調査兵団亡霊部隊   作:soliquid

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こんばんは。
訓練兵団104期はみんな好きなsoliquidです。

脇を固めるキャラ達にも、主人公組に負けない魅力があり、
たくさん掘り下げられる可能性を感じます。

私が書いているこの作品のオリジナルキャラクター3人組も、
何かしら「色」が付けばいいなぁ、と思います。


続きになります。

何かの折にお読みいただければ幸いです。


第1話 北部調査

846年、ウォール・マリア奪還作戦が決行された。大多数の部隊はシガンシナ区にある南側に向けられたが、調査兵団は小規模ながら北部はじめその他の地域にも派兵を行った。この記録は公にはされていないが、派兵の目的は以下のようである――

 

1. 現状での巨人の生息域を調査

2. 軍事施設や街道の破損状況を調査

3. 鉱産資源・天然資源の発見と流通経路の作成、人類の反撃拠点の模索

 

 

『巨人は南部から現れることが多い』

 

これは兵団に所属するものなら誰でも知っていることだ。そのため、「難民の口減らし」という側面もあるウォール・マリア奪還作戦に、調査兵団の精鋭は配備できなかったし、配備する必要性も無かった。キース団長やエルヴィンが率いる、民間人(民兵)を含む大多数は南征部隊へ配備し、形だけの奪還作戦の裏で、事実、調査兵団は名前の通り「調査」を行っていたのだ。

 

しかし、調査兵団自体そう多くなく、人員を割けるものではない。キースやエルヴィンなど、いわゆる調査兵団の「顔」になっている者は南征した。一方、南部以外への派兵は人員を駐屯兵団や憲兵団からも補填し、臨時で混成部隊を結成することになった。

 

ベルンハルト・フォルカーは北征部隊の分隊長、ヨルク・ゼクレスは同部隊の班長に任命された。部隊とは聞こえがいいが、実質三十人程度しかおらず、分隊長とは言えベルンハルトがこの隊を率いることになった。逆を言えば、それくらい小規模に、極秘裏に行われたのだ。

 

任務は調査、兼索敵、討伐――要は、作戦のすべてを遂行する。もとより人数を多く割けないので、当然兵員一人一人に柔軟な対応が求められる。その点、多目的な任務をこなすことに評価が高いベルンハルトとヨルクは適任であった。

 

旧街道沿いに少しずつ拠点を設営する。マリア領内の旧街や旧村の廃屋などに水や保存食を『酵母』(食料の腐敗や劣化をかなり遅くする)と一緒に配置する。その後、次の旧街や旧村まで移動する。これを往復七日から十日かけて行う。持ち出せる食料や水にも限度があるため、これ以上の長期に渡る作戦は難しかった。

 

また、通常の壁外調査とは異なり少人数で決行するため、部隊を散開できない。常に同じ部隊で行動し、拠点に帰ってくる。その繰り返しであった。

 

しかし、この作戦であれば、地道ではあるものの、食料と水を確保しつつ、マリア領内の破損状況、森や川などの自然環境の推移が分かり、後の反撃作戦、拠点の基盤を速やかに構築できる――――

 

 

そのはずであった。

 

 

 

二日目。

 

 

ローゼの北壁区から出発し、三つめの旧村に拠点を設営し、そこから東側の調査を行った。目的とする調査を一通り終えて帰路に就いたとき、三体の巨人と遭遇した。

 

いや、遭遇したというよりは、こちら側に走って向かって来たという方が正しいだろう。どうやってかは知らないが、やはりと言うべきか。巨人達は人間の存在を確実に感知している。

 

北側の『巨大樹の森』と呼ばれる巨木の大森林地帯には、往路終盤の四日目か五日目にかけてたどり着く予定であった。そこであれば立体機動を余すところ無く発揮した戦闘も可能であるが、平地での戦闘は極力避けねばならない。帰路ということも幸いした。旧村に戻り、建物の屋根に登り迎撃態勢を取る。

 

「分かっているとは思うが、十五メートル級が一体!七メートル級が二体だ!焦るな!丁寧に誘導してヤツらを殲滅する!」

ベルンハルトが指揮を執る。

 

「おい、駐屯やら憲兵から来たの!無理はすんなよ!!ただし、ガス切れだけは勘弁な!!」

眼鏡をかけ直し、ヨルクが全員に檄を飛ばす。その言葉に反応し、ジンはじめ駐屯兵団や憲兵団から補充された練度の高くない兵員は、予備のボンベを左右二個ずつ付けて待機する。

 

 

三体の巨人は、旧村に誘導されるまでかなり走らされていた。最初に接触したとき程の速さは無くなっていた。が、表情が変わらないので、疲れているのかそうでないのかの判断は付けにくい。

 

「……各員、散開ッ!!陽動と攻撃に別れよ!」

 

ベルンハルトの号令と共に戦闘が始まった。兵士たちは訓練通りに散開する。

 

屋根の上であるならばこちら側も不利にはならない。ヨルクが指揮する陽動班は、その名の通り巨人達を陽動するのが役目だ。もっとも危ない役回りで、ワイヤーやガスの消費も激しい。

 

しかし、ヨルク達陽動班はあまり動きを見せない。屋根の上でじっと巨人達を待っている。十五メートル級が陽動班の兵士に向かってぬうっと手を伸ばした。

 

「……今だ!投擲ッ!!」

 

ヨルクのかけ声と共に、兵士達が、手のひらほどの麻袋を巨人の顔めがけて何個も投げつける。中には砂や泥、鳥の羽や木くずが入っている。屋根に登った際にあらかじめ封を切ったり切れ込みを入れておいたため、巨人の顔面に当たった衝撃で袋が破け、そこから内容物が飛散する。

 

本来であれば眼球およびその付近を損傷させる方が確実性は高い。しかし巨人の顔の至近距離まで近づかなければならないため、リスクも非常に高い。それは兵員各自の技量に拠るところが大きく、そういった兵士を何らかの事態で失った場合、隊が壊滅する確率は高い。

 

ならば、ということで、ヨルクが考えたのがこの戦法である。傷を付けても回復するのなら、傷を付けなければいい。視界さえ奪えば、それでいい。

 

この戦法も成功率は高いとはいえない。失敗した場合は、決死の覚悟で視力を奪いに行かねばならない。陽動班はすぐさまブレードを抜き双手に構える。しかし――今回はうまくいった。巨人は急に視界を遮られ、手で目を覆い、砂や泥を払おうとする。

 

その瞬間を見逃さず、攻撃班の兵士が二人ずつ、立体機動で巨人の足下を交差する。それぞれの足の健を切り機動力を奪う。

 

ズゥゥゥ………ン

 

巨人が倒れた。その瞬間、砂袋を投げ身軽になった陽動班が今度は狙撃班となり、立体機動で移動し、うなじを削いでとどめを刺す。そしてすぐに立体機動で建物の上に離脱。

 

巨人が蒸気と共に消えてゆく。他の班も討伐に成功したようだ。ベルンハルト隊は精鋭部隊では無いにせよ、調査兵団に所属している以上このくらいの技量はある。

 

『エルヴィンの部隊のようにはいかないが――』

ベルンハルトは少し自重し、しかしまたいつもの顔に戻る。

 

「作戦終了!総員警戒しつつ集合!兵員および装備の損傷を確認する!!」

ベルンハルトの号令で全員が集まり、点呼と確認をする。幸い、この日の巨人は三体以上現れず、ベルンハルトおよびヨルクの指示により討伐することができた。負傷者が数名出たものの、死者を出さず、こんなことは「運が良かった」以外の言葉では形容できない。

 

今回討伐した巨人は通常種であったようだ。しかしこれが奇行種であった場合、このような作戦は意味を為さないだろう。

 

兵員の疲弊もあり、ここからの調査は慎重にすべきだ、とベルンハルトは判断した。以降この旧村を中心に進行の速度を緩め、「調査できる限りの範囲で」調査する方針に切り替えた。調査も重要であるが、生還することに意味がある。生還しなければ、どんな些細な調査結果も意味をなさないからだ。今回のように人数が少なければ、尚更だ。

 

ベルンハルトもヨルクも、そのことを充分に分かっていた。人数が多くない部隊であったことも幸いし、毎晩全員で情報を共有し、生還した者が誰であっても兵団に情報を伝達できるような体制を整えた。

 

 

この日以降、定期的に巨人が出現するようになった。やはり人間の集団を感知する何らかのカラクリがありそうだが――その解明はそういう専門分野に任せよう。ベルンハルト隊の仕事は、あくまで『人類の反撃拠点作りのための調査』なのだから。

 

できる限りの調査を行う。主には、マリア陥落以前の軍事施設や街道が使えるかどうかなど。その他、山や川、耕作跡地、動植物などの自然環境の情報も。そうやって可能な限り情報を得る。その中で巨人に出会ったら、建造物や樹木が存在する箇所までおびき寄せ、そこで戦闘する。

 

そんな日が三日ほど続いた。

 

 




●あとがき

奪還作戦と同時に行われた北部調査作戦です。この話から二話くらいかけて、ベルンハルト隊が散り散りになっていきます。

作中の砂袋は、目つぶしです。立体機動やブレードの練度がミカサやリヴァイのように著しく高くない兵士でもできるような……みたいな感じです。殺せなくても、「投擲」という攻撃は、単純かつ効果的な戦法かなぁ、と。猿の巨人やクリスタ(←結婚しよ)も馬やら石ころやら投げていましたしねw

「黙々と巨人を殺す」みたいな、ひたすら地味な戦闘描写でした。ヒーローやヒロインが出てこないと、こうまで地味になるんですねw

お読みいただき、ありがとうございました!


●次回予告

出発前の会話。
エルヴィンの苦悩と覚悟。

ベルンハルト隊は帰路に就いた。
その際また巨人に遭遇して
果たして逃げ切れるのだろうか!?(茶番)

第2話 迷走 疾走(仮題)
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