岸波白野の転生物語【ペルソナ編】   作:雷鳥

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遅くなりましたが続きです。
色々修正は後ほど。暑くてやる気も集中も落ちてます……。



【狭量の官戦】

「アーチャー!」

 

 呼び出したペルソナであるアーチャーが両手に持った双剣、干将莫耶を振るうと、そこから幾つもの斬撃が飛んで正面のシャドウへと向かう。

 シャドウはその攻撃を横に跳んで回避すると、左手に持った銃を構えて引き金を引くとそこから光の弾丸が放たれる。

 アーチャーは持っていた双剣で弾丸を弾き飛ばしながら接近する。

 しかしアーチャーの剣が届く前にシャドウの腹の鍵が緑色に光ると、アーチャーの足元から大きな竜巻が巻き起こって吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐっ!?」

 

 まずい。アーチャーは魔のステータスが低いから術スキルのダメージが大きい。

 

 身体に走った痛みと衝撃にその場に膝をつきながら、追撃として放たれた弾丸からアーチャーをなんとか逃がす。

 

 アーチャーは魔のステータスが低いが速のステータスが極めて高く物理に関しては近距離は双剣の干将莫耶、中距離は両手剣の永久に遥か黄金の剣、遠距離は黒い弓を使って対応する事ができる為、どんな距離からでも攻撃できる。

 そう、できるのだが……道中のシャドウには基本的に相性があるせいで術スキルの方が使い勝手が良く、なにより最初にここに来た時に遭遇した霧のシャドウに物理攻撃が効かなかった事もあって、物理特化のアーチャーの使用を控えていた。そのせいでセイバーやキャスターに比べてアーチャーの性能をまだ把握し切れていなかった。

 

 それにいつも以上に疲労しているせいで碌に物理スキルが使えないのも痛い。

 

 ペルソナのスキルは基本的に本体の人間の体力や精神力を消費して発動する。

 術系のスキルは精神力を、物理系のスキルは体力を消耗する。

 どちらも消耗し過ぎると虚脱感や疲労感に襲われ最悪の場合体力や精神力が回復するまでしばらくその場から動けなくなる。

 

 これまでの戦闘経験で得た体力の減り具合から見て、チャンスは一回。敵のスキルの予兆は分かった。なら次はかわせる。

 

 アーチャーの武器を弓に変え、物理スキルを発動する。

 アーチャーが弓を引くとそこに一本の白いエネルギーの矢が表れ、放つと同時に一本の矢は無数の針の様な形になってシャドウに襲い掛かる。

 シャドウが再度スキルを使って竜巻を起こして飛来する矢を弾くが、想定内だ。

 

「アーチャー」

 

 名前を呼ぶと同時に意思を伝える。

 アーチャーが保有する二つの補助スキルの内の一つを発動する。

 アーチャーが力を溜める素振りを見せ、それを解き放つ動作をすると全身を白い光が覆い、その状態でアーチャーが弓を構える。

 今度のは先ほどとは違う貫通力と攻撃力の高い単体スキルだ。そして何よりこの一撃で決めるために、『次の攻撃のみ二倍の威力』となる補助スキルを発動させた。

 矢として形成されるエネルギーが大きく鋭くなると同時にまるで帯電したかのような稲妻を纏う。そしてシャドウの術が切れかけた直前に、目標目掛けて手を振るう。

 合図と共に放たれた矢はまるで以前見た聖剣のビームの様な一撃となり、シャドウに直撃すると同時に大爆発する。

 

「くっ」

 

 その場にしゃがんで煙幕と衝撃波をやり過ごす。

 風が止んだのを確認すると同時に立ち上がろうとするが、足に力が入らず身体も上手く動かなかった。

 

 まずいな疲労が限界だ。帰還用の精神力はまだあるが、もう戦う力は。

 

 見ればアーチャーも消えてしまっていた。

 今の一撃で倒し切れてくれと祈りながら爆心地へと視線を向けると、そこにはシャドウは居らずヒノと同じ火の魂が浮かんでいるだけだった。

 

「はあぁ……勝てた。良かったぁ」

 

 その場で尻餅を付きながら安堵の溜息を吐く。

 

『やったねお兄ちゃん。それじゃあすぐに回収しちゃうね』

 

 ヒノの言葉に頷き返すと火の魂がこちらに近寄り身体に吸収される。

 それを座ったまま見届けると先に体調が回復した二人がこちらにゆっくりとやってきた。

 

「先輩大丈夫っすか?」

 

「ああなんとかな。まあ問題はこの後なんだが」

 

「このあと、ああこの世界から戻れるかどうかですね」

 

「どういうことっすか?」

 

 直斗の言葉に完二が首を傾げたのでトラエストについて説明する。

 

「さて、それじゃあ試すか。一応最悪の事を考えで荷物は完二に渡して置くな」

 

 正直向こうの世界に戻ったらすぐにこっちには戻れない為食料やらが入ったリュックは完二に渡して頑張って立ち上がって錫杖を打ち鳴らす。

 

 ペルソナのスキルは意識する事で範囲を変化させる。ならこの力も同じように出来るはずだ。

 

 傍にいる二人と一緒に元の世界に戻る事を強く意識しながら唱える。

 

「トラエスト!」

 

 術名を唱えた瞬間、光はいつもよりも広い範囲を覆い気付けばリビングに立っていた。

 

 が、すぐに身体から力が抜けてその場に三人で倒れる。

 

「う、身体が」

 

「な、なんかこっちに戻った瞬間いっきに疲れが」

 

「ぐ、ああ、駄目だ。しばらく動けそうにねぇ」

 

「せめて仰向けに」

 

 三人なんとか仰向けになり、窓から差し込む日差しがオレンジ色だと気付く。

 

「もう夕方か……二人共とりあえず動けるようになるまで少し休憩しよう。それと喋れそうなら家の人電話しよう。特に完二、巽おばさん凄い心配してたからな」

 

「うっ、うっす」

 

「それと完二、直斗」

 

「ま、まだなんかあるんすか?」

 

「は、はい?」

 

「二人が無事で良かった」

 

「せ、先輩……」

 

「白野さん……」

 

 本当に助けられて良かったと安堵の溜息を吐くと、完二が何かを決意したような声色で喋り始めた。

 

「決めしたぜ先輩。俺もこの事件の解決を手伝います」

 

「完二?」

 

「そりゃ、俺は先輩みたいに頭は良くねえけど、今の俺にはペルソナが、戦う力がある。なら向こうに行った時に先輩の背中を守る事ぐらいはさせて下さい」

 

 完二の言葉を聞きながらどうしたものかと悩む。

 確かにペルソナを手に入れた可能性は高い。だが、向こうの世界が危険な事には変わり無い。

 

 でもきっと、諦めないだろうな。

 

 完二の声色からその決意が固い事は容易に汲み取れる。

 

「白野さん、僕も巽君と同じ気持ちです。この事件は一人で解決できるものではない危険なものです」

 

 完二に続き直斗が口を開く。彼女の声色や口調にも完二と同じように決意が篭っていた。

 

「お願いします先輩! 俺を男にしてください!」

 

「……巽君、そういうとこだと思いますよ」

 

「完二、そういうとこだぞ。お前がそっち系と勘違いされるの」

 

「え? ばっ、違うから! 今のはこのまま助けられっぱなし頼りっぱなしじゃ男が廃るって意味だから!」

 

「ははは分かってる分かってる」

 

 声を荒げて慌てて否定する完二に和み軽く笑った後に二人へと返事を返す。

 

「分かった。二人共これからよろしく。ただし!」

 

 二人にしっかりと認識して貰うためにそこで言葉を止めて二人がこちらに集中するのを待ってから続きを口にする。

 

「無茶するのは自分の役割、そんな自分の事を支えるのが二人の役割だからね。それだけは絶対に譲らないから」

 

「うっす! 巽完二、精一杯支えさせて頂きます!」

 

「ええ。僕も全力で白野さんを支えて見せます」

 

 二人の言葉に満足した自分は改めてよろしくと伝えた。

 それから少しして二人は実家に電話。完二は巽おばさんに怒られ、直斗も少しの間連絡が取れなくて心配されたのか電話の相手に謝っていた。

 それから動けるようになった直斗は迎えを呼んで帰宅。完二は流石のタフネスで家まで歩いて帰っていた。

 自分はと言えばなんとか身体を起こして二人を見送った後にそのままリビングのソファーにダイブする。

 二人が無事だった事への安堵と強い虚脱感と疲労感からそのまま眠ってしまった。

 

 そして翌日、自分は見事に風邪を引いて数日学校を休む事になった。

 




ようやく完二編が終了。次は二年組の五月の締め語りのあと林間学校とりせちーですね。
いや~先は長い(苦笑)

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