THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡   作:蒼空の魔導書

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祝、二十話達成! ……なのに今回、なんだか凄くグダグダな出来になってしまったな……。(落)




鉄槌の誓いと揺れる心

「うりゃああぁぁーーッ! ブッ潰れろ、このガスガスヤローがァァァァアアアーーーッ!!」

 

「テメェこそ早いところブッ倒されろでガス、このウ◯コ女がぁぁっ! アチョォォォォオオオーーーッ!!」

 

風を貫き、弾丸のような勢いを纏ってヴィータが天から大きく振り下ろした戦槌が、それを迎え撃つロッキーの突き上げる鉄拳と激突した瞬間に生じた凄まじい衝撃と余波によって摸擬戦場全体が激震する。 大爆発するように猛烈な砂嵐が巻き起こり、その発生地点を中心に広範囲に亘って広がっていく。

 

「「「「「「「キャアアアアッ!!?」」」」」」」

 

「んぎゃぁぁああッ!? 眼がっ、眼がァァアアアアアッ!」

 

その被害は両陣営が観戦している外野にまで及び、砂嵐の高波に飲み込まれた彼等彼女等の一部が阿鼻叫喚も斯くやと平静を取り乱させてしまう(ビスマルクなんかは眼に砂が侵入した痛みに耐えかねてみっともなく苦鳴を上げながら地面を転げ回っている始末だ)……数秒経つと砂嵐が止み、一同は視界を取り戻すと無数に亘って鈍い金属打撃を響かせて壮絶に打ち合いながらバトルフィールド内を息もつかせず激しく縦横無尽に動き回っている《鉄槌の騎士》と《曼珠沙華》に野次を飛ばした。

 

「ゴラァァ、テメェら! こっちの被害考えやがれバッキャロォォーッ!!」

 

「あ~ん、もう砂だらけぇ~!」

 

「う~、ロッキーの奴酷ピー。 おかげで僕の眼と耳がグロッキーだっちゅーの。 えんがちょ」

 

「ヴィータ副隊長、これはいくらなんでも、ちょっと派手に暴れ過ぎだと思います……」

 

「フリード、大丈夫?」

 

「キュクゥゥ~……」

 

「おいおい、フィールド外側に積もっていた雪まで巻き込んで飛んで来やがった湿り気の所為で、アタイの手持ちの爆薬が全部湿気っちまったよ。 あ~あ、今ので駄目になったコレら、闇市(ブラマ)でも滅多に流れて来ねーんだよなぁ……」

 

鮮烈に互いの得物(デバイス)をぶつけ合っているバトルフィールド内の二人には気にも留められずに虚しく摸擬戦場に木霊していく両陣営の嘆き声は災難だったなの一言に尽きる切なさを感じさせる。 数秒に亘って砂嵐に嬲られた所為で皆の身に着けている衣服は乱れ、大量の砂を被った身体でその場にチカラ無くヘタリ込む皆の姿と、その背後の隊舎から聴こえて来ている野次馬達の爆笑も相俟って、何とも言えないシュールな空気が流れている。

 

「にゃははは。 この前にあんな事があったばかりで、グラーフアイゼンも敵に壊されちゃったから、正直心配していたんだけど、調子を落としてはいないみたいだね、ヴィータちゃん」

 

「ああ、そうだな。 グラーフアイゼン(本来の得物)が手元に無いにも拘らず、ヴィータはよくやっている。 それでこそ夜天の主の守護騎士たる我らヴォルケンリッターの《鉄槌の騎士》だ」

 

「シャーリーが徹夜で整備してヴィータに渡した間に合わせのアームドデバイスも突貫で用意した割には、なかなかの威力が出ているね。 ヴィータの腕力で打ち突けた反動にも、今のところは問題もなく耐えられているようだし、やるじゃないの」

 

「そ、そうですか~? 正直に白状すると、実はデバイス(あの子)にヴィータ副隊長の魔法データをインストールしている最中にうっかりちょっと居眠りしちゃいまして、極小ながらも精度に誤差が出ていたもので、出来に多少の不安もあったんですけれど。 あの調子なら問題は無さそうだし、よかったです♪」

 

スターズ副隊長の調子が行き過ぎていて呆れはしているものの、しかし相手の認識できない攻撃動作に翻弄されながらも持ち前の根性を武器に耐え切り、相棒(アイゼン)の修理が済むまでの間の合わせの得物としてシャーリーから渡された戦槌型アームドデバイスを振るって豪快にやり返している、水を得た魚のように調子良く戦っている彼女の姿を眺めていると、なのは達は心からの安堵の声を漏らさずを得ないようだ。 それはヴィータが此処に来る前日まで底深く暗い何かの負い目を背負ったような非常に辛気臭い雰囲気をしていたが故であろう。

 

先日のラグナガンド軍の第二二六強襲中隊によって六課が襲撃された時、ヴィータは敵部隊の分隊長であるSSS級に規格外の魔導師のファング・イスカンブルグを前にして、何一つ敵に報いれる事無く無様に地の土を付けられてしまった。 リミットブレイクも融合機(リイン)とのユニゾンも新しい秘策であったフェイトとの必殺コンビネーションも、彼女の全てを懸けて挑み掛かった結果は敵にまともなダメージ一つ付けられずに完敗。 夜天の魔導書の守護騎士プログラムとして古の時代に創られた時から共にずっと今まで戦場の空を翔け抜けてきた愛機(グラーフアイゼン)も非常に負荷の掛かる無茶な戦い方をした為に(コア)ごと砕け散ってしまい、騎士として散々過ぎる敗北を喫してしまった。 その結果として彼女が守護騎士として仕えている大切な主であり、掛け替えのない家族でもあるはやての夢であった彼女の部隊は敗戦責任に応じた厳しい処分が下された事により稼働初日にして無情にも取り潰されてしまい、六課の部隊長(せきにんしゃ)であるはやては本局の上層部の高官達に敗戦責任を糾弾されて厳しいペナルティーを背負わされてしまった。 新人達もロングアーチの非戦闘員等も自分以外の守護騎士等もフェイトもなのはも、心も身体もみんなみんな深く傷付けられた。 はやての補佐を務める筈だった青年に至っては無惨にも敵の襲撃の犠牲者となってこの世から旅立って逝ってしまった……。

 

──みんなアタシの所為だ。 アタシが弱っちくて無力なガキ同然のチカラしか持っていなかったから、“絶対に護ってやる”なんて偉そうに吠えておいて、はやてもなのはもみんなみんな大切な誰一人護れずに傷付けられて、それで大事にしていたモノをいっぱい失っちまって、みっともなく泣き喚いた挙句に、こんな辺境の世界の最低部隊になんかに来るハメになっちまったんだ! だからもう、弱いまま何も護れない無力のガキのままでいるなんてイヤだッ!!

 

「テメェみたいな()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんかに──」

 

脳天に落とされた強烈なかかと落としを受け、これもド根性で耐え抜き鉄槌の打ち払いで相手を追い返すと、度重なる近接格闘戦で極限までに近接意識への集中力が高まっていたヴィータは遂に今まで意識に捉える事ができずにいたロッキーの挙動を己の認識の内に捉えたのであった。

 

「な……にぃっ!!?

 

縮地を使った高速移動で背後に回り込んで来たロッキーの上段回し蹴りを人間の限界反射速度とされている0.1秒で振り返った鉄槌の一振りで打ち落としてみせたヴィータは、絶対に認識できないだろうと絶対の自信を持って繰り出した攻撃に反応されて驚愕の色を浮かべているロッキーのアホ面目掛け、全身を一回転させた勢いを乗せた全力の一撃を魂の雄叫びと共に振り下ろす。

 

「──負けている暇なんかねぇんだァァアアアアーーーーッ!!」

 

「ぐぎぃぃぃーーーっ!!」

 

間一髪で咄嗟に両手に嵌めてある手甲型デバイスを狙われた顔面を覆うように前に翳した事で、その手甲全体の前方範囲をカバーする程度の小魔力盾──《スモールシールド》を展開できたのだが、たとえ本来の得物であるグラーフアイゼンが手になかろうとも、歴戦の鉄槌の騎士の全力の一撃はそんな半端な防御結界など容易く貫き割るのだ。

 

「ぐあああぁぁーーーでガスゥゥッ!!」

 

ヴィータの全力が籠められたハンマーヘッドが叩き付けられたスモールシールドは一瞬も耐える事なく砕け散らされ、直後にその絶懐の破壊力の衝撃を受ける事となったロッキーは全身を弓なりに曲げて真っ直ぐに吹っ飛ばされて行く。

 

──いっ、いきなりどうなっているでガスか? 何だか唐突にあのウ◯コ女、オレの《識陰歩(しきいんぽ)》に反応してきやがったでガス!?

 

「くっ──そぉぉぉおおおおッ!!」

 

暴風のような衝撃波に全身を煽られて心の底から悔しそうに叫び上げながら、危な気に両足を地面に擦り付けて靴底を削る事でスタイリッシュにブレーキを掛けるロッキー。 しかしその時既に眼前にはヴィータが追撃で打ち放った鉄球──《シュワルベフリーゲン》が飛来してきていた為にロッキーは魔力風を放出させる右腕をもって咄嗟に薙ぎ払う。 だがヴィータのシュワルベフリーゲンは古代ベルカ式に数少ない()()()()()()()()()()()()()()()()()であり、薙ぎ払った鉄球が鮮やかな放物線を宙に描いて戻って来る。

 

「ええぃっ、鬱陶しいでガス!」

 

それにイラッとしたロッキーは地滑りで靴底を削りつつ派手に砂煙を巻き上げて後退していく勢いを減速させ続けながら、再び飛来した鉄球を地に殴り落として埋没させる事で相手の誘導操作を無力化する事に成功する。 だがしかし、これくらいで歴戦の騎士の攻勢は止められはしない。

 

「まだまだだぁぁあああぁぁああぁぁああああっ!!」

 

鉄球を叩き落した大振りの右ブロー直後にできる隙を狙い、ヴィータが撃ち出された弾丸の如く風を貫いてロッキーの真正面に突撃飛翔して来る。

 

──ちぃぃっ! 連続攻撃でオレに反撃する隙を与えないつもりでガスか!?

 

「舐めんなでガス!!」

 

だがロッキーだって負けてはいない。 小さな全身を猛回転させて遠心の破壊力を上乗せさせた戦槌を手に振るい掛かって来た小さな騎士の威勢に負けてたまるかと吼え返し、右腕を左下方に振り切った勢いを殺さずそのまま右脚を軸に素早く回し蹴りを繰り出した。 大きな隙を埋める巧みな左脚高速回転蹴りと猛烈な遠心力が乗った鉄槌が正面衝突し、両者の間に巨大な火花が弾けた。

 

「くっ──うぉぉぉおおおおぉぉおおおぉおおおっ!!!

 

「痛ってぇっ──でりゃぁぁぁああああぁぁあああぁあああっ!!!

 

互いの渾身の一撃は全く互角の威力だった故に相殺となったが、当然その結果として両者の小さな身体に強烈な反動が還ってくる。 しかし、近接格闘戦の達人(スペシャリスト)である二人にとってはこの程度、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という卓越した体捌きによって即座に続く連撃に繋げていく。 二人の甲高い雄叫びと同時に鉄槌と鉄拳が連続して打ち合わされる金属打撃音が摸擬戦場中に轟いていき、地滑りと飛翔の慣性でバトルフィールド上を平行移動しながら二人は激しく打ち合い、突風を伴った猛烈な衝撃波を撒き散らして周囲の空気と砂を吹き飛ばしていく。

 

「ロンフォン流天鳥拳秘儀──《嘴撃無双(すいげきむそう)》でガスゥゥゥーーーーッ!!」

 

猛禽類の鋭き嘴の如く、ロッキーが超高速で次々と繰り出してくる鋭利な指突の驟雨に対し、ヴィータは手に握る戦槌の長い柄をまるで棒術のように操り回転させた丸盾(サークルシールド)で防ぐ防ぐ! まるで吹き荒れる嵐のような白熱した近接攻防戦を繰り広げる二人に外野の両陣営は息を呑んで目が離せない、その後ろの隊舎で観戦している野次馬達も同様だ。

 

「凄い。 夜天の魔導書の守護騎士で大昔からの戦闘経験が豊富なヴィータちゃんは当然だけど、相手の子もヴィータちゃんに全く引けを取っていない!」

 

「僕とそんなに変わらない歳に見えるのに、あのヴィータ副隊長とあんなに互角に打ち合えるだなんて……」

 

「か~っ! ホンマ次元世界にはまだまだ凄い子も居るもんやなぁ。 私等も昔は魔導師の天才児として、周りからは時空管理局の【キ◯キの美少女世代】だなんて呼ばれておった事もあったけどなぁ、フェイトちゃん」

 

「いや、されてないからそんな超次元バスケ漫画の人外中学生バスケプレイヤー五人組のような呼ばれ方なんて。 しかもさり気無く【美少女】を追加しないでよ、はやて……」

 

「んん~、《ロンフォン流天鳥拳》ねぇ……あのさスバル、あれって君の使う《シューティングアーツ》とはまた違った系統の格闘術なのかい?」

 

「……え? ……あ、うん、そうだね。 あんな変則的な構えを取る格闘術なんて、アタシまるで聞いた事なんてないし……うん……」

 

「スバルさん? ……」

 

六課側は歴戦の騎士であるヴィータを相手にエリオと然程変わらない幼い年齢であるにも拘らず互角の近接戦闘を繰り広げているロッキーの実力に驚きを隠せないでいるようだ。 確かになのはの言う通り、古の時代より戦場に生きてきた夜天の魔導書の守護騎士であるヴィータは彼女と同じ存在である夜天の守護騎士三名を除いて誰よりも場数を踏んでいる。 故にそんな近接戦闘の達人と呼べる相手に、歳の数が二桁にやっと届いたような幼子(おさなご)が真っ向から互角に打ち合っているというこの光景は、誰が観たとしてもなかなか驚愕的と言えるだろう。 まあ、十年前に起きた“闇の書事件”において当時九歳、しかも魔導師歴がまだ一年にも到達していない初心者であったなのははあのヴィータを撃墜寸前まで追い込んだ事もあったが……。

 

「そんなゴスロリ幼女相手に何手こずってやがるんだロッキー! もっと気合いを入れて戦いやがれ!!」

 

「あ~あ、ロッキーってばみそっかすに押されているジャン、ゲロゲロ。 ホント持って生まれた才能とかぁ~、自分で鍛え上げたチカラとかぁ~、ロストウィング(僕ら)にそんなイイ子ぶりっ子したこだわりなんか必要無いでしょうにぃ~? えんがちょ」

 

「そう言ってやるなよ。 男は誰しも意地(プライド)っていう厄介な(サガ)を持っているもんだ。 そう簡単に決めた矜持を曲げられはしないさ……」

 

「さあそれはどうかねぇ~? アタイは女だから男の意地なんてモノ、知った事じゃないけどさ、さっきまで馬鹿にしていた相手に本気を出せずに負けるとか、そっちの方がよっぽど恥ずかしいと思うんだよね。 そうなりそうになってまで詰まらない意地を優先する価値があるとは、アタイは思えないんだけど?」

 

一方でロストウィング側は“レアスキルは使わない”という自分が科した制約を頑なに守って本気を出さず、自業自得に攻めあぐねているロッキーに対して非難、もしくは仕方なく思い呆れる反応を取っていた。

 

上からの支援は一切貰えず、辺境の無人世界に施設環境最悪のオンボロ砦しか隊舎として構えさせてもらえない上、部隊に貰える仕事のだいたいは【海】や【陸】がやった取りこぼしを人知れぬ陰で処理するという内容のまるでゴミ処理作業のようなものや、ロストウィングの存在を知る数少ない一部の一般人から寄せられて来る小間使いに等しいパッとしない依頼程度であるという、最底辺に冷遇された扱いを受けている彼等にとって、上と下からの信頼が厚く非常に優遇された待遇を受けているなのは達エリート局員等の存在は確かに妬ましく目障りに思っているだろう。 しかし彼等は管理局の日陰者ではあるが魔導師としては決して低辺などではなく、寧ろ今現在進行形で管理局の正規の武装隊員の中でもトップクラスの実力を誇っている騎士のヴィータと互角の戦いを繰り広げているロッキーを見れば理解できるように、皆が色々と規格外な技能才能(ステータス)を持っている有能な人材ばかりの過剰大と断言できる戦力が集められた超精鋭軍団。 故に高ランクの魔法やレアスキルを堂々と揮う行為自体は否定してなどいない。

 

「同感やな。 ワイ等ロストウィングは()()()()()()()()()()()()()さかい。 あのド阿呆、それをもう忘れてもうた訳じゃあるまい。 まったく、つまらへん価値観に囚われおってからに……」

 

過去を割り切れない気持ちがあるのは皆理解している。 だがガンマが鋭い双眸を細め、互角だったのが今段々と相手に押されはじめてきた為に若干焦燥の色を顔に浮かばせだした仲間の幼き少年武闘家の様を厳しい視線で見遣りつつそう呟いているように、()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが地を這いずる失翼の烏の在り方というものだ。 戦いに負けたとしてもまた立ち上がって再び挑めばいい? 馬鹿を言え、戦場においての敗北は討ち死にが常であり、余程のご都合主義でも起きない限りは次などありはしない。

 

「見た感じ《識陰歩》ももう九割くらいあのゴスロリハンマー娘に見切られとるみたいやなぁ……ふっ、そらそうか。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、近接戦闘を主軸とする“古代ベルカ式”の使い手──しかも百戦錬磨の夜天の守護騎士相手やと流石に分が悪いやろし、しゃーないわな」

 

「……どういう事?」

 

なんだかどさくさに澄ました笑みで心にもない事を言われたような気がしたなのはが遠目を向けてガンマに聞く。

 

「確かにヴィータちゃんは大昔からシグナムさん達と一緒に守護騎士として戦ってきた経験がもの凄くいっぱい有って、感と見切りに冴えている。 けれどわたしだって動体視力と空間認識能力には自信があるよ。 仮にも最優の魔導師(エース・オブ・エース)の称号を貰っているわけだし、空のエースを任された身として最低限の感知感覚技能は持ち合わせているつもり……でも何でだろう? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と自負しているのに、あのロッキーって子の動き方の殆どは今だって把握できない。 それなのに最初はあの子の動きに完全に翻弄されていたヴィータちゃんが、今はもうあの子が移動した先に先回りできるまでに、あの子の動きを把握しきれちゃっているみたいだから、君が言った事が真実だっていうのは判るんだけど……」

 

バトルフィールド内に視線を戻せば不意を突いて背後に回り込んで来たロッキーの腹部にヴィータが戦槌型デバイスの長い柄を巧みに翻し回して打ち払うカウンター攻撃を見事に決めている姿が目に映る。 どうしても納得がいかないと訝しく首を捻るなのは。 彼女の視界にはロッキーの戦う姿は彼が疾駆する度に見失っていて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 にも拘らず彼と至近距離で打ち合っているヴィータは、もうほぼ完全に相手の動きを把握できているみたいだ。

 

──いったいこれはどういう事なの? ヴィータちゃんが“直感に任せて見切っている”んだったら納得がいくけれど、相手の動きに合わせてあれだけ正確に先回りするには、幾ら古代の騎士で戦闘経験豊富なヴィータちゃんでも殆ど不可能に等しい。 あれはどう見たって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。 純粋な動体視力ならわたしだってそんなにヴィータちゃんに負けていないと思う、なのにどうして……。

 

「わからへんか高町? そら当たり前や。 ロッキーの《識陰歩》は言わば《抜き足》と呼ばれとる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っつう、【ウチのエース】が使っとる歩法術を応用した手品でなぁ。 せやから“近接戦(クロスレンジ)の視界”に意識が慣れとる騎士や武術家として達人と呼ばれとる人種ならアレを見切るんにそんな時間は要らへんやろが、()()()()()()()()()()()()()()事に特化したミッド式の空戦魔導師、それも射砲撃型に関して言うたら例えどんな天才やろとあの動きを捉え切れるようになるんは最低でも二年は特訓する必要があるんやで」

 

やれやれと肩を竦めながらガンマが教えてきた疑問の種明かしになのはだけでなくフェイトやミクティーヌといった六課のミッド式魔法の使い手達は皆瞠目を露わにしてしまう。 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うのだ。

 

「人間は五感で認識できた情報を無意識に分けて優先順位を付けたりするんだと。 アタイら魔導師は並列思考(マルチタスク)が使えたりするが、思考する脳が二つ三つに増えたりする訳じゃないだろう? 結局のところ詰め込み過ぎるとオーバーヒートしちまうんだ。 だから“どーでもいいと判断した情報は捨てる”のが懸命だって訳さ。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あ~ら不思議!? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とさっ!」

 

「説明を聴いた感じやと、要するに視覚誘導(ミスディレクション)テクニックの発展板といったところみたいやな。 自分に向かって猛スピードで突っ込んで来とる車にハッ! と視線を向けた時に、道端に転がっとる小さな石ころが幾つあるか? なんて数えとる場合やあらへんもんね。 とりあえず納得できたわ」

 

ガンマからリレーのバトンを受け取るようにD.Dがノリノリで説明を引き継ぎ、聴く耳を立てていたはやてが話を纏めてウンウンと納得する。 なのは達も複雑そうに思いながらもしぶしぶだが納得できたようだ。

 

因みに《抜き足》と《識陰歩》の違いは“覚醒の無意識”に滑り込ませられる()()()()であり、前者の技術を改良した後者の方が圧倒的に多いが故に、()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 外野で観戦するなのはがロッキーの疾駆を認識できないでいたのはこの為であった。

 

「おらおらああぁぁっ! さっきの威勢は何処行った? 拳が鈍いんだよォォォオオオーーーーッ!!」

 

そして厄介な《識陰歩》を見切ったのならもうヴィータの独壇場だ。 頭上から落として来たロッキーの跳躍かかと落としを戦槌のフルスイングで相手ごと上空に打ち返すと、好機と言わんばかりにデバイスの形態を変形させる。

 

「しめた! アイゼン──は、今手元に無ぇんだった……とりあえず《ラケーテンフォルム》ッ!!」

 

一瞬しょんぼりしてから気を取り直して戦槌から今使用したカートリッジの薬莢を数発程排出させると、そのまま鉄槌を肩の後ろに勢いよく振り上げながらそう言い放ち、ヴィータの全身からカートリッジの使用によって爆発的に高まった紅い魔力が溢れ出して輝きを発する。 その輝きは小さな手に握られている長い柄を伝って鉄槌を瞬く間に覆い尽くし、ハンマーヘッドが()()()()()()()()()()()()()へと姿を変えていく。 片方がロケット噴射口に、もう片方が鋭利なスパイクに。 彼女が立っている周囲の砂上が魔力の迸りに応じて連鎖爆発。天に聳え立った砂塔の中に姿を現したのは、鈍色に煌く鋭利な先端を持つ推進鉄槌(ロケットハンマー)を威風堂々と肩に担いだ《鉄槌の騎士》の風格そのものであった。

 

「これで勝負を決めてやらぁっ! 行くぜええええええぇぇぇぇーーーーーッ!!!」

 

噴射口に火を吹かし、遥か上空で己の無様に激情しながら小さな身体を蒼穹に泳がせている少年武闘家の姿を鋭く睨み付けると裂帛と共に地上を蹴り、空へと舞い上がって爆進して行く。 その鉄槌で叩き潰すと誓った生意気な少年武闘家が身を翻して待ち構える上空にもその叫びが届くように……。

 

「クッソォォオオーーーッ! オレは……オレは……ッッ!!」

 

過去と矜持の狭間で心が揺れる少年の“存在”は敗北の恐怖を目の前にして次第に()()が生じはじめるのだった……。

 

 

 




ヴィータとロッキーの対決はこの一話で終わらせるつもりで書いていたのに、外野の会話を長くしすぎた所為でグダグダと文字数が長引いてしまい、疲れて途中でチカラ尽きてしまいました……。

次回こそは絶対にこの口悪チビっ子同士の戦いを決着させて、次の対決(カード)に移っていきたいと思います!

GE3のストーリー、この前プレイし終えたぜ! 最後に取り戻したフィムを抱っこした主人公アバターにユウゴが寄り添って映るシーンを見て、正直女主にしといて正解だったと思ったよ……。(何なんだ、あの仲良し夫婦親子感は……)

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