岸波白野の転生物語【ペルソナ編】   作:雷鳥

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と言う訳で二年組による五月のまとめです。
次回から六月に入ります。



【特捜隊の五月】

 五月も終わりまじか。悠達四人は四月のようにジュネス屋上のフードコートに集まって話し合っていた。

 

「もぐもぐ……。結局さ、完二君って向こうの世界に入れられたのかな?」

 

 千枝がビフテキを頬張りながら周りに尋ね、全員が難しい顔で唸る。

 

 彼等は完二がマヨナカテレビに映った後、彼を監視していた。

 完二が直斗と出歩いていた日も後を付けていたが結局完二にバレ、彼と一悶着あってその日は解散となった。

 

 そしてその晩のマヨナカテレビにもう一人の完二が映る。

 彼等は犯行を防げなかった事を悔やみながらテレビの中へと赴く。

 しかし唯一の探索能力持ちのクマが完二とう人間を知らないせいかテレビの中に誰かが居るのは間違いないがどの方角に居るのかは分からないと答える。

 クマは完二の人となりや何に悩んでいたのかが分かれば居場所が分かるかもと悠達に告げ、悠達はその情報を集める事から始めようと話し合い、その日は解散した。

 

 その後彼等は手分けして情報を集めようとしたが先に白野達が完二を助ける事に成功して現実に戻った為に四人は色々と中途半端な状態で今日まで過ごしていた。

 

「完二が向こうに居たのは間違いないだろう。現に今は向こうに誰かがいる気配は無いんだろ?」

 

「クマが言うにはもう人間の匂いは感じられないらしい」

 

 陽介の言葉に悠が答え二人は腕を組んで更に困惑した表情を深める。

 

「本当は本人に尋ねて確認するのが一番なんだろうけど」

 

「『テレビに入れられました?』なんて聞くのは流石にねぇ」

 

 溜息をつく雪子に同調するように千枝も下を向いて溜息を吐くも、ある事を思い出してすぐに顔を上げる。

 

「そう言えばその完二君、前はあまり学校で誰かと一緒にいるの見かけたこと無いけど、最近は白野ともう一人、一年に転入して来た子と一緒に居る事が多いよね。登校もよく一緒にしているし」

 

「ああ確か前に完二の店に来てた奴だよな。白鐘直斗って名前だっけ? 転校初日に一年の女子が騒いでたよなぁ。可愛い男子が来たとか言って」

 

「でもあの子、本当は女の子らしいよ。家の仕事の関係もあるから男子の制服でも許可が出たみたい」

 

「ウチらの学校、女子はセーラー服で男子は学ランが指定だもんね。あーあ、私も学ラン着たかったなぁ」

 

 千枝が羨ましそうに愚痴りながら最後の一切れを口に放り込む。

 

「とにかく今回の一件で幾つか分かった事を纏めよう。まず犯人が最初の事件の関係者を狙っているという推理だけど、これは外れてると思う」

 

「うん、私もそう思う。だってもし事件の関係者を狙うなら完二君じゃなくてもう一度私を狙うと思う」

 

「あっ! そうだよね。犯人がもう一度雪子を狙う可能性もあったんだよね。でも何で狙わなかったんだろ?」

 

 千枝の言葉に悠が少し考えてから答える。

 

「理由として一度狙われた事で本人が警戒している事と、向こうの世界に行っても戻ってくる手段を知っているからもう一度狙ってもリスクが高いだけ、とかかな?」

 

「あ~確かにそう考えれば納得できるな。テレビに入れるだけとはいえ、何度も同じ相手を狙えば証拠だって残るだろうし。そう言ったリスクを冒すくらいなら警戒心の薄い相手をって訳か」

 

 悠の推理に陽介は納得が行ったように何度も頷いてみせる。

 その様子を眺めていた千枝は頬杖を付きながら思いついたようにぽつりと呟く。

 

「そもそもマヨナカテレビってなんなんだろう」

 

「……犯人の思考が結果的に映ってる、とか?」

 

「でもさ、噂を聞く限り俺達が同じ人物を観る以外の時は映る人物は大抵バラバラなんだよなぁ。俺なんて試してみたけどなんにも映らないし」

 

「私も」

 

「私も試したけど映らなかった」

 

「だが何らかの法則はある。少なくとも不特定多数が同じ人物を観る様になったら注意が必要だ」

 

「じゃあ今後もマヨナカテレビに映った人物を優先的に監視するって事で決まりだね」

 

 千枝の言葉に全員が頷き今度は花村が疑問を口にする。

 

「そういやさ、クマの奴が妙な事を言ってたよな。俺達が行った時やマヨナカテレビに映った人物が入れられた以外の時期にテレビの中で人の気配がしたって」

 

「言ってた言ってた! ねえそれってもしかして犯人なんじゃないかな?」

 

「……もしそうなら犯人は向こうとこっちを行き来できるって事になるよね?」

 

「それ、最悪だな。場合によってはテレビの中に隠れてやり過ごす事も出来るって事だろ?」

 

 雪子の言葉に陽介が嫌な顔をして天を仰ぐ。

 しかし悠だけは黙しながら別の結論を出していた。

 

(もしかして完二を助けたのはその人物なんじゃないか?)

 

 悠は唯一ベルベットルームにて自分と似た様な人物の存在を知っている。

 しかしその人物の特定は出来ず情報すら殆ど手に入れられていない状態だった。

 

 そもそも最近の悠は忙しかった。

 特捜隊の仲間はもちろん、運動部と文化部に所属した事で週に数回は顔を出し、ゴールデンウィーク以降は堂島家の親子との仲も深まり休日に一緒に過ごす事も増えた。 

 

 もちろん悠にとってそこでの出会いは悪い事ではなく、彼は都会の頃よりも充実した学園生活に喜びと楽しさを感じていた。

 不謹慎だと理解しているがこうしてみんなで何かに向けて頑張る特捜隊の活動も心躍るものがあった。

 

「そう言えばさ、もうすぐ林間学校だよな。俺一年の時は転校前で参加出来なかったからすげー楽しみなんだよ」

 

 悠が考え込んでいる間に話題はいつの間にか変わり 陽介が待ちきれないとはしゃぎ、千枝が溜息を吐きつつ現実を突きつける。

 

「何でそんな楽しそうなのか知らないけど、ウチの学校の林間学校、近くの山のゴミ掃除だからね」

 

「ゴミ拾いぃ? なんの修行だよそれ……」

 

 楽し気な雰囲気から一転して落ち込み肩を落とす陽介に周りが苦笑する。

 

「あ、でも夜だけはちょっと楽しいかも。飯ごう炊飯とかテントで寝たりとか」

 

「テント!? まさか、男女一緒だったり?」

 

「死ね。男女別に決まってんでしょ。因みに、夜にテント抜け出したのがバレたら一発停学だから」

 

「それに期間も一泊して翌日の昼前には現地解散だから短いしね」

 

 千枝がちょっと軽蔑したような視線で注意し、雪子が笑いながら更に情報を伝えるとテントの件で一度持ち直した陽介のテンションが再度落ち込む。

 

「はあ。なんか思ってたよりもダルそうだな。面白イベント来たと思ったのに」

 

「まあそんなもんよ。私の去年の思い出も解散した後に河原で遊んだくらいだしね」

 

 千枝のその言葉に陽介が一瞬だけ眼光を鋭くさせるも、すぐにいつもの表情に戻す。

 

「河原って、泳げんの?」

 

「あー、泳げんじゃん? 去年も入ってる奴いたし」

 

「そっか、泳げんだ……」

 

 千枝の答えに意味深な笑みを浮かべる陽介に、悠は『また何か思いついたのか』と苦笑し、その後も彼等と他愛ない雑談を交わして過ごした。

 

 

 

 

「ちっ。あいつ等以外にもいるのか」

 

 彼等の会話が他愛無い日常会話になったのを確認した人物は小さくそう呟いて舌打ちするとフードコートを後にした。

 




完二がもたらす情報が無いために二年組の推理が原作と違います。
さて、次どうするかマーガレットか林間学校かりせの転校まで飛ばすか……。


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