岸波白野の転生物語【ペルソナ編】   作:雷鳥

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やっとペルソナ出せる所まできたぞっと。



【再会】

 最初の事件が起きてから数日後、全校集会が開かれ小西早紀(こにし さき)先輩が亡くなった事を告げられた。

 

 やはりマヨナカテレビは関係しているのか?

 

 知り合いとは言っても商店街で見かけて他愛無い会話をする程度の知人だが、それでも顔見知りが死んだというのは少なからず自分の心に衝撃を与えた。

 

 彼女は死ぬ前にマヨナカテレビに映っていた。

 第一の事件から今日の間に雨の日があって噂を確かめるためにマヨナカテレビを見てみようとリビングのテレビを見続けた。

 

 そして深夜零時丁度にそれはおきた。

 何も映っていないはずのテレビの画面が急に映り、そこに人影が写ったのだ。

 一度目は映し出された映像の視界が悪く判別できたのは『髪の長い女性が映っている』という事だけだった。

 

 二度目に見た時は映像が以前よりも僅かにはっきりとしていた。そして映し出されたのは『小西早紀先輩が化け物に襲われる』映像だった。

 

 校長の話を聞き流しながら思案していると、ふとナミ様の言葉を思い出した。

 

『これがあれば、元の世界にも戻れる』

 

 不可解な死がナミ様達のいる世界で起きた結果だとしたら一応の辻褄は合う。じゃあマヨナカテレビはなんだ? なんのために『存在』している?

 

 意味が無いなんて事は絶対にない。なんせ既にマヨナカテレビに映った人間が『二人』も死んでいるのだから。

一人なら偶然かもしれないが、二人なら何かしらの意図が働いたと言っていい。

 

 体育館から校舎に戻る時、通り過ぎ様に悔しそうに項垂れた同じ学年の男子生徒と、それを心配そうに寄り添う男子生徒と女子生徒を見かける。

 女子生徒の方は知っている。友人の一人の里中千枝(さとなか ちえ)だ。

 彼女は項垂れる男子生徒を心配そうに見詰めている。きっと、あの男子生徒は小西先輩の友人か、もしくは……好きだったのかもしれない。

 

 

 

 

 学校から帰宅し、夕食を食べ終えた自分は履き慣れたスニーカーの靴底を拭いて履き、上着を羽織って部屋の押入れに置いてある防犯グッズの入ったリュックサックを背負う。

 自室に戻ってナミ様から貰った髪飾りを左の手首に巻き、錫杖を右手に取ってリビングのテレビの前に立つ。

 

「……さて、行くか」

 

 テレビに手を突っ込む。

 すると手はまるで湯水を通るようにテレビの中に吸い込まれる。

 

 この現象に気付いたのは一週間ほど前にテレビの周辺の掃除をしていた時だ。

 偶々画面に触ったらいきないり支えが無くなった感じがしてそのまま手から肩まで突っ込んでしまった。

 家のテレビは父親が会社の忘年会のビンゴ大会で当てた大型で、人一人くらいなら簡単に入れる程だ。正直頭まで行っていたらそのままテレビに入ってしまっていただろう。

 それ以来怪しいと思いながらも気にしない様にしていたのだが、事件が多発した以上、見て見ぬ振りをするわけにはいかない。

 

 手を入れ終えた自分は次に頭を突っ込み、最後にテレビの枠を跨ぐ様に全身を入れる。

 全身が入り込むと同時に身体が『落下』する。

 白黒の変な空間を落ちると、すぐに視界が開け地面に着地する。

 

 ここは……。

 

 霧があるせいで遠くまでは見渡せないが円形の広い空間にまるでテレビの撮影場のような鉄骨やスポットライトが辺りに設置されていた。

 地面を見ると中央に先程通った空間と同じ白と黒の円の縞模様が交互に描かれ、その円を囲うように人が倒れているかのような模様が描かれている。円の端の方は赤茶っぽいモザイク柄をしていた。

 

 変な場所に出たな。

 

 自分が立っている広場の東西南北に手摺のついた細道が続いている。

 とりあえず色々と確認する為に広場に座り、携帯や手動充電のできる懐中電灯やラジオを出して使えるか確認する。結果は予想していた通りどちらも通信できなかった。

 

「無理か」

 

『通じなかったね』

 

「は?」

 

『……え?』

 

 急に頭に響いた声に驚いて辺りを見回すが誰も居ない。というよりも今の声って……。

 

『もしかして……聞こえるの?』

 

「ああ聞こえてる。君、あの火の玉の子だよね?」

 

 聞き覚えのあった戸惑うような声に質問を返すと、今度は嬉しそうな声が頭に響いた。

 

『うん。ずっと、お兄ちゃんの中にいたよ』

 

「お兄ちゃん?」

 

『テレビでお兄ちゃんくらいの年上の男の人をそう呼んでたから……ボク、間違ってる?』

 

「いや、構わないよ。そうそう、ずっと君の名前を訊きたかったんだ」

 

 声が沈んでいくのが分かったので慌ててお兄ちゃん呼びで問題ないと伝え、あの日以来気になっていた事を訊ねる。

 

『……覚えてない』

 

 悲しそうに呟く。なんというか、声からして本当に子供なのかもしれない。

 

「さっきテレビを見ていたって言っていたけど、こちらが認識できなかっただけで君はずっと一緒に居たの?」

 

『うん。ボクはずっとお兄ちゃんと一緒にいたよ』

 

 そうか。ということは結構恥かしいところも色々見られていたのか……ならもういっそ開き直ろう。

 

「ならもう家族も同然だ。自分自身が誰なのかを思い出すまでは、そうだな。火の玉だからヒノって呼ぼうと思うんだが、どうかな?」

 

『家族……エヘヘ、うん、ボクはヒノ、お兄ちゃんの家族』

 

 嬉しそうな声で自分をヒノと呼ぶ。うん、気に入ってくれたなら良かった。

 

「それじゃあヒノ、これからよろしく。ところで、ここがどこだか知ってる?」

 

『分からない。でも、一つだけ分かる。ボクと同じ気配を感じる』

 

 ふむ……どうせここにいても仕方が無い、か。

 

「場所は分かる?」

 

『うん。正面の道から感じる』

 

「正面の道だな」

 

 ヒノの誘導に従って歩みを進める。

 しばらく霧と手摺の付いた橋の様な道を進んでいると、赤黒い空間の歪みを見つけ、恐る恐るその歪みに入り込む。

 テレビに入った時と似たようなぬるま湯を抜けるような感覚を感じながら通り抜けると、そこには見慣れた風景が広がっていた。

 

「ここは、商店街?」

 

 そこは景色の配色こそ違うが紛れもなく自分がよく行く地元の商店街だった。

 

「どうして商店街がこの世界に?」

 

『分からない。でもあそこ、あそこにボクの身体が居る』

 

 ヒノが示したのは一軒の酒屋だった。

 

「ここって、コニシ酒店か?」

 

 死んだ小西早紀の実家で間違いない。しかし店の入口の戸は開け放たれ、そこには商店街に来た時に潜った赤と黒の歪んだ波紋が広がっていた。

 もしかしたら別の場所に移動する時はこの歪みを通らないといけないのかもしれない。

 

「ヒノの身体はこの向こうか?」

 

 歪んだ空間を見詰めてヒノに問う。

 

『うん。この奥から気配を感じるよ』

 

「なら、行くか」

 

 意を決して歪みを通り抜けると酒屋の店内のような場所に出た。

 

「ここは……っ!!」

 

『お兄ちゃん!?』

 

 嫌な予感がして咄嗟にその場から飛び退くと先程まで立っていた地面が爆発する。

 

「なんだ……コイツは!?」

 

 錫杖を構えながら目の前の『敵らしきモノ』を観察する。

 

 大きさは大きめのワゴン車程度。

 円盤型のUFOの様な形状に、戦車のような頑丈な鉄を張り合わせた様な外観、戦車と評したのは他にも理由があり、目の前の敵の胴体からは四方に巨大な砲が設置されてたからだ。

 胴体はクルクルと回り、一番上には櫓の様な形状の頭部があって『Ⅷ』と記された黄色い仮面を被っていた。

 視線が合った瞬間、仮面の顔が笑った様な気がした。

 背中に嫌な汗が流れる。

 

『感じる。アレからボクと同じ気配を感じる』

 

「なに? ということは、アレはヒノに関係した何かって事か?」

 

『ごめんなさい。分からない』

 

 謝るヒノを慰めようと一瞬気が逸れた。

 意識が逸れた瞬間、目の前に勢い良く何かが突っ込んでくるのを感じて錫杖を前に出す。

 

「っ~!?」

 

 胴体を回転させたまま突っ込んできた敵の衝撃が錫杖越しに腕を走り、その衝撃の勢いに負けて身体は吹き飛ばされて地面を二転三転する。

 

『あっぐうう』

 

「ぐっ。大丈夫かヒノ」

 

 くそ、自分のダメージはヒノにも行くのか。

 

 痛々し気な声を上げるヒノに申し訳なく思いながら痛む身体をなんとか起こす。

 目の前の敵はこちらが弱っているにも関わらず追撃はゆっくりとしている。自分が倒されるとは思っていない動きだ。

 

 だが実際問題、こんなのとどう戦えばいい。

 

 今の自分は魔術を使えない。

 そしていくら神代時代の金剛石で出来た錫杖でもあの装甲を貫くのは無理だろう。宙を浮いてるせいで唯一攻撃が通じそうな頭部にも届かない。

 

『痛い、痛いよぉ』

 

 ヒノの声に意識が引き戻される。

 

 そうだ。今の自分の身体にはヒノがいる。自分のためにも、ヒノのためにも、こんなところで――。

 

「死んで、たまるか!!」

 

 燃え上がる。

 目の前の強大な試練、それに立ち向かうのに必要な感情が、意識が燃え上がるのを感じた。

 

 ――拳を握れ!

 

 頭に声が響く。

 

 ――顔を上げよ!

 

 懐かしい。とても懐かしい人の声が響く。

 

 ――そして告げよ。余の名を!

 

 身体の中心から湧き上がる感情に従って、右手の錫杖を打ち鳴らし、左手を手を前に翳しながら目の前に現れた光るカードを握り潰して彼女の名を叫ぶ。

 

「来い! ネロ!」

 

 

 自分の周りに青白い光が溢れ、背後に何か大きな力が現れようとしているのを感じて振り返る。

 

「……セイバー」

 

 そこには見慣れた赤い舞踏服に身を包み、見慣れた赤い大剣を携えた女性、セイバーの姿が在った。違う点としては肌部分の色が灰色で表情は人形の様に動きそうにないところか。

 

 そんな彼女と目が合う。 それだけ、目の前の存在は間違いなく自分の知るセイバーなのだと理解する。

 美しい翠玉の光を放つ瞳からは『よくぞ呼び出した』と褒め称えているような気がした自分は、その視線に強く頷き返して改めて前を見据える。

 

「行け、セイバー!」

 

 全身に活力が漲り、かつてそうしたようにセイバーに指示を出し、彼女は生前と同じように勇ましく敵へと向かっていた。

 




召喚の台詞を番長みたいに「ペ・ル・ソ・ナ!」にするか「来いセイバー!」にするか迷ったけど初回の呼び出しの時は名前の方がいいかとこうなった。
基本的に白野はネロ、無銘、タマモは普段はクラス呼びで統一します。
あと今回の敵はランクダウンしてますが原作に出ている敵です。ここでこの敵が出るって事はコイツが本来出るステージが……。
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