遅くなりました。
ちょっと色々リアルが忙しかった。
ようやく彼女をテレビの中に連れて行けます。
「無理を行って悪いな直斗。流石に制服でどこかに寄る訳にはいかないし」
「いえ。それよりよかったのですか学校を休んで?」
「ああ。学校よりも友人の救出が最優先だ」
直斗と協力する事になり、流石に制服のままうろつくのは目立つからと直斗を自宅に招く事に成功する。まあ家に招くと言った瞬間、露骨に警戒されて距離を取られたが仕方ないだろう。
部屋でいつもの探索用の服に着替え金剛錫杖と二階の物置から鉄バットを持って一階に降りる。
ぎょっとした表情で立ち上がった直斗に苦笑しつつ錫杖をソファーの脇に立て掛けてバットの方を手渡す。
「一応護身用として持っていてくれ」
「え、ええ」
直斗はバットの柄を掴みしかしそれを脇におかずにそのまま手に持ったまま席に座り直し一度咳払いする。
「では、まずは情報交換しましょう。白野さんの口振りからもう気付いているようですが、僕は今この町で起きている連続殺人事件の捜査に協力しています」
「ああ。だから力を貸して欲しいし、力を貸したいと思ったんだ。正直言って警察では手に負えないし、何より今のままだと直斗が危ない」
「白野さんは犯人、または犯行の手口について何か知っているようですね」
直斗の探るような視線を正面から受け止めて頷く。
「ああ。犯人は分からない。だが犯行の手口と次に誰が狙われるのかを判断する事はできる。それが」
「マヨナカテレビ、ですか?」
直斗の答えに頷きつつマヨナカテレビについての説明を行う。
「雨の日の午前零時に電源の入っていないテレビを観ると運命の相手が映る。というのが自分が聞いた噂だった。俺が実際にその噂を試したのは四月だったが、何故か複数の人間が同じ人間が映ったと言っていたんだ。最初は山野真由美、次は小西早紀、次は天城雪子、そして今回が巽完二だ」
「僕自身はそのマヨナカテレビを観た訳ではないのでその言葉を完全には信じられませんが、ふむ……」
「なあ、直斗はどうして巽屋に? 自分はてっきり直斗もマヨナカテレビを観たから完二の様子を見に来たと思ったんだが」
「……これは僕がこれまで得た被害者達の情報から導き出した推理ですが、今回の事件の犯行にはある法則が存在します」
直斗の言葉に驚きの表情を浮かべる。
「まず一つ、被害者となる人物がこの町にいるということ。そしてもう一つは被害者は殺害される前にテレビ報道されていたという事です」
直斗の言葉に今日までの記憶を探る。
「……確かに全員テレビに映っていたな」
「ええ。三件目の天城雪子だけ突然行方不明になった所は前二件と一緒ですが、彼女は無事でした。ですのでこの法則も絶対とは言えなかった。そのため巽完二に接触し様子を窺っていたところで……」
「完二は行方不明となり、そこに自分が声をかけたと。でもそうか、普通に考えれば犯人が天城をもう一度襲う可能性もあったんだよな。マヨナカテレビに映っていなかったから狙われないと思い込んでいた」
思い込みは真実を見つける上で一番の敵だ。特に今回は人の生き死にが掛かっているのだからもっと色々と考えるべきだった。
「本当に直斗と話せて良かった。こうして話せなかったらマヨナカテレビにだけ注目する所だった」
「いえ。僕もマヨナカテレビの情報を聞けて推理の幅が広がりました。それで白野さん、犯行の手口については?」
「ああ、それは直接見せたほうが早いこっちに来てくれ」
そう言って立ち上がってテレビの前に立って直斗を呼ぶ。彼女は訝しみながらもテレビの前に立つ。
「このテレビが何か?」
「ちょっと画面に触ってくれるか」
直斗は表情を変えずにテレビの画面に触れる。それを見届けて自分もテレビに触れた瞬間テレビが波紋の様に歪んで自分と直斗の手がテレビに入り込む。
「――!?」
慌てて直斗は手を引き抜き自分の手に異常が無いか確認する。
こちらも手を抜くと波紋は消えて元の液晶画面に戻る。
直斗が恐る恐るもう一度触れるが画面に手は突き抜けず、こちらに視線を向けたので先程と同じように画面に触れると直斗の手も画面を突き抜ける。
「これは、手品? いやでも、こんなのどうやって……」
「手品じゃないよ。自分もまだ良く分かってないけど、ただ一つ言えるのはこの『テレビに入れる力』が現実に存在するという事、そしてこの力こそが犯人の犯行の手口だ」
自分はそれだけ伝え、一度ソファーに戻ってからシャドウやペルソナ、テレビの中の説明をする。
説明を聞いている間、直斗はこちらの話を信じていいのか迷うような表情で気になった部分を訪ね返し、自分も答えられるものには答え分からない事にははっきりと分からないと答える。
「……正直、先程のテレビの件が無ければただの創作話と笑い飛ばすところですね」
「まあ、直斗からしたらサスペンスにいきなりファンタジー要素が加わったようなものだからな。で、ここからが本題だ。自分には向こうに行っても戻る為の手段がある」
そう言って錫杖握ってみせる。
「だが、『一緒に戻れる』という保証が無い。今迄は一人で向こうに行って一人で戻ってきたからな。もしもの場合、自分は完二と一緒に向こうの世界で帰還の方法を探す事になるかもしれない」
ヒノは自分の身体と合わさっているから問題ないが、もしもこちらの世界に戻ってこれるのが自分一人だけの場合、向こうの世界でなんとかこちらの世界に戻る方法を探す必要が出てくる。
「だから直斗、君はこっちに残って事件を追って欲しい。完二は自分だけで助けに行く。自分が知っている情報は全て渡したからなんとかこっちで犯人を捕まえてくれ」
こちらの願いを聞いた直斗は顎に手を当て下を向いてしばらく考え込んでから、顔を上げた。
「いえ、僕も一緒に行きます」
「……一応、理由を聞かせてくれ」
「一つ目の理由ですが、白野さんが犯人である可能性です。テレビの世界の事が本当なら向こうの世界と行き来が出来るあなたは、一番犯人に近い立ち居地にいる」
ごもっとも、と頷く。彼女に犯人扱いされるのは初めから想定済みだ。
「二つ目ですが、帰還方法は間違いなくあるという理由です。なぜなら」
「天城がこっちに戻っているから、だな」
自分の言葉に直斗が満足気に頷く。
そう、自分は天城を助けていない。その事はちゃんと直斗にも話してある。
つまり、天城はどうにかして向こうの世界からこちらに戻ったと言う事になる。
「脱出する方法があるなら、それを探す人手は多い方がいい。いつ中に入った者が死ぬのか分からないなら尚更です」
直斗の言葉に今度はこちらが考える。確かに人手は欲しい。だが、最悪三人で遭難し、死ぬかもしれない以上、彼女が向こうに行くのはやはり止めた方がいい気がするが……。
もう一度彼女の目を見る。その目は決して意見を変えるつもりは無いと言う様に強張っていた。
「……分かった。向こうは危険だ。自分の指示に従ってくれ」
「分かりました」
頷く直斗にこちらも頷き返して以前向こうに行った時に持っていった防災グッズが入ったリュックを取りに戻り、二人でテレビに触れる。
「それじゃあ先に行くから直斗はすぐ後に来てくれ。それと入ると落下するから気をつけて」
「分かりました」
彼女を安心させる為にまずは自分がテレビに入る。いつもの落下の後、着地してすぐにその場を離れる。
少しして上から『うわあ!?』という小さな悲鳴が聞こえると霧の中から直斗が降って来て、足から着地するも勢いを殺しきれずに見事に後ろにひっくり返って尻餅をついてしまう。
「大丈夫か直斗?」
「え、ええ。このくらい問題ないです」
ちょっと痛そうにお尻をさすりながらそう答えて強がる彼女に苦笑しつつ手を伸ばして引き起こす。
「ここがテレビの世界ですが、霧が濃過ぎて殆ど何も見えませんね」
「そうか? まあ遠くまでは見えないがあの鉄橋の中程までくらいなら見えるだろ?」
「いえ、僕には辛うじてこのフロアを囲む鉄柵の影が見える程度ですが、人によって霧の濃さが違う?」
「……また謎が一つ増えたな」
今迄知らなかったがどうやこの世界の霧の濃さは人によって違うみたいだ。
「直斗は自分の傍からできるだけ離れないでくれ。この世界で逸れたらたぶん見つけるのは難しい。それに戦えるのは自分だけだしな」
「わ、分かりました。よろしくお願いします」
直斗が少しだけ申し訳なさそうな顔をしたので気にするなと笑顔で応えて完二が居るであろう銭湯へを向かった。
話の展開を考えているといかに原作のクマが便利キャラだったかが分かる。(帰還方法と霧の問題解決で)
まあ帰還用のテレビや霧を見通す眼鏡の作成など実は原作でもクマがどうやってそれを成したか不明なまま進む(しかもクマが居なくなったときも帰還用のテレビはそのまま残る)