岸波白野の転生物語【ペルソナ編】   作:雷鳥

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と言う訳で二年組の話です。
四月に起きた出来事のダイジェスト回のような物となっております



【特捜隊の四月】

 天城の事件から暫く経った。その間、自分は色々と噂に聞き耳を立てたり、クラスメイトとの会話から天城やマヨナカテレビについての情報を集めていた。

 

 なんでも天城は事件直後から一日、二日程度だが行方が解らなくなっていたらしい。

 女将さんであるお母さんが倒れて大変だった為に精神的に疲れていたのではないか、というのが近所のおばちゃん達の見解だ。

 

 それとマヨナカテレビだが、どうやら自分以外にもあのドレス姿の天城を見た人が多く、逆に『好きな人』が映ったという報告を耳にする事はなかった。

 そして天城が保護されてからも雨の日にテレビを確認してみたが、マヨナカテレビには誰も映らなかった。しかし天城が映らなくなってからはまた好きな人が映った等の噂は少しだが耳にした。

 

 これらの情報から間違いなくマヨナカテレビの内容の違いにはなんらかの法則が存在する。

 だがその法則を見つける為のピースが全然揃っていないというのが現状だ。

 可能性としては天城も他の人達同様に向こうの世界に行っていた可能性だ。

 だがそれでは何故彼女だけ無事にこちらに戻ってこれたのだろうか? そこも謎だ。

 

「あ、白野~!」

 

 考え事をしていると後ろから声を掛けられて振り返る。

 千枝が大きく手を振っていた。その隣には以前彼女と一緒に居た男子生徒の二人と天城も一緒だった。

 

「よう千枝、どうしたんだ?」

 

「ほら、前に転校生を紹介するって言ったでしょ。色々立て込んでたのが解決したから紹介しようと思ってね。こっちが今年転校してきた鳴上悠(なるかみ ゆう)君。で、こっちが一年の時に越して来た花村」

 

「おぉい里中さん! 鳴上に比べて俺の自己紹介がぞんざい過ぎませんかねぇ!?」

 

「ナイスツッコミ」

 

 花村と呼ばれた表情豊な男子生徒にサムズアップしてそう答える。

 

「お、おう。意外とノリがいい? というか感情があまり表情に出ない感じが鳴上に似てる奴だな。ま、いいか。俺は花村陽介(はなむら ようすけ)。よろしくな」

 

「鳴上悠、よろしく」

 

「自分は久須美白野、よろしく二人とも」

 

 二人に手を差し出してそれぞれと握手する。

 それから五人で登校しながらお互いの事を軽く紹介し合う。

 花村はなんとあのジュネスの店長の息子さんだった。もっとも、それを千枝が伝えると花村はなんとも複雑そうな表情をさせたのであまりその辺りの事は言わない方がいいだろう。千枝にもそれとなく注意しておいた。

 

 鳴上は家庭の事情で一年だけこっちで暮らす事になり今は刑事である叔父の家で一緒に暮らしているらしい。叔父さんの家には娘が居るらしく鳴上も一人っ子だからか年の離れた妹の様な存在が出来て嬉しいと語っていた。

 

「そう言えば天城は体調は大丈夫なのか? 一週間近く休んでたけど」

 

「うん、もう大丈夫。心配してくれてありがとう久須美君」

 

「なら良かったけど……なんか千枝と天城、雰囲気変わったか?」

 

 なんとなく二人の雰囲気が以前見かけた時と違うような気がして訊ねる。

 

「う~んまあね。なんというか、男子的表現をするなら川原で殴り合った、的な?」

 

「千枝、私達女の子だよ。せめて平手の応酬とかの方がいいんじゃない?」

 

「いや同じ意味だから」

 

 天城の天然なのかボケなのか分からない返答に千枝がツッコミを入れる。やっぱ雰囲気、特に天城の雰囲気が変わった気がする。良い意味で。

 

「つまりお互いになんか抱えてた物を吐き出したようなものか。いいんじゃないか? 親友なんだから喧嘩の一つもするだろ」

 

「おっ。さっすがの理解力だね委員長」

 

「委員長やめい」

 

 ははは、と皆で笑い合う。そんな感じで会話が弾んでいる内にクラスの前に来たので四人と別れて授業を受け、その日はそのまま帰宅した。

 

 四月ももう終わりだ。

 できればもう事件が起きない事を祈りつつ、就寝した。

 

 

 

 

「マヨナカテレビってなんなんだろうね」

 

 ジュネスの屋上のフードコート。

 そこにあるテーブルの一つにそれぞれ買ったメニューを並べて食べながら、天城雪子、里中千枝、花村陽介、鳴上悠の四人が話し合っていた。

 

「向こうの世界に送られたらテレビの内容が変わったけど、あんま参考にならないよねぇ」

 

 最初に疑問を口にした雪子の言葉に親友の千枝がストローを口に咥えながら答える。

 

「これまでの三件から、マヨナカテレビに映っている人がテレビに入れられるのは間違いない。そしてテレビの内容が変わった時にはもうテレビの中に入れられたと思っていいだろう」

 

 千枝の言葉に悠が改めて今分かっている情報を述べる。

 

「にしても犯人の野郎許せねえ。山野アナ、小西先輩に続いて天城と立て続けに三連続だぜ。絶対に調子に乗ってやがる」

 

「テレビに入れるだけで証拠が残らない完全犯罪だもんね。私達もクマ君っていう向こうの世界からこっちに戻してくれる存在と出会えなかったら今頃死んじゃってただろうし、性質悪いよね」

 

 陽介と千枝が忌々しげに眉を顰めながらポテトを口に放る。

 

 彼等が白野と同じテレビに入る能力に目覚めたのは悠が引っ越して来てすぐの事であった。

 マヨナカテレビを見ていた悠がテレビに触れた際に腕がテレビに入り込んだのだ。

 その翌日に彼が千枝と陽介にその事を話し、ジュネスの家電売り場の大型テレビで試した際に軽くパニックを起こして誤ってテレビの中に入ってしまった。

 白野が始めて降り立った場所と似たような場所に出た彼等はそこで自らをクマと名乗る『中身が無い』着ぐるみ

と遭遇し、クマによって現実世界に戻された。

 

 その後小西咲が殺害され、その特殊な殺され方からテレビの世界が関係していると判断した陽介と悠がもう一度テレビの向こうに赴く。

 クマを供とし、そこで悠は始めての戦闘を経験しペルソナ能力に目覚めた。

 陽介はテレビの世界の影響で現れた『抑圧されたもう一人自分』が現れ、彼から放たれる『本音』に苛まれ彼を拒絶してしまう。

 結果、もう一人の陽介は『自我』を得て化け物となって暴走し本体である陽介を殺そうとする。

 これを悠が退治し、陽介は悠の説得もあり改めてもう一人の自分を受け入れる事で彼もペルソナ能力とテレビの世界に入る能力を得た。

 

 千枝と雪子も陽介と同じで向こうの世界でもう一人の自分と向き合いペルソナ能力を得た。

 マヨナカテレビに映っていたドレス姿の雪子はもう一人の彼女であり、あの城は雪子の願望が形を成した場所であった。

 

「ねえ雪子、もう一回訊くけどテレビに入れられた時の事は覚えてないんだよね?」

 

「うん。気付いたら城のあの場所で、その前後の記憶がどうしても曖昧なの。でも家には居たと思う」

 

 向こうの世界に囚われていた結果か、雪子は事件当時の記憶の殆どを思い出せないでいた。

 しかし当時は宿泊していた山野アナの死についてマスコミが雪子の実家の天城旅館に取材やらなんやらで押し寄せていた為、彼女自身あまり外出はしていなかった。

 

「天城屋の従業員の犯行の可能性は?」

 

「どうだろう。私や山野アナなら兎も角、小西先輩が狙われる動機が想像できないかな」

 

「そもそも殺害現場すら存在しないから犯行の瞬間なんてそれこそテレビに入れる瞬間でもないと気付けないよな。くっそ三人供女性って事と事件当時にこの町に居たくらいしか接点が無いぞ」

 

 頭を掻きながら盛大に溜息を吐く陽介。

 他のみんなも似たような顔で軽く溜息を吐く。

 

「とりあえずマヨナカテレビのチェックだね。また誰か映ったらその人物を監視って事でOK?」

 

 千枝が最後に締める感じに告げると全員が神妙な顔で頷いた。

 特に悠は内心で彼女達に伝えていない情報について頭を悩ませていた。

 

(ベルベットルーム、そこの主であるイゴールが言っていた『もう一人の客』が気になる。誰なのか訊いても教えてくれなかった。ただ、今回の事件の犯人ではないとだけ言っていたな)

 

 悠もまた白野と同じベルベットルームを訪れた客であり『正規』のワイルド能力の保有者であった。

 

(いつか出会えるといいんだが)

 

 悠はそこで一旦考える事を止める。

 その後は学生らしい話題で彼等は談笑に花を咲かせてフードコートを後にした。

 

 彼等の話を『盗み聞いていた人物』に気付かないまま……。

 




ようやく四月が終わった。
さあ五月だ。ようやくあの子を出せる。

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