#17 prologue
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yumi ユミ 本名、福沢祐巳。
XXXX年四月八日に1stシングル「You&me」でソロ歌手としてデビュー。所属事務所はユニゾンプロダクション。レーベルもかの会社が兼ねている。
表題曲は大手化粧品メーカーのシャンプーのCMに起用される。
新人としては異例の大抜擢だった。そこには事務所の若きやり手社長高岡氏の影響もあったかもしれない。
この時、本人の公共の場への露出はまだだったものの、その心地好い歌声と音色は評判を呼び、関係各所に問い合わせが殺到する。
しかし、詳しい情報は何処にもない。
ライブハウスやインディーズで活動していたわけでも、タレントとして芸能界に所属していたわけでもなかったから。
少し前まではただの女子高生だった彼女。
その周囲には、既に存在感を示していたとしても。
どこに隠れていたのか、それはまさしくダークホースだった。
それは、世間が俄かに沸き立つ前触れ、前兆。
そんな彼女の待ちに待ったお披露目の日。
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…………
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…
..
午後五時。
人の波がうごめき、まるで潮騒のような喧騒が辺りを揺さぶる——
そんな茜色の時刻。
帰宅の途に着く学生や買い物帰りの主婦。
営業帰りのサラリーマンに、飲み会へと向かう若者たち。
行き交う人々は、それぞれの目的へと足を動かし前を向く。
東京都心のいつもの風景。
待ち合わせに、動かぬ者は居ても、上を見上げる者はいない。
そんな彼らの頭上——
商業ビルの壁面にある大型街頭ビジョンが切り替わった。
普段は無意識に通り過ぎる『それ』——–。
然し、溢れる音はいつになく鮮明で。
不思議に思い、ふと振り仰ぐ。
表れたのは、純白の少女。
その美しさに目を留める。
——誰だ?…と。
そして、覚えのある旋律。
画面の少女が微笑む。
息を吸い込んだ——。
それを見とめた——次の瞬間………
パァ と。
まず届いたのは、透き通った声だった。
唐突な出来事に理解が及ぶ前。
気がつくと視界も変わっていた。
その背景が——
すぐそこの、エントランスへと。
純真な音。——画面からじゃない…生の…。
ハッとする。
今、ここに、いる——と。
始めに動き出したのは誰だっただろうか。
皆が向かっていた。同じ方向へ——。
それが自然であるかのように。
引き寄せられて——。
ユミ。
舞い降りた天使が
見つかった———、瞬間だった。
それは、四月十五日。CDリリースと同日日。
誕生日も間近に控えた、祐巳、若干十八歳、春の出来事である——。
始まりました。
過去編よりシリアス度が増します。
苦手な方には申し訳ありません。
祐巳の誕生日は四月ということ以外わからないのですが、四月一日はありえなかったことに気づいて修正いたしました…。