こんにちは。104期のお話も書いてみたいなぁと思うsoliquidです。
ギャグ路線とかほのぼの路線とか。ラブコメとかもいいかも。
作中で、ベルンハルトやヨルクの言葉遣いが統一されない部分があります。
戦闘時と非戦闘時のテンションや状況の差、だとご了承ください。
続きになります。
何かの折に、お読みいただければ幸いです。
「あれっ!近くのは隊長の班でしたか……」
「幸か不幸かなぁ。俺が逃げちゃうわけにもいかないだろ。隊長やってる以上仕方ないさ。だが振り切れず一匹連れて来てしまった!みんなすまん!」
「……次のメシとサケ、奢ってもらいますからね!」
「よーし、じゃあ帰るぞ!みんなで帰るぞ!」
「四人ずつに分かれる!私とヨルク……そしてネスを中心に巨人を分散させる!残りは補給および柔軟に動けッ!」
「左のボンベ、さっきから供給悪い!交換頼む!」
ベルンハルトとヨルク、その他の兵士達が軽口を叩きつつも、旧村内の家屋の屋根に速やかに陣を展開する。ボンベの予備を用意しながらジンはその様子を見ていた。結局、北からの巨人も振り切ることができず、旧村に進入した巨人は九体。こちらは十三人。普通に考えても勝ち目は――それでも軽口を叩きながら巨人を誘導し、武器を構え陽動する調査兵団の面々を見る。
―自分より、もっと、ずっと、「死」が近くにある―
カラ元気かもしれない。開き直っているのかもしれない。しかしそれ以上に、「できることを尽くす」姿勢が、そこには在った。
だが昨日までのように、多勢に無勢ではない。一体の巨人に三人四人で相手をするような丁寧な戦闘は無理だ。かといって、一人で複数の巨人を相手にできるような剛の者は、この隊には居ない。もっとも、そんな者は調査兵団全体でも一人か二人なのだが。
屋根の上。
ベルンハルトがジンの所へやってくる。
「さて、今ここに居る十三人のうち、本格的な戦闘に堪えうる者――ざっと九人、か。旗色は悪いが、ガスの補給兵が居るのは幸いなことだ」
「お前さん、名前は確か――サンドラー、だったか。ジン・サンドラー」
「はっ!」
「いやはや、あいつ等さぁ、ムカつくよなぁ……おっ、あの巨人、ちょっと美人に見えないか?」
「え、えぇ……」
先ほどのヨルクといい、この隊の上官は少し拍子抜けしたことを言う。
「さて、目のいいお前さん――サンドラー補給兵。高速立体機動は一通りできるな?」
「はい……皆さんほどではありませんが」
二体の巨人を、一定の距離を保ちながら誘導しつつ話を聞く。ジンの高速立体機動は、「可もなく不可もなく」というレベルであった。駐屯兵団にしてはマシ、といったくらいだろうか。
「そうか。上等。今回は前回までとは違い、立体機動を限界まで使用する」
「はっ」
「お前さんが刃を抜くときは、我々が全滅したときだろう。そうならないことを祈ろう。それまでに一つ、重要な役回りを頼みたい」
「はっ!それは――?」
「隊長―ゥ!駐屯の若造とデートですかィ!?」
「ダメだぜぇ青年!隊長、ああ見えて両刀だからなァ!ヒッヒッヒ!!」
「やだー隊長!そうだったんですかぁ!?」
各班が少しずつ巨人を引き離し、そろそろ本格的な戦闘に入る。
「散開したな!各個、柔軟に立ち回り、撃破せよ!!」
「「「「「はっ!」」」」」
一斉に立体機動装置のワイヤーを巨人の向こう側の建物や屋根に向かって射出。ガスの出力を最大にし、高速で移動。手にはブレード。少しタイミングをずらして、二人目が同じように立体機動で移動。
陽動と攪乱と攻撃――可能なら討伐。今回は目つぶしを使うような悠長な戦闘はできない。高いリスクを承知で、陽動よりも攻撃に重点を置き、眼球付近、足や肩の腱などの急所を積極的に狙うしかない。
交戦からしばらく後。
「ギャッ」
三十メートルほど先で交戦していた兵士が壁にぶつかった。立体機動中に巨人が振り払った手にワイヤーが引っかかり軌道が変わったのだ。
墜落した兵士を二体の巨人が掴み取る。互いにそのまま自分の口へ入れようとするため、その兵士の体が――本来曲がらない方向へ曲がり
グブチュッ……
何かが千切れて破裂するような音。巨人は夢中で千切れた兵士の部位を咀嚼し始めた。
ゴリ……ゴリ、ボリ、ガキッ
グチュ、ズルッ……ニチャ……
一体の巨人は頭を。もう一体は腹部から下の部位を。咀嚼している。
その刹那、二体の巨人の後頭部を、最大出力の立体機動で斜め上からブレードで削ぎ取る兵士二名。
一体の巨人は、そのまま蒸気を出して形が崩れる。討伐した。しかし、もう片方の巨人は傷が回復した。斬撃の箇所が異なったか、角度が浅かったのだ。
二人の兵士はすぐ身を翻し、立体機動で離脱。
何度見ても「人が喰われる」瞬間は慣れない。駐屯兵団のジンにとっては何度目かの地獄絵図であった。
だが。
逃げてはいけない。俺は兵士だ――
折れそうになる気持ちを奮い立たせて、ジンは動いた。
ジンの任務は、ガスとブレードの補給である。交戦中の兵士の動きや声をつぶさに見分け、聞き分け、安全な場所でボンベやブレードを交換する。そして、荷馬車に置いてあるタンクから空のボンベに充填にし、再び補給体制を作る――
そしてもう一つの任務は、撹乱である。タイミングこそ限られるが、できるだけ目潰しの袋を投擲する。陽動や攻撃の兵員は、荷重がかかり、立体機動に影響が出るので、砂や泥の袋はジン等、補給兵の担当になった。
「ネスさん!ガス大丈夫ですか!?」
「いや、ちょうど切れそうだ!交換頼む!!」
「はい!ブレードは?」
「まだいける!大丈夫だ!」
比較的安全な場所に立体機動で駆けつけ、ボンベ交換の補助をする。ベルトのホルダーからボンベを外す。バルブを開け、ボンベ内を定常圧に戻してからコネクタを解除、新しいボンベをコネクタに装着し、バルブを閉めコックを開栓する。
ネスはもちろんのこと、ジンの手際も良い。おおよそ三十秒程度で換装が完了した。
「助かった!おいジン、お前いい仕事してんな!どうだ?これから調査兵団に鞍替えしねぇか!?」
「やだなネス先輩!俺じゃあいいとこ巨人のエサですって!さ!もうひと頑張りお願いします!ご武運を!」
「あいよッ!」
ボンベやブレードを交換する兵士に声を掛け、怪我を含めて状況も判断する。場合によっては応急処置や前線から外す処置もしなければならない。そして――
「ボンベ残り八本!ボンベ残り八本分です!!ブレードはまだ三十本あります!」
立体機動で動き回り、ガスとブレードの残数を通知する。しかし、ブレードはともかく、この旧村に置いてあるタンクのガスが切れる前に戦闘を終了するか、あるいは撤退しなければならない。
これら一連の作業を、状況を見ながら、戦闘の邪魔をせずに行う。可能であれば目潰しも投擲する。広い視野と的確な状況判断、そして度胸。どれもが必要とされる。果たして――ジンの戦闘面での才能は、徐々に開花しつつあった。
「ボンベ残り三本分!!少なくなっています!!残り三本ッ!!」
ジンが声を張り上げる。巨人は残り三体。一方、満足に動ける兵士は五人まで減っていた。
「畜生!畜生!!」と言いながら巨人に捕食された者。足をもがれ、声にならない声を張り上げ、錯乱しながら立体機動で突貫した者。
そういった兵員の犠牲の裏で、確実に、巨人を討伐していく。
ジンがボンベの交換に向かう際、運悪く一体の巨人の標的にされた。十メートル程度あるそれは、周辺の建物を壊しながらジンの方へ向かってくる。
「マズい!!逃げろ!補給兵ッッ!!!」
ベルンハルトがブレードを構えて救助に向かう。巨人が手を伸ばす。
立体機動のワイヤーを最大出力で射出。かつての教会――だろうか、鐘撞き堂の壁にアンカーを挿す。確認し次第、ボンベのガスを最大出力で吹かし、ワイヤーを巻き取る。この一連の流れで立体機動での移動は可能になる。引き寄せられるように身体を移動し――
――左足首に強烈な痛みが走った。
「ギッ……ギャアアアッ!!!」
ジンが叫ぶ。左足首がぶらんとしている。肉がもがれ、骨折した骨が露出している。
熱い。痛い。気持ち悪い。
汗が噴き出る。
――瞬間、背中を抱えられた。ヨルクが救助をしたらしい。
「遅れて済まん!大丈夫だ!命に別状はない!大丈夫だ!……大丈夫だ!」
後で分かったことだが、巨人に足首を捕まれて、その際に損傷したらしい。遠くなる意識の中、眼下で巨人が蒸発していく姿、そしてヨルクが頭から血を流している姿を見た。
「……す、いま、せ――」
痛みに堪えかね、ジンは気絶した。
●あとがき
くぅ~!疲れましt(ry
今回は「人が喰われるシーン」を生々しく書こうとしたのですが、書いていて気持ち悪くなってしまいました。この後も、主人公たち三人組は負けて、逃げて、隠れて、そういう流れになるんだと思います。なにこの話。救いは無いんですか。
次回作があれば、ハメを外してぶっ飛びたい気持ちです。
しかし、「未完の大作よりも完結した駄作」。正史の裏でひっそりと生きた一兵卒たちの地味な話を書こう。こういうコンセプトで書き始めたので、何とか終わりまで繋げたいです。
●次回予告
夜を待ってベルンハルト達は逃げ出す。
しかしそこに待っていたのは――!?
次回、第4話 臨界逃走(仮題)