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読み終わるなり、一郎はおおきく天を仰いで「やられた!」と嘆じた。
「参った、エルフさんの作品にはやられたよ」
「うぅ~、こんなに面白いなんてぇ……!」
めぐみもまた、エルフの小説を認めざるを得ない。この場に居る三人にとって、これほど面白い題材をあつかった作品は他にないからだ。
「これってぇ、ぜぇ~ったい一郎くんとエルフちゃんのことでしょ~! しかもぉ、このサブヒロインはぜぇ~ったいあたしがモデルだしぃ」
エルフの作品は、一郎に宛てたラブレターである。「一緒になったら、こんな楽しい未来が待ってるのよ!」というアピール小説であった。にぎやかでか愉快なヒロインにふりまわされながら、楽しく毎日笑って暮らす主人公が描かれている。
小説としての完成度も高い。どのキャラもまっすぐで影が無く、ひたすら明るく面白おかしい。エルフの魅力をそのまま写したかのような作品である。読むだけで明るく幸せになれる、ラノベの頂点のひとつとも言うべき傑作であった。
一郎はエルフを見やり、ふと思う。このような作品を生み出した作者、作品そのものが形をそなえたかのような、山田エルフという愉快な少女。彼女といっしょになったなら、どんなにか楽しい毎日が待っているのだろうと。
「なんて考えさせられてる時点で、僕の負けだな……。試合に勝ったとしても、勝負に負けたよ」
「たしかに、このヒロインみたいな子といっしょになれたら、ぜったい毎日楽しいだろーなって思いますもん。……こんなのひきょーですよぅ」
エルフの小説は、
そうして心を動かされてしまった時点で、どんなに面白い小説を書いて小説勝負に勝とうとも、恋愛の勝負では一郎の負けなのだ。――そんな旨の発言に、エルフが噛みついた。
「ちょっと待ちなさいよ。『試合に勝ったとしても』ってどういうこと? ひょっとして、わたしの傑作ラノベより面白いものを書いたとでも言うつもり!?」
「小説としては負けてないと思う。……なんてのは作者の欲目かもしれないけどね。どっちにしろ、読んでみれば分かるさ」
自信たっぷりの一郎と、その隣でうんうんと頷くめぐみ。そんな二人の姿は、熱しやすいエルフの心に火をつけた。
「言ったわね! いいわよ、読んでやろうじゃないの、さっさと読ませなさいよ!」
「それじゃあ、次は僕の番だね」
こんどは一郎の原稿が配られた。
それをひったくるようにしてエルフは読み始め、めぐみは「よーやく一郎くんの小説が読めますね!」とうれしそうにほほえんで受け取った。
さて、一郎の小説である。
一郎の作品のジャンルは、エルフの土俵であるライトノベル・ファンタジーであった。雰囲気のあるファンタジーで、ほんの数頁めくるうちに、エルフはたちまち独特の世界観に引きずり込まれてしまった。現代人のそれとはおおきく異なる価値観と風習。そのなかで生活する人々の、生き生きとした様子。神秘にみちた未開の地と、それを旅する主人公の、尻のうずくような冒険譚。
古典的な展開でありながら、それでいて飽きを感じさせないどころか、まったく新しい作風であるとすら思わせるのは、ひとえに書き手の力量の故である。
たったラノベ一冊でありながら、読み終えた後には、大長作でも読みこんだかのような強烈な満足感が残される。古き良き王道を、正々堂々と正面から書ききって、目新しささえ感じさせる怪作であった。
「うぎぎぎぎ……! なによこれ、裸にもならないのにそのくせ面白くって、しかもこんな濃厚なのに全然ヘヴィじゃなく、しっかりラノベになってるだなんて、そんなの反則じゃない!」
エルフは悔しさに涙を滲ませた。
エルフは常日頃、小説は、面白い内容をわかりやすい文章で伝えることが肝要であると謳っている。それは、幅広い読者層を獲得するための戦略である。そして今回は、イチローを虜にするための戦略を採った。
それが、これは一体どうしたことか。
たった一人に向けた自分の作品と同じくらいに、不特定多数に向けられた筈の一郎の作品は面白かった。
自分は一郎のことしか考えていないのに、一郎はこっちを見向きもしないで、同等の作品をつくってみせた。
それが、同じ作家として悔しかったのだ。山田エルフは、ひとりの恋する乙女であったけれども、それ以前にひとつの小説家であった。
「悔しいけれど、商業的な小説としてはイチローの勝ちね。もちろん、
たいへん不本意そうに、エルフは言った。
「う~ん、そうだね。一郎くんの小説もすっっごっっく! おもしろいし、あたしはこっちの方が好きだけど、でもでもぉ、エルフちゃんの小説はおもしろすぎて卑怯っていうかぁ」
「僕たちだけの為に書かれた作品なんだからね。僕らにとって大ヒット間違いなしの内容を、商業作家のエルフさんが本気で文字におこしたんだ。僕らにとって何より面白い小説になるのは、当然の結果かもしれない。……ほんとうは負けるつもりなんてなかったから悔しいけど、エルフさんの勝ちだね。参ったよ」
悔しいと言いながら、そのくせ、実にすがすがしく一郎が言った。
「……負けたっていうわりには、ぜんぜん悔しそうじゃないじゃない」
「そりゃあ、これだけ面白い作品を読まされたらね」
と示したのは、エルフの作品である。ふたりが一郎の小説を読んでいる間も、一郎は、エルフの作品を読み返していたのだ。
ほぅと息を吐いて、心地よい読後感にひたる一郎。その姿を見て、エルフはたちまち機嫌を直した。
「なんにせよ、心残りがないのはいいことだわ。これで、イチローは晴れてわたしのモノね!」
かくしてエルフは、優勝宣言をする。両手でピースを形作り、脚を前後にひらいた中腰のポーズで、高らかに「優勝しちゃったもんね!」とばかりに笑みを浮かべる。
そこに、
「ちょおっとまった!」
と割って入る元気いっぱいの声。めぐみである。
「まだひとつ作品がのこってますよぅ!」
「もちろん覚えてるわ。アンタもがんばって小説を書いたんだから、当然しっかり読ませてもらうわよ。といっても、この天才作家のエルフ様入魂の傑作と、それにひけをとらないイチローの怪作という、いわば時代の頂点を極めた作品に敵うものが出てくるとは思わないけれど」
残念だけど、これって勝負なのよね、と言いつつ原稿を催促するエルフである。その姿は、あきらかな格下を相手に防衛戦を行う、絶対王者ボクサーのように余裕綽々であった。
そんなエルフの顔が、小説を読み進めるうちに凍りつく。
「なっ、ななな、なによこれ!」
最初こそ「あら。意外と面白いじゃない」と言わんばかりに跳ね上がった柳眉は、しばらくもせぬうちに「ん? これは……」と疑惑のかたちに姿をかえ、しまいには「ちょっと、どういうことよ!」と逆立ち怒りを象った。
「めぐみ! アンタ、イチローに手伝ってもらったわね!」
「へぇ。エルフさんはそんなことまで分かるんだ」
と驚きの声をあげたのは一郎である。
エルフは、めぐみの小説を読んだことがない。だから、めぐみの文体など分からぬ筈である。
のみならず、一郎が書いた箇所は、めぐみの文体に極限まで寄せた文体で描かれている。めぐみが物書きとして成長したら、きっとこうなるのだろう。そう思わせるような、めぐみの癖やみずみずしい感性はそのままに、表現技巧にある程度の下駄を履かせた、それはいかにもめぐみらしい文章だったのだ。
にも関わらず、めぐみ一人で書いたのではなく、一郎の手が入っていることを見抜いてみせた。
その慧眼に、めぐみもまた、おおきな瞳を瞬いて驚きの声をあげる。
「すご~い。エルフちゃん、まるで魔法使いみたいですぅ」
そして、褒められるととりあえず調子に乗るエルフである。
ニヤリと相好をくずして、得意そうに髪をかき上げる。
「まぁね。<神眼>の異能を持った
が、すぐさまジト目になって二人をねめつけた。
そんなエルフに、ふたりは正面から答える。
「どうもこうも、見たとおりだよ、エルフさん」
「あたしは、やっぱりひとりじゃ小説が書けなかったんです。さいしょは一郎くんにつきっきりで教えてもらいながら、書いてました。でも、それでも間に合いそうにないしぃ、なにより一郎くんの邪魔になっちゃう……」
「それは勿体ないことだ。この小説は世に出さなくちゃならない。そうは思わないかい、エルフさん」
めぐみの書いた小説。それは、どこまでも頑なにひとりになろうとする幼馴染みを振り向かせようとする、いじらしい女の子が主人公の小説だった。不器用な幼馴染みの幸せを願って、そのために報われぬ努力を続ける、けなげな少女の物語。
「……そうね。たしかにこの小説は、表現もグッとくるものがあるけど、なにより元のアイディアが素敵だわ。こんな一途でいじらしい一人称の小説、ほかに見たことがないもの」
「だから、僕が手を入れることにした。編集の真似事みたいなことをして、それでも書けない部分は僕が書く。そうやって完成にこぎ着けたんだ」
「でもそれじゃあ――」
「うん。これはあたしの作品じゃあありません。あたし一人で書いたものじゃないから。だから、小説勝負はあたしの負けです」
「そうね、たしかに小説家としてはアンタの負けよ」
でも、とエルフは続ける。
「勝負については話が別よ。アンタとイチロー、ふたりの勝ちね。こんな小説読まされて、わたしの勝ちだなんて言えるワケないじゃない!」
エルフは叫んだ。どんなに悔しくとも、その小説に込められた想いを認めないわけにはいかなかったのだ。
めぐみの小説からは、一郎を想う気持ちがひしひしと伝わってくる。そして、それを文章におこしていく上で、一郎もまた、その想いをすっかり受け止めてしまったのだ。
いじらしい少女の想いを綴る文章は、一途な少女の、ぎゅっと胸を締めつけるような強烈な魅力にあふれている。そんな少女の幸せな結末を、気がつけば
エルフでなくとも気付かざるを得ない。読者が抱かされたその想いは、
「これを読めばわかるわ。アンタたちが、どれだけ互いを想ってるのかが」
ふたりでひとつの小説を書くうちに、ふたりの気持ちはだんだんと重なっていったのだ。
最初こそ、
だからエルフは、めぐみと一郎の仲を認めざるを得なかった。
「あーあ。負けよ負け、わたしの負け!」
エルフは椅子から立ち上がると、両手を突き上げてうんと背伸びをした。
それから、二人に背を向け、
「結局、イチローには小説勝負で負け、めぐみには恋愛勝負で負けたってことね!」
「エルフちゃん……」
めぐみは気遣わしげにエルフに声を掛けるが、しかし、どうしたことが言葉が続かない。
これがいつものめぐみなら、浮かんだ言葉をそのまま相手に放り投げて、たいへんな顰蹙を買った筈である。
ところがこの時ばかりは、エルフを気遣った。それは、エルフの描いた小説――一郎に宛てたラブレターとなんら選ぶところのないそれ――を読んだ為である。同じ男を愛した二人は、互いの想いを綴った読んで、互いに深い共感を抱いたのだ。
なので、めぐみの気持ちもまた、エルフには分かっていた。
「なに辛気くさい顔してるのよ。安心しなさい。アンタたちの小説のおかげで、素直に祝福する気持ちでいっぱいだわ。あんな熱い小説読まされたんじゃあね!」
エルフは、あきれた声音でめぐみを叱咤した。
そして、自らの胸中を詳らかにする。
「……知らなかったわ。えっちでかわいいヒロインの出てくる熱いバトル小説も好きだけど、こういう小説も、また違った熱さがあっていいものなのね」
そっと自らの心の輪郭を撫でるような、それは、しっとりとした声音だった。
「さぁ、今日はもうお開きよ。勝者は商品をもって帰りなさい!」
エルフがふり返って、からりと笑う。
そのときには、エルフはもういつもの元気を取り戻していた。
**
そうして、ふたりは一郎のアパートへとやってきた。
横並びになってベッドに腰掛けると、
気がつけば、二人はこういう関係になっていた。ふたりでひとつの小説を仕上げるうちに、二人は心を通じ合わせるようになったのである。
めぐみは、己が想いの深さを、何度も何度も小説という形で一郎に示した。一郎もまた、めぐみのしあわせには自身が欠かせぬことを嫌というほど突きつけられ、と同時に、めぐみに対する深い想いを自覚したのだ。
そうなると、二人の間に言葉は要らなかった。なんとなれば、互いの想いは、小説を書き上げるなかで否応なしに伝わり、重なっていったのだから。
いつしか二人は、こうして並んでベッドに腰掛け、手を握ってお互いの存在を感じ合う、無言の時間を設けるようになっていた。
しばらくそうしていたが、やがて、一郎が口を開く。
「エルフさんには悪いことをしたなぁ。僕がもっと早くに素直になっていれば、今日のようなことにはならなかったのに」
結局のところ、小説勝負の決着が着くより前に、一郎は答えを出してしまっていたのだ。これでは、エルフは道化師である。
そんな一郎の悔恨を、めぐみは一蹴する。
「う~ん、それはどうでしょー」
めぐみは、ほっそりとした人差し指を桜色の唇にあてがって、あざとくもかわいらしく言った。
「エルフちゃんのことだからぁ、それでも一郎くんにアピールしてきたに違いないと思いますぅ。だってだってぇ、エルフちゃん、ぜ~ったい一郎くんのこと諦めてませんもん」
「それは無いんじゃないかな。こんな形で袖にされたわけだし」
と苦笑する一郎であるが、めぐみは自信たっぷりに断言する。
「ううん、まちがいないですよぅ。エルフちゃんと小説を読み合って、それでぇ、わかっちゃったもん。おたがいのこと。エルフちゃん、また一郎くんに告白してくるに違いないですよぅ」
「……女性のことは、僕にはよく分からない。たしかに、どういうわけか今日、めぐみとエルフさんは通じ合っていたように思う。めぐみがそう言うなら、そうなのかも知れないけれど……」
難しい顔をする一郎に、それに、とめぐみは続ける。
「この小説勝負がなかったらぁ、一郎くんとはこんな関係になれてなかったと思うんです。きっと、一郎くんは小説のことしか頭になくってぇ、あたしも、
めぐみは、つないだ手をぎゅっと握りこむと、とろけるような笑顔で、それはそれはうれしそうに微笑んだ。
それで、ようやく一郎も肩の力が抜けたと見える。ふっと息を吐くと、頬を緩めて、語りだした。
「……そうだね。こんなことになるだなんて、僕も思ってもみなかった。きっかけになったのは、一緒に小説を書いたことだけど、こんなの考えたこともなかったよ」
一郎は小説バカである。こんなときでさえ、口から出てくるのは小説のことである。
「リレー小説は書いたことがあるけど、あれは究極的にはひとりで書くものだしね。でも、めぐみとしたのは、正真正銘の共同作業だ。二人三脚みたいに、どちらか一方の脚が動かなければ先には進まないし、息が合わなければ転びさえする。それがひどくもどかしく感じることもあるし、上手く噛み合ったときには、ひとりで書くときの何倍もの馬力を発揮することもできて、それがひどく楽しいとも思った。ひとりじゃ絶対に書けない世界が、めぐみとなら描けたんだ」
「一郎くん……」
それが、めぐみにはうれしかった。
めぐみは小説を読むことはしても、物書きではなかったから、一郎が作家としての想いを語ることは稀であった。もっとも大切な小説という分野において、一郎は、めぐみを寄せ付けなかったのだ。
それが今こうして、隣りに並び立つ同志として、めぐみを見ている。
めぐみの瞳に涙がにじむ。感極まって、頭に浮かんだ
「あたしといっしょに、小説を書いてくれませんか。原稿用紙は、ふたりの人生。そこに、ふたりでひとつの小説を書いてくのっ!」
果たして、一郎は、やさしく微笑み返す。
「僕はね、これまで小説のことしか考えてなかった。これからもきっとそうだと思う。小説の世界と向き合っていく。それはひとりでするもので、だから、ずっとひとりでいるより他にないし、それで良いと思ってた。……けど、そんなとこまでめぐみは入り込んでくるんだもんなぁ。完敗だよ」
「それじゃあ!」
めぐみの顔に、歓喜の色がはじける。
「いっしょに描こうよ。ふたりの
「うんっ! ずっとずぅ~っと、いっしょなんだからっ!」
喜びを爆発させて、めぐみは元気いっぱいに一郎に飛びついた。そのまま、よくわからない喜びの悲鳴をあげて、一郎を巻き込んでごろごろとベッドを転がる。
一郎の部屋には、ふたりの笑い声がこだまする。
それは、この先何年も何十年も、変わらず続くことだろう。
なんとなれば、めぐみは、己の人生の中心に一郎を据えていたし、一郎もまた、最も大切な小説の世界にめぐみを招き入れたのだ。
**
それから時は流れ、成人した二人はひとつの所帯を持った。
「ねぇ、一郎くん。今日のごはんは何がいい?」
「鰤大根が食べたいな。めぐみが、子供のころからよく作ってくれてるから、もうすっかり大好物だよ。そういうめぐみこそ、次の小説の構想とかアイディアはもうあるのかい?」
一郎は、鈴木一郎というペンネームで変わらず小説家の仕事をしている。
代表作の『豹頭譚』は相変わらず続いていて、そろそろ二百巻の大台に乗ろうというのに、終わりが全く見えない。口さがないファンのなかには「二代目も完結を墓まで持って行くんじゃなかろうか」「どうしてこの悪癖まで受け継いでしまったのか」「何から何まで正統後継者」と言う者もいるくらいである。
変わったのはめぐみである。鈴木めぐみというペンネームで小説を書くようになったのだ。著作の著者の欄にはふたりの名前が並んでいて、それは、ふたりの合作であることを示している。
世間の評価も上々である。「文章は旦那のそれに遠く及ばないんだけど、なんていうか、とにかく胸に響く」「旦那は旦那。嫁は嫁。それぞれの味がある」「エモい」「しかも美人でモデルまでしてるんだぜ。料理も上手いらしいし。旦那は爆ぜろ」というふうに、面白おかしく賑やかされており、それを本人も楽しんでいる。
「んー、そうですね~。美少女JKがぁ、付き合ってる幼馴染みをいっしょうけんめいつなぎ留めようとする話とかどうですかぁ? 恋のライバルは、海外からやってきた美少女なんですけどぉ、むちゃくちゃなことばっかり思いついて、二人をかき回すの。でぇ、美少女JKはしかたなく身体を使って、幼馴染みのハートをがっしりキープするんです!」
「……それは暴露本になっちゃうから、勘弁して欲しいかな。それに、どろどろの十八禁に成らざるを得ないじゃないか。登場人物は十八歳未満なのに」
「それじゃあそれじゃあ、作家の子供が活躍する小説とかどうですかぁ! 両親の書いた本の世界に入り込んで、世界を救う旅をしちゃうんです」
「おっ、いいじゃないか。めぐみ原案なら、きっと子供から大人まで一緒になって楽しめる、心温まるファンタジーになるに違いない」
そうしてどんどん小説の話を広げていく二人の背中に、幼い声が降ってくる。
「かあちゃん、腹へったー!」
「う゛わぁぁあん、おとうさん、だっごぉ~」
すっかり話に夢中になってしまっていたらしい。お腹を空かせた長男が文句を言い、長い間放っておかれた長女が泣きべそをかいてすがってくる。
ふたりは顔を見合わせ、しまったとばかりに苦笑い。それから、今この瞬間がしあわせでたまらないのだとばかりに、にっこり笑い合って、子供に向き直った。
「あらあら~、ごめんなさいねー。いまから鰤大根つくるから、待っててくださいねー。圧力鍋にかけて、タイマーをセットしてっと」
「ほら、おいで。ご飯ができるまで、僕の膝の上で一緒に本を読もうか」
「とうちゃん、よーちえんじに『さんごくし』をよんできかせるのはどーかと思う」
「あははー、だいじょーぶですよぅ。あたしもちっちゃいころ、一郎くんに『三国志』読んでもらって、それで小説が大好きになりましたからぁ。えいさいきょーいくってヤツですね!」
「それよりかーちゃん、ナベ吹いてるよ。タイマーもなってるし」
「あらあら!」
ピピピピピ! とタイマーは鳴りひびく。
けたたましい電子音を止めようと手を伸ばしたその瞬間――
めぐみは
ベッドの上である。
見慣れた自室の、見慣れたベッドに寝転んで、見慣れた天井に向かって手を伸ばしている。これまた聞き慣れたアラーム音が、枕元のスマートフォンから響いていた。
――これは一体どうしたことだろう。
だんだんと目が覚め、覚醒して明瞭になった頭に、理解が兆す。
「……………………夢?」
――中学生の神野めぐみは夢を見た。
それは、とびっきりしあわせな夢だった。
「うぅ~」
あまりにしあわせで、けれども、それは現実とはおおきくかけ離れていて、だから叫ばずにはいられなかった。
「こんなのあんまりですよぅ~!」
8,990文字
====
あとがき
====
本シリーズはめぐみの夢です。
ですので、本編との差異がいろいろあります。
おおきなところでは、次の五つです。
1.エルフの住居が異なる(のでマサムネと出会っていない)
2.エルフが一郎に惚れる(マサムネポジションに在る為)
3.一郎がエルフに惚れない(めぐみの夢なので)
4.めぐみの胸がおおきい(めぐみの「夢」なので)
5.一郎くんが性欲に弱い(のでめぐみを抱きしめた)
ところで、オチに関してですが、If.1の冒頭部にあからさまな伏線を張っていました。
”神野めぐみは夢を見る。”です。
とはいえ、もう8ヶ月も前のことなので、すっかりお忘れかもしれません。
そう、8ヶ月も経ったんです。
色々ありました。
四月から夏までは仕事が忙しく。
それが終われば、こんどは
からの、念願の琵琶湖一周旅行。とうとうビワイチしました。一昨年のしまなみ街道往復、昨年の淡路島一週とステップアップして、とうとうビワイチ達成です。SIMSで言うところの「生涯の願望」達成です。やったー!
そんなこんなで時間が空くとモチベーションが戻ってこず、なんとか『虐待おじさん』という短編を挟んで、ようやくカムバックすることができました。
小説も
週一ペースのトレーニングだと、すぐに息が上がるようになってしまう。小説も頻繁に書いてないと、書けなくなってしまう。
継続は力なりとは格言だってハッキリ分かんだね(戒め)。
そのようなわけで、今後は(4月までは)ちょくちょく何か書いていけたらと思ってます。
エタりません。死ぬまでは。
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あとがき2
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一週間で書き上げました。
ですので、
くぅ~疲れましたw
実は、ネタレスしたら、エイプリルフールにこのあとがき書きたいと思ったのが始まりでした。猫耳猫のあとがきでも使われてたんで
と言いつつ、まったく間に合ってないんですが←
とにかく当て馬が哀れ可愛いくて好きなので、もっと哀れになるネタで挑んでみた所存ですw
以下、めぐみ達のみんなへのメッセジをどぞ
エルフ「最後まで読んだのね。まっ、この可愛さ天元突破超絶美少女エルフちゃんがいるんだから、当然よね!」ファサ
一労「ありがとう」ぺこり
めぐみ「えへへ~、ありがとー!」にへら
エルフ・一労・めぐみ・マサムネ「ほんとうに、ありがとうございました」
エルフ・一労・めぐみ「って、なんでマサムネ(くん/おにーさん)が!? こっちには登場してないじゃない(か)! 改めまして、ありがとうございました!」
……うわっ、痛い。
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元ネタ解説
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すべてを終わらせる時…!:
『ギャグ漫画日和』より。ソードマスターヤマトの煽り文句。
めぐみの想いがいつか報われると信じて…!
最後のシーン(夢オチ):
Alicesoftの『大悪司』の殺っちゃんルートのエンディングにインスパイアされて。なにが「良かったな、殺」じゃい! 切ない……。
ちなみに、殺っちゃんルートは3回、喜久子ルートは5回、元子ルートは10回クリアしてます。
くぅ~疲れましたw:
某コピペより。知らない方は是非ググってみてください。
なお、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』第7巻でもネタにされている模様。