基本『連中』が白野サイドのボスです。
翌日、夕食の買出しを終えて向こうの探索の準備を終えた自分が城まで向かうとヒノが疑問の声を上げた。
『あれ、なんか気配が昨日と違う?』
「気配が? どういうことだ?」
ヒノに昨日との違いを尋ねると、どうも曖昧だった自分に似た気配が強まったと説明する。
「……とりあえず進んでみるか」
分からない事が多い現状では実際に進んで確かめるしかないと気を引き締め直し、昨日行けなかった階を目指して進む。
ヒノの誘導に従って城を昇り続けて一時間程経ち、自分達は目の前の巨大な扉を見上げる。
『この部屋から強い気配を感じる……けどお兄ちゃん大丈夫? ここまで来るのに結構戦ったけど』
「まぁ少し疲れたけど、また最初から昇るんじゃ同じだろうし、そう変わらないさ」
自分を心配してくれたヒノにそう答えてセイバーを出して部屋に入る。
室内は今までの何も無い広場と違い赤い絨毯の先には大きな階段があり、その上にはまるで王様が座るかのように豪華な椅子が一脚置かれ、背後の垂れ幕には不死鳥が描かれた垂れ幕が下げられていた。
天井には巨大なシャンデリアに蝋燭がいくつも挿されて全てに火が灯っている。正に『謁見の間』と言った感じの内装だ。
『っ! お兄ちゃん来るよ!』
ヒノが逸早く気配に反応して警戒を呼び掛けてくれる。その声に従って身構えいつでも動けるようにする。ヒノの言葉から数秒後に目の前に黒い霧が集まり、霧は徐々に形を成す。
「……王様?」
黒い顔に王冠の様な形の『Ⅴ』と書かれた紫仮面を頭に被り、ペリウィグの様な左右の髪を巻物のようにクルクルと巻いた白髪と白いカイゼル髭、胴体は鉄格子で作られているため空洞、それを赤いマントと青と水色の縦縞パンツと袖が覆い、右手には赤い宝石が嵌められた杖を持っている。
外見的特長だけを挙げれば間違い無く王様だろう。体長が5、6メートルくらいはありそうだが。
「セイバー炎を!」
先手必勝とセイバーに攻撃を行わせる。
巨大な炎が王様を襲うが、王様は気にした様子も無く微動だにしない。
「効いてない!? 火属性か!」
相手の様子からそう判断する。
ここに来るまでの戦いでシャドウとペルソナには『属性』というものがあると判明した。弱点の属性は効果が大きく、逆に同属性だと効果が弱い。最悪まったく効かない場合もある。
どう攻めればいい。
こちらが攻め方について悩んでいると、相手も今の攻撃を合図としたのか、その場で屈んで勢い良くこちらに向かって跳んでくる。
見た目以上に速い!?
咄嗟にその場から飛び退きつつセイバーに退避するよう指示を送る。
先程まで立っていた場所目掛けて王様が杖を持っていない方の掌を光らせながら叩きつける。爆音と爆風が響き、床には王様の手跡が残った。
くっ。セイバーの攻撃スキルみたいなものか!
「くそ、接近して攻撃するしかない」
セイバーに指示を送り空を飛んで突撃して行く王様の杖の振り下ろしを回避したセイバーが大剣を光らせながら王様の眉間目掛けて突き刺す。
タイミング良し、あれは回避できない筈だ!
が、そんなこちらの予測を上回り、王様はその場で軽く飛び上がることでその突きは空洞の胴体を通り背中のマントだけを貫く。
「なんとおぉ!?」
以外な回避行動に思わず声が漏れる。ああ
「本当に頭部くらいしかダメージを与えられないじゃないか!」
相手が振り回す杖の間合いからセイバーを逃がしながら打開策を考える。
どうすればいい。遠距離、それも可能なら属性スキルがいい。あの胴体の鉄骨にはダメージが行くと思うが相手の動きが素早くて攻撃にまで余裕が持てない。
ペルソナはサーヴァントと違って全て本体である『自身』の意識を読み取って行動する。
例えば攻撃に対して瞬時に回避や防御行動を取ってくれるが、この行為は『攻撃を知覚』した自身が、その攻撃に対して回避や防御の意識を無意識の段階で確定し、その意識をペルソナが読み取っている為、彼らは瞬時に行動に起こせる。
これは攻撃に関しても同じで、相手の隙を見つけてそこを攻撃しようと思うと、ペルソナは攻撃を瞬時に繰り出す。
かなり危険だったが眼を瞑ってシャドウと戦った時にペルソナの動きがかなり悪くなった事から、これらの予測は間違っていないと思う。
だがそれだけでは勝てないのが戦いだ。ペルソナにスキルを使わせる為にはどのようなスキルを使うかこちらが明確に意識する必要がある。そして何かに意識を向ける以上、どうしても動きに僅かに遅れが出る。
あの王様のシャドウは物理攻撃スキル主体だろう。つまり当たるとかなりのダメージが来る可能性がある。
額から汗が溢れ、なんとかチャンスを見出そうと回避し続けるが、次第に王様の攻撃がなりふり構わない物になっていく。杖だけだった攻撃に手や頭が加わり、仕舞いにはまるで駄々っ子のように手足を振り回して転げ回る。
こちらの存在お構い無しの暴れまわりに、流石にその場から慌てて対比するが、その際に一瞬視線を相手から切ってしまい、運悪く振り回された杖がセイバーの腹部に叩きつけられ吹き飛ばされる。
「ごふっ!?」
腹部に激痛が走り腹部を押さえてその場に膝を付いて咳き込む。
『お、ごほ、お兄ちゃん、大丈夫?』
「あ、ああ。それよりヒノ、すまない」
自分のダメージがヒノにも送られたのか、ヒノが少し苦しそうな声でこちらを心配する。そんなヒノに申し訳なさと自分の迂闊さに怒りを覚えながら、まるでテレビの砂嵐のようにモザイクが映ったり消えたりさせるセイバーに視線を送る。
くっ。集中を切らしたからか。
ダメージを受けないように気をつける理由の一つがこれだ。ペルソナの具現に本人の精神力を必要とするようにダメージを受けて精神が不安定になるとペルソナを呼べなくなるし動きが鈍くなる。
進行優先でペルソナの変換を試さなかったのは失敗だったな。ぶっつけ本番だが……やるしかない!
しかし自分には所謂『意識を付け替える』というイメージが出来ない。故に『意識を変える』のではなく『意識を呼び起こす』というやり方をする。
左手を前に出して意識を集中する。
呼び出したい『相手を意識』する。
青い光が放たれ、左手の前にカードが現れる。
「来い! タマモ!!」
現れたカードを握り潰すとセイバーの姿が消えてキャスターそっくりのペルソナが彼女が所持していた神鏡である玉藻鎮石と供に現れる。
肌はセイバーと同じく灰色だが、生前共に過ごした時に着ていた紺色の着物に桃色の髪、そして金色に光る瞳には『また会えましたね』と言っているような懐かしさと嬉しさを宿していた。
「こっちもまた会えて嬉しいよ。行くぞキャスター、雷撃!」
指示を送るとキャスターはその場で瞬時に行動を起こし、空から落雷を王様に落とす。
王様は一瞬動きが止まり、その隙を突いてキャスターが鏡をぶつけて仰向けに倒す。
雷撃は効くのか。
こちらの意識を読み取ったキャスターが今度は力を溜めて先程よりも大き目の落雷を落として王様を追撃する。
電撃を受けながら王様が立ち上がり大きく杖を振るって電撃を吹き飛ばす。が、それは同時に頭部と胴体を大きく曝け出すことにもなる。
「ネロ!」
キャスターからセイバーへとペルソナを変える。
「切り裂けセイバー!」
呼び掛けに答えるようにセイバーが宙を疾走し、がら空きだった王様の胴を発光させた大剣が横薙ぎに払う。
王様の胴がまるで焼ききれたかのように切断される。
王様はそのまま体を地面に叩きつけられると黒い煙が噴出して消滅し、ヒノの力の塊が現れる。
「勝ったのか?」
その場に座り込み息を大きく吐く。力が抜けて集中が途切れたせいかペルソナは消えてしまう。
『お兄ちゃん大丈夫?』
「ああ……ヒノも痛い思いをさせてゴメンな。しかし流石に堪えた。今はとにかく、早く帰って寝たいな」
頭痛は治まったが体が凄くだるくて喋るのも正直厳しい状態だった。
『待ってて、すぐに取り込んじゃうから』
ヒノの言葉通り火の魂はすぐに自分の体に向かって飛んで来て吸収される。身体が熱くなるのを感じながら自室に戻り、着替えるのも忘れてベッドに身体を投げ出す。
ああ、しんどい。もしかしてこれからずっとこんなのが続くのか?
改めて早く犯人を捕まえ、ヒノの体を取り戻そうと心に誓いながら、すぐにやって来た睡魔に意識を委ねた。
実は後半をまるまる書き直した回。
本当はボスシャドウとの会話とかがあったんだけど……裏ボス全員分考える事が出来なかったので断念(なんか似たり寄ったりな会話にしかならないと判断した)
結果物凄くシンプルになった。
次回は二年生サイドの回になります。