そして公式の設定資料集などは持ってないので、ペルソナとシャドウ、ワイルドの能力に関してわかり易くする為に独自解釈による設定が含まれます。
敵に向かって飛翔したセイバーが剣をUFOの化け物に向けて突き立てる。が、剣は甲高い音と共に回転する装甲に弾かれてしまう。
「っ、離れろ!」
回転が止むと砲口がセイバーに向けられ、すぐにその場から離脱させる。
セイバーがその場を飛び退くと同時に先程まで居た場所に光る砲弾が着弾し、爆発が起きて地面が抉れる。しかしその抉れた足場はすぐに元に戻る。
おかしな地形だが少なくとも足を取られる心配はなさそうだ。これなら動き回れる!
「炎を!」
セイバーを呼び出した時にまるでデータを送るように頭の中に送られた彼女の能力、その中にあった炎を操る能力を使って砲撃を行った直後の隙を狙って足元から火柱を発生させる。
炎に飲み込まれた敵はわずかに動きが鈍る。
「今だ! 仮面を狙え!!」
装甲は硬くて通らないと判断し、唯一攻撃が通りそうな場所目掛けてセイバーが大剣を突き立てる。仮面の傷口から黒い煙が勢い良く放出する。
『――!?』
甲高い音を立てながら暴れる化物。その振り回しの遠心力に耐え切れずにセイバーの大剣が抜け、セイバーの身体が放り投げ出られるがなんとか着地に成功し、後退する。
「くっ、頑張ってくれセイバー!」
『お兄ちゃん……』
セイバーを応援しつつ彼女の邪魔にならないよう敵の間合いから身を隠しつつ観察しながら指揮に集中する。
思い出せ、サーヴァント達と戦ったあの頃を!
「セイバー自身の攻撃力を強化後にもう一度炎を!」
セイバーがこちらの意思に答えるように剣を構え直すと彼女の頭上からオレンジ色の光が落ちるように降り注ぎ、その後すぐに炎を出して化物の動きを鈍らせる。
よし、狙い通りだ!
セイバーに意思を伝える。
セイバーは一気に敵との距離を詰め、大剣を横薙ぎに払う。
物理スキルが乗って威力が増した大剣が光る軌跡を描き、戦車の頭部が跳ね飛ばされる。
頭部は地面に落ちると同時に黒い煙となって四散する。
どうだ?
相手の動向を伺う様に見詰めると、相手はそのまま黒い霧を放ちながら消滅し、その場にヒノと同じ様な火の玉が現れる。
『す、凄いよお兄ちゃん!』
「セイバーのお陰さ。それより、アレがヒノの感じていた気配か?」
火の玉を指差して尋ねる。
『うん……あっ!?』
ヒノが返事をすると火の玉は勢い良くこちらに飛んできて、自分の身体に吸い込まれ、暖かい力が流れ込むのを感じる。
『あ、なんかボク、少しだけ力が増した気がする。ありがとうお兄ちゃん!』
「そうか。それにしても事件に関してはあまりヒントは無かったな」
立ち上がって改めて酒屋を見回す。そもそもここのお酒は飲めるのだろうか?
試しに冷蔵ケースを開けて中のお酒を取り出して封を開けてみる。アルコールの匂いはするが、流石にこの世界の物を飲み食いするのはチャレンジが過ぎるか。
「さて、とりあえず元の世界に戻るか。とは言っても戻れるかは賭けなんだよなぁ」
手に持った錫杖を見詰める。
実はセイバーを呼び出した瞬間に一回、そしてあの火の玉を取り込んだ時にもう一回、錫杖からセイバー達が使うような『術』の名前とその内容が送られて来たのだ。
まあ唱えてみるしかないよな。
なるようになれと最初に浮かんだ術の名を口にする。
「それじゃあ……トラエスト!」
呪文を唱えると自分の周りが光り輝き一瞬だけ視界が白くなると次の瞬間には家のリビングに立っていた。
どうやら戻ってこれたみたいだな。しかし本当に何の収穫も無かったのが痛い。いや、向こうに行き来できるようになった事、そして商店街と同じ場所、得たモノも有る。これからだ!
今後の事を考えて拳を握る。その時、消えている筈の背後のテレビ画面から光が漏れた。
マヨナカテレビ!?
外を見ると雨が降っていた。思ったより時間が経っていた様だ。
新しい情報を得ようとテレビに近付いて画面を覗き込む。
画面の人物はやはり顔は見えないが、辛うじて着物を着た髪の長い女性という事だけは分かった。
着物を着た髪の長い女性、か。
残念ながら心当たりは無いが、今の自分には向こうに行く手段がある。
一番良いのは未然に防ぐことだが、向こうで助けられる可能性があるのは精神的に大分楽になった。
安心したせいか不意に身体のだるさを感じ、身体が傾きかける。
むっ。あの世界のせいか? あとは明日考えよう。
荷物を降ろして靴を脱ぎ、着替えるのも億劫なのでいつもの様に目覚まし時計のスイッチだけ確認して眠りについた。
ん?
奇妙な感じを覚えて目が覚める。
「ようこそベルベットルームへ。私はここの支配人のイゴールと申します」
イゴールと名乗ったまるでハゲタカの様に大きく開いた目と嘴のように長く尖った鼻の黒の燕服を着た小柄な老人が目の前の机を挟んだ先で笑みを浮かべる。
「マーガレットで御座います。以後お見知り置きを」
老人の左側の長椅子に座った切れ長の目に銀色の髪、白い肌を青い服で包んだ女性がイゴールに続いて自己紹介を続ける。
「……久須美白野です。あの、ここは?」
自己紹介された以上は自分もと思い名前を告げた後に辺りを見回しながらこの場所について尋ねた。
周りは青を基調とした室内で豪華そうな長椅子にお酒とグラスの入った棚まで置かれていた。違和感を覚えてよくよく見てみれば外の景色は動いている。もしかして室内じゃなくて車内なのか?
「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある世界でございます」
イゴールは静かにこちらの質問に答える。
「精神と物質の狭間、あの世界とは違うのか?」
あの世界、テレビの世界と言う意味で訊ねるとイゴールは察しているようですぐに頷き答えた。
「はい。ここは何らかの形で『契約』を成された方々が訪れる部屋。あなた様は既に契約が成されております。故に今宵から貴方はこのベルベットルームのお客人となられた」
契約……サーヴァントとの契約のようなものだろうか? だがどの事を言っているんだ? ナミ様との約束か、ヒノとの約束か、それとも今日使役したセイバーか、それとも全てか。
こちらが悩んでいると傍に控えているマーガレットが口を開いた。
「お客様が戦われた相手はシャドウと呼ばれている存在で御座います」
「シャドウ?」
「シャドウとは抑圧された人々の本能や欲望等の意識から生まれ出でる存在でございます」
「となると、さっきの世界は精神世界って事か?」
イゴールの最初の精神と物質の話を思い出す。
「残念ながら一概にそう言える程あの世界の構造は単純ではありませんが、人々の精神に大きく影響を受けている世界であることは間違いありません」
イゴールが少々言葉を濁しながら答える。まあ世界どうこうは今はいいだろう。自分程度の人間が聞いても分からないだろうし。
「敵については分かったけど、じゃあ自分が呼び出したセイバーはなんなんだ?」
「あれはペルソナと呼ばれるモノでございます。シャドウが不特定多数の意識が集まって具現化した存在なら、ペルソナは自己の意識の一部、『もう一人の自分自身』を本人が御する事で具現化した存在で御座います。そういった者を我々はペルソナ使いと呼んでおります」
「ペルソナ能力とは『心を御する力』。そして『心』とは『絆』によって満ちるもの。他者と関わり絆を深め心を磨いて行くことで、ペルソナ能力は強くなって行くのでございます」
「更にあなた様のお力は他のペルソナ能力やワイルド能力とも大きく異なる。少々あなた様のお力を見てみると致しましょう」
イゴールが手をかざす。すると自分からカードが現れ、次の瞬間眩い光を放つ。
イゴールは始めてその目蓋をわずかに開け、マーガレットは何故か恍惚としている。
そして光が収まるとそこには下に『000』の数字が描かれ、中央には宇宙を背にした旅人の様な格好の男女の透明人間が手を取り合って描かれていた。というか自分のペルソナはネロのセイバーじゃないのか?
「なるほど。お客様は『既に一巡』していらっしゃるのですね」
イゴールの言葉に驚き彼へと視線を向ける。まさかカードを見ただけで自分が転生者だと言う事に気付いたのか?
イゴールを探るように見詰めると彼はクククと笑った後に口を開いた。
「お客様を知り、支える事が私めの勤めです故。それにしてもお客様は面白い」
そう言ってイゴールは手を組み直してもう一度宙に浮くカードをへと視線を向ける。
「『愚者』のアルカナを持つ者は、いずれ命の答えを得て別のアルカナへと昇華される。嘗てここに『宇宙』のアルカナに到ったお客様もいらっしゃいました。しかしあなた様が到った答えは『愚者』。愚者は新たな可能性を作って行く者。もう一人のお客人同様、貴方の旅もまた見応えがありそうだ……フフフ」
イゴールの口が吊り上がり、笑顔が更に大きくなる。
というか結局自分の能力について全然説明してないんだが?
「結局自分の能力は……んん?」
ペルソナ能力について訊ねようとした途端、急に目眩がして額を押さえる。
「どうやら今宵はここまでのようですな。さて、お客人の手助けをするのが我々の仕事です。最後にこれを」
イゴールが宙に手を翳すと、そこから光る青い鍵が現れる。
「そのカギをお持ち頂ければいつでもこちらに来訪頂けます故、今宵はゆっくりとお休みなさいませ」
良く分からないが特に悪い気配も感じなかったので受け取ると鍵はそのまま身体の中に取り込まれる。
「それではいずれまた」
イゴールのその言葉と共に意識が眠りについていくのが分かった。
視界が途切れる前にふと視線を感じたのでそちらに顔を向ける。
そこには表情だけ最初の頃のものだが目だけは自分を興味深そうに見つめるマーガレットの姿があった。
この作品におけるシャドウやペルソナ、ワイルド能力の解説です。ワイルド能力に関しては本編でもう一度説明しますが、ここにも乗せておきます。
シャドウ=人々の無意識の本能や欲望の集合体。その為姿は動物や無機物、怪物やら亡霊といった物が多い。基本的に無差別に人間を襲う。肉体を食うというより精神や魂と言った物を喰らうので外傷が無いに等しい。
ペルソナ=本人の意識の一面、所謂『もう一人の自分』。あくまでもペルソナとして使役できるのは『制御に成功した自意識』のみ。
例えばP4では『他人に隠している・または隠そうとしている自分』の具現。
P3は『死・危機に直面した際の自分』の具現。
P4メンバーがP3の方法で召喚した場合、また違ったペルソナが発現していた。
基本人間のスペック的に制御できるのは一人一体まで。
心の成長と供に進化していく。
ワイルド能力=ペルソナを付け変える能力。所謂世界からのバックアップ。
本来ペルソナは一人一つの自意識しか制御できないが、この能力を持つ者は己の様々な自意識をペルソナ化させて呼び出すことが出来る。
世界規模の大きな運命に立ち向かう事が定められた瞬間に、その者は一時的に『愚者』のアルカナとなってこの能力を得る。
そして最終的に運命を乗り越えて『命の答え』を得て『奇跡』を起こして『新たなアルカナ』へと到る。(キタローは『宇宙』番長は『世界』アイギスは『永劫』に一巡して戻った感じ)
この能力は答えを得た瞬間に能力を失う為、最終的に固有ペルソナに戻る。
キタロー=メサイア 番長=伊邪那岐大神 アイギス=アテナ
愚者(白野)
本来最初から最後まで愚者と言うアルカナの運命を持つ者はペルソナ世界には存在しない(代わりに道化のアルカナがある)
ただ白野は存在自体が『異端』な為に『自由』と『可能性』を宿したこのアルカナとなった。
というのがこの作品の設定です。
まあ個人的にはペルソナ=仮面なら初代の頃の仲間も付替え可能なのが一番自然な気がするんですけどね。
まあそれはそれって事でP3とP4の設定を色々吟味してわかり易くした感じです。
ワイルドの能力は最終的には消えるのが自然かなというので愚者と合わせて消える設定にしました。(番長は続編で普通に使ってるらしいですが)
こうすれば白野の『愚者』のアルカナの異端性も増しますしね。