THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡 作:蒼空の魔導書
久々のリリカル伝説更新! 編集作業完了に伴い、今話より本文を大幅リニューアルしてお送りします! 特殊タグ機能をたっぷりと使用し表現が一新された過去の話共々、読者の皆様どうか楽しんでお読みください。
メルクーリア連峰の気候は実に変態的だ。 男と男の戦いの決着が着いた後、まるで試合が終わった後にスタジアムの外周スタンドから満員の観客が一斉に退場していくかのように、どんよりと空を覆い尽くしていた曇天が映像の早送り再生の如く素早く彼方へと流れ去っていった。 己と同じ誇り高い【守護の意志】を持った
「ゴリ、お疲れさん! 満足そうなその様子やと聞くまでもあらへんやろが、あの犬コロと戦った手応えはどうやった?」
バトルフィールドから外野に出ると同時に労いの言葉と共に試合の感想を訊ねてきたガンマから汗拭きタオルを投げ渡される。 死闘で流れた身体の汗を拭いつつ、ゴートンは今しがた自分が試合をしていたバトルフィールド内へ目を見遣る。 その視線の先で、死闘に敗北して意識を失い屈強な人狼の戦士から狼の守護獣の姿になったザフィーラが、全身に立派に信念を懸けて戦い抜いた戦士の勲章(包帯)を付けながら安らかに眠り、己の守護する主君と機動六課の仲間達と守護騎士の同志等に見送られて、タンカで医務室へと運ばれて行っている。
ゴートンは瀕死レベルの重傷を負いながらも『何者にも皆を傷付けさせぬ不破の盾で在りたい』という
「ああ、本当に大した男だった……。 結果的には俺が勝利したが、俺がロストウィングの創設期から今まで此処の変態環境と隊の常在戦場の掟の中で昔の後悔に誓った『鋼のように屈強に、決して砕けぬ男になりたい』という
「うっわ、キモイ程の絶賛っぷり。 ホモかよ……」
「
「ハッ!
腕を組んで首を縦にウンウンと揺らしながら戦った相手への称賛を気分良く流暢に語るゴートン。 その周りに、ベンチから寄って集まって来たロストウィング陣営の連中がそれぞれの感性で賛否両論に彼が言った感想に反応を示してくる。 ザフィーラの実力は申し分ないと掛け値なしに言ったゴートンの返答を聞いて、ガンマも腕を組んで満足を得たように清々しく口端を吊り上げていた。
「さぁて、次に
と、意地悪そうにガンマが見据えた先では、運ばれて行ったザフィーラを見送り終えたはやて達が自陣営側ベンチに集合して次の試合に出る人間をどうするのか、悩ましく話し合っていた。
「まさかヴィータちゃんに続いてザフィーラさんまで負けちゃうだなんて……」
「そうね。 みんなが知っている通り、あの二人は歴代の夜天の主に仕えてきた守護騎士プログラム体。 過去数百年に渡って途方もない数の戦いを潜り抜けてきて、【単騎無双のヴォルケンリッター】と次元世界中に畏怖されるようになった、紛う事なき歴戦の騎士。 それを
予想外にもヴィータとザフィーラといった歴戦の古代ベルカの騎士で機動六課の主戦力が立て続けに打ち負かされ、なのは達はロストウィングが保有している戦力レベルの高さとその層の厚さを実感して少なからず衝撃を覚えていた。 敗北を喫した二人は決して対戦相手に純粋な戦闘力で遅れを取ってはいなかったのだが、《
……しかし、それでも納得できない人間が一人は出るものだ。
「きっと調子が悪かったんだ。 じゃなけりゃヴィータ副隊長達が、あんな最低な人達に負ける筈がない……!」
「スバル……?」
握り拳を震えさせながら唐突と腹の底の激情を吐露したのはスバルであった。 彼女の秘める夢を目指して曲がらずにどこまでも真っ直ぐに進む性格を表すように大きく澄んでいた瞳は、驚く事にどういう訳だか汚泥のように濁っていた。 まるで
「そうだ。 そうに決まっている。 機動六課の隊長陣は……なのはさん達は次元世界の危機を何度も救ってきた英雄で誰もが認める絶対無敵のエースなんだから
突然スバルは完全に瞳孔を開かせた目をして明らかな妄言を吐き出し泥酔したように哄笑しだした。 どう見ても今の彼女は正気ではない。 仲間の錯乱に皆が戸惑いを露わにする中で、スバルの分隊指揮官の立場であるなのはが冷静に部下の興奮を落ち着けようとする。
「スバル、いきなりどうしたっていうの? 気を確かに持って、君は今普通の精神状態じゃないよ。 疲れているんだったらザフィーラさんと同じ医務室に行って少し休ませてもらいなさい」
「アハハ! 何を言ってるのなのはさん? あたしは全然正気ですよぉ~」
「じゃあ変な事を言って笑うのは止めなさい。 先日の事がショックだったのは解るけれど、
「ええ、それは勿論覚えていますよ。
「……スバル、ちょっといい加減にして、口を閉じなさい」
「そもそも、こんなまともな機器が無くて薪や炭を使わないと火も熾せないようなド田舎世界の片隅にあるボロ砦なんかに駐留して、世間の知らない裏でコソコソと何か後ろめたそうな事でもやっていそうな怪しい
しかし、そのようになのはが幾ら口を酸っぱくして言っても、スバルの口は止まらずに益々ヒートアップしていく。 感情の
「連中の戦い方だって、全部一遍に倒さないと倒せない分身を出す反則レアスキルとか、相手の攻撃を全部反射してくるインチキ効果の防御結界魔法とか、いちいち汚過ぎる能力ばっかり使ってきて卑怯にも程がありますよ! ふんだ! どうせ
「スバルッ!! 本当にそろそろいい加減にしないと、本気で怒る──」
頭に血が上り過ぎて思考を正常に保つ事が出来ず遂には機関銃のような剣幕を露わにしてロストウィングへの
これ以上行ったら機動六課陣営は取り返しのつかない事になってしまう……そんな内部崩壊寸前の危機的状況で、顔面同士を接触ギリギリまで寄せて睨み合い一触即発寸前のところのスバルとなのはの肩を、空気を読まない何者かの手がポンポンと叩いた。 そして──
「ガチョーーーーーーーーン!」
「「ふにゃああああああああーーっ!!?」」
何奴かと二人が背中を振り向いた瞬間、気色悪い程にギチギチと五本の指を高速開閉させる誰かの手がそれぞれの眼前至近距離にあった為、互いに仲良く猫が甲高く驚き啼いたような変な声を出してビックリ仰天し、『ドッスーン!』と地面に盛大に尻餅を着いてその勢いのまま両脚を高く上げて背中からひっくり返ってしまった。 スバルはトレーニング用のズボンだったからいいが、災難な事になのはは戦技教導隊の女子制服のタイトミニスカートを穿いていた為、それがペロ~リ♥ と捲れ上って彼女が本日穿いて来たショーツがこの場の衆目に大公開させられてしまうのだった。
「うほぉ~☆ これまたリボン付きのピンクとは、なかなかマブエロじゃ~ん♪」
「確かに、これはなのはちゃんのエロカワさを存分に引き立たせる、ええパンツチョイスや♪ せやけど、もう
「にゃぁぁああああああーーーッ!!? 見ないでよエッチ! スケベ!」
「「「「「……」」」」」
驚かしてきた犯人の少年にショーツに包まれたプリプリのお尻を向けた体勢で羞恥を喚き散らす
「てか、いきなりやってきて脅かすなんてヒドイじゃないか! いったい誰なの君は?」
パンツ丸出しのま◯ぐり返しの体勢のままギャーギャー騒いでいるなのはよりも先にハッと我に返ったスバルが咄嗟に上げていた両脚を下ろして上体を起こすと、所謂“コマネチ”という自身の股間に三角形を作ってキレキレに擦り上げる
すると相手は自分の股間を高速でコキコキと擦りまくっていた両手を止め、それを顔面の手前に持ってきて両方の掌をパァーッと押し開かせる謎の挙動を行うと共に、気持ち悪いまでに爽やかな笑顔を振り撒いて挨拶してきた。
「おっはー☆ セニョリータ! 僕はロストウィング《クロイス小隊》のイケイケでシャレオツな小隊長《フォックス・ストーン》きゅん、どぇ~っす!(きゃぴ☆) 趣味は、ナウなヤングのシティーボーイの
そう言った内容に合わせて、彼はシュシュッと空ジャブを打ちながら【フォックス】という自分の名前と部隊内での役職を名乗った後、自分の片眼を間から覗かせるように人差し指と中指を添えてウィンクしてみたり、着ていた背中に白い星のマークが書かれてている眼に痛い程に真っ赤な革ジャンを半脱ぎして強調しドヤ顔してみたり、サングラスと両腕にひらひらした糸のようなものを着け出して人差し指を頭上に掲げてキラリと輝く白歯を見せてみたり、その他もなんやかんや忙しくポーズを付けながら自己紹介アピール。 最後に自分の持つ階級を明かしてその場で華麗に一回転ターンを決めると、スバル達に向けてビシッと指差し宜しく(?)を言った直後、何故か腰を前屈みにして前全開にした革ジャンから覗く白シャツに薄く浮き出た胸板を強調した気色悪いポーズを取ってみせた。 小隊長なだけあってなかなか筋肉は付いていた。
「“おっはー”とか“だっちゅ~の”──じゃっなーーーいッッ!!」
ここで我慢できなくなったなのはがやっとパンツ丸出しの体勢から起き上がった。 運動音痴である事が嘘のような鮮やかなヘッドスプリングでダイナミックに跳ね立った彼女は気が狂いそうな程の興奮に駆られた様相を見せて、だっちゅ~のポーズ中のフォックスに奮然と物申す。
「いきなり人を脅かして、もの凄く恥ずかしい格好を曝させておいて、よくもそんなふざけた態度の挨拶ができるよね君! 何で喋る言葉が
その言葉の色から察するに、なのははここまでにロストウィングの連中から受けてきた数々の非礼にいい加減にキレかかっている様子だ。 周りのスバル達が身の危険を感じて畏縮しながら徐々に彼女から後退りして十分な距離を取ろうとしている。 彼女がフォックスに向けている笑顔の目が全然笑っておらず、ピクピクと小刻みに吊り上がる口端と眉、前髪から覗く額には青筋が浮かび上がり、途轍もなくピリピリとした雰囲気を発している……。
「それに、何なの君のその格好は? そんなにワックスで髪を突っ立てて、顔をゴテゴテしたピアスだらけにして、そういった人種じゃないのに全身の肌を小麦色に焼いて、チャラチャラと……ふざけるのも大概にして! 幾ら実力主義の場所だからって、人に対して失礼にも程があるよ!」
ところがなのはは恥辱をかかされた事への私怨で手を上げる事などはせずに、普通に叱った。 フォックスは真面目さ皆無で剽軽な態度と一緒に外見もそれに違わずおちゃらけていたからだ。 彼は青紫色の短髪をまるでパンクミュージシャンのように奇抜に逆立たせ、耳や鼻や唇の端など顔面の至る部分に複数のシルバーピアスを刺し着け、瞼には髪と同色のアイシャドウを濃く塗っていて、地肌は全身派手な小麦色に焼いてあった。 その姿は見るからに一昔前のガングロチャラ男そのもので、着ている古臭い革ジャンも相俟って、他人が視界に入れるには非常に痛々しい見た目をしていた。 彼の格好はとてもじゃないが他人に挨拶を交わすには大変失礼極まりなく、いかに他人行儀が苦手で誰からも気軽に接して貰った方が好意的である価値観を持つなのはとて、これ程までに不誠実な手合いの男には流石に不快感を覚えて激しく不服を捲し立てる。
「いやぁ、それはメンゴメンゴ。 アイムソーリー、ひげそーりー☆ わっはははは!」
しかしなのはの剣幕にもフォックスは何処吹く風であり、彼のまったく悪びれる気持ちが籠っていないチャラけた死語での謝罪に、機動六課陣営は全員物凄い不快感を露わにしていく。 いったい何なんだこのチャラ男を絵に描いたようにふざけた野郎は? エア剃刀で顎髭を剃るジェスチャーが輪をかけてウザったい。
「みんなそんなにプンプンしないでちょ。 せっかくキミタチがピリピリムードであわや一触即発☆禅◯ールしそうになっていたのを止めてあげたんだからさぁ☆」
「確かにそれについてだけは正直言って助かったよ。 でも君のその態度と喋り方は他人を馬鹿にしている感じがして、凄く失礼だよ」
「んほ? 言ってる事わけワカメ。 別にキミタチの事、馬鹿になんてしてねーし☆ もしかしてエースさん自意識過剰チョメチョメ決めちゃってるの? やっべ、アイタタタッ☆」
「……もういいよ。 それで、いったい何の用なの?」
この人とまともに取り合おうとしてもイライラが溜まって頭痛が増すばかりだ……これ以上は埒が明かないと思ったなのははストレスに痛む頭を片手で押さえつつ、諦めて話題を変える。
なのははあの【教官潰し】のガンマ・ウェストをはじめ、大半以上のメンツが
彼女の目は真剣だった。
「いやなに。 別に
「おパンティーって、君ねぇ……」
「青髪ショートのベイビーちゃんって、あたしの事ッ!? それに
しかし若干真面目な顔になっても彼はチャラけた調子と口から出てくる死語だらけの喋り方を直さない故、話を聞いている側からは誰がどう見ても人を小馬鹿にしてふざけているようにしか感じられない。 どさくさにしつこくショーツの事で弄られたなのはに至っては羞恥に赤面させて肩をブルブルと震わせつつも、あまりにも今時聞かなくなった単語で言われた為に憤慨よりも勝ってもはや白目を剥いて呆れ果ててしまっている。
しかし、赤の他人に知り合っていきなり“
「キミさぁ。 別に
やれやれしょうがないなという風に、フォックスは左右に近寄っていたシグナムとヴァイスを退かして、後退り戸惑うスバルへと歩み寄る。 その雰囲気は異様な圧を放っており、それを真に受けさせられているスバルは無論の事、周囲を囲むなのは達にも息を呑ませた。 そして被りを振って動揺を見せているスバルの眼前にやって来て足を止めたフォックスが腰を前に曲げて、威圧に引き攣らせている彼女の顔を真正面からグイッと覗き込み、まるで容赦なしに言った。
「何なのキミ、そのみそっかすなザマは?
「……どういう意味さ?」
シルバーピアスが刺さりまくった汚い面をこちらの顔に息がかかる程に寄せてきて何されるのかと慄きながら身構えていたスバルだったが、直後に相手から言われた内容がどうにも彼女の癇に触れる。 途端に警戒の意識が忽ち憤りに変化し、ニヤつく相手の眼を剣先で刺すように睨み返して追及した……その次の瞬間──
「
相手から浴びせられたその最大の侮辱に、スバルの中の
「お前……今、なんて言った……?」
みるみるうちにスバルの童形ながらに端整可憐な貌が歪み出し、項垂れた前髪が目にかかって憎悪の陰を堕としていく。 火山が噴火する直前は静かに震え出すものだ。 それと同様に彼女は肩とだらりと垂らした腕を静かに震えさせ、幽鬼のように全身を一度ゆらりと揺すり、かかった前髪の陰から覗かせた憎悪の眼光でギロリとフォックスを睨み付けて、そう問い詰める。
『いけない。 今のスバルの雰囲気はさすがに不味いよ。 止めなきゃ!』
『せやな。 機動六課総員、あのフォックスとかいうギャル男がこれ以上に何かアホンダラな事をほざいて、スバルが怒髪天を突き破る前に何とかして取り押さえ──』
そのスバルの様子は尋常じゃ無く不味い雰囲気を放っているという事はこの場の誰の目にも明白だった。 胸が締め付けられるように殺伐とした重い空気が圧し掛かり、なのは達は咄嗟に念話のやり取りで、スバルが溜め込んだ黒い感情を爆発させる前になんとか食い止めようと、彼女の身柄を全員で取り押さえに掛かる段取りを付けようとするが──
「キミって頭だけじゃなく、耳まであっぱらぱーなの? “無敵のエース・オブ・エース”だとか、“憧れの人の背中”だとか、そんな下んないものに金魚のウ◯コみたいに後からヘバリ付いたって、
「お前ぇぇぇえええええええーーーッッ!!」
それは一足遅かった。 なのは達が動くよりも先に彼女達が恐れた通りそのまま、案の定フォックスが感情の堤防を決壊させる寸前のスバルに決定的な誹謗嘲罵を言ってしまい、遂には堪え切れず明確な激怒を露わにしたスバルがフォックスの胸倉に掴み掛かった。
「いやん、暴力はんた~い! 図星をドンピシャ言い当てられて速攻ブッチギレなんてー、えんがちょ!」
「いい加減にしろ! 何をふざけた事を……
自分が大事にしている憧憬をまるで塵屑だと言うように否定されて、もう辛抱堪らずにスバルは逆上した勢いのまま左手に掴んだフォックスの胸倉を乱暴に引き寄せ、尚もひたすら人を馬鹿にした相手の顔面を殴り飛ばそうとして、右に握り締めた怒りの拳を振り上げるが……。
「や、やめなさいスバル!」
「激昂する気持ちは理解できる。 だが落ち着け!」
「気を遣って言って、シグナム副隊長の言う通りですよ。 正直もどかしいと思うけど現状の
引き絞った右腕は放つ直前で
「──そう……だったら、試合でならこの
私闘が駄目ならば
「「ひっ!?」」
「スス、スバルちゃん? い、いったいどうしたっていうんですか……!?」
殺意や怨恨にも似た昏い雰囲気を発しだした、ただならぬスバルの様相を目の当たりにして、機動六課陣営側内に戦慄が走る。 曰く付きの過去を得ているとは言えどもまだまだ歳幼く心が純粋無垢であるエリオとキャロ、更には非戦闘員であるが故にこのような殺伐とした気配を受ける機会は稀であるシャーリーにルキノとアルト、殺気に不慣れであったこの五名は一瞬で背筋が凍り漬いて明確な畏縮や動揺を大きく露わにしている。
「ふえええっ!? スバルちゃんの目が、とっても怖いですぅぅ」
「おいおいおい! スバルの奴さっきから様子が変だぜ? そりゃあ確かにこのふざけたチャラ男のガキの言った、
「これは不味いわね。
リインにヴァイスやシャマル等、前線経験豊富である者達はさすがに多少取り乱す程度に留められた。 しかし、幾ら
そんな中でミクティーヌは思案顔を作り、スバルの精神異常に関して
──そう言えば、此処へ来る前から気を遣ってスバルの様子を看ていて、
「なのはさん、フェイトさん、シグナム副隊長。 勝手言って悪いですが。 次の試合はあたしが出ます」
ミクティーヌがスバルの異常なまでの怒りの原因を憶測ながらに掴みかけたところで、間が悪くスバルが一旦掴んでいたフォックスの胸倉を乱暴に前へ突き飛ばすように解放しつつ、地面に倒したフォックスを冷徹な敵意が籠った眼で射貫きながら、隊長達に次の試合は自分がやるという旨を淡々と告げてきた。
「……駄目、それは許可できないよ」
「そうだね。 今のスバルはどう視たって正常な精神状態じゃないからね」
「摸擬戦形式の試合と言えど、相手の挑発を受けて、そう簡単に怒り冷静さを失うような未熟者を戦いに出す事など到底出来んな」
──せやけどスバル、私の存在はもしや
当然、この場に残っている三人の隊長(何故だか
ただでさえそうなのに、ご覧の通り相手からの挑発を受けて異常なまで精神を乱してしまっている人間を戦いに送り出すような無能な隊長など、たとえ破壊の紫竜の爪牙によって一度堕とされていても百戦錬磨の英雄が集う機動六課には存在しない。 冷静さを欠いた者は戦う前から負けているも同然だからだ。
隊長達の指摘に間違いはない。 しかし、それでもスバルは大人しく引き下がる様子はなく、依然として眼前足下で調子を全く崩さずどこまでもこちらをおちょくるように自分を見上げてきているニヤけたピアス面を、嚇怒の焔を宿した昏い瞳で睨み返している。
これはどうしたものかと困ったが、そこでやれやれよっこいせと上体を起こしたフォックスが、右腕を左斜め上の角度で自分の首元前に上げてその掌の甲を左耳元近くに添えながら変顔をし、口を発した。
「アイ~ン! 別に出してあげてもいいんじゃなぁ~い? そのプッツンハッスル具合だと、青髪ベイビーちゃんが
フォックスはその場に立ち上がってお気に入りの革ジャンに付いた砂をパンパンと叩き落とし、御調子よく右手でVサインを突き出したその指でスバル、ミクティーヌ、エリオ、キャロを順番に指し、提案する。
「キミ達、
既に上に逆立っている前髪を手で大袈裟に掻き上げたり、三本指を立てて非常に腹立たしいドヤ顔をしたりと、相変わらず時代錯誤の寒いジェスチャーを忙しく取りながら詳細説明するチャラ男。 死語と死にネタだらけの酷い文章で何を言っているのか途方もなく理解し難いが、要はこういう事だ。
「
「そんな……幾らなんでも貴方一人で、僕ら四人を同時に相手にして戦うだなんて、できるんですか?」
「モチのロンよ♪ 寧ろキミら四人って、どう見てもトーシローで経験値の足りてないザコ助のぴよこ侍にしか見えないしぃ~。 魔導師歴十二年のボクに掛かればイチコロだっぴー☆」
今時の若者にとっては宇宙語に等しい意味不明の説明文の中から数少ない通常単語を拾い、辛うじてフォックスがたったの自分一人で
「……いいよ、それでやろう。 四人でタコ殴りにしてやって、
「スバル……」
「《マッハキャリバー》、セットアップ」
人は怒りの臨界点を超えると激するよりも冷静になるらしい。 スバルは自分の大切なものを侮辱された挙句にこちらの実力やミクティーヌ達FWの仲間までをも見縊られて、もはや敬愛するなのはに止められても引き下がる事なんて出来なかった。 嚇怒の大きさを顕すかのように燃え盛る青い焔の如き魔力を解放し、
マッハキャリバーが一足の大型のインラインスケートに変化して
最後に
「アンタをブン殴る! そしてあたしの大切な憧れを馬鹿にした事を、絶対に改めさせてやる!!」
「ヘェイ! カマン、ベイビー!」
遠慮せずに何所からでも掛かって来い新人共、軽~く捻ってやるよ、と、こちらの戦意を煽り立ててくるように余裕の笑みを浮かべて手招きしてくるフォックスへ、望むところだ、空の上までブッ飛ばしてやる! と、迸る
団体摸擬試合、第三戦目の
……うん、今回のは難産でしたね、自分で読み返しても……。(白目)
編集で大幅リニューアルされた本文はいかがでしたでしょうか? 迫力を出す為にかなり多く特殊タグ機能使いましたが、読みづらいですか?(個人的に第9話の『
今回登場させたロストウィングの新オリキャラ《フォックス・ストーン》は死語や死にネタだらけのチャラ男! コンセプトは“ウザキャラ”ですね。(しかし、やはりウザさではあのコズミック水銀ニートには全然及ばねぇわな……(笑))
このウザいチャラ男【フォックス】によって胸に抱く大切な“
ここで今年の五月から連載投稿を始めた“ガチクロスオーバー”新作小説の宣伝です。
『英雄伝説軌跡シリーズ』×『家庭教師ヒットマンREBORN!』×『魔法少女リリカルなのはStrikerS』──三作品による王道熱血クロスオーバーバトルストーリー『英雄伝説リリカルREBORN!
今新作ではオリ主を出さず、日本ファルコムRPG原作“英雄伝説 閃の軌跡シリーズ&
リリカル伝説のダークな展開が苦手という読者様方にはこちらがオススメですね。 勿論その他の方々も挙って読んでくれると大変嬉しいです。
以前の活動報告にも書いたように、自分は当分の間は『英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡』と『THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡』の二枚看板で更新していきますので、よろしくお願いします!(まあ、黎の軌跡やら新作テイルズやらのゲームプレイに忙しくなるので次回の更新は一・二ヶ月は先になってしまうかもしれないけれど……)