調査兵団亡霊部隊   作:soliquid

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みなさまこんばんは。soliquidです。
何となくですが、私が書いているssは、

「ニュータイプが出てこない(=富野監督ではない)ガンダム」

みたいな感じがします。でも主人公ズがモブっぽい性能。
もう少しプロット段階で強くすれば良かった。

竹細工をしたり袋を投げたり、なんかこう、もうちょっと……ねぇ。

でも、きっと、調査とか真面目にやってると思う。
ほら、測量とか、軍備施設の損壊具合を調べたり……ね。ね!

必ずしも全員が戦闘向きでなくともいいのかなぁ。と思ったり。
「調査」兵団なんだし。


あと、今回読み返すと、ジンは女の子にしても良かったかもしれない(錯乱


続きになります。

何かの折にお読みいただければ幸いです。


第2話 敗走 迷走

『ベルンハルト、君には大役を押し付けてしまった。済まない』

 

作戦決行より四日前、エルヴィンがそんな風に声をかけた。

 

エルヴィン・スミス――部下にあの「旋風のリヴァイ」や「偏執狂《パラノイア》のハンジ」など、一癖も二癖もある兵士を抱え、キース団長の信頼厚い調査兵団の切れ者。

 

『今回の南征――奪還作戦において、キース団長や私は、所詮民衆のプロパガンダに過ぎない。その裏で、「部隊」とも呼べない人数で危険な任務を――』

 

申し訳なさそうな顔でエルヴィンが話す。確かに、寄せ集めの三十人の急増部隊を壁の外に放り出し、できる限りの情報を集めよ――とは、「死んでこい」と言われるようなものだろう。しかし。

 

『……いや、エルヴィン、君こそ。今回の奪還作戦は――その、』

ベルンハルトは口ごもる。

 

『増えすぎた民衆の口減らしだ。仕方ない。そしてそれは、キース団長や私のような者が適任だ……』

エルヴィンがそう続ける。

 

『誰かを、何かを切り捨てなければ、人類は――』

今度はエルヴィンが口ごもる。少し肩が震えている。そう。今回の作戦では多くの民兵、いや、実質民間人の死を目の当たりにする。屍の山を、それでも進軍しなければならない恐怖と罪悪感は、どれほどのものだろうか。

 

『――だから、ベルンハルト。お前は、捨てるな。何があっても、捨てないでくれ……!それはきっと――お前にしかできない』

静かではあるが、数少ない同期の覚悟と願いを聞いた。そんな気がした。

 

 

 

 

五日目。

 

 

一回あたりの数は少ないものの、頻繁に巨人が出現するため、当初の予定――北部の「巨大樹の森」まではたどり着けなかった。兵員の疲弊も蓄積している。しかし、少しずつ拠点を進めつつ、調査・探索は遂行されていた。五日目以降は、進軍を逆行し、往路で調査できなかった範囲を調査しつつ、食料や水、予備の馬などを設営した拠点沿いに内地へ帰還する。

 

本作戦は、あくまで「調査」だ。死者や負傷者を極力出さないこと、情報をできるだけ持ち帰ること――それが求められる。

 

 

この日までに、ベルンハルト隊は四人の兵士を失った。重傷者が一人、軽傷者、七人。三十人の戦闘員、五人の補給兵から成るこの部隊で、まだ戦闘編隊が組めるだけの兵員が保てるのは奇跡に近かった。

 

死者重傷者を出してしまった戦闘は、『奇行種』と呼ばれる予測不能の巨人に遭遇した一回だけであった。帰路で遭遇する巨人がこの頻度の通常種だけであれば、ここに居るほとんどの兵が帰還できる可能性が見えた。

 

 

部隊は二日目の拠点である旧村に向かう帰路に就いた。

「ハチハチハチ陣形崩さず、各自警戒しつつ、前進――」

ヨルクの指示のもと、哨戒態勢のまま進軍する。今回進軍できた北限は、北部山岳地帯にさしかかる地域であった。かつて、ウォール・マリア陥落前は、多種多様な鉱産資源が取れ、農林業、酪農や牧畜も盛んであった。

 

 

巨人に襲われたであろう街や村をいくつも通った。しかし巨人は人間の捕食が目的であり、家屋の破壊が目的ではない。中に居る人間を捕食するために家屋を破壊することはあっても、住民の避難が完了した家屋まで破壊することはない。そのため、損壊は必ずしも激しいものでも無かった。

 

 

今にも動き出しそうな風車小屋。

 

黒ずんだ薪が置いてある炭焼き小屋。

 

牛や馬、豚。かつて家畜だったもの。半野生化しており、それぞれが群れを作っている姿も散見できた。

 

 

陥落から一年程度しか経たず、まだ人々の暮らしの跡が生々しく残る無人の廃墟群を見ると、この地を必ず奪還しようと各員が改めて心に――

 

 

静寂は悲鳴のような怒声で破られた。

 

 

「東2000!!巨人、来ます!!」

 

索敵に割り当てた兵士――ジン・サンドラーが声を張り上げた。

 

 

「そ、その数……五体ッ!?」

 

驚き、そして恐怖が混ざった声。目から離した望遠鏡を再度構えて確認をする。ジンは駐屯兵団からの補充兵員であり、元々が壁外監視や砲撃任務のため、特に広範囲を「視る」ことに長けていた。これまでも彼や駐屯兵団からの兵士の索敵は速く、正確であった。

 

 

――それゆえに

 

「ぁ……あ、新たに北2000!!二体発見!!!」

 

 

その報告は、絶望的であった。

 

 

巨人が七体。距離はおよそ2000メートル。見晴らしが良く平坦な分、早く発見ができたことだけは幸いだった。

 

「北の二体は!?我々に気づいているか?」

ベルンハルトがジンに訪ねる。

 

「まだです……が、時間の問題かと。しかし我々は南進します!このまま振り切るには丁度いいかと!」

 

「よし……」

ベルンハルトが大きく息を吸う。

 

「各員全速南進!しつつ――ハチハチハチ編成からヨンロク編成に散開ッ!走れえッ!!」

 

 

「「「了解ッ!!」」」

 

 

ベルンハルトの選択は、「戦闘」でも「討伐」でもなく――「逃走」であった。調査や哨戒のための八人一班ではなく、巨人の目標をなるべく分散させるため、一班を四から六人に分け、蛇行しつつ巨人の狙いを分散させ、可能であれば消耗させて撒くことが狙いだ。調査兵団の騎馬進軍隊形の一つである。

 

「ジン!北の二体は!?」

 

「……はっ!ま……まだ気付いて……いえ!気付きました!来ます!!」

 

「ちっ!仕方ない!一気に振り切る!!」

 

 

東からの五体の巨人は、いくつかの班に分かれた兵をめいめい追いかけ始めた。そこに意志の疎通は無いように見えた。北からの巨人も程なくしてやって来るだろう。

 

 

「最寄りの村までは!?」

 

「あと1000くらい……です!」

ジンの声が裏返る。

 

 

「よし!」

 

 

村にさえ着けば、建物や屋根で立体機動を用いた持久戦に持ち込める。村にさえ着けば。

 

ヨルクとジンの班を三体が追いかけ、ベルンハルトの班を追いかける一体、別の班を追いかける一体に分散させることができた――ようだ。少し離れているので目視はできないが、おそらく、追われていない班もあるはずだ。

 

 

          「ドォ……ン」

 

 

東から、「安全」を告げる緑色の信号弾が打ち上がった。それを見て、ヨルクは安堵した。戦闘を避けられた班は、最寄りではなく、その次の拠点に向かうように打ち合わせは済んでいる。

 

 

―最寄りの旧村で叩く。五体程度なら、まだ―

ヨルクは馬を走らせながらそう考えていると、右前方を走る兵士の様子がややおかしいことに気がついた。

 

 

「……ひっ……ひぃっ……」

 

 

ジンが少しパニックを起こしていた。顔が青ざめて、呼吸がうまくできていないようだ。

 

無理もない。元々が基本的に巨人と戦闘をしない駐屯兵団のうえ、毎日のように巨人を何体も相手にして――そして運悪くこうして追われている。分隊長であるベルンハルトや班長であるヨルクからすれば、情報を持ち帰ることが作戦の成功であるが、一兵卒であればそうもいかない。

 

 

「おおーい!駐屯の若いの!!」

ヨルクが馬を寄せつつ声をかける。

 

「はっ、はひっ……」

 

 

「いくつだっけかー!?」

 

 

「は……?に、三体、ですよぉ!さき、ほど、報告した……ひっ、通り……です!!」

 

落ち着かせるために確認してみたが、「五体」を「三体」と誤認している。少しでもパニックを解かないといけない。そう考えたヨルクはケラケラと笑いながらこう言った。

 

 

「……いや、そうじゃない!君の年齢だ!!いくつなんだ?」

 

 

「ふ、ふぇっ……!?」

 

 

ジンが呆気にとられた顔をする。無理もない。上官がいきなり世間話を始めたのだ。しかも、巨人に追われているときに。巨人の足音が徐々に大きくなり、「気持ち悪い」としか形容できないうめき声が聞こえる中で。

 

「は、ハタチ……二十歳であります!」

 

「そうか!駐屯から来てくれたってのに、まったくとんだ遠足になっちまったなぁ!!そういえばよ、初日からこれまで、索敵やら伝令やらガスの補充やら、君には随分助かっている!」

 

「――は……はっ!ありがとうございます!!」

声をかけられたことで、ジンは少し落ち着きを取り戻した。すぐに旧村になる。屋根や風車が見えてきた。助かる!助かる!俺は!俺の班は!助かるんだ!

 

 

「ゼクレス班長!旧村まであと250……ああっ!!」

 

 

 

 

 

ジンはそのとき、訓練兵団時代の「統計算術」の講義を思い出してしまった。

 

『平均というものは、あくまで数のばらつきや偏りは考慮されない。例えば6と6の和の平均は6であるが、2と10の和の平均も6であるのだ。このばらつき加減を「等分散性」といい――』

 

 

五日目まで、巨人の遭遇は一度に三体を超えることはなかった。調査兵団の兵士に聞いても、「一回にしては少ない方だ」という。それが、どういうことだ。今日に限って。

 

 

旧村の入り口付近に、十メートル級の巨人三体―――目が合ってしまった。

 

 

「――――は、はは……か、偏るもんだな………」

 

 

ヨルクの班は南北を巨人に挟まれた形になった。

 

「……ったく!この遠足の行き先は天国かよっ!突っ切るぞ!とにかく村に入る!」

馬の速度を緩めずに、ヨルクがすぐに信号弾を撃つ。

 

 

「緊急事態」を示す赤色。

 

 

ジンには、これから流すことになるであろう、真っ赤な鮮血の色に見えた。

 

 




●あとがき
冒頭のエルヴィンとベルンハルトの会話を挿入したら長くなりました。ウォール・マリア奪還作戦時なので、団長はキースです。エルヴィンは分隊長くらいだろうと思います。エルヴィンの最後の台詞で「君」から「お前」に変えた部分は、分隊長としての立場ではなく、同期の友人としての気持ちを出してみました。漫画では「切り捨てる人」と描かれているエルヴィン。そしてベルンハルトはその逆のようなニュアンスを作中が進むにつれて出して行ければいいなと思います。ヨルクも、もちろんジンも。
戦闘ではなく、逃亡するシーンをどれくらい描くことができるかな?という実験的な試みも含めた回でした。

お読みいただきありがとうございました!


●次回予告

再び巨人と戦います。前回と異なり少人数、巨人が多い中での戦闘になります。
ヨルクとジンの班は。そしてベルンハルトはどのように危機を脱するのか。

第3話 撤退戦線(仮題)

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