THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡 作:蒼空の魔導書
次元世界の法の中心たる時空管理局と、出自不明の謎の反逆組織次元王軍ラグナガンド。
「双方チカラを収め、武器を引け。 逆らおうとしよう者は我が“
数多の脅威を打ち破る希望となる筈だった管理局のエース部隊、古代遺物管理部機動六課が試験稼働初日にしてラグナガンドの尖兵である第二二六強襲中隊に活動拠点である隊舎を襲撃され、壊滅的打撃を受けてしまうといった衝撃展開から開戦した、
「クソがァ! テメェら、これはいったいどういうつもりだァッ!?」
「私からも聞かせていただきたい。 何故貴方方が此処に? 貴方方特務小隊は
禍々しい闇を纏った複数の蛇に全身を捕縛されて身動きが取れる様子のないファングの憤慨の叫びに重ねるようにしてヴォルカーンが四人組のリーダーらしき束帯姿の男に慇懃な言葉で不信ではないのかと尋ねた。 彼の敬意を払うような態度と口にした階級から察するに、どうやら束帯姿の男はヴォルカーンよりも上の権限を持っているようだが、その身に纏う雰囲気は厳格さが微塵も感じられず妖し気で、本当に軍属なのかと疑いたくなる。
「決まっているだろう。
そう素っ気無く言って氷眼の少年等シルバーガスト小隊の面々とその背中で警戒に息を詰まらせているなのは達六課の隊長陣を一人一人興味深そうに視線を転じていく金目黒瞳の双眸を例えるならば暗闇の森の中を自由気ままに這いまわる蛇と言ったところだろうか。 身体中に絡み付くような視線を向けられた際になのは達三人と朝百合の少女は「「「「ひっ!?」」」」と背筋を凍らせている。
恐らくは束帯姿の男の部下であろう特務小隊の他三名がその有り様を見てそれぞれ三者三様のリアクションをしているのを見ると、彼等の組織内でもこの男の印象はこうなのだろう。
そして緊張と警戒を露わにして身構える管理局勢を一通り視回し終えると束帯姿の男は軽率な薄ら笑いを浮かべながらまずは挨拶をと彼等に一礼軽く頭を下げて言った。
「お初にお目にかかる。 私は次元王軍ラグナガンド《第七特務小隊》を率いる席を穢す《
素性を明かすとその隣に彼──九霄の部下達が並び立ちその後に続くように次々と名を明かしていく。
「初めまして。 御門大佐の隊の副官を勤めさせていただいている《
「《バオ・フェン》だ。 第七特務小隊の“モンク兵長”に勤めている。 ……まあ、兵長と言っても我らは
「オレッチは“空兵長”の《ジャオ・ズウ》だッチ! オレッチ達特務小隊はグロースシュタット総帥直々に選ばれた少数精鋭部隊なんだッチよ! 管理局の三下共よ、頭が高い! 控えおろ~ッチ!」
「此度我らは軍の長たるグロースシュタット卿の命によりこの戦場を収め、貴殿ら時空管理局が法の下に統治する
最後に九霄が戦闘を仲裁した目的について述べて締めるとその意味を逸早く理解したはやてが「な、なんやて!!?」とどよめきを発し、それを皮切りに九霄等
「宣戦布告……だと? それはいったいどu「どういう事だ、御門ッ!!」」
“宣戦布告”の意味は当然理解しているとしても言葉自体が漠然としすぎていて突拍子が無い故に度し難く、氷眼の少年が九霄にその動機の提示を求めようとするが、その声はヴォルカーンが発した九霄へ問い詰める大声によって掻き消されてしまう。
「私は別に気にしないのだが、階級が上の者に向かってその聞き方はないだろうグラナート少佐よ。 して何かね?」
「宣戦布告をするのはいいとしましょう、広報から我々強襲中隊にも通達がありましたのでな。 しかし、“総帥閣下が我らの戦いを仲裁するように命じた”とはどういう事なのですか!?
確かに彼の疑問は尤もだ、
その問いに九霄がやれやれと軽く困ったような顔を繕っていると、まるで見計らったかのように機動六課隊舎跡地の空に巨大な空間モニターが展開された。
『その説明は私がしよう』
唐突な展開の連続にこの場に居る管理局勢一同はそれぞれ六課隊長陣とシルバーガスト小隊で大小の差異はあれど動揺を隠せない。 声に釣られて見上げた空間モニターに映し出された人物は堅物を絵に描いたような刈り上げショートヘアーでビシッとしたスーツ姿のナイスミドルな中年男性だ。 強張った顔付きで隊舎跡地に集う一同を見下ろしているこの男性は──
「こっ、これは、《ターデルン・ボルマン》准将閣下!?」
『突然戦闘を止めてすまないなグラナート。 グロースシュタット総帥閣下は先程
「し、しかし准将閣下──」
『
「くっ……
敵軍総司令代理のボルマンによって作戦終了が告げられた事でヴォルカーン達第二二六強襲中隊は否応なしにミッドチルダから撤退する事になり、もう何も残っていない焼け野原と化した六課の隊舎跡地や近場の海に散らばっている戦闘不能の隊員達を衛生兵隊に拾わせて纏め、彼等は次元跳躍転移陣を発動させて迅速にこの場から去って行く……。
「かはっ、覚えていろよ氷眼の小僧、この借りは次の戦場で必ず返す。 散々俺をコケにしてくれた破戒狼の小僧と切燕のチビガキもなァッ!!」
「アハハハ! ちょっと物足りなかったけれど、なかなか楽しめたよ! 機動六課のお姉ちゃん達ー! 次はちゃんとバラバラにして殺してあげるからねー♪」
足下の転移陣が発する光に包まれながら第二二六強襲中隊員達は一人、また一人とこの場から姿を消して何所かへと転移していく。 恐らくはボルマンが言っていた“最前線戦略拠点”にだろうが、残念ながら転移先を追える設備がこの場に無い為にその世界・場所を特定する事は不可能だ。 仮にあったとしてもラグナガンドの技術力は現時点では未知数、管理局程巨大な組織に戦争を仕掛けようとするような連中が素直に戦略拠点の一つを特定させてくれるとは思えない。
「次元王軍ラグナガンド……第二二六強襲中隊……」
「……ふんっ」
ギリィィーッ! 隊の殿を務めるように最後に転移して行くヴォルカーンの嘲笑する鼻鳴らしを見送り、はやては心底忌々しく表情を歪ませて歯茎から流血する程強く歯を噛み締めた。
──アンタ等は絶対に許さへんで。 例え今はチカラが及ばなくたって、いつかは必ずブチのめしたるわ! 私達の夢の部隊をようも潰してくれた借り、殺されたグリフィス君達の仇、いつかは必ず……ッッ!!
憎しみで握り震える拳に血が滲む、食い縛った眼から流れ出る悲哀の涙が止まってくれない。
「では、時空管理局のエース及び
そして九霄ら第七特務小隊の四人が第二二六強襲中隊の後に続くように次元跳躍転移符で転移陣を敷き、光の中へと消えてこの世界よりどこかへと転移して行く。 役目を終えた転移陣が無数の燐光となって消滅し、夕焼けの黄昏へと変わりつつある空へと舞い上がって行くのを見上げてはやては強く誓った。 次は負けない、
「アハハハ、なーんか僕達あのカルシウムさんに完全に目を付けられちゃったみたいだね☆」
「気にするなよ、次会ったら問答無用でブッ倒せばいいだけだろ? ……で?
この戦場からラグナガンドの尖兵達が一人残らず引き揚げて行った事で残る外敵存在は夕陽の黄昏に染まった上空に浮き出た巨大空間モニターの中からなのは達管理局勢を見下ろしている敵軍総司令の代理人、ターデルン・ボルマンのみだ。 破戒狼の少年がヘラヘラと苦笑いをしている切燕の少年に軽く論ずるとニヒルな笑みを浮かべながら映像のボルマンを見上げて彼に尖兵達を撤退させた理由の説明を促した。
幾ら氷眼の少年が第二二六強襲中隊の主戦力の一人であろうファングを追い詰めていたとはいえ、あの時点で劣勢だったファングはまだ“奥の手”らしきチカラを残している素振りがあった上、仮に彼がやられたとしてもカッツェとヴォルカーンという強力な後続だって居たのだから、戦況が芳しくなくなったと判断して撤退させたという線は考え難い。 ヴォルカーンは“機動六課を潰せと軍のトップから命令されたから襲撃しに来た”と簡潔に説明していたのだが、この襲撃戦には何か敵の別の思惑があると考えた方が妥当だろう。
『急かさなくてもいい、今回の件についてはちゃんと説明はさせてもらう。 その話を円滑に進める為にグラナート達にはこの場を即刻に引き揚げてもらったのだからな』
意外な事にボルマンは敵に今回の六課襲撃に関する真の意図を説明する事を渋る素振りもない淡々とした口で話し出した。
『まずは挨拶させてもらおう。 私は次元王軍ラグナガンドの作戦参謀長を務めている《ターデルン・ボルマン》という者だ。 先程聴いたと思うが軍総司令を勤める総帥閣下が多忙で本部を留守にしている故に現時点では私がその代理をさせていただいている。 以後よろしく頼む』
突然襲撃を仕掛けて来た反乱組織の司令代理とはいえ軍人、形式上の挨拶はしっかりと果たすようだ。 となれば管理世界の正式な司法軍人として、例え腸が煮えるような怒りを無理矢理抑えてでも冷静に返さなければ面子に掛かりかねない。 機動六課の部隊長であるはやてはこの場に居る全員を代表するように前に出た。
「初めましてやな。 わたしは時空管理局特別捜査官の《八神はやて》……アンタ等が今日襲撃して虫ケラのように潰してくれた《古代遺物管理部機動六課》の総部隊長や」
『これは御叮嚀に』
「随分な挨拶やないか、私の部隊を滅茶苦茶にしてくれたってのに組織のトップが顔も見せずに代理人を寄越すやなんて」
『勘違いをするな、別にその事について謝罪をするつもりで話しているのではない。 確かに敵対する組織に宣戦するのに軍の長が出られないのは申し訳ないとは思っているが……先程言った通り、総帥閣下は現在多忙で本部を留守にs「いや、さっきヴォルカーンって奴と会話してた時に“いつもの発作で居ねー”とかなんとか言ってただろ?」……はぁぁ』
破戒狼の少年に言い訳を指摘されたボルマンが堅い頭を片手で抑えて重い溜息を吐くのを見てこの場の一同は【本当にこの人は大量の胃薬にお世話になっていそうだな】と先程言った破戒狼の少年の皮肉に同意を重ねた。 どうやらラグナガンドの総帥とは色んな意味で部下を困らせている変人奇人のようだ。
「貴様達のくだらない内情などどうでもいい。 そろそろ本題に入ってくれないか、このまま話が逸れ続けたらいつまでも収拾がつかなくなりそうだからな」
と、氷眼の少年が冷静な口調で話の軌道を修正する。 確かにこのままだとグダグダになっていつまでも進まないだろうし、そろそろこの悲劇の
『それは御尤もだ。 確か第二二六強襲中隊を撤退させた理由だったな……単刀直入に言うと今回の六課襲撃が──
──管理局に宣戦布告する前の“デモンストレーション”だからだ。
「……え?」
今明かされたラグナガンドの衝撃の策略に思わず愕然と硬直してしまうなのは達。 果たしてその全貌とは? 未来へと羽ばたく翼を折られた戦乙女達の悲劇の戦いの裏で、いったい何が動いていたというのだろうか……。
え~~と……話が殆ど進んでいない内容の薄さですいませんでした。(土下座)
しかし、今話にてようやく敵軍の尖兵達が撤退。 これでなのは達機動六課とヴォルカーン達第二二六強襲中隊との因縁が出来上がりました。 これから先彼等彼女等は幾度となく衝突していきます。 最後に勝利するのは果たしてどちらか、そしてそれまでに出るであろう犠牲の数は?
そして次回、ラグナガンドが六課を前もって潰しに襲撃した真意の全貌が明かされる!
序章前編もいよいよ完結が見えてまいりました! 悲劇の機動六課襲撃戦の結末はどう締めくくられるのか?お楽しみに!