大変お待たせいたしました。
とりあえずりせ編の大まかなプロットは出来たので投稿再開!
六月に入った最初の週にマーガレットから受け取ったブローチが光ったのでベルベットルームに行くとマーガレットだけが座っていた。
「いらっしゃいませ白野様、今回は如何致しますか?」
いつもの丁寧口調で出迎えてくれたがその視線は『もちろん行くわよね?』と語っていた。
「えっと、じゃあヴィジョンクエストの間に」
「ふふ。ではご案内致します」
口元に微笑を浮かべながらマーガレットが扉を呼び出し二人で潜る。
以前と同じ場所に立ち、マーガレットが今回の扉へと案内する。
「今回はこちらの扉よ」
案内されたのは『イチイの木の前に立つ老騎士』の絵が描かれた扉。
「ロビンとダン・ブラックモアか」
なんとなく順番的にそうじゃないかと思ったので驚く事もなく扉を潜る。
潜った先はやはり彼等と戦った海底都市の廃墟だった。
前回と同じく正面に仮面を付けたダン・ブラックモアにシャドウロビン。
サーヴァントとしてのロビンのスキルは厄介なものが多い。ここは同じクラスでどんな距離にも対応できるアーチャーだな。
アーチャーを呼び出しこちらも戦闘態勢に入る。
ダン・ブラックモアがそれを待っていたかのように静かな動作で掌を真っ直ぐに伸ばしたままこちらに向けると同時にロビンがこちらに駆け寄る。
『
【顔の無い王】
ロビンフットの宝具の一つであり、形状は彼が身に纏うフード付きの緑の外套。
宝具として効果を発動すれば完全な透明化を成し遂げ、対象に触れでもしなければまず発見する事はできない。
更に月の裏側で分かった事だが、この外套を切って巻き付けることでロビン以外の対象すらも透明化させることが出来る。
生前の自分はロビンとは二度戦い、一度目はダン・ブラックモアの方針のお陰で『顔の無い王』は使われなかったが、二度目の時はこの宝具のせいでかなり苦戦させられた。
ドレイクの能力をあれだけ再現したのにマーガレットがそこだけ再現しないとは考え難い……今は様子を見るか。
迫るロビンに双剣を持ったアーチャーで迎え撃つ。
ロビンは近接格闘をこなしながら右手に取り付けられたクロスボウ、『
どう見ても何かあるその矢を回避しつつ双剣を振るうもなかなか当たらない。
……というか本当にスキルすら使う素振りがない。
相手の行動に困惑しながらアーチャーに指示を出し、互いに防ぎ、避けを繰り返す。
しかし徐々にこちらが押され始める。
まるで踊るように足技と射撃を組み合わせた攻撃に遂に捌き切れずにアーチャーの体勢が崩れる。
その瞬間、今迄不動だったダン・ブラックモアが組んでいた腕を軽く横に振るって見せた瞬間、ロビンの足が白い光、物理スキルの輝きを纏って放たれアーチャーの腹部に突き刺さる。
「あっぐ!?」
攻撃をまともに受けたアーチャーは吹き飛ばされ、自分は痛みでその場に片膝を付く。
早く立て直しを。
自分よりも更に後方に飛ばされたアーチャーの体勢をなんとか立て直そうとした瞬間――紫の一線が視線を通過していった。
「っ!?」
気付いた時にはその一撃はアーチャーに当たり、アーチャーの身体が紫色に染まると同時に自身の身体に変調が起こる。
まるで酷い風邪の時のような気持ち悪さで頭がくらくらする。
更に追い討ちとばかりにロビンから強い力を感じる。
振り返れば彼のクロスボウに装填された矢が深緑の輝きを強く放っていた。
アレはまずい!
咄嗟にアーチャーに回避を命じてとにかくその場から飛び退かせると同時に深緑の矢が放たれる。
迎撃する間もない弾速で放たれた矢が、『避けた先』のアーチャーに命中する。
読まれたっ!?
「がはっ!?」
アーチャーの身体が紫色の爆煙を上げながら爆ぜて消滅し、自分はその衝撃と痛みでその場に倒れこむ。
「あぁくそ、忘れていた。馬鹿か自分は」
迂闊な自分自身に苛立ちを覚える。
『祈りの弓』の二撃目は受けてはいけない。
【祈りの弓】
ロビンのもう一つの宝具。
イチイの木で作られたその矢には強力な毒が付加されている。
その矢を一度受けた者はその身に『イチイの毒』を受け、二度目を受けた場合その毒は増幅、流動する。つまり内側から爆発する。
一応決闘方式であった前世での聖杯戦争ではコードキャストによって解毒や状態異状そのものを無効化する事で回避も可能だった事、ロビン自体のアーチャーとしての腕前や純粋な戦闘能力が低かった事で矢自体の回避が可能だった事で対処できた。
「……今回はここまでかしら?」
マーガレットがこちらに近寄り見下ろしながらそう尋ねる。
自分の身体の状態を確かめる。
アーチャーが消えた事で戦闘は終了という扱いなのだろう。先程まで感じていた気持ち悪さは消えていた。
身体は、痛みは残っている。体力もかなり持って行かれた。
だが……動く。
身体をゆっくりと起こしてマーガレットへと振り返り、再度戦うという意思を持って頷く。
「そう。ただ、一つ気になっていることがあるのだけど、答えてもらえるかしら?」
珍しくいつもの表情に困惑の色を浮かべた彼女にそう尋ねられ、答えられる事ならと応える。
「どうして彼が『顔の無い王』を基に作った一定時間自身を透明化するスキルを使わないのか、貴方には分かるか?」
そうか。やはりマーガレットもそこを疑問に思ったのか。
自分は既にある程度の予測は出来ている。
その予測を確信にする為に、自分は彼女に尋ねる。
「なあマーガレット……あくまでもあのロビンはペルソナという扱いで、ダン・ブラックモアが操っているんだよな?」
「ええ」
彼女の返答に対して、自分は頷き、自分が出した答えを口にする。
「ダン・ブラックモアにとって、ロビンは英雄なんだよ」
そう。彼にとって彼の相棒は決して卑しい暗殺者ではない立派な英雄なのだ。
たとえロビン本人が否定しても、彼だけは決してロビンの誇りを蔑ろにはしないしさせない。
「だから彼は相手が外道でも無い限り、絶対に卑怯な真似はしないしさせない。だって彼は」
それが例え、自分達本来の戦闘スタイルでは無いと分かっていても。
それが例え、自分達が不利になるのだとしても。
「『誇り高く戦う』と決めたのだから」
『誇りの為に』戦っていい。
そう優しく諭すように語った時のダン・ブラックモアの姿と、その言葉に戸惑い、けれど最後には満更でもなかったと笑ったロビンの姿が思い浮かぶ。
「誇りの為に敢えて最良の戦術を捨てると?」
「ああ。人間にはそういう戦い方をする者もいる。命懸けの戦いで何を、と言う者もいるだろう。自分はむしろそっち側だ。生きるために、生き残る為に全力でどんな手でも使う。でもさ、思うんだよ。だからこそ死ぬ最後の瞬間まで、誇りや信念といった目に見えない何かの為に最後まで戦える人間は――カッコイイと」
アーチャーを出現させる。
もはやこの戦いでアーチャー以外を出すつもりは無い。
だって向こうは正攻法で来るのだから。
「向こうが正々堂々、『英雄らしく』を貫くなら、逃げるわけには行かないよな『
『当然だ。行くぞマスター』
そう、アーチャーが答えるように双剣を出して構える。その姿に頼もしさを感じながら正面に向き直る。
この戦いに死者は出ない。ならば体力が続く限り何度でも挑もうじゃないか。
そして今度こそ成そう。
かつて、自分が弱かったが故に出来なかった正々堂々の戦いを!
◆
マーガレットは目の前の戦いを見詰める。
目の前で行われているのはなんとも泥臭い戦いだ。
読み合いはあれど駆け引きは無く。
荒々しいが派手さは無い。
(けれど何故かしら、目を見張る物は無いのに……目が放せない)
マーガレットは力を司る者であるが故に、最適で最良の戦術を持って相手を捻じ伏せる。それが彼女の戦い方だった。少なくとも今目の前で行われている無駄の多い戦い方はけっしてしない。
だからこそ、マーガレットはこの一戦には価値があるのではないかと考えていた。
(感情を優先した戦い、きっとこの一戦は私が求める答えに辿り着くのに必要な一戦なのかもしれないわね)
マーガレットは白野を見詰める。
白野は額に汗を流しながら、一戦目とは違い戸惑いの消えた真剣な表情でダン同様に声を上げずにペルソナへと指示を出していた。
(一戦目よりも動きが良い?)
マーガレットは一戦目よりも疲弊しているはずの二戦目で何故善戦しているのか、その理由を探る。
(……ペルソナへの指示速度が上がっている。つまり、白野の『集中力』と『読み』が深く鋭くなっている)
ペルソナの戦いはどうしてもペルソナ使い自身の状況を読み解く集中力と先読みが必要になってくる。
特に今回のような純粋な殴り合いであれば相手の動きを読んで二手三手思考を巡らせた方が素早く行動できる。
もちろんそれだけではなく予期せぬ咄嗟の動きにも対応する必要があるが、白野は既にそれをこなしていた。
(思えば集中した時の彼の状況把握能力は凄まじい物がありましたね)
ヴィジョンクエストを作る際に見た白野の過去の戦いを思い出す。
サーヴァントへの指示やサポート、状況観察による機転と反撃、白野は生前その場その場で自分ができる『最善』を尽くして勝ち上がってきた。
(どうしてそれだけの事を成せたのか、いずれ解る時がくるかしら)
マーガレットが視線を白野から再度戦うペルソナの方へと向ける。
何度目かの攻防の末、ロビンフットの下から上に向かってかち上げるように放たれた回し蹴りの一撃を双剣で防いだ無銘の腕が上がり、上半身ががら空きになる。
ダンが腕を振るう。そこまでは一戦目の流れと同じ。
違うとすればダンが腕を振るうと同時に白野も腕を振っていたと言う事。
それに答えるように、無銘の身体が補助スキルのオレンジ色の輝きを放つと、その手から双剣を消して弓を取り出す。
(ロビンフットの方が早い)
マーガレットが冷静に分析する。
弓を構え始めた無銘に対して、ロビンフットは既に矢を放つ体勢に移っており、その手から矢が放たれる。
「決めろアーチャー!」
その一矢が届く前に、白野の叫びと共に無銘が単体物理攻撃スキルを発動し、無銘もまたその矢を放つ。
白と紫が交差し、そして――白は標的を穿ち、紫は空を切る。
ロビンフットの額は見事に打ち抜かれ、倒れると同時に霧散し、ダンもまた霧散する。
それに続くように既に消え掛けていた無銘も完全に消え去り、汗だくの白野は仰向けに倒れながら何度も深呼吸を繰り返す。
そんな白野の姿を見詰めていたマーガレットが無意識に一言呟く。
「素晴らしい」
(わざと一戦目の流れを再現するように一撃を受ける事で相手のスキルを誘発し、それを迎撃する。何よりも素晴らしいのはスキルを使用する為の自身の体力や精神力の把握能力)
言葉では簡単だが相手の動きを理解していなければ、最初の一撃を思い通りに防ぐ事はできない。
あの長い攻防で相手の動きのクセを見抜いたであろう白野の観察眼に、改めてマーガレットが感嘆の拍手と感想を送ろうとして、白野がその場から動かないのを見て早足に近寄る。
「大丈夫かしら?」
「正直、しばらく動けそうに無い。体力と精神力を搾り出すだけ搾り出したから」
疲れたような荒い呼吸をしながら、それでも白野は嬉しそうに笑みを浮かべる。
そんな白野の健闘を称えるかのように仰向けに倒れる彼の目の前でダン・ブラックモアとロビンフットが一つとなって新たなペルソナ、深緑の外套を羽織ったロビンフットが現れ、その姿を『Ⅸ』の番号が書かれたカードへと変化させて白野の身体に吸収される。
「おめでとう。また新たな力を得たわね」
「ああ。まあこんな状態じゃ締まらないけど」
苦笑を浮かべる白野にマーガレットは『その通りね』と口元に笑みを浮かべつつ彼の傍に座るとその頭を持ち上げて自身の膝の上に置く。
「マーガレット?」
意味が分からず戸惑ったような視線を向ける白野にマーガレットはいつもと変わらない笑みを浮かべながら答える。
「しばらく休んでいきなさい。そんな状態じゃ帰れないでしょ?」
「あ、うん。それはありがたいけど、なんで膝枕?」
「あら、私の膝枕じゃ休めないかしら? それともマイルームの頃のように冷たい床の方が落ち着くのかしら?」
「膝枕の方がいいです」
初期の英雄王とのマイルームでの生活を思い出した白野は即決で膝枕と答え、そんな姿にマーガレットが愉快そうに笑う。
「じゃあ少し休むよ」
「ええ、おやすみなさい」
目蓋を閉じて自分に身を委ねながら眠りに付く白野に対して懐かしい物を感じながら、マーガレットは彼の寝顔を眺め続けた。
と言う訳でダンさんとロビンでした。
このコンビはエクストラシリーズでもかなり好きなコンビなんですよ。
エクストラやった人は分かるけど、基本月の召喚は『相性召喚』な為、ガトーや白野等の例外を除いて基本的にマスターと相性が良い相手が選ばれます。(公正だけど公平じゃないって奴ですね)
この二人は特に似た者同士で、そんなダンさんだからこそ不利や不和を覚悟でロビンを諭し続けられたんだと思う。
因みに個人的にだけどエクストラでダンさんがラスアンみたいに手段を選ばなくなった場合、間違いなく本編で暗殺されていたマスターの数が増えていたと思う。(原作はダンが、ラスアンはロビンが戦い方を縛ってたから勝てたみたいなもんだし)