましょう。……飼い主じゃないけどね」
「幽々子…………」
そこには、“咲夜”が転がっていた。