マリア様がみてる~"アポロンの薔薇"~   作:穂高

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#29 動く、歯車

(1)

 

祐巳が、貶められた。それも私が原因で。

そんなこと許せなかった。自分も、そしてあの下衆な記事に関わる全てのものが。怒りに我を失っていたと言われればそうかもしれない。

けど、私にとって当然と思った行動は、祐巳の拒絶という結果をもたらした。

 

祐巳に突き放されてから三日ほどは、情けないことにその日々をどう過ごしたのか自分自身覚えていない。

けれど、メディアを通して見た祐巳は、辛そうで、そんなものを目にしておいて自分が腑抜けている場合ではなかった。

優さんにも言われた。「祐巳ちゃんがなぜさっちゃんを頼りたいと思えなかったのか、ちゃんと考えてみなよ」と。

私は、やり方を間違えたのだ。祐巳は、誰かの犠牲の上に成り立つ幸せなど望むはずがなかったのに。

 

それからは、精力的に動いた。

冷静に私の立場で取れる最良の手段を辿るために。

取り組む課題は山ほどあるから、没頭していれば、幾分か気持ちも楽だった。それでもふと思い出すと哀しみに囚われそうになるけれど。

 

 

小笠原家の邸宅。

 

——高岡からの電話を切った祥子は、いつの間にやら思考の淵に沈んでいた頭を切り替えて、部屋を出る。

 

向かうのは、父の書斎。

 

これから、祥子にとっての第一関門が待っているから——。

 

 

夕方の淡く滲むような長い日差しが窓から差し込む部屋の中。

ニューヨークへの出張からやっと戻った父と数週間ぶりに顔を見える。

彼と話す機会を待ちに待っていた。

 

緊張した面持ちで机を挟んで向かい合う。

父も祥子の様子から何かを察したようで、普段の娘に対する甘い態度はなりを潜めている。

 

「…お父さま、お願いしたいことがあるのです」

 

静寂が支配する中、祥子が話を切り出した。

 

「——言ってみなさい。私が聞ける範囲なら叶えよう」

 

少し考える素振りをしながら、先を促す父。

 

おそらく、許可を得られるかは私の説得次第だろう。

これといった理由がなければ却下されるのがオチである。

 

「テレビ局のスポンサーになっている件なのですが…、あちら側の営業との交渉を私に任せていただけないでしょうか」

 

単刀直入に私の希望を打ち明ける。

下手に焦らすつもりはない。

最短で了承を得て、ことを進めたいのだから。

 

「…何をする気なのかな。交渉といっても、定期的に来るあちらを適当に相手にするだけだよ。継続するかさらに援助をするか手を引くかということは、視聴率や業績を見て、予めこちら側で決めている」

 

それは、分かっている。

今の担当の者も、上からの指示に従って対応しているだけ。

だからこそ、その役割を私が担っても問題がないはず。

ただ、私は自分の意思で動くことも認めてもらいたい。

つまり、ちゃんと実質的な力も得たいのである。

 

「局の改善を促す交渉を考えています。より良い運営によって、番組の質が向上されれば、小笠原の宣伝もより効果的に行えますし、我々の利益に繋がります」

 

小笠原グループのため。そこを強調する。私を使うメリットを。

 

「…具体的な見通しでもあるのか?万が一にもこちらにリスクがあるようなものだと、そう簡単に頷くことはできないよ」

 

何をするかまでは、あまりに私欲に寄っていると取られても困るので、深く追求されない限り、こちらから言うつもりはない。

 

「いえ、目的が果たされない事はあっても、現状維持になるだけでしょう」

 

一方の質問にしか答えていないけれど、これも本当のことである。

損失の懸念もなくリターンを得られるかもとあれば、乗らない手はないだろう。

私の言葉を信用してもらえるなら、なのだけど。

 

「ふっ。どんな要求を提案するつもりか知らないけど、提供もスポンサーもうちだけではない以上、無理な意見は通らないのは分かるよね」

 

もちろん理解している。勝算がなければこうして父に進言もできない。

 

「…ユニゾンプロダクションの社長と協力いたしますので、上手くいく可能性が高いと思われます」

 

本当は自分一人の力量でなんとかしたいところなのだけど、現状では仕方ない。確実性を上げるためにも、彼と手を結ぶのが最善だった。

 

「…高岡くんか。——なるほど、なんとなく意図は分かったよ」

 

「………」

 

気づかれてしまったかしら。彼とその会社そして私。

父ならば、そこから容易に連想できるだろう。

私の彼女への想いの強さを知っているし、父も彼女に好印象を持っている。だから、たとえ思い至ったとしても黙認するのではないかとも期待している。

 

「・・・——まあ、こちらが不利益を被らないなら…いいだろう。最近益々仕事に励んでいるようだし、今回は祥子に任せてみようかな」

 

「感謝いたします。お父さま」

 

 

これで、ようやく動けるわ——。

 

 

 

(2)

 

祐巳にしばらくの休暇を与えてから三日目の朝。

 

「…どうしたんだ?ユミ」

 

祐巳がオフィスに顔を出して、俺との面会を求めてきた。

時間はまだ朝早くて、この後の予定までにも余裕はあったため、こうして社長室で顔を合わせている。

 

「あの、実は今って、休んでる場合じゃないですよね?」

 

祐巳の指摘。それはその通りで、3rdシングルは十二月に出す予定。

だからそろそろ本格的な準備に取り掛かる。本来なら、また祐巳に歌詞をかかせるつもりだったのだが、今の状態では無理だと判断して、その分の時間を彼女の休息に当てた。

 

——やむを得ず。

 

だと言うのに…、

これはいったい何が起きたんだ。

日に日に心が弱り、顔色も悪くなる祐巳、そんな彼女を心配して二週間ほどの長めの休みを与えた…はずだった。

なのになぜ彼女はここに来てるんだ。

 

「…ああ、でも今回は気にしなくていいぞ」

 

「あ、そうじゃないんです。気を使っているんではなくて、私の歌に関わることなら、私にやらせてもらいたくて!今日からまた頑張らせて下さいってお願いに来ました!」

 

手をぶんぶんと降って、慌てて俺の言葉を否定する。

そして、がばっと顔と膝がくっつくのではないかという勢いで頭を下げた彼女。

 

——歌への意欲を取り戻している。

休暇を与えたところで、本人の気持ちが蘇るかは分からなかった。

それが、まだ三日だぞ。ひと月も俺たちが神経をすり減らしたことがたった三日の休みで改善に向かったのか…。

祐巳にはいつも驚かされる。

 

「…3rdシングルのリリースは十二月の予定だけど…十一月に入る頃には完成させる必要があるよ。できる?」

 

「やります」

 

顔を上げて、言い切った瞳は、光を受けて、キラキラと輝いていた。

思わず目を細めて見てしまう。

本当に眩しいな。…祐巳がその気にさえなるのなら、俺は全力で手を貸すよ。

 

「わかった。じゃあ、活動再開だ」

 

 

 

(3)

 

「お待たせ致しました」

 

九月の中旬、祥子は小笠原のビルの応接室で、自分を、というより担当者を待つ男の前に姿を現した。

上質なスーツをキッチリと着こなし、一分の隙も見せぬよう、振る舞う。内心では緊張していようが、それを相手に晒すような失態はしない。

 

「っえ、担当が変わられたのですか?」

 

男が、祥子を目にした途端、多少驚いて尋ねてきた。

テレビ局の営業。毎回小笠原との交渉にはこの男がやってくる。

動揺している今の内に、優位に立てるような第一印象を抱かせたい。

 

「ええ、初めまして、小笠原祥子と申します。これからはより深い付き合いになると思いますので、どうかよろしくお願い致しますね」

 

姿勢を正し、男をしっかりと見据える。

 

「…小笠原…祥子…。まさか…!小笠原家のご息女ですか!!?」

 

紹介を聞いた相手方は驚愕の表情で私を見る。

なぜ、こんなところに社長令嬢が?とでも言いたいのだろう。

 

「まあ、その通りですがあまりお気になさらず。この場でなすべきことは決まっているのですから」

 

とは言いつつ、祥子自身、自分が相手より数段上の立場にいるという風に思われるのは望ましい。例え、今の祥子にそれほどまで自由に出来る権力などないとしても。

 

「で、では、いつも通り。報告と提案をさせて頂きますので、どうか、上の方々によろしくお伝えください」

 

なすべきことはあるが、それはいつも通りとはいかない。

今までは、この場などただの仲介としての役割しか担っていなかった。だけど——。

 

「いえ、その必要はございません。これからは、あなた方との交渉は私に一切を委任して頂いておりますので、私一人で完結出来ますわ」

 

そしてにっこりと微笑む。

 

「というよりも、私の話をしっかりそちらの幹部の方々にお伝え下さい」

 

そう、私が相手をしたいのもこの男ではない。

さっさと上との交渉の場を用意して頂かなくては——。

 

 

 

(4)

 

十月に入り、大学も秋学期が開講した。

 

祐巳の歌に対する想いは前向きで、むしろ揺るぎないものへと昇華しつつある。だけれども、週刊誌が発端の例の噂は未だ健在で、それ故に周囲の警戒と心配も解けていない。

 

「じゃあ、祐巳ちゃん。気をつけてね。いってらっしゃい」

 

「うん、ありがとう。行ってきます」

 

ほとぼりが冷めるまで、行きは母に、帰りはマネージャーにと、送迎による通学が行われることとなった。

その事に祐巳は負い目を感じてしまうのだけど、送迎程度の手間など一人で行動させる事による不安に気を揉むよりは余程マシと言われ大人しく従っている。それに祐巳自身、あれ以来一人で外に出るということがほぼ無かった為に強がってはいても怖いという思いも確かにあったのだ。

 

「——あ!祐巳来た!」

「おはよう。祐巳」

 

車を降りた先の正門付近には由乃と志摩子が私の到着を待ってくれている。

朝、家を出る際には必ず二人にメールすること。先日半ば強制的に二人に押し切られて決まったルール。破ればどうなるのか問うと、志摩子にはにっこりと無言の圧力をかけられ、由乃には、そしたら毎朝福沢家にまで迎えに行くわと言われた。

構内でもなるべく私を一人にしないための二人の配慮。でも…。

 

「おはよう。——あのね、有り難いんだけど、私の時間に無理に合わせたりは本当にしてないよね?」

 

「してないわよ。時間割りを確認したでしょ?初めの授業の開始は毎日一緒なのよ。手間なんて然程ないわ」

 

「そうね。…それに私は、これのおかげで毎朝三人で顔を合わせられるのが嬉しいのよね」

 

取る予定の講義。祐巳は一人で決めたから、二人と時間を合わせようなどとはしていない。まあ、なるべく午後は空けたいということもあって、だいたいは一限開始。それは前期から変わらない。二人もそういう事情は知っている。本当にたまたまだろうか…?

何となく腑に落ちずに歩いていると、すぐに祐巳の授業の教室の前へと到着する。

 

「…離れるのが、心配ね」

 

頬に手を当て首を傾げる志摩子。その瞳は憂いを帯びている。

なんというか…子ども扱いでは…。私はどうやら信用されていないらしい。

 

「もう、大丈夫だよ志摩子」

 

さすがに、構内の、しかも授業中に何かあるとは思えない。

それに、この半年でそれなりに顔を見知った人たちしかいないのだから。

 

「祐巳、何かあったらすぐに教えてね。私たちが駆けつけるんだから!」

 

由乃もかあ…。

この二人は私の保護者だろうか。…ううん違う、同い年の親友…なんなら私が一番生まれが早い。

 

「それと、お昼は一緒に食べましょう!私たちが祐巳の方へ行くから、講義が終わったらそのまま待ってんのよ!」

 

けど、正直に言ってしまえば、二人ほど心強いものはないし、一緒に過ごす時間が増えるのも嬉しいことこの上ない。

今かけてしまっている気苦労は、いずれ必ず近いうちに払って見せなくては。こんなにも私を想ってくれる人たちのためにも。

 

「ふふ、わかってるよ。ありがとう」

 

私は、二人への感謝が少しでも伝わるように、心からの言葉を贈る。

 

「ごめん!ちょっと遅かったかな〜!」

 

二人に目を向けていると、すぐ近くから聞き馴染みの声がした。

この声は、環だ。彼女もどうやら祐巳と同じ講義を受けるみたいだけど、待ち合わせてもないのに何を謝っているんだろう。

 

「あ、来たみたいね」

 

ん?

 

「では環さん、祐巳をお願いするわ」

 

んんん?

 

「うん、任せて!志摩子さん」

 

え。

 

「祐巳、教室の平穏は私が守ってみせるわ!安心してね」

 

……環も、どうやら、私の保護者に加わっていたようだった。

 

 

 

 

こうして私の側には常に人がいて、そのお陰なのかそれとも元々そこまで気にする必要もなかったのか、休み明け一日目の大学は平穏無事に過ぎていった。

それどころか、お昼も四人でわいわいと食べられて楽しかった。こんな毎日が続くなら幸せだなぁと思う。祐巳は、晴れて高く見える空の中ほどを見つめながら、ぼーと気持ち良く歩いていたのだが、そろそろこの時間も終わりかと思い、ぴったりと同じ歩幅で進む隣の友人に声をかけた。

 

「タマちゃん、見送りはここまでで十分だよ」

 

もう、マネージャーが待つ駐車場までは目と鼻の先。

ここまで付き添ってくれているのだって申し訳ないほどなのだ。

環はまだ次の講義も残っている。

けれども、でもな〜となかなか離れようとはしない彼女。

 

「…たしか、次の教授って遅刻者は閉め出すんじゃなかった?」

 

「…ゔ、そうだった……」

 

「ほら、早く…私のせいで講義を受けられないなんてなったら……」

 

「ああっ、分かったから祐巳!そんな悲しそうな顔をしないでよ!」

 

そんなつもりはなかったけど、言いながら現実になる様を想像してしまったから、それが顔に出ていたのかもしれない。

 

「…じゃあ、行くけど、祐巳くれぐれも気をつけてね!ていうか、ここから車までダッシュよ!私も教室まで走って行くわ!いい?——せーの!」

 

へ…は…?

 

「………」

 

「——まーたあーしたーー………」

 

祐巳が呆けている間に、環が行ってしまった。

片手を上げたまま遠くなる姿と声。

…環は、私も一緒に駆け出したと思ってるんだろうけど、さすがに展開が早くてついて行けなかった。

 

「…。ははっ、もうタマちゃんてば。…また明日」

 

祐巳はその小さくなった背中に向かい一言告げると、踵を返して、足早に車の方へと向かう。走りはしないが、彼女の望みに叶うようなるべく急いで。

——そして、マネージャーの車が見えてきた、その時

 

「———祐巳っ!」

 

手前の物かげから急に人が飛び出してきた。

祐巳は予期せぬことだったために驚いて足が止まる。

 

びっ…くりしたぁ。

 

一瞬困惑したもののそこにいたのは、よく見覚えのある顔だった。

三人とも。アリサ…玲奈、優子。とりあえず、ほっとひと息つく。

 

「…どうしたの?三人とも」

 

今日は何度か授業が被っていたし、用があるならその時にでも言ってくれれば良かったのに。こんなところでわざわざ待つなんてどうしたんだろう。

 

「…あなたに、尋ねたいことがあるの」

 

「…うん?」

 

そこで、少し空気が張りついたような気がした。

 

 

 

「……私、〇〇君のことが大好きなの」

 

その言葉に、祐巳は目を見開き、固まる。

まさか…。

 

「あなたの恋人は、彼なの?!」

 

——ああ、週刊誌の…ことだ…。

そして、その鋭く細められた目を見て気づいてしまった。

自分に対し、悪い方に強い感情を向けられていることを。

少し身が竦む。

こんな風に面と向かって言われたのは初めてだから。

それも、関わりのある人に…。

 

「どうなの!?答えて!!」

 

「…誤解だよ。そもそも私に恋人はいないから」

 

なるべく冷静に、事実を端的に述べる。

だってそうとしか言いようがない。

どうして、皆んな、あんな裏のない記事を簡単に信じてしまうんだろう。その内風化する、そう言われた。けれど、どうにか嘘だと分かってもらえる方法はないのかな…。

 

…でも、私の言葉が彼女たちの琴線に触れてしまったようだった。

 

「〜〜!!馬鹿にしないで!!」

 

「じゃあ、あなたのそのネックレスは何なのよ!どうせ分からないと思って、嘘を吐くなんて最低ね!!」

 

ずんっと

大股でこちらに踏み出してきたため、一気に距離がなくなる。

 

「——気に、障るのよ!」

 

——ぶちッ……と……

 

何かが千切れた、感覚。

 

続いて、地面と擦れる微かな音、首元に伸びる人の腕。

 

興奮に上擦る息づかいと、激情に歪む顔。その両脇で青ざめる二つの顔。

分かりやすい三つの表情。それは、本来私の特権なのかもしれない。けれど、今の私はきっと、顔には何も浮かべていない。

ただ、その光景を、静かに、受け止めていた。

無———。でも、次の瞬間には爆ぜそうな何かが身のうちに巣食っているのを感じる。

 

「——っ!ユミさん!!」

 

視界の奥から、私のマネージャーが走ってくるのが見えた。

 

目の前の三人は、急に慌て出してこの場から去ろうとする。

 

祐巳は、それらを全く意に介さず、しゃがみ込み足元の『それ』を優しく掬い上げる。

そっと丁寧に、掌で包み込んで、立ち上がる。

 

そこでようやく、遅ればせながら首に痛みを感じた。

引きちぎられた時に皮膚に負担がかかっていたのだろう。

 

私を見て、なぜか狼狽えた三人。

 

ああ、そういえば、誤解を解かなければね。

 

「——これが、そんな安っぽいものなわけ…ないでしょう?」

 

瞳から頬に止め処なく流れる液体。

それなのに、視界も頭も冴えていて、声も良く通った。

手の中の感覚だけを意識して、その愛しさに悠然と微笑む。

当然の事実、伝わらなければおかしいのだから。

 

 

すると、時間が止まったかのように動かない彼女たちを不思議に思い、目を合わせる。一人一人。ハッとして喉奥から絞り出された「ごめんなさい」という言葉。そのまま、彼女たちは祐巳の視界から消えていった。

 

…思い込みは、解けたのかな…?

 

それなら、良かった。という充足感と安堵とともに、膝から力が抜け落ち、その場にへたり込んでしまう。

 

そこでやっと、祐巳の頭が目まぐるしく動き出す。

先ほどまで溜めていたものが、身体全体に巡り出した。

 

——私は……このまま何もせずに、お姉さまとの絆を汚されたくない。これが原因で人に負の感情を抱かせるなんて、あってはならない。これは…そんな風に扱われるものじゃない。…これは…幸福の象徴なんだから…!

 

「——っユミさん!すみません…私がもっと早く気づいて止めていれば…」

 

マネージャーが祐巳の瞳から溢れる熱い滴を目にして、狼狽えている。…でも違う。これは、込み上げる闘志だから。

祐巳は服の袖で、さっと目元を拭った。溢れる熱気をこれ以上は零さないように。

 

「いえ、おかげでやっと、やるべき事が見えました——」

 

腕を避けた後、そこにある祐巳の顔は凛然として美しく、

一人これを独占したマネージャーは、しばしこの光景にのまれたのであった——。

 






更新が少し遅くなってしまい、待っていて下さった方には申し訳ありませんでした。


話は変わりますが、私、マリみてに限らず逆行ジャンルが大好きなんですよね…。ですので、その内この物語からの逆行ものを書くかもしれません。その場合祐巳が悪オチしますので、そういうものが好きな方は、その際活動報告は致しますので、r18かチラ裏の方をご覧ください。
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