東方付喪録   作:もち羊

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かなり短め。


友達って思ってたんだ

 何故そう思ったのか分からない。

 

 けれど、確かに幽々子の事を友達って思ったんだ。

 

 

────────────

 

───────

 

「あらあら、これで終わりかしら?」

 

「クッ……!」

 

 私は地べたに転がっていた。というよりも、そうさせたのは咲夜さんだ。

 

 少し前、私はこの西行寺幽々子と相対した。そして流れるように弾幕ごっこへと移ったのだが、その時に気付いた。私、飛べないやん……と。

 

 四苦八苦おろおろしていると、有能メイドである咲夜が駆けつけ、私の代わりに勝負を挑んだのだ。

 

 勝負は拮抗し、あと少しで咲夜さんが勝者となる……筈だった。

 

 ────目を疑った。

 

 咲夜さんの武器である銀のナイフ。その全てが、錆びきってしまい、仕舞いには朽ちてしまったのだ。

 そう、それはまるで、ナイフに“死”が与えられたかのように。

 

「貴女……能力を」

 

「メイドさんは勘が良いわねぇ。冥土の土産に答えてあげるわ。ふふ、洒落が聞いてるでしょ?」

 

「つまらないわね、戯れ言よ」

 

「洒落も楽しめないなんて、嗜みさえも持っていないのかしら。好奇心が無ければどんな生物でも死んじゃうのよ? ほら、良く言うじゃない。メイドの嗜みって」

 

 咲夜は歯軋りをする。心底悔しいという顔だ。

 

「その顔、番犬みたいで可愛いわぁ♪」

 

 咲夜は言い返す事が出来ない。何故なら彼女は敗者だからだ。

 ナイフが朽ちた時、最悪咲夜にも死を与える事が出来たのかもしれない。死人に口無しとは上手く言ったものか。

 

 手加減をされていたのだ。能力さえ使わず、自らが持つ霊力だけで幽々子は戦っていたのだ。時を操る能力を全面的に使っていた咲夜さんからすると、それは酷くプライドを傷つける行為であった。

 

「ふんふふ~ん、さぁて、銀の番犬さんが持っている春も頂きましょうか。ほら、もう少しで西行妖が咲くわ! これで九分咲き。妖夢が持ってくるであろう春で、満開ね」

 

 博麗の巫女もいない。紫もいない。頼みの綱は、一つもない。

 私は何故だろうか、咲夜さんに駆け寄った。何か嫌な予感がしたのだ。そう、最悪の予感が。

 

「さ、咲夜さん……大丈夫?」

 

「………………下がってて」

 

「──────え?」

 

 耳元で声がしたように聞こえた。その瞬間、咲夜さんの姿が消えたのだ。これは時止め。咲夜さんが能力を使ったのだ。

 私が唖然としていると、横に何かが叩きつけられた。何か……という不明な存在に使う単語は、今だけ間違っている。“何か”がが何かなんて、決まっている。

 

「う……嘘……だよね?」

 

 その事実を口に出したくなかった。出せば私は必ずその現実に向き合わねばならなくなるから。

 私は彼女の能力を知らない。幽々子がどんな能力を使うかなんて、聞いたこともない。でも、分かった。それは彼女と友達であったと、なんとなく理解できた時みたいな。ほぼ勘に近いなにか。

 

「飼い犬に手を噛まれる。噛まれる心配が有るのならば、牙を取ってしまいましょう。……飼い主じゃないけどね」

 

「幽々子…………」

 

 そこには、“咲夜”が転がっていた。

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