転生作家は美少女天才作家に恋をする   作:二不二

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土曜日の出勤が免れたので、なんとか間に合いました。


11.妖精島の三泊四日・中

 ***

 

 

「それにしても、贅沢ですね」

 

 愛機のモバイルPC(シグマリオンⅢ)に向かって鍵打していた獅童が、顔を上げ、誰に言うでもなく呟いた。

 視線の先には、窓枠で切り取られた海岸の風景があって、そこから、とおい潮騒がうち寄せてくる。

 一郎も執筆道具(ポメラ)から顔を上げて、しばしその景色を堪能する。

 

「そうだね。こうしてわざわざ南の島へやってきて、海を目の前にしながら、いつものように筆を執る。寒い冬に炬燵に入ってアイスを食べるような、そんな贅沢さがあるね」

「それ、ちょっとスケール小さくないですか」

 

 苦笑する獅童に、違いないと一郎は笑って頷いた。

 

 海を近くに望む、贅沢な立地である。

 その立地を活かすべく、別荘はひろびろと横に延びて、ほぼ全ての部屋から海が望めるようになっている。

 それだけではない。ベッドやチェア、ソファーといった家具はどれも、そこに身を預ける人間がなんらかの形で海の気配を感じることができるよう、配置に工夫を凝らしているのだ。

 この大自然を身近に感じながら、のんびり羽を伸ばして欲しい。

 そんなさり気ない想いやりが感じられて、二人はしばし手を止め、穏やかな時を楽しむのだった。

 そんな折に、

 

「うぎゃあ」

 

 と声がしたものだから、一郎と獅童は顔を見合わせた。

 女の声である。

 女性の悲鳴はよく「絹を引き裂くような」と形容されるが、こちらは、何重にも重ねた絹をずたずたに引きちぎるようかのような力強い声だった。

 驚きだけではない。腹の底からわきあがる、怒りの衝動をないまぜにしているのだ。悲鳴、というよりかは怒声の方が近いかもしれない。

 

「ムラマサ先生ですか」

「だねぇ」

 

 二人は椅子を蹴って立ち上がる。

 

「どうしたんですか、ムラマサ先生」

 

 ゲストルームの扉をたたくと、悲鳴が応える。

 

「は、入ってくるな!」

「何かあったんですか」

「あったとも言うし、無くなったとも言えるが……。とにかく、入ってくるんじゃないぞ、絶対にだ!」

 

 しばらしくて、着物を着崩したムラマサが現れた。

 頬を染めるは、怒りまじりの羞恥。憤懣やる方ないといった様子で、ムラマサは事情を語る。

 

「海に行こうとしたら、水着がすり替わっていたんだ。こ、こんなとんでもないものに!」

「こ、これは過激ですね」

「中学生にはちょっと早すぎやしないかな」

 

 それは、一応は水着の体を成してはいた。本当に大切な部分を隠すのが水着の役割であると割り切るなら、たしかに水着に違いない。けれども、多感な少女を男の獣欲から護るには、いささか頼りない。というより、煽っている。

 これを進んで着るのは、羞恥心を悦びへと変換する特殊な機構を心に備えた新人類か、飢えた獅子に我が身をよろこんで差し出す献身の聖くらいのものであろう。

 

「やっぱりそうか。あの亜人の仕業だな。危うくこんなハレンチな格好で、マサムネくんの前に立つところだったではないかっ」

「つまり、僕らが来なかったら着てたのかな」

「そっ、そんな格好で人前に出るわけがないだろうっ」

「にしては、ずいぶん悩んでたみたいだけど」

 

 一郎と獅童が執筆作業に取りかかってから、ずいぶんと時が経っていた。その間、ムラマサは隠された水着を探し、それでも結局見つからずに、この際どい水着を着るべきか着るまいか悩んでいたに違いない。

 

「エルフのやつが悪いんだ。あの性悪亜人め!」

 

 と肩をいからせて怒るムラマサを、一郎は宥める。

 

「エルフさんのことだから、本気で嫌がらせしようと思ったわけじゃないよ。その水着を着せようとしたのは本気だと思うけど、ちゃんと別の水着も用意してる筈、だと思う」

「そう、なのか?」

「クリスさんか管理人さんを呼ぼう。きっと大丈夫だよ」

 

 果たして、一郎の言ったことは正しかった。

 急遽呼び出されたクリスは、

 

「たしかに、ゲストに貸し出すための予備の水着はあるが」

 

 と肯じたのである。

 彼は、申し訳なさそうに頭を下げると、

 

「妹が申し訳ないことをした。私からも厳しく言っておく。もちろん、千寿先生からも厳しく叱っていただいて構いません」

 

 と拳を固めるのだった。

 

「ね」

 

 と微笑む一郎に、ムラマサは複雑そうに言った。

 

「……お前は、ずいぶんとエルフのやつを理解しているんだな」

 

 低く響く、ムラマサの声。まだエルフのことを許せていないのは明らかだ。静かな怒りの種火が、いまだにくすぶっている。

 その種火を吹き飛ばすべく、一郎は笑って爆弾を投下した。

 

「まさか。まだまだ知らないことばかりだよ。会ってから、まだ数ヶ月しか経ってないんだし。でも、それでも分かることはある。ちょうどムラマサ先生がマサムネ先生に惚れて、為人をどんどん知ってますます好きになっていったようにね」

「なっ! どうしてそれをっ」

「えっ、バレてないと思ったんですか」

 

 頬を染めるムラマサに、獅童は、呆れ混じりに驚いた。

 

「そもそも、ラノベ天下一武道に応募した作品からして、マサムネ先生のことですよね」

「や、やはりそう思うのか」

「まぁ、ひょっとしたらとは思ってましたけど、実際に会ってみて確信に変わりましたよ」

「そ、それじゃあ読者も……」

「分かってるんじゃないですかね。その、エルフさんがSNSで積極的に情報を流してるみたいですし」

「ななな、なんだそれは。これでは、公衆の面前で告白したみたいじゃないか!」

「というより、そのものだと思うけどね」

「――――つ!」

 

 首元まで真っ赤にしてうろたえるムラマサに一郎は、でもさ、と続ける。

 

「ほんとうに素敵な恋文だったよ。あんな告白されたら、やっぱり誰だってぐらっとくると思うんだ。それに、物書きらしくてロマンチックだ。きっと、マサムネ先生的にもポイント高いよ」

「そ、そうだろうか」

「そうともさ。そんな折りに、その水着を着ていったりなんてしたら……ひょっとしたらころっと惚れちゃうかもしれないね」

「む、むぅ。だが、しかし……」

 

 ムラマサの瞳が、葛藤に揺れる。

 ひょっとしたら、意中の相手を射止めることができるのではないか。しかし、この格好は常識外れに過ぎる。引かれてしまう可能性もまた否定できない。

 そんな葛藤を見抜いて、一郎は話を転がした。

 

「もちろん、無理をする必要なんてない。そもそも中学生には過激だし。ただ、エルフさんは、そういうことも考えてたんじゃないかな。敵に塩を送るってやつだよ。ほら、そういうのエルフさん好きそうだし」

「た、たしかに。そう言われてみれば、そうかもしれないな……。まったく、仕方のないヤツだ」

 

 もうすっかり、エルフの対する怒りは鎮火してしまったようである。

 たしかに、常識外れにすぎる衣装ではあるが、しかしそこには、エルフなりの気遣いがあったのかもしれない。悪気はあっても、悪意はなかったに違いない。だから、許すのもやぶさかではない。

そのように、ムラマサは思考を誘導されてしまった。

 

「一郎先生、ちょっとえげつないことありませんかね……」

 

 獅童は戦慄した。

 初なムラマサを動揺させ、判断力を失っている間に押し込む。ちょっと悪質なやり方だった。

 非難がましくねめつける獅童に、一郎は真剣な顔で応える。

 

「これが最良なんだよ。ムラマサ先生が納得して、エルフさんは血を流さず、僕らに飛び火することなく平和に事が収まる。三方良しのwin-win-winの関係だよ」

「たしかに、ムラマサさんときたら、何しでかすか分からないところがありますけど」

 

 獅童の描くムラマサ像はヤンデレである。

 自分に厳しいムラマサは、他人にも手厳しい。ましてや、人生の全てと言っても過言ではないマサムネに関することである。ひょっとしたら、かつて自身にそうしたように、エルフの生爪を剥ぐくらいのことはしたかもしれない。

 獅童は力強く頷いた。

 

「そうですね、平和が一番ですね」

 

 結局、ムラマサはまっしろなワンピース水着を着ることとなった。

 

「これなら何とか大丈夫だ。よし、エルフのやつを怒鳴ってこよう。爪を剥ぐまではしないが、これくらいはな」

 

 と言うなり、彼女は浜辺めがけて駆けだした。

 

「……一郎先生、宥めておいて正解でしたね」

「……本当にね。こんなに自分を誉めたいと思ったのは生まれて初めてかもしれない」

 

 二人は顔色を青くした。

 千寿ムラマサという少女は、ちょっと常識という尺には収まりきらないくらい、行動が大胆だったのだ。

 そうして二人が浜辺にたどり着いた時には、エルフとムラマサが楽しそうに喧嘩をしていた。

 

「ちょっと、どうしてわたし用意した水着を着てないのよ! せっかくサイズまで合わせたのに」

「どうしてもこうしてもあるか!」

「それが、あるのよ。どうしても着てもらう必要が。アレを着てもらう約束で、エロマンガ先生からマサムネの派遣許可を取ったんだから」

「他人様を勝手に約束の対価に差し出すやつがあるか!」

「あら、知らなかったかしら。勝利の為ならば、仲間の魂をかけてもいいのよ。某スタンド使いだってそうして勝ってるんだから、問題ないわ。だいたい、あんただってマサムネ目的で旅行に来たわけなんだし、ちゃんとチャンスだって作ってあげてるんだから、黙って従いなさいよ。感謝こそすれ、わたしを恨むのはお門違いよ」

「なるほど、そういう話があったんだね」

 

 と一郎が割って入れば、

 

「あら。イチローに獅童じゃない。どうかしら、このエルフ様の尊い水着姿は」

 

 エルフはしなをつくって優雅に構える。

 その姿もまた、過激だった。

 ビキニである。惜しみなく晒された白磁の肌は、白光をまとって目にまぶしい。くびれた腰は丸みを帯びはじめ、女性としての成熟を予感させた。その一方で、薄く小さな臀部と、そこから延びる細い足は、幼い少女の未成熟さを匂わせる。

 しなやかな青いつぼみが、徐々に艶めかしく花を咲かせようとしている。そんな妖しい美しさがあったのだ。

 自分の容姿に自信のあるエルフである。そして、一郎ならば気持ちよく褒め称えてくれるに違いない。

 その期待は裏切られることとなった。

 一郎は複雑な表情で、こう言ったのである。

 

「素敵だけどね、一枚羽織ったらどうかな。ずっっと海に入ってたんでしょ。そろそろ冷えるんじゃないかな」

 

 それは、無理のある理屈だった。なにせ、夏なのである。

 太陽が、じりじりと砂浜を焼いている。足裏には、サンダル越しに砂浜の熱を感じるかのようである。空気は乾いて、喉に貼りつくようだ。

 暑い。海水につかれば、日が暮れるまでずっとそうしていたいと思うに違いない。冷えるどころか、海水は温いぐらいだったのだ。

 獅童は驚いた。これが、つい先ほど上手くムラマサを丸め込んだ人物だとは思えなかったのだ。

 エルフもまた、一郎の珍しい反応に我知らず胸をおさえた。

 

「そ、そうね。ありがとう、とりあえず羽織っておくわっ。それより、ほらっ、海よ。どうかしら、我が家の海は!」

 

 多少強引な話題の転換であったが、効果は抜群だった。

 まさに楽園の海なのだ。碧色に透き通っていて、とても美しい。目を凝らせば、魚が泳ぐ姿すら認めることができたかもしれない。

 一郎は、素直に驚いた。その様子が、エルフに落ち着きを取り戻させる。

 

「綺麗な海だね! こんな海は、日本にいたんじゃまず見られない」

「バカね。ここも日本じゃない。パスポートなんか使わなかったでしょ」

 

 エルフはくすりと微笑んだ。

 いつも落ち着き払っている一郎である。それが、きらきら目を輝かせて、年相応にはしゃいでみせたのが嬉しかったのだ。

 

「せっかくだし、泳ごうかな。皆であの島まで競泳してみない?」

 

 という一郎の提案は、しかし、すぐさま否決された。

 

「それなんだけど、エルフも俺も泳げないんだ」

「僕もです。その、泳ぐのは苦手で」

「私もだ。そもそも泳ぎを覚える必要がなかった」

「え」

 

 まさかの満場一致の否決である。

 

「学校で水泳の授業、あったよね?」

「そりゃそうだけど、べつに二十五メートル泳げなくても小中学校は卒業できたし、高校には水泳の授業なんて無いしな」

「そうですね。成績に目をつむれば、そこはどうにかなりました」

「わたしは学校なんか通ってないわよ」

「そもそも小説を書くのに泳ぎは必要ない。人間は椅子に座って小説を書いていればいいんだ」

「うん。まぁ、そうかもしれないね」

 

 島国の民として思うところがないわけではないが、それを言っても詮無きことである。

 結局、ビーチバレーやらスイカ割りやらをして、浜辺で遊ぶこととなった。

 もちろん、遊びはそれだけではない。遊び疲れて砂浜に横になったマサムネは、パラソルのつくる日陰の下、砂を盛られて筋肉隆々の偉丈夫に改造されたし、そんなマサムネを、ムラマサは鼻息を荒くして描写した。

 

「なぁ。砂を盛るのは構わないんだけど、ちょっと等身おかしくないか?」

「すっごくサッカーの上手そうな身体つきよ。キャプテン・マサムネね!」

「た、たくましいマサムネくんも良いものだなっ」

「ムラマサ先輩、なんか目が血走ってない!? 怖いよ!」

 

 一郎と獅童は砂城作りに興じ、お互いの意外な一面を発見した。

 一郎の砂城は、子供のつくった粘土細工のように不細工だったし、獅童のそれは、なんと天守閣つきの和城だったのだ。

 

「一郎先生って、意外と不器用なんですね。もっと、なんでもそつなくこなすのかと思ってました」

「そういう獅童先生こそ、びっくりするほど器用なのは予想通りだけど、意外と渋い趣味してるんだね。お菓子でできた洋風のお城とか、メルヘンなのを作るのかと思ってた」

「先日、一郎先生にいただいたお酒がきっかけで、和風という分野に興味が出まして」

「そう言ってもらえると嬉しいな。甲斐があったというものだよ」

「実は、あれからお酒について色々調べ始めまして――」

 

 こうして五人は思い思いの時間を過ごしていたのであるが、

 

「なんでしょう、あの雲は」

 

 いつの間に、やって来ていたのだろうか。

 

「なんだかカッコイイな。”竜の巣”みたいだ」

 

 巨大なくちなわがとぐろを巻いて、五人の見上げるすぐ上空に鎮座していたのである。

 

「スコールよ!」

 

 エルフが叫んだ。

 その途端、

 

「うわっ、なんだこれ!」

「マサムネくん、はやくパラソルに入るんだっ」

「なんだって!? 雨音で聞こえないぞ!」

 

 篠突く雨、とでも言うべき驟雨(しゅうう)である。

 砂城は流され、あれだけ碧かった海はまたたく間に白い濁りを浮かべた。

 それでも奇妙なことに、空は明るい。まっさおな晴天がどこまでも続いていて、しかし、彼らのいる浜辺だけが雨に降られている。

 それは、五人の頭上に居座る大蛇が、気まぐれに降らせた悪戯の雨だった。

 たまらず五人はパラソルの下へと身を寄せた。

 その矢先である。

 

「あっ」

 

 という間もあらばこそ。

 何を思ったか、エルフはパラソルから飛び出した。

 両手を広げ、滝のような雨に自ら飛び込むと、満面の笑みで歓声をあげた。

 

「うぅーん、気持ち良いわっ!」

 

 みるみるうちに、雨が彼女を彩った。

 白磁の肌で、雨粒が跳ねる。雨粒は、きらめく陽光を吸いこんだ光の珠となって、しとどに濡れた金糸の髪を飾りたてた。

 それはまさに、雨降りの花園に不意に姿を見せた、気まぐれな妖精の舞いであった。

 この幻想的な光景に、一同は声もなく見入ってしまう。

 

 ひょっとしたら、自分は白昼夢を見ているのではないだろうか。身じろぎひとつでもしたら、この気まぐれな妖精は、雨と一緒に地上から姿を消してしまうのではないだろうか――

 そんな突拍子のない不安に囚われて、誰も、ほんの一言すら発することができないでいたのである。

 彼らを現実に引き戻したのは、他ならぬエルフだった。彼女の口から最初に飛び出しのは、とんでもなく下品な罵倒語だったのだ。

 

「何よ、アホ面さらして。アンタたちってば、ほんとうにバカよね。こんなに暑くて乾いてて、そしてここは海でわたしたちは水着姿なのよ。だったら、することなんて決まってるじゃない? こんな最っ高に気持ちいいことなんて、他に無いわよ!」

 

 それで、一同は、彼女が血の通った人間であることをやっと思い出したのだった。

 

「それもそうだね。流石、エルフさん」

「おまえにアホだのバカだの言われるのは業腹だが、たしかにそれは楽しそうだ」

「これも取材というやつですね」

「みんなも行くのかよ。それじゃあ俺もっ。――うひゃあ、こりゃすごい!」

 

 こうして五人は、乾いた夏を潤す、恵みの雨を堪能したのである。

 

 

 ***

 

 

 色とりどりとの夕餉である。

 綺麗な貝のパエリアには、橙や赤のパプリカが散りばめられ。地魚のカルパッチョには、瑞々しい緑のオリーブがそっと実を添える。ひよこ豆のスープには、トマトが紅一点を飾り。牛肉のシェリー煮込みは、飾り葉の緑が引き立てた。

 地中海を思わせる鮮やかな料理の数々には、どこかエスニックな匂いがつきまとった。それは、クミンで香り付けされたオリーブ油である。香辛料のスパイシーな風味が、ふんわり口の中に残るのだ。

 

「凄いなぁ。これを全部エルフが?」

「まぁね。下拵えは管理人さんに手伝ってもらったけど、それ以外は全てっ! この敏腕シェフ、エルフ様の手によるものよ。どうかしら、我が妙技は」

「料理が上手だとはうかがってましたけど、ここまでとは!」

「悔しいが、これは私も負けを認めざるを得ない。こんなヤツに負けることがあるとは業腹だが」

「とっても美味しいよ。どれも刺激的なのにさっぱりとした後口で、いくらでも食べられそうだ。それに、みんな出来立てだってのがまたすごい。これだけの品数を管理して同時にこしらえるだなんて、よっぽど料理慣れしてないとできない」

 

 口々の賞賛の言葉、そして口を極めて誉めたたえる一郎に、エルフは有頂天になる。

 

「そうでしょう、そうでしょう。美味しく作れて三流。要望通り完璧に作れて二流。料理を出すタイミングを含め、食卓の全てをコントロールできるようになって、はじめて一流のザ・シェフなのよ。そして、小説ならず料理の世界でまで一流の才媛、山田エルフ。こんな才色兼備、良妻賢母、神が二物も百物も与えた奇跡の美少女をお嫁さんにする人は、なんて幸せ者なんでしょうね」

 

 ちらりとマサムネを横目にうかがうが、彼は食事に夢中であった。

 それでもまぁ良いかと、エルフは上機嫌に皿に料理をよそっては配る。

 

「はむっ。やはり美味しい。くっ、やはり洋食では敵わないか。和食なら多少は太刀打ちできるんだが」

 

 悔しい、でも止まらないの! という表情でムラマサは箸を進める。

 

「マジか。これに対抗できる和食って、相当だぞ。そういや、シドーくんもお菓子はエルフ以上だし、ひょっとして作家って女子力高かったりするのかな」

 

 と応じるマサムネも、料理から目が離せない。獅童も同様である。

 

「そういうマサムネ先生も、この前の料理は上手でしたよ。どれも見事な味付けでした。一郎先生は?」

「はは……」

 

 一郎は苦笑を返した。

 

「僕に言わせれば、マサムネ先生含め、この面子が特別なんだと思うよ」

 

 そんな一郎の得意料理はといえば、レシピ通りにすればまず失敗のない煮物である。煮物は科学だ。科学とは再現性の学問である。決まった手順を踏めば、決まった結果がもたらされるのだ。

 もう一つ得意料理を挙げるとすれば、それは、野菜炒めであった。長年の独身生活は、具材を火にかけるタイミングを、すっかり一郎の魂に刻み込むことに成功したのだ。絶妙な歯応えに仕上げることができるのが、一郎のひそかな自慢だった。

 とはいえ、この輝かしい面子を前にしては、口に出すのも憚かられる。ひそかな自慢は、そのまま、そっと秘されることとなった。

 こうしてエルフの料理に舌鼓を打った一行は、しばし腹ごなしに歓談に興じ、それから、湯船につかって一日をしめくくることとなった。

 

「えっ、三人いっしょに入浴ですか……」

「まぁまぁ、獅童先生。三人だし」

 

 マサムネからそっと身を離す獅童を、一郎が宥める。誤解はいまだに解けていなかった。

 

「あの、俺、先に入ってるから……」

 

 可哀想なマサムネは、いたたまれなくなって一人先行する。

 見るに見かねて、一郎は獅童を説得することにした。

 

「ほんとうに大丈夫だからさ。獅童先生も知ってるでしょ。マサムネ先生の、エロマンガ先生に対する――かどうかはさておき、想い人に対する一途さを」

「ええ、それは、まぁ」

「ゲイかバイかはさておき、あれだけ優しいマサムネ先生が、恋愛面に関しては残酷なくらいあの二人を寄せ付けないんだ。その一途さは本物だよ。そんなマサムネ先生が、獅童先生を襲ったりするかな」

「……そう、ですよね」

 

 獅童は、マサムネの誠実さを知っている。人の気持ちを大切にし、人に対して誠実であろうとする為人を知っている。

 確かに、彼は、エロマンガ先生とただならぬ関係にあるのかもしれない。けれども、そのエロマンガ先生について多くを秘しているのも、そのことで申し訳なさそうに獅童たちに接するのも、彼の人柄の良さの証左である。

 そんな彼が、嫌がる獅童に無理矢理迫るとは到底思えない。

 

「マサムネくんは、そんなことしませんよね。それなのに、僕ときたら一方的に怖がって……。ああ! 僕は、自分が恥ずかしい!」

 

 すっかり俯いてしまった獅童に、しかし、一郎は変わらず飄々と語りかける。

 

「獅童先生が悪いわけじゃないよ。マサムネ先生も、誤解されてもしょうがないことしてるんだし。十人いたら、九人くらいは誤解するんじゃないかな。そうだね、強いて言えば、間が悪かったのかな」

「そう、ですかね……」

「そうとも。いや、傑作だったよ。本気で怖がる獅童先生と、焦ってどんどん墓穴を掘るマサムネ先生ときたら!」

「やっぱり一郎先生は人が悪いですね!」

 

 おかしそうに笑う一郎に、獅童も笑って応えた。

 獅童は嬉しかったのだ。失礼なことをしでかした自分を、あたたかく笑い飛ばしてくれたことが。そして、親しい友人にそうするように、遠慮なく自分をからかってくれたことが。

 

「僕、もう一度お風呂に行ってきます。マサムネくんと色んな話がしたくなってきました」

「いいね。行っておいでよ。僕はもうちょっと荷物を整理して、後から追いかけるから」

 

 獅童は居ても立ってもいられなくなって、廊下に飛び出した。

 これまでの非礼を詫びよう。親しい友人としてやり直すのだ。互いに肩を叩き、笑い合い、膝を交えて語り合おう。

 そうして駆け込んだ浴場、湯煙の向こうには、待ち望んだ友の姿があった。

 

「マサムネくん。マサムネくん!」

 

 と呼びかけて、獅童は硬直した。

 マサムネは、一糸まとわぬ姿の美青年と正面から見つめ合い、

 

「結婚してくれ」

 

 と愛を囁かれていたのである。

 二人が振り向く。視線が獅童にからみつく。

 男達の背後に浮かぶおどろおどろしい薔薇の花園が、するすると蔦を伸ばしてくる様を、獅童は幻視する。

 

「お、」

 

 獅童の背中で悪寒が囁いた。

 つかまればお仕舞いだ。薔薇によって菊の散らされるは必定。ああ無惨。

 非業の最期をとげなくなければ、逃げるしかない。逃げろ、逃げるのだ。

 

「お邪魔しましたあぁぁっ!」

 

 獅童は脱衣所に駆け込んだ。

 脱いだばかりの服をひったくる。下着の上からボタンもかけずに一枚羽織ると、足をもつれさせながら、必死の形相で廊下へとまろび出た。

 あれよあれよという間に、彼は姿を消してしまう。

 

「ちょっと待ってよ! 誤解だよ!」

 

 というマサムネの叫び声は、ついぞ獅童の後ろ髪を捕まえ損ねたのである。

 

 

 ***

 

 

「怖い、マサムネくんが怖い……」

「いったい何があったんだい」

 

 部屋に入るなり、寝台で薄布にくるまってぶつぶつ呟く獅童である。

 

「あ、大丈夫ですので、お構いなく。ちゃんと分かってるんです。あれはきっと、クリスさんの方から迫ったんだって。マサムネくんにその気はないんだって。だから、明日になれば大丈夫。ふつうに接することができると思います。でも、今日だけは、ちょっと距離を置いておきたいかなって」

「うん。何か大きな誤解があったことだけは分かったよ。時間が必要なこともね。つくづく可哀想に」

 

 果たしてそれは、誰に向けた言葉であろうか。

 

「それじゃあ、そろそろ僕もお風呂をいただこうかな」

「ええ、お気を付けて……」

 

 一郎は、着替えを片手に部屋を出る。

 ようやっとたどり着いた脱衣所には、マサムネがいた。

 彼は、一郎の姿を認めると、肩をつかんで言い募った。

 

「い、一郎先生っ。獅童くんから聞いたかもしれないけど、誤解だから! 俺とクリスさんは、そういう関係じゃないから!」

「分かってるよ。僕はマサムネ先生がストレートだと知ってるし、獅童先生も、これに関しては誤解だと分かってるみたいだ。ただ、今は動揺してるみたいだから、今日はそっとしておいた方が良いと思う。大丈夫。明日にはいつもの獅童先生に戻ってるよ」

 

 はじめは興奮していたマサムネであったが、一郎の静かな声音に、だんだんと落ち着きを取り戻し、

 

「そっか。それなら良かった」

 

 ほっと安堵の息をつくに至った。

 

「いやさ。打ち上げの時から、とんでもない誤解されちゃってるしさ。今回の旅行でも、ホモ疑惑が深まっちゃっただろ。せっかく友達に成れたのに、変に疎遠になっちゃったらどうしようかと思ってさ。いや、ほんっとうに良かったよ!」

「大丈夫だよ。獅童先生は人が善いから」

 

 ――誤解したままでも、友情に罅が入ることはないよ。

 破顔するマサムネに、一郎は、含蓄深いアルカイックスマイルで応えるのだった。

 などと会話する間にも、一郎は入浴の準備を整える。

 

「そうだ、一郎先生」

 

 いざ風呂への扉を開けようとした一郎を、マサムネの声が呼び留めた。

 

「今、クリスさんが入ってるんだけど、何というか、ちょっと心構えしといた方が良いかも。善い人なんだけど、ちょっと言葉が足りないっていうか、びっくりさせるようなことを言うかもしれないからさ」

 

 それは、マサムネなりの気遣いであった。口数が少なく、それ故に誤解されやすいクリスと、そんな彼と一対一で向き合うこととなる一郎を慮ったのだ。

 いかにもマサムネらしい気遣いに、一郎は嬉しそうに微笑みを返す。

 

「大丈夫。それも知ってるよ」

 

 そうして一郎は扉を開いた。

 星々のまたたく露天を望む、大浴場である。

 身体を洗い、いよいよ湯船に向かう一郎を、湯船に浸かるクリスの静かな瞳が迎えた。

 

「空が綺麗ですね」

「ああ。東京のような都会では見られない、良い星空だ」

 

 二人は、肩まで浸かり、ぼんやりと空を眺めやった。

 やがて一郎が視線を戻すと、クリスの瞳とぶつかった。クリスは、いつの間にか背筋を伸ばし、この時を待ちかまえていたのだ。

 彼は、頭を下げて謝意を述べた。

 

「一郎先生、先ほどは妹が大変申し訳ないことをした。直接の被害を被ったのは千寿先生だが、一郎先生にもご迷惑をお掛けした。それどころか、妹とご友人方との関係を取り持ってもらっているようで、感謝の言葉もない」

「僕は気にしてませんよ。これでも、楽しませてもらってますから。ムラマサ先生も、口で言うほど怒っているわけではないようだし」

「そうですか……」

 

 クリスは、煮え切らない様子である。兄としての立場と、編集としての立場が、彼の内側でせめぎ合っているのだ。

 編集としては、担当する作家が他の作家に迷惑を掛けてしまったことを申し訳なく思わなければならない。しかし、クリスとて血の通った人間である。兄としてのクリスは、妹が気を置かずに付き合える仲間ができたことを、どうしても喜ばしく思ってしまうのだ。

 そんな葛藤を、一郎は解きほぐす。

 

「クリスさん、そんなに難しく考える必要は無いですよ。普段は編集と作家という関係かもしれませんけど、この場では、エルフさんのお兄さんと友人に過ぎません。そいうことは考えなくて良い。ですから、僕にも気軽に話してほしいし、あの二人は放っといて良いと思います。ああやってじゃれ合うのが、あの二人なりの楽しみ方みたいだし」

 

 意表を突くその言葉に、クリスは目を丸くした。目の前の少年が、とても妹と同じ中学生だとは思えなかったのだ。それどころか、自分よりもよっぽど大人であるように思われた。

 

「君たちには敵わないな。和泉先生にも、作家としてではなく妹の友人として気軽に接してほしいと言われたよ」

 

 クリスは心地良さそうに笑った。

 一郎も微笑み返す。

 

「当然ですよ。エルフさんは、ただの作家仲間にしておくには惜しい人ですから。親しい友になりたいと皆思ってる。だから、安心して欲しい。そんなふうにマサムネ先生も思ったんでしょう」

「そうだとしたら、ありがたいことだ」

 

 不意に、クリスは笑みを納めて、真剣な顔で問うた。

 

「一郎先生、きみは妹のことが好きなのかな」

「ええ」

 

 あまりにあっさり答えたものだから、クリスは、半眼になって尋ねる。

 

「アレのどこか良いんだ。こう言ってはなんだが、アレは難が多いぞ。見てくれは良いが、諸々の欠点はそれを打ち消して余りある。そうだな。例えば、態度が大きく口も悪い」

「確かに、歯に衣着せないどころか、自ら遠慮を破り捨てて裸で追い回すような物言いですけど」

 

 ぎしり、とどこかで何かが軋む音がした。

 

「でも、溌剌としていて小気味良いですね。好き嫌いは分かれるでしょうけど、僕は距離が近いような気がして好きです」

 

 一郎は、微笑みながら答えた。

 

「では、アレの自分勝手なところはどうだ。きみだって、突拍子のない思いつきに有無を言わさず付き合わされてるんだろう」

「毎日色んなことがあって楽しいです。それがなければ、同じ事の繰り返しだったでしょうから。学校に行って、小説書いて。それが退屈だというわけではありませんけど、エルフさんと出会ってしまったら、もう元の生活は物足りません」

 

 クリスは言い募る。

 

「作家として、というより、人間としてもどうかと思う部分がある。締め切りはちっとも守らないし、金遣いだって荒い。自制心と計画性が皆無でだらしない」

「自分の気持ちを大切にしているんですよ。そんな人だから、他人の気持ちも大切にできる。彼女なりのやり方ですけど、でも、確かにエルフさんはそれができる人だ」

「正気か……」

 

 クリスは訝しげに一郎を見やった。

 確かに、そう言えなくもない。だがそれにしたって限度がある。エルフの悪癖は、擁護の余地のないほど悪質であるとクリスは常々思っている。まさか全て本気で言っている筈があるまい。となれば、一郎は嘘を言っているのだろうか。

 そんな疑念を一笑するかのように、一郎は微笑んで、静かに語りだす。

 

「痘痕もえくぼというやつですかね。――エルフさんは、初対面の僕を気遣ってくれたんです。他人様の作品の続きなんか書いて楽しいのかって。楽しいと答えたら、我が事のように嬉しそうに笑ってくれました。その時から、僕はあの人のことが本当に好きになったんです。クリスさんだって、よく知ってる筈です。あんなに良い(ひと)は他にいないって」

 

 ぎしりぎし、と何かが悲鳴をあげる音。

 クリスは腕を組んで、意地悪な質問を投げつけた。

 

「だが、妹は和泉くんを好いているようだぞ」

「そうですね。一度袖にされても、それでも正面切って勝負だーって挑んでますね。小説どころか恋愛事までゲームみたいに考えてるんだから、本当にエルフさんらしい」

 

 くすりと笑う一郎に、クリスは、とうとう観念したとでも言うかのように肩をすくめてみせる。

 

「やれやれ。妹も頑固者だが、きみも相当だな。妹から聞いていた以上だ」

 

 クリスは微笑んだ。

 それは、表情の変化に乏しいクリスが、ここにきて初めて浮かべた、心からの笑みだった。

 

「どうやら、きみと妹は相性が良いらしい」

「そうだと嬉しいです」

「私としては、是非きみに結婚してもらいたい」

「……え?」

 

 珍しく、驚きに目を剥く一郎である。

 クリスの手が、一郎の肩に置かれていたのだ。

 美青年ではあるが、そこはやはり男である。白く滑らかな肌に浮かびあがる、太く男らしい血管はどこか頼もしく。ほっそりと長い指は、節々がごつごつと力強い。引き締まった筋肉は、ほっそりとした鎖骨との対比を成して、逞しかった。

 一郎は、獅童の気持ちが分かった気がした。ありていに言えば、怖い。

 

「実は、先ほど和泉先生にも、結婚して欲しいと言ったんだがな。すげなく断られたよ。彼には既に想い人がいるようだ」

「ああ、獅童先生の誤解はそういうことですか」

 

 ひそかに安堵の息を吐く。

 これまでの文脈がなければ、勘違いしてしまったに違いない。ちょうど獅童のように。

 

「妹に負けず劣らず頑固なきみなら、きっと妹と上手くいくだろう。妹も、まんざらではないようだ。勝手な言い分だが、どうかこのまま妹を想い続けてあげて欲しい」

 

 クリスは、まっすぐ一郎を見やる。

 それは、兄としての真摯な願いだった。

 一郎は、しかし、あっけらかんと言い放つ。

 

「うーん。一緒に仕事してて思ってたんですけど、やっぱりクリスさんは難しく考え過ぎです。――大丈夫。エルフさんは、ほんとうの意味で賢い。どう転んだって、自分で自分の幸せを掴み取りますよ。できれば、そのとき傍にいるのが自分でありたいとは思っていますけど。とにかく、エルフさんに関して心配することはありません」

 

 それがあまりにエルフに対する信頼に満ちていたものだから、クリスは、虚を突かれてぽかんとした。

 やがて、彼は嘆息する。

 

「……そう、だな。その通りだ。まったく、これじゃあどっちが年上か分かったものじゃない」

「きっと、妹を持った兄は、誰だってそうなるんじゃないですかね。子を持つ親だって、きっとそうです」

「ふはっ。親になるというのも大変そうだな。妹一人でも大変なのに、これ以上増えたら、私は過労死してしまいそうだ」

 

 機嫌良さそうに笑うクリスに、一郎もまた笑顔で応じる。

 

「おや。良い人でもいるんですか」

「そういうわけでもないのだが――」

 

 そのような話をしてから、一郎は風呂から上がる。

 去りゆく背中に、クリスの声が掛けられた。

 

「私は、もう少しこうしているよ。きみとは本当に良い話ができた。もう少し、余韻に浸っていたいんだ」

 

 

 ***

 

 

 一郎が廊下に出ると、浴衣姿のエルフがいた。

 湯上がりなのか、肌が赤い。首元まで朱がさして、潤んだ瞳が艶めかしい。

 彼女は、

 

「あっ」

 

 という顔をすると、慌てた様子で右耳をつまみ、悲鳴のような声をあげる。

 

「そ、そういうことだからっ! じゃあまた明日っ!」

 

 そして、そのまま走り去るのだった。

 その方向は、マサムネの部屋である。

 

「ま、こればっかりは仕方ないか」

 

 一郎は、かぶりを振って部屋へと戻るのだった。

 

 一郎の預かり知らぬことであるが、それは、エルフにとって勝負の一夜だった。

 エルフは、とうとうマサムネに真正面から想いを告げ、そして、失恋したのである。

 




13,897文字


とうとう12万字を超えました。12万字で畳める筈が無かった。


ところで、先日、読経して悪霊を退治しました。

夜の四時ごろ、話声に起こされました。
アパートの壁の向こう、お隣さんの部屋から、電話で話すような大きな声が響いてくるんです。
一時間たっても止まないので、どうしようか悩んだ結果、壁に向かってお経を唱えてみました。
般若心経読み終わったころにすっと声が消えたから、アレはお隣さんの迷惑行為じゃなくて、悪霊の仕業だったに違いないと思ってます。

上司に報告すると、「換気扇の下でお香焚けばいいじゃない」とクオリティ向上の提案が。
目から鱗です。木魚や鈴も買おうと思います。

でも、しばらくして、反省したんです。
真夜中にお経が聞こえてきたら、不気味ですよね。
だから、次は落語にします。
お隣さんが笑うまで、落語を止めない!
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