大変お待たせしました。ようやく林間学校です。内容が内容なので後編と連続投稿です。
正直凄い難産だった。理由としては鳴上達が通う学校の林間学校の内容が自由過ぎてそれに理由付けするのが大変だったのと、彼女のキャラ的にここで行動しないのはおかしいだろうと行動させたはいいがその際の推理で自分の構想していた話の致命的な問題に気付いてそれをどうしようか悩んでいる次第です。尚その問題点は推理中に語られていますので気付く人は気付くと思います。マジどうしよう。
周囲を見渡す。
花村、完二の二人が顔を青くして項垂れ、千枝、天城は青い顔をしながらも期待の眼差しをこちらに向け、直斗は青い顔で自分の事を心配そうに見詰めてオロオロしている。
そして間違いなく自分と同じ表情をしているであろう隣に座る鳴上と視線を交わす。
きっとこれは天罰なのだろう。
あの時、自分が注意していればこの悲劇は起きなかったはずだ。
目の前のオドロオドロしいオーラを放つ物体を前に、数日前の出来事がまるで走馬灯のように脳裏を過ぎる。
マーガレットとの訓練から数日が経過し、林間学校が近付くとモロキンに職員室に呼び出された。
「完二と直斗の面倒ですか?」
「ああ。巽完二も貴様の言う事は聞くらしいし、転校生の白鐘とも仲が良いと聞いているしな。ああ言っておくが白鐘は夜は女子のテントで就寝して貰うから変な期待はするなよ」
モロキンの言葉に分かりましたと答えて職員室を後にし、放課後に二人と合流した時にその事を伝える。
「と言う訳で林間学校は一緒に行動する事になった」
「先輩と一緒なのは嬉しいっすね。つか、班決めの時に俺と一緒の班になったクラスの奴ら、まるでこの世の終わりみたいに青い顔しやがったんですよ」
失礼っすよ。と憤慨する完二だが、ビジュアル的にも過去の逸話的にも完二の事をよく知らなければ仕方ない反応だと思う。
「班が決まっていなかった僕は昼間と夕方の食事は先輩と一緒に行動、夜は二年生か一年生で人数が少ない班のテントで就寝ですね」
「そっか。じゃあ当日の飯でも買いに行くか」
林間学校の夕飯は基本的にカレーのルーとお米は学校側が用意しているが、具材は生徒が用意する事になっている。何故かと言えば林間学校の参加者の人数が安定しないからだ。
学校側もこの行事に関しては意欲がゆるいのか、病欠という名のズル休みや、お菓子の持参も黙認されている。もちろんお菓子はテント外で食べているのが見つかれば没収である。
そんな訳でゴミ拾いは大変だが友達とワイワイする分にはそこそこ楽しいイベントだと個人的には思っている。
「具はどうする?」
「普通でいいんじゃねっすか? 凝ったモンにして失敗したら悲惨っすからね」
「……あの、御二人は料理ができるので?」
直斗が意外そうにこちらを見詰めるので完二と一緒に頷く。
「まあ普通に料理本通りには作れるよ。一人暮らしも長いし」
「つーか料理なんて本の通りに作れば普通に美味いモンができるだろ?」
いや完二、それはお前だけだ。自分は何度か作らないと味が安定しない。
完二の家事スキルの高さを羨ましいと思っていると、直斗が『ええまあその通りなんですが……』と自信無さ気に呟いた。
「もしかして直斗って料理した事が無い?」
「……仕事をするようになってからは基本的に出来てる物や外食が多くて、自分で一から作ったのは子供の頃に数える程しか」
不安そうにする直斗に、ふむ。と呟きつつ腕を組んで少しだけ考えてから提案する。
「じゃあ今日の家の夕食にカレーを作ってみるか? 一回作っておけば安心できるだろ?」
「いいんですか?」
「うん。今日の夕食何にするか決めてなかったしね。それじゃあ買い物行くか」
「うっす! ついでに持って行く菓子も厳選しましょう。俺、おっとと持って行きます」
「はは、お前は本当におっとと好きな」
完二の言葉に笑いながら立ち上がり、三人で一緒にジュネスへと向かった。
『エブリデイ、ヤングライフ、ジュッネス~♪』
耳に残るジュネスの音楽が放送される食料品売り場を三人で回る。
「えっと、ルーは買ったし具材も買ったし、あとは菓子か。二人とも、自分は私用の物を買ってくるから菓子コーナーに先に行っててくれるか?」
「うっす!」
「わかりました」
二人にカートを預け新しい籠を持って目的の場所に向かう。
えっと先に調味料関係を……ん? アレは千枝と天城か?
香辛料のコーナーの通路の奥、小麦粉のコーナーで見知った二人を見つける。
二人はこちらに気付いていないようで手に籠を持ちながら『薄力粉』と『強力粉』を持っていた。
「小麦粉ってどっち使えばいいのかな?」
「強い方がいいよ。男の子いるし。そう言えばトロみを付けるには片栗粉が必要らしいよ。あとはリンゴとハチミツ?」
「え~それだと普通じゃない? そうそう、コーヒーを入れるとイイらしいよ。でもあたしコーヒー苦手だからコーヒー牛乳でいいよね」
「あ、じゃあシーフードにしよう。伊勢海老と帆立で」
「え~あたしは断然肉! そうだ、いっそミックスなんてどう? その二つとステーキのブロック肉なら別けられるでしょ」
「千枝、天才!?」
驚く天城、胸を張る千枝、二人はそれはそれは楽しそうに喋りながらこちらに気付かぬまま去って行った。
自分はそんな二人に声をかける事が出来なかった。というかそんな余裕が無かった。
え、なに? 何作るの二人とも!?
強力粉使うのに更に片栗粉も使う料理って何!?
シーフードにブロック肉!? 鶏とかじゃなくて!?
つーかコーヒー牛乳はコーヒーの代わりにはならないよ!!
頭の中は軽くパニックである。
「え、もしかして二人ってメシマズ勢?」
千枝は確かに食べ専だが旅館の娘の天城もとは意外だ。
「ま、まあ材料的に料理の練習だろう」
それを食わせられるであろう二人の家族に心の底から同情しつつ、ほんの少しの不安を感じながら買い物を続けた。
なんて思っていたら自分がその対象になるなんて。どうして止めなかったんだ過去の自分は!
走馬灯のような回想から目覚め、現実に引き戻される。
先程までゴミ拾いしながら三人で学校生活の話題で楽しみ、夕食のカレーも上手く出来た。
あとは皿に盛るだけという時に花村に声を掛けられ一緒に食べる事になった。
そして千枝と天城が持ってきたカレー、アレらの材料を使った割りに何故かそこそこ見られる見た目になったそれを花村と完二は笑顔を浮かべながら一口。
『おぐ、あっぐぁ!?』
『うおぉあうあ!?』
そんな苦悶の声を上げたと同時に二人は口の中の物を吐き出して倒れた。
その後二人からの怒涛の不味いコールに、千枝達は『まだ分からないじゃん!』という台詞と共に生き残ったこちらへと期待の眼差しを向けた。
『止めとけよ。ネタで進めるのも躊躇うわ』
『先輩、マジで止めといた方がいっすよ』
二人は真顔だった。その目はこれ以上犠牲者は出してはいけないという使命感に燃えていた。
しかし、しかしだ、やはり他人に出された料理を一口も食べないと言うのは……自分的にありえない。
「「……いただきます」」
自分と鳴上の言葉が同時に発せられる。どうやら向こうも覚悟を決めたらしい。
二人揃ってスプーンで掬って一口。
――――ああぁぁ。
なんかもうそんな嗚咽しか出ないくらいに不味かった。
味は苦味と臭みしかない。たぶんルーの部分の大半が焦げ、魚介や肉の下処理が出来てない。そして食感はもっと酷い。米はべちゃべちゃやら芯が残ってジャリジャリ、材料なんて火が通ってない感じがする物まである。
……これ食ったら最悪食中毒になるんじゃないか。
ちらっと、横を見る。
この料理を作った二人の顔を見て……エリザベートの悲しそうな顔が脳裏を過ぎった。
不味い。と語って言いのは――食べた奴だけだ!
「――んぐ!」
「ぶっは!?」
根性と気合で飲み込む隣で鳴上が噴出して倒れる。
「鳴上!」
「鳴上君!?」
「えっ!? 白野飲んだの!?」
おいこら千枝、お前そこで意外そうな顔するとは何事だ。
「……二人とも」
「「は、はい」」
最後の気力を振り絞って告げる。
「料理のさしすせそからやり直し。それと味見は最低限の礼儀……だ……あう」
身体が横に向かってふら付き、倒れる。
「せ、先輩!?」
「先輩!?」
直斗と完二が慌てて駆け寄ってくる。ああ、二人とも良い後輩だなぁ……持ってきた腹痛用の薬は効くだろうか。
そんな事を考えながら、自分はしばらくその場から動く事が出来なかった。
「いや~酷い目にあった」
「すね。何したらあんな酷いモンが出来上がるんだか」
テントの中、いまもまだお腹に違和感を覚えながら完二と二人で『ははは』とひと笑いしたあと、同時にそちらへと視線を向ける。
「で、なんで直斗はここに来たんだ?」
「お前、見付かったら停学だぞ」
そこにはなんとも居心地が悪そうにしている直斗の姿があった。
あのカレー事件のあと、自分達が作ったカレーを千枝達にも分け、満腹とは行かないが少しは腹を満たしながらお互いに親睦を深めた。
食後に千枝が直斗を自分達のテントに誘い、直斗がそれを了承して彼女達と同じテントに向かう事になってその場で彼女達と別れ、自分と完二だけでテントに戻った訳だが、何故か夜が深けてから直斗がテントにやって来たのだ。
「いえ、その、確かに里中先輩方のテントに招かれたのですが、里中先輩と天城先輩ともう一人大谷先輩という方がいらしたのですが、その、女性の方に対してとても言い難いのですが大谷先輩の、いびきが酷くて……」
「……そう言えば去年そんな噂を聞いた気がするな」
同じ学年の女子でその、良く言えばふくよかな体型、悪く言えば肥満体型な彼女は同学年では自信家であり健啖家でもあることで有名だ。
そんな彼女と去年同じテントになった女子が寝不足で体調を崩したと言う噂を思い出した。
「因みに千枝達は?」
「先輩方は鳴上先輩方のテントに向かいました。朝早くに戻ればバレないだろうと。なら僕もと」
「まあそんだけ酷いイビキならセンコーのチェックもねぇだろうな」
完二の言葉に確かにと頷きつつ自分達のテントも二人でしか使っていないので直斗一人増えた所で人数的には問題は無い。
「それじゃあどうする? 早起きするならもう寝るか?」
「いえ、その前に事件について話して置きたい事があります」
直斗が真面目な顔でそう告げ、自分と完二も表情を引き締め寛いでいた姿勢を正して座り直す。
「何かあったのか?」
「はい。眠むれなかったついでに天城先輩に山野アナが泊まっていた時に接触した男性が居ないかを確認しました」
「まさか居たのか!?」
完二の言葉に直斗が頷く。
「はい。山野アナの死体が発見される前の晩に『彼女の警護』として一人の刑事が訪れていたそうです」
直斗がそこで言葉を切り、少しの間を空けてからその人物の名を強調するように告げた。
「名前は『
後書きは後編で!