『次のニュースです。
あのアナウンサーの人やっぱり降板になったのか。
リビングで朝のニュースを見ながら自分で作った朝食を口に運ぶ。う~んやっぱり一人でのご飯は寂しいなぁ。
ナミ様との不思議な夢から数ヶ月、今は実家で一人暮らしをしている。
両親が転勤で今年の3月から都会の方に行ってしまったのだ。
自分も一緒に来るかと誘われたが、一月に見たナミ様との不思議な夢の事もあったのでこっちに残った。
一人暮らしを許されたのはここが地元で顔見知りが多いのと、自分の落ち着いた性格のお陰だろう。
子供の頃から生前の記憶があったせいで精神的に成熟していた自分は幼い頃は同い年の友達が少なかった。後輩には慕われていたと思う。
因みに髪飾りと錫杖は部屋に置いてある。流石に外に持ち出せないし学校に身に着けて行く訳にも行かないからな。
『今日の天気は雨のち晴れでしょう。霧が出ますので外出の際には十分に注意してください』
おっと、もうこんな時間か。
今日の天気予報を確認しながら食事を終え、洗い物を済ませて用意しておいた制服に着替える。
今日から二年生だ。心機一転、頑張るとしよう!
登校時間になり忘れ物がないかチェックして傘を持って出かける。
この辺も随分と寂れたな。
学校に向かう途中にある稲羽中央通りの商店街の寂れ具合を確認しながら目的の店に向かう。
商店街の北側にある神社の先にあるお店、『
「はーい。今行きまーす」
聞き慣れた女性の声からしばらく待つと、着物を来た少し年の行った女性が玄関の戸を開く。
「あら白野君、おはよう」
「おはようございます巽おばさん。
優し気な表情で挨拶してくれた巽おばさんにこちらも挨拶を返し、手の掛かる後輩が起きているか尋ねる。
「ちょっと待ってね。完二ー! 白野君が迎えに来てくれたわよー!」
家中に聞こえるくらいの大きな声で巽おばさんが二階の天井に向かって叫ぶ。
「聞こえてるよババア! 恥かしいから大声出すな!」
ドタドタと慌ただしい足音と共に長身で大きな体格、脱色した短髪をオールバックにし、更には耳にピアスといういかにも不良な外見の後輩、巽完二が大声で叫び返しながら下りて来る。
「だったらちゃんと起きなさい!」
巽おばさんが容赦無くそう言って息子の完二の背中を叩いて送り出す。相変わらず男前だな完二のお袋さんは。
「ったく。すいません先輩、待たせちまって」
「いいよ。偶に来ないとお前、サボったり遅刻したりするだろ?」
「うっ。き、気が乗らない時だけっす」
「ま、進級できる程度にはちゃんと出席しろよ。んじゃ行こうか」
「うっす!」
二人揃って商店街を抜けて
「それにしても先輩も物好きっすよね。俺なんかと登校して」
「そうか? というかこの辺りの奴らなんかみんな小学校からの顔見知りだろ?」
完二の問いに頭を掻きながら答える。
実際問題小学校中学校の数が少ないから友達と言う訳でもないが顔見知り程度の連中は多い。
この町の外となると印象に残っているのは丸久豆腐店のお孫さんのりせちゃんか。彼女とは帰省した時に何度か遊んであげたっけ。今はアイドルをしていて、そのせいかここ数年は全然帰ってこなくなったけど。
あとは小学校頃の夏休みに一度だけこっちに来た謎々が好きな女の子と遊んだっけ。探偵になるのが夢と語っていたがその後どうしているだろうか。
「ハハ、先輩らしいっすね」
「……?」
苦笑いを浮かべる完二に首を傾げつつ『どういう意味だ?』と尋ねるが『なんでもねっす』と言って言葉を濁して次に何かを思い出したかのような仕草をする。
「そうそう。そういやぁ先輩、マヨナカテレビって知ってます?」
「マヨナカテレビ? いや、知らないな」
完二の言葉に視線を少し上げて考えた後、首を横に振って答える。
「自分も詳しくは知らねっすけど、なんでも雨の晩の零時に電源の入っていないテレビを一人で見ると運命の相手が映るって噂っす」
「随分とロマンチックな噂話だな。というか、お前がそういう噂を覚えていた事にちょっと驚いてる」
「いや、昨日お袋から聞いたのを偶々覚えていたんで」
言葉どおり暇潰しの話題として偶々覚えていただけなのか、完二は素直に答える。
「マヨナカテレビねぇ、今度試してみるか。別に魂が抜かれるとかって訳じゃ無さそうだしな」
「マジっすか。なんか映ったら教えてください!」
「おいおい先輩を実験台にするのか?」
おどけたながらツッコむと完二も笑顔を浮かべる。それからはマヨナカテレビの話題を皮切りに、学校に着くまで雑談に華を咲かせた。
振り分けられたのは二年三組だった。
隣のクラスは学校で一番嫌われていると言ってもいい論理の
自分のクラスの担任は格好は兎も角、生徒に人気のある歴史の
今日はHRだけだったので早々に教室を出よう立ち上がると黒板の上のスピーカーからスイッチが入る音がした。
『先生方にお知らせします。只今より、緊急職員会議を行いますので、至急、職員室までお戻り下さい。また、全校生徒は各自教室に戻り、指示があるまで下校しないでください』
なんだ? 学校の近くで事件でもあったのか?
教室内がザワつき、少ししてパトカーのサイレンの音が響いた。
「お、なんか事件?」
「サイレン近かったな」
「つーか霧で殆ど見えねぇよ」
サイレンを聞いて窓に近付いて外から様子を伺おうとしていた三人の男子だったが、霧で外の様子が解り辛く、つまらなそうな表情で愚痴り合うとすぐに別の話題で盛り上がり始めた。
「つーか事件て言えば、俺の運命の相手あの山野アナだったんだよ。ああ俺はどうすれば」
「え、お前も? 俺もマヨナカテレビ見て映ったんだけど?」
「おいおい不倫の後は二股ってか? お盛んだな~あの女子アナ」
マヨナカテレビの話題かな? それにしても、運命の相手が同じなんてありえるのだろうか?
一人でマヨナカテレビについて考えていると、再びスピーカーのスイッチが入った。
『全校生徒にお知らせします。学区内で事件が発生しました。通学路に警察官が動員されています。出来るだけ保護者の方と連絡を取り、落ち着いて、速やかに下校してください。警察官の邪魔をせず、寄り道などしないようにしてください』
「事件!?」
「マジ? おい急いで見に行こうぜ!」
刺激の少ない町なせいか、事件と聞いてクラスメイト数名が足早に教室から出て行く。
確かに通学路に警官が動員されるのなんて初めてだな。
そんな事を考えながら帰り支度をしてさっさと帰宅する。興味は少しあるが野次馬するほどじゃない。
帰りの通学路には確かに警察が配備されていた。帰りに食材を買いにジュネスに行こうと思っていたが、今日は止めて商店街にある丸久豆腐店でいつものように豆腐を買って家に帰り、日課の勉強と運動を終え、夕食の豆腐料理を作っていると、点けていたテレビから気になるニュースが聞こえてきた。
『今日最初のニュースです。本日正午頃、稲羽市の
鮫川って、まさか?
火を止めてテレビを見に行く。
『遺体で見つかったのは地元テレビ局のアナウンサー、山野真由美さん、27歳です』
この人って確か議員秘書の人の浮気相手だよな……そういえばマヨナカテレビにも映ったとか言ってたな。
『遺体は民家の屋根の大型のテレビアンテナに引っ掛かったような状態で発見されました。なぜこのような異常な状態になったのかは、現在のところ分かっていないということです。死因も今のところ不明で、警察では事件と事故の両面から捜査を進めることにしています』
事故? それはありえない。民家の屋根にどんな理由があれば自主的に黙って上ると言うのか。
では事件とし考えた場合、なぜ遺体をアンテナに引っ掛けたのかが問題だな。
何か世間に対して行うメッセージにするには、リスクと労力しか掛かっていない。そして何より死因がハッキリしないというのが気になる。
まさかナミ様の夢と何か関係があるんじゃないか?
大きな事件とは無縁な地元で起きた不可思議な事件を前に嫌な予感を感じながら、それでも特に何かする訳でもなく数日が過ぎたある日――第二の犠牲者が出てしまった。
今後の為に御都合主義ですが白野は一年生ズとは面識がある設定でいきます(そうじゃないと夏に直斗の水着イベがごにょごにょ)