調査兵団亡霊部隊   作:soliquid

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ユミクリわっふる。soliquidです。でも百合なんて書く技量がありません。書くならノーマルCPがいいですね。「イアンとリコ(イアリコ)」とか「オルオとペトラ(オルペト)」とか。イルゼのお話なんかも書きたいですね。だからどうしてそういう際どいところを(笑)。

本作で、前回、獣の巨人(暫定)を出しました。これを書いている時点(8月下旬)で、本編でも正体が明らかになっておらず、さまざまな説がありますね。如何ともし難いところです。


続きになります。

何かの折に、お読み頂ければ幸いです。



第6話 生存戦略

 

「まったく……この発見を壁内へ持ち帰れば階級特進間違いありませんね。隊長は司令部へ栄転ものですよ」

 

「――昇進は置いといて、これは本当に貴重な発見だ。それだけに、口惜しいな……」

 

 

 

ベルンハルトとヨルクは黒金竹を細工しながら話をしている。ジンの左足首は、人間にしては驚異的な、いや、あり得ない回復をしているのだが、まだ満足に動かせる状態ではないため、洞窟内での作業が多い。そのことについては、ベルンハルトもヨルクも深くは問わなかったし、ジン自身がまったく分かっていなかったので、解明は壁内に帰還してから、となった。

 

 

狼狽するジンに、ベルンハルトはこう言った。

「目の前で起こったことを嘘にするわけにいかないだろう」

 

それは夜に遭遇した巨人も同様であった。いずれにせよ、これらの出来事はここで口論しても仕方がない。壁内に帰還してから検討すべき内容だ。

 

---

 

 

洞窟にたどり着いて二日目から、三人はさっそく活動を始めた。優先される順番は以下の通りである。

 

1.生存手段の模索

2.移動手段の模索

3.連絡手段の模索

 

 

三人は、一ヶ月の間に、この洞窟を拠点として生存のため、そして帰還するための活動をした。その間に、洞窟内や付近を探索した。巨人に遭遇する確率が低い早朝と夕方付近に洞窟外を、それ以外の時間は洞窟付近や洞窟内で過ごした。

 

拠点にするにあたり、洞窟内の探索を行った際、洞窟内に飲み水となる鉱泉を発見した。また、付近の旧村を探索した際、耕作跡地から根菜などを僅かに採取することができた。季節がちょうど秋であることも幸いした。

 

 

洞窟に避難した翌日、先日遭遇した巨人(らしき者)から逃げるために馬を繋いだ箇所におおよそ見当を付けて、夕方を過ぎてから探索に向かった。しかし、手綱が千切れ、鞍が落ちていることを発見できただけで、馬は見当たらなかった。これで馬による移動は諦めなければならなかった。

 

馬による移動が不可能である以上、壁内には自力で移動しなければならない。洞窟のある山を登ると、頂上からウォール・ローゼが視認できた。おそらく四~五〇キロはあるだろうか。安全に移動できる可能性が高い時間帯は、朝方と夕方以降に限られる。そしてジンの怪我の回復具合も考慮される。あらかじめ用意してあった地図と照らし合わせて、行程を検討する必要がある。

 

そして、壁内に生存を伝えるための連絡手段――狼煙を上げることも考えた。付近の旧村まで探索に出掛けた際、運良く馬小屋から藁くずを、炭焼き小屋から薪を手に入れることができた。同時に、黒金竹の広大な群生地を発見することができた。

 

黒金竹――ウォール・シーナ領内の山岳地帯に群生する竹で、その強度は金属よりも強く、同時に非常に軽い。筒の部分は立体機動のボンベとして利用され、かつては筒の部分を薄く加工し、武器として利用もした。巨人の皮膚に傷を付けることが可能。また、葉の繊維も非常に強度があり、立体起動装置のワイヤーとして利用されている。

 

三人は洞窟外と同時に、洞窟内の探索も行った。既に飲料水は確保できている。しかし、この洞窟がどれくらいの広さで、どこに繋がっているのか、あるいは出口が存在するのかなど、少しずつ明らかにしていった。

 

 

 

「しかし、黒金竹だけでなく、氷爆石まで見つかるなんて――」

報告を聞き、ジンが唖然とする。

 

「不幸中の幸いというか、何というか――皮肉なものだな」

ヨルクが苦笑する。

 

 

洞窟内を深く降りたところに、氷湖のようなものを発見した。しかし、確かに寒い洞窟内ではあるが、鉱泉は凍っていない。不思議に思い、この氷状の物質をナイフで削りだしたところ、氷爆石であることが判明した。

 

氷爆石――ウォール・シーナ領内の寒冷地でのみ産出される鉱物。低温状態では個体であり、常温では気体となる。その際体積が数百倍に大きくなり爆発することもある。立体起動装置のガスは、この氷爆石を精製したものだ。

 

工業都市の職人集団と兵団の一部の技巧部門以外が詳細を知ることは無いが、兵団、いや、人類にとって貴重な鉱産資源となる氷爆石鉱床の発見は、今回の北部調査における最大の功績と言っても差し支えない。しかし三人にはその事実を壁内に伝える手段が無かった。

 

 

黒金竹と氷爆石を発見してから、三人は上記項目に以下を加えた。

 

4.黒金竹および氷爆石を活用した自活兵器の模索

 

自活兵器――巨人の討伐が目的ではない。あくまで巨人遭遇時に逃走、足止めができる確率を高くするための道具としての活用のために考えた。

 

まず、氷爆石を立体起動装置に使えるか試してみた。元々、立体起動装置のボンベは黒金竹を刳り抜いて作成してある。強度的には問題が無いだろうと期待を込めたが、やはり精製をしていないため、期待通りの出力は適わなかった。動かないほどではないが、巨人を討伐するだけの立体機動には遠く及ばなかった。

 

別の活用を模索する。

 

三人は、洞窟外を探索しない日中の多くの時間を、氷爆石と黒金竹の特性理解に費やした。何度も失敗を重ねつつ、試行錯誤した。

 

 

氷爆石は、常温に近くなると体積が膨張し、液体を経ずに気化する。そしてその気体は空気よりも若干軽いらしい。その特性を活かし、簡単な松明を作成した。小指の先ほどの小さい氷爆石の欠片を竹筒に入れておき、竹筒の入り口に着火すると、気化した氷爆石のガスと空気中の酸素が混じり、「ボウッ……」と火が付いた。

 

可燃性と膨張性。これらの原理を応用し、簡単な爆発性の武器の作成を試みた。

 

三人とも技巧の専門家ではないものの、窮すれば知恵が出てくるもので、検討の末、いくつかのアイデアは試作品までこぎ着けた。目潰しなどの開発を行ったヨルクは、かつて技巧からも誘いがあった。彼が発案から作成まで積極的に行った。

 

 

 

・刺突爆雷

槍状にした竹筒の先端部分に氷爆石を詰め、粘土質の土で両側を塞ぐ。その後、土を炙り、焼粘土状にして気密を上げる。筒が壊れない程度にガスを充満させた先端を巨人に刺すと、その衝撃で焼粘土が破砕し、爆発する。頭部を狙えば、うなじごと爆砕できる可能性もあるが、使用者も爆発に巻き込まれて死亡する可能性がある。かといって爆発力を抑える程度のガスでは、巨人に大したダメージを与えられず、どちらにせよ捕獲され死亡する。

 

「槍術なんてロクに練習していないが、まぁ、いざとなったらジンが突貫してくれれば――」

ヨルクもベルンハルトも冗談めかして軽口を叩く。

 

「ちょっ――冗談でもイヤですよ!」

 

「はは、でもまた再生するかもしれないじゃないか」

 

「げ、先輩たち、容赦ないっすね」

 

 

 

・設置爆雷(パンジステーク)

刺突爆雷の投入が危険であるため、竹槍を地面に挿して、巨人の足止めをすることを考えた。普通に黒金竹を挿すものと、刺突爆雷を挿すものの二案が考案された。脚部を爆砕することは確かに足止めにはなる。だが、巨人の再生能力を考えると、足に突き刺してつっかえ棒のようにすることで、機動力を削ぐ方が良いのではないかという案が出た。しかし、いずれの案も、逃走の際に巨人を一直線上に誘導しなければならず、実用的ではなかった。

 

「やはりこれもジンに囮になってもらって――」

 

「――だからやめてくださいって」

 

鬱屈した空間で、このような冗談を言い合えるくらいの――まるで何年も視線をくぐり抜けたような間柄。そんな空気を纏っていた。

 

 

 

・投擲爆雷(グレネード)

使用者の安全、設置の柔軟さを考えると、ある程度、遠隔的かつ時限的に利用できる武器が望まれた。焼粘土で封をして気密を高めた竹筒に、藁で導火線を作り、そこへ引火し、放り投げる。ガス圧が高い気相に点火すれば、気化爆発が起こるはずだ。爆発までのおおよその秒数は、藁の長さで調節が可能。仮に不発であっても、運良く巨人が竹筒を踏み、破損することがあれば、膨張爆発が起き、幾分かの足止めにはなる。

 

当面は、グレネードを試作し、氷爆石の量や爆発の範囲を検討することになった。

 

最終的に立体機動装置は動作が不安定で、やむを得ない場合に一か八かで使うことになった。

 

こんなもので巨人に勝てるなどとは思わない。だが、命を繋ぐだけなら、丸腰よりも幾分か心強い。

 

そうして一ヶ月が過ぎようとしていた。外へ出る時間を徹底して限定したため、遠目に姿を見ることはあったが、面と向かって巨人に遭遇することも無かった。少しやつれてはいるが、三人とも希望は棄てていなかった。

 

ジンの足は、一ヶ月を少し過ぎた頃、普通に走れるようになるまで回復――いや、「復元」していた。藁や食料採りにも同行させ、走ること、負荷をかけることに問題が無いことを確認できた。

 

 

「――おいジン、お前の親は巨人だったんじゃないか?」

 

「ならいいですね。仮に俺が巨人だったら、あいつら蹴散らしてやりますよ」

 

「俺たちを喰わないでくれよ?」

 

「――いや、結局リヴァイに削がれるな!」

 

「ははっ、笑えねぇー」

 

 

兵站行軍はそれなりの速度で移動しなければならない。三人は、武器の修練、経路の策定などしつつ、次の満月の夜、雨が降らなければ、壁内へ自力移動する。

 

「一度は死んだ命だ――」

「だが、俺達は生きてる――」

 

「――絶対に、帰りましょう。壁内へ!」

 

亡霊部隊として、最初で最後の作戦、「壁内帰還作戦」は、近日中にいよいよ決行される。

 

 





●あとがき

ついに立体機動装置とブレードすら満足に使えなくなった主人公ズ。
武器が竹槍とか、そういうファミコンのゲームがあったような気がします。
あと爆弾。なんだこれ、進撃の巨人だよな?

「いっき」+「ボンバーマン」、それが本作です。

武器知識はニワカなので、違っていたらすいません。氷爆石の記述に関しては、公式のスピンオフ小説やファンブックの記述を基にオリジナル解釈を加えています。

ベルンハルトが手帳に記録する行為や『キュクロ』など、少しだけ原作とリンクさせるのが楽しかったです。

お読み下さり、ありがとうございました!

次回、壁内帰還を前に、少し会話パートというか、それぞれのキャラクターの内面描写を入れようかと思います。


●次回予告

ジンとヨルク、それぞれの立脚点。
そしてベルンハルトの傷。

生を求める逃避の中での、仮初めの日常。
男達が、束の間に見せたもう一つの顔。


次回、第7話 Interlude(仮題)
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