岸波白野の転生物語【ペルソナ編】   作:雷鳥

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ようやく彼女が登場です!



【探偵との再会】

 最初の事件から一ヶ月が経ち、五月の中程になった。

 

 ゴールデンウィークはマーガレットのヴィジョンクエストを始め、完二や学校の友達と遊んだり、町で困っている人を助けたり、中間テストの勉強したり、テレビの世界を散策しながらヒノと話したりして過ごしたらあっという間に過ぎてしまった。

 

 そしてテストが終わった翌日の夜、いつものようリビングで地元のニュースを見ていると顔にモザイクがされている『知り合い』が映った。

 

『ああっ? 何撮ってんだコラ!』

 

 ……これ、完二だよな。

 

 映し出されているのは巽屋とその前を歩いていた完二だった。

 たぶん帰宅する直前だった完二にテレビクルーがコメントでも得ようとしたのだろう。無遠慮な感じで完二に話し掛けて彼を怒らせていた。

 

 やれやれ完二は見た目派手なだけでイイ奴なんだが。まぁアイツもちょっと人見知りだしな。

 

 テレビを見ながらまたお袋さんに怒られていないかと心配しつつ夕食を済ませ雨も降っていた為そのままマヨナカテレビの時間まで暇を潰す。

 そして零時になってマヨナカテレビ視聴すると、思いがけない人物が映っていた。

 

「……これ、完二だよな」

 

 見慣れた視界の悪い映像、そこに見知った大柄の少年のシルエットが虚空で暴れていた。

 これは間違いなく完二だ。数年来の付き合いの後輩を見間違うはずも無い。

 そしてマヨナカテレビに映った以上、次に狙われるのは完二という事になる。

 

「……なんとかマヨナカテレビに映る法則を見つけられないかな」

 

 そう一人で呟きながら明日からできるだけ完二の傍に居ようと決めて就寝した。

 

 

 

 

 翌日、愚痴を聞くと言う建前を用意して昼メシでも奢るべく巽屋に赴く。

 おばさんがいつも通りの対応をし、完二がちょっと不貞腐れた顔で出て来てそのまま一緒に商店街の中華料理屋の『愛家』に二人で入る。

 

「イラッシャイアル!」

 

 ふむ。今日は雨だからアレが注文できるな。

 

「おじさんいつものスペシャル丼」

 

「先輩、またアレっすか。あ、俺は肉丼大盛りで」

 

 席に着いて注文すると完二が自分の注文を聞いて呆れた顔をする。

 そんな彼に自分は不敵な笑みを浮かべつつ答える。

 

「一人暮らしの男の節約術として、他のメニューと同じ値段で食えるのはありがたい」

 

「ハクノクンハ、モウデンドーイリ、デスカラネー」

 

 自分が頼んだスペシャル肉丼は雨の日だけのメニューで、愛家で行われている所謂『時間内に食べ切れたらタダ』というチャレンジメニューだ。因みに駄目なら三千円払う事になっている。 

 自分はそれに何度も挑戦し、いつしか普通に食い切れるようになってしまってからは店長がチャレンジお断りの変わりにノーマルの肉丼の八百円で注文可能という事になった。今も雨の日なんかはよく来て注文している。

 

「そう言えば昨日テレビに出てたけど、大丈夫だったか?」

 

「あ~やっぱ先輩も観たんすね。アレのせいでお袋にすっげー怒られたんすよ。こっちは急にカメラ向けられた上に訳分かんない質問されたから怒っただけだってーのに」

 

「そんな感じだったな。山野アナ以降、テレビやら雑誌やらがこの町で色々特集したりしているらしい」

 

「たく。俺は族じゃねぇつってんのに。族を潰した方だっつの」

 

「ソレハソレデ、ドウカトオモウヨー」

 

 中学のときに完二のお袋さんが夜眠れず体調を崩したことがあった。

 その原因はこの辺を縄張りにしている暴走族が夜中に爆音で走り回っているせいだったらしい。

 完二はお袋さんが眠れるようにするため、その暴走族に単身で挑み、壊滅させた。その時完二も警察に連れて行かれ、今ではすっかり警察からも危険人物という扱いで警戒されてしまっている。

 

 ……完二も昔はこんな荒っぽい性格じゃなかったが、本人の身体的な理由や親父さんが死んだことなど、色々な要因が重なって段々今みたいになってしまった。

 それでも完二は相手を威かす事はあっても無闇に暴力を振るわない優しい奴だってことを知っている。

 

「もしまたああ言う手合いの連中が来るなら家に泊まりに来るといい。今は一人暮らしで気楽なもんだしな」

 

「うっす。いつもスンマセン!」

 

 完二はどこかバツが悪そうにそう言い、けれど何所か安心したような顔で軽く頭を下げる。

 そんな感じで今日は完二と遊んで過ごし、夕方になって別れ、夜中にマヨナカテレビを見るも昨日と同じだった事に安堵しならが就寝した。

 

 

 

 

 日曜日、完二の様子を見に行こうと向かったその時、目の前から青い鹿撃ち帽子を被った小柄な少女とも少年とも取れる中性的な子が向こうからやって来た。

 

 ……どこかで会った気がする。

 

 ただ思い出の中の該当する人物とだいぶ印象が違う。

 思い出の中の『少女』は自分の頭よりも大きな茶色い鹿撃ち帽子のつばを上げて得意気に『簡単な推理だよ』と笑っていた。

 

 雰囲気は、似ている。

 格好も、なんとなく探偵を意識した感じで纏められている……まあ訊ねるだけはタダだよな。

 

「失礼。もしかしてあなたは『白鐘直斗(しろがね なおと)』さんでは?」

 

「……そうですが、何か?」

 

 相手は一瞬の驚きの後、露骨に煩わしそうな表情でこちらを見上げる。

 

「酷いな先生、かつての助手をお忘れですか?」

 

 そう言って笑顔で胸を張って当時一緒に遊んだ時にやったとある探偵漫画に出てくる少年探偵団のポーズをしてみせる。

 しばらくこちらを怪訝な表情で見詰めていた直斗は、何かを思い出そうと考える素振りを見せ、それからしばらくして驚いた表情でもう一度こちらを見上げた。

 

「もしかして……白野、ですか?」

 

「流石は先生、記憶力に衰えは無いようで。そう、先生の助手の久須美白野ですよ。お久しぶりです」

 

 そう言ってポーズを取るのを止めると、直斗は少しだけ嬉しそうに、しかし何かに気付いたのか慌てて帽子のつばを掴んで表情を隠す。

 

「お、お久しぶりです。元気そうで何よりです。ですが、と、とりあえずその先生と呼ぶのは止めて下さい。あと口調も」

 

「よろしいのですか? 子供の頃は助手ならこう話せと力説されていましたが?」

 

「あ、あれはごっこ遊びです! とにかく恥ずかしいから止めて下さい」

 

 恥ずかしそうに頼む彼女に笑いながら頷き、それを見た彼女は大きく溜息を吐き、仕切り直しと言った感じに帽子を戻して口を開いた。

 

「それにしても本当にお久しぶりですね白野さん」

 

「いや、昔みたいに白野でいいぞ?」

 

「いえ、流石に年上の方に失礼ですよ。僕も、もう子供ではないのですから」

 

 どこか寂しそうな、達観したような感じに告げる直斗。何かあったのだろうか?

 

「それにしてもよく僕だと気付きましたね。僕がこっちで過ごしたのなんて小学生の頃、夏休みにおじいさまの付き添いで来たほんの一ヶ月程度でしたのに」

 

「当時あんな頭の良い子なんてそう居なかったからな。直斗のお爺さんが用意した謎解きを手伝ったのは楽しい思い出だよ」

 

 小学校の頃の夏休み。

 河川敷の公園で謎々の本に載っていた謎が解けずにいた直斗の代わりに謎を解いたのを切っ掛けに、その夏の間ずっと一緒に探偵ごっこ等で遊んだというだけの関係。

 けれど自分にとってはこの街の住人ではない子供と遊んだという変化の少ないこの街で起きた数少ない大切な思い出だ。

 昔を懐かしんでいると直斗も当時の事を思い出しのか『そうですね。懐かしいです』と言って少しだけ口元に笑みを浮かべてくれた。

 

「それで直斗はどうしてこの街に? またお爺さんの付き添いか?」

 

「いえ。詳細は教えられませんが、この街には仕事で訪れました」

 

「仕事、え? もしかして直斗、もう探偵として仕事をしているの?」

 

「ええ。お爺様のお手伝い、という名目で仕事を頂いています」

 

「そっか。子供の頃の夢を叶えた訳だ。さっすが先生!」

 

 子供の頃から直斗は将来はカッコイイ探偵になると言っていた。

 夢を叶えた彼女の姿が純粋に嬉しくなり笑顔でそう祝福する。

 しかし、当の本人はあまり嬉しそうではなかった。

 

「そうですね。ありがとうございます」

 

 それどころか何か思いつめたような、張り詰めた表情でまた帽子で表情を隠してしまう。

 

「……えっと、そうだ。時間があるならジュネスでケーキの一つでも奢ろうか?」

 

「いえ結構。今日はこのあと用事がありますから」

 

「そっか。あ、一応連絡先渡しておくよ。なんかこの街で聞きたい事があったら連絡してくれ」

 

 微妙な空気になってしまって引き止めるのも難しいと判断し、事件についての情報をいつでもメモれるようにと内ポケットに入れておいたメモ用紙とペンを取り出して急いで電話番号だけ書いて手渡す。

 

「……そうですね。一応頂いておきます。それでは白野さん、また」

 

 直斗はそう言ってメモを受け取り無造作にポケットに仕舞うと足早に去ってしまった。

 

 ……やっぱ探偵の仕事って大変なのかなぁ。

 

 直斗の態度にそう結論を出し、事件については改めて会った時にでも訊ねようと考え直してある事に気付く。

 

 もしかして直斗の仕事って、今街で起きている事件の事じゃないのか?

 

 もしそうなら自分が持っている情報は直斗に絶対に伝えないとまずい。何故なら犯人はテレビの中に人を入れて殺しているのだ。

 事件を追っている直斗の存在に気付けば間違いなく犯人は直斗を殺す為に彼女をテレビに入れるに違いない。

 凶器を持って殺しにくると言うのならまだ現実的で想定もできるだろうが『テレビに入れられる』なんていうのは事情を知っていなければ対処のしようがない。

 

 問題はどうやって信じてもらうかだな。口頭での説明じゃ間違いなく信じてくれない。というかヤバイ奴だと思われかねない。

 なんとかテレビに入れると言う事を教えられればいいんだけど、ジュネスの家電売り場で試すか……。

 

 新たに浮上した問題に頭を悩ませつつ、巽屋に寄って完二が無事な事を確認してから帰宅した。

 




原作やる限り、直斗は実家か別荘かは知らないけど町の近くに住む場所があるのは確定っぽいので子供の頃に一度くらいは町に来たことがあるだろうと思ってこういう展開になりました。
この辺りからちょっとずつオリジナルな展開が増えていきます。
そして番長のコミュがどんどん奪われていく。

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