「ひいい! 二度も助けて下さりありがとうございます! ありがとうございます!」
「なによ、あたいならもっと速く倒せたわ!」
騒ぐ妖精二人を尻目に、美鈴はパチュリーとレミリアに振り返った。
「今の妖怪、なんだか分かります?」
「……多分、お父様の使い魔ね。それを倒すなんて、凄いと思うわ」
「いえいえ、それほどでも」
照れる美鈴に対して、パチュリーは静かに彼女を観察していた。魔女としての洞察眼、それは他人の保有する魔力量までも把握できる。
(……魔力がほぼ無い。妖力も少ないみたいだし)
驚くべき事は多々あるが、自分の弱味を見せてしまった関係上それを深くつつく事は、パチュリーは愚策だと断じた。
「その、あの、美鈴さんとそこのお二方は知り合いなんですか?」
緑髪の妖精が赤髪の彼女に聞いた。どうやら狼を倒して見せた彼女は、美鈴という名前らしい。覚えておこう。
「いや、知り合いじゃないよ~。ちょっとカクカクシカジカで」
「いや分かんないです」
「そこにいる二人ともに隷属の首輪が嵌められていて、それを助ける為にボスの居場所を聞いていたところだって!?」
「チルノちゃんなんで分かるの!?」
どうやらあのアホ妖精、一部始終でも見ていたのかもしれない。ということはあの恥ずかしい光景も見られていたのだろうか。確かそう言えば、美鈴が扉を破壊する前にこの二人の妖精の声が聞こえたような……。
「でもその隷属の首輪って言うんですよね。それって首に付いているんですか?」
「ええそうよ。ほら」
レミィが自身の首に付けられている首輪を妖精に見せる。細く美しい首に、髑髏の装飾がされた禍禍しい首輪があるのはとても不釣り合いだ。
それをまじまじと見ている妖精。なにか思いついたのかアホ妖精に人の首ほどの氷柱を作らせる。
「うーん、こうすればどうかな?」
妖精がレミィの首輪に手を触れる。
すると一瞬の間を置いて、レミィの首から先程の禍禍しい首輪が無くなった。
「あ、出来た!」
「え?」
「え」
いや、ちょっと待って。全く理解が出来ない。え、今なにが起こったの?
見たところアホ妖精が作った氷柱に、私達が嵌めていた首輪が嵌められている。ここから考えられる事は、一瞬で全ての魔法と呪いを解いて氷柱に被せたか、なんらかの能力で氷柱に移したか。氷柱に移した理由から、後者か。
「あ、そちらの方のも外しますよー」
「あ、え、うんよろしく」
そして妖精が私の首輪に手を触れた途端に、レミィの時と同様首輪が消えて氷柱に移される。
妖精を侮っていたけれど、こんな能力を使う奴もいるのね。少し舐めていたわ。
「これで二人の問題は解決しましたね。では私はこの館の主にちょっとばかし文句を……」
「あたいもいくー!」
「ちょっとチルノちゃん! 迷惑だよ!」
彼女らはヴラドの元へ向かうようだ。では私達はフランのところへ向かおうとしようかしら。横にいるレミィを見ると、早くフランの元へ行きたそうにうずうずしている。
そんな時、緑髪の妖精が声を掛けてきた。どうやらなにかを捜しているようだ。
「すいません、えっと、私くらいの身長で桃色髪の女の子を見ませんでしたか?」
「いえ、見ていないわ。それとあなた……名前は?」
「私に名前はありません。強いて言えば大妖精ですよ。……そうですか、見ていませんか。蓮ちゃんどこに行ったんだろう。迷ってないかなぁ」
大妖精と名乗る妖精は、蓮ちゃんなる人物を捜しているようだった。首輪を解いてくれたお礼として、もし見かけたら声を掛けておこう。その旨を伝えると、ありがとうございます、と大きく頭を下げてお辞儀した。あのアホ妖精と違って礼儀正しい子なのだと分かる。
「レミィ、それじゃあ行くわよ」
「うん、分かったパチェ」
「あのーすみません」
今から良いところなのに、それを邪魔するが如くまた声が掛けられた。声を掛けてきたのは先程の美鈴と呼ばれている人物。
「館の最上階ってちょっと分からないので、どちらか案内してくれません?」
……その要望に、私はレミィと目を合わせる。レミィの目は強かった。それは今までで見たことも無いほどに。
はぁ。私が折れるしかないようね。頑張ってねレミィ。フランを、あなたの妹をしっかり連れ戻すのよ。フランの能力なら、首輪の魔法を解除する必要もないものね。
レミィにそれは伝わったのか否か。けれど彼女はしっかりと頷いてくれた。
私の親友ほど頼もしい存在はいない……と、こういうときに強く思える。